黒夜行

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「三月のライオン」を観に行ってきました

凄く不思議な映画だった。ストーリーは正直はっきりとは分からなかったし(明確に提示されるのは設定だけ)、ストーリーって言ったって特に何が起こるわけでもない感じの映画なのだけど、ずっと観ていられるとも思った。ずっと観てられる。セリフも音楽もほぼなし、物語もこれと言って展開しないのに、それでも全然観てられる。

一番大きいのは、主人公の女の子の造形が魅力的だからだろう。大人なのか子供なのか絶妙に分からない風貌で、天真爛漫なのか計算づくなのか分からない振る舞いをする。彼女が、目の前にいる男を愛しているということは伝わるが、彼女の行動に何か整合性を見出すのはなかなか難しい。しかし、そんな捉えどころのない存在だからこそ、どうにも惹かれる。

物語を説明するような描写はほぼないので、観客が勝手に受け取るしかない。理解できていない部分はあるとはいえ、自分の中にはなんとなく、こういうことなんだろうという捉え方は存在する。でも、それが正解かどうかは分からない。記憶を失った男と、嘘をつく女の間には、何が起こっていても不思議じゃない。

映像的に「幻想的だ」と感じるようなシーンはないのに、物語的には「幻想的だ」と感じさせられる。しかし、映像として映し出されているのは、昭和の東京の一角である。「幻想的」とは程遠い。しかし、男と女の存在感が非常に淡いで、世界に実在しているかどうか疑わしいレベルだ。彼らは、生活を成り立たせるために他者と関わりを持つが、それ以外の理由では閉じており、二人で完結している。しかし、その二人の空間も、どうにも穏やかではない。男は、記憶を失っているから、目の前にいる女をかつて愛していたのか覚えていない。そして女は、男の恋人であると嘘をついて、自分の中の歪んだ愛をどこかに着地させようとしている。

彼らが何を望み、どこを目指しているのかは、全然分からない。彼らは世界の中で「ベクトル」という方向を持つ存在ではなく、ただの「点」だ。二つの点が、その場に停滞している。世界の方が動けば、そこに張り付いている彼らも動くが、彼ら自身が目的地を定めてどこかに歩もうとしている感じはほぼ見えない。

だから、映画のラストシーンが、彼らのベクトルの始まりでもあるのだろうなぁ、と思う。彼らは、「記憶を失った男」と「嘘をつく女」という点ではなく、目的を持つ一つのベクトルに変わったのだ。

内容に入ろうと思います。
映画の冒頭で、白黒の兄妹写真が表示されながら、男と女の設定だけが伝えられる。この映画についてはっきり分かるのは、その字幕での情報だけだ。
兄と妹がいた。妹は、兄のことを深く愛するようになった。しかし、兄は記憶を失った。妹は、兄の記憶が戻るまで、兄の恋人のフリをすることにした。
女の名前は、アイス。クーラーボックスを常に持ち歩き、そこからアイスを取り出して日々食べ続けている。彼女は、実家と思しき建物を出て、兄が入院しているはずの病院で無作為に病室を開け、兄を見つける。見知らぬ男から奪った服一式を男に着せ、自分はあなたの恋人であると偽り、一緒に暮らすことになる。男は生活のために解体屋の仕事を始め、女は生活のために身体を売る。
というような話です。

よく分からない点は多い。冒頭の銃は?バイクにまたがった遠景でセックスしているのは誰?犬は何故あんな運命に?などなど。とにかく、観客に説明を施すような描写もセリフも一切ないから、とにかくストーリーは全然掴めない。でも、良い映画だなぁ、という感じがした。不思議な映画だ。

僕は普段、ストーリーを追って映画を観る。だから、どれだけ映像が綺麗でも、どれだけ音楽が魅力的でも、ストーリー的な部分での納得感がないと、僕の中ではあんまり映画として入ってこない。でもこの映画は珍しく、観ている間ほぼ、ストーリーのことは考えていなかった。たぶん、かなり早い段階で諦めた。ストーリーを理解させようとする映画ではない、ということが冒頭からはっきりと明示されている気がしたからだ。

だから、この二人がこれからどうなるんだろう、みたいなことはほとんど考えずに、ただ彼らの彷徨を眺めるような鑑賞になった。僕にとっては、かなり珍しい映画体験だったし、そういうタイプの映画はダメだと思ってたから、ここまで振り切ると逆に受け入れられるようになるんだな、という発見でもあった。

うまく感想が書けないけど、なんか凄いものを観たな、という感覚がある。「デジタルリマスター版」らしいから、元のからどれぐらい映像が綺麗になってるのか知らないけど、映像の感じも凄く良かった。

あと、どうでもいい話だけど、「三月のライオン」の意味ってそういうことだったのか、と思った。元々は将棋のマンガの方でこの名前は知ってたけど、この映画の英題が「MARCH HAS COME LIKE A LION」で、「三月はライオンのようにやってくる」って意味なんですね。知らなかった。

「三月のライオン」を観に行ってきました
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小説・新書以外

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番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

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4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
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7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

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3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
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