黒夜行

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「潔白」を観に行ってきました

面白かった。事件の真相を追う、という物語だけだったらここまで面白くはなかったかもしれないけど、物語が「犯人探し」から転調し始めた辺りから(まあ、結構後半だけど)、俄然面白くなった。


主人公の弁護士がある場面で、「一体どうしたらいいの?」と嘆く場面がある。それまで主人公は、かなり厳しい状況に追い込まれても泣き言一つ言わず、表情も変えないでクールに事件に向き合っていたのだけど、その場面で彼女は初めて動揺を見せる。

その時点で彼女がどんな状況に直面していたのかは、内容的にかなりネタバレになるので書かないけど、確かに彼女と同じ状況に置かれたら、「一体どうしたらいいの?」と言いたくなってしまうだろう。

「正義」は人によって違う。でも、人によって違う、というところで留まってしまえば社会は成り立たない。だからこそ、法律や法解釈の基準などを設けて、ある程度以上客観的に「正義」を判定できるようにしている。

しかし、そういう仕組みが存在するからこそ、その公平さみたいなものから零れ落ちてしまう人も出てくる。どうしたって、「正義」の境界線は厳密には決められないし、その境界線の狭間のようなところに落ち込んでしまった人は、ほんのわずかなことで「正義」と「正義ではない側」が決してしまう。

この映画の着地点に対して、たぶんいろんなことを感じる人がいるだろう。どの視点に立つかで、この映画の結末は正解にも間違いにもなる。僕は、この結末を「正解」だと言いたい。これが、「正解」だと受け入れられる社会で、僕は生きたい。

内容に入ろうと思います。
有名弁護士事務所でトップ弁護士と活躍するアン・ジョンインは、金持ちの息子の弁護を嫌々ながらに任されるも、きっちりと仕事をこなした。しかし、もう同じ被告人の控訴審は担当したくない、と上司に断りを入れている最中、その事件の一報をテレビで知ることになる。
ある農村の主が亡くなり、葬式が行われている時のこと。大川市長を含む弔問客5人が、マッコリを飲んだ後嘔吐し、死者も出る事態となった。マッコリからは農薬が検出され、犯人として、葬儀の喪主である妻が逮捕された。
その妻は、ジョンインの母親だ。事件はまさに、ジョンインの実家で起こったのだ。ジョンインは幼い頃、鉱山を経営する父から暴力を受けるなど抑圧された環境におり、耐えかねて家族を置いて一人都会へと飛び出し、以来十数年実家には帰っていなかった。
事件を知り、急いで実家に戻るものの、彼女は事件現場で不審なものを感じ取る。何かおかしい。しかし事件は、警察による初動捜査がかなり雑に行われていたにも関わらず、母親の犯行であると確定しているかのような様相で、彼女は、元々ついていた弁護士の代わりに母親の弁護を担当することになる。
残念ながら母親は、事件の直前認知性を発症しており、自分を助けるために駆けつけた娘のことが認識できず、自閉症の傾向を持つ弟のジョンスを気遣う発言ばかりして…。
というような話です。

冒頭からしばらくの間は、「敏腕女性弁護士が、疎遠だった家族を救うために、事件の真相を探る」という、まあよくあるだろうなぁ、という展開を見せる。よくある展開だから悪い、なんていっているつもりはないのだけど、正直なところ、特段これというほどの惹き込まれ方はしていなかった。

事件の背後には、現市長を中心とした政治の腐敗があるようだ。まあそれも、よくあると言えばよくある話。

しかし途中から徐々に、なんかおかしいという感じになっていく。確かに、母親が犯行を行ったという明確な証拠は無いし、市長を含む被害者らがどうやらあくどいことをしていることも事実なようだ。でも、それだけではない、何かおかしな雰囲気がちらほらと感じられるようになっていく。

そして彼女は、自分の足で様々な情報を稼いだことで、事件の真相をついに明らかにするの、だが…。

この「だが…」の部分は書けないから、この展開が示唆する問題定期にも触れられないのだけど、知れば色々と考えさせられるだろう。「法律」だけでは「正義」を実現することができないと考えるか、あるいは「法律」で実現できるものだけが「正義」だと捉えるべきだと考えるか。

世の中には、明確に法律の一線を超えずに、グレーゾーンに留まりながら悪いことをしている連中もたくさんいるだろう。そういう人間を、「法律を犯していないから裁けない」と言ってしまうのはなんか嫌だ。同時に、明確に法律の一線を超えているが、その行動そのものを称賛したくなるような状況だってあるだろう。そういう人間に、「法律を犯しているから裁かれるべきだ」と言ってしまいたくもない。

社会を成り立たせるために法律に従うべきだ、というのはその通りだし、法律に対して理不尽や怒りを覚えるのなら変える努力をしなければならない、というのもその通りだと思っている。しかし、この映画で提示されていることはそういうことではなく、「なんらかの基準を設けて、その境界線で善悪を定めましょう」という仕組みでは救われない状況は一定数起こりうるし、そういう場合にどのような救済があり得るだろうか、ということだ。

僕はそういう場合には、公平さよりも、弱者の救済に振り切る世の中であってほしいと思う。

「潔白」を観に行ってきました
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2013年の個人的ベストです。

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6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
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5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
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20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

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2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
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2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
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5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)