黒夜行

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「プラットフォーム」を観に行ってきました

いやー、久々にかなりイカれた、ぶっ飛んだ映画だったなぁ。ざっくりした設定だけ知った上で観に行ったけど、確かに設定の時点で結構ヤバさを感じてはいたけど、中身はその予想を遥かに凌ぐヤバさだった。

まずは内容から。
主人公のゴレンは、ある部屋で目覚める。正方形の部屋の中央に、正方形の穴。そして、上を見ても下を見ても、同じような階層が永遠と連なっている。壁には48という文字。普通に考えれば、少なくとも上に47の階層があり、下にはどれぐらい続いているか分からない。
部屋にはもう一人、老人が。トリマガシと名乗るその男は、もうここに1年もいるらしい。状況が理解できないゴレンに対してトリマガシは、この<穴>の仕組みを伝える。階層は一ヶ月ごとにランダムに変わる。中央の穴の上階から、食い物が乗ったエレベーターのようなものが降りてくる。上階の人間が残した残飯だ。食べるものは、これしかない。食べ残しなど食えるか、と当然考えるゴレンは、初日は食い物に手をつけない。しかしトリマガシに食べないのかと催促され、キレイに残っていたリンゴをとりあえずポケットにいれる。後で食べようと思ったのだ。しかし、それは許されない。食い物は、エレベーターがその階層に留まっている間しか食べられない。食い物を確保すると、部屋が灼熱か極寒になるよう設定されているのだ。
48階はまだマシだ。トリマガシは、132階にいたことがあるという。そして、下にはまだまだ続いていた。132階ともなると、食い物はほとんど残っていない。他に、食べるものはないにも関わらず。それでもどうにか、生き延びなければならない。
エレベーターに乗って、下に行くのは自由だ。様々な理由から、下の階層を目指す者もいる。しかし、上に行く方法は基本的には存在しない…。
というような話です。

何が凄かったって、かなり下層に落ちた時の描写。そこではもう、皿が舐め取られたようにキレイになっていて、食えるものは何も残っていない。水はあるが、食べるもの無しで一ヶ月過ごさなければならない。しかし、そんなことは不可能だろう。だったらどうするか…。答えそのものはここでは書かないことにするけど、まさかエロ以外でモザイクが掛かるとは思わなかったから驚いた。恐らく、元の映画にあったのではなく、日本公開に合わせてモザイクをつけたんじゃないかと思うけど、まあ確かに、フィクションだと頭では分かっていても、相当にハードなシーンだったのは確かだ。

映画は、リアルとファンタジーの狭間のような、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。リアルという点で言えば、あまりにもリアルなサバイバルが描かれているし、とはいえ映画全体の設定はある種の寓話のような感じがする。

映画は、誰もが想像できるように、現代社会への皮肉を核として描き出しているのだと思う。富める者が多くを手に入れさらに富み、貧しい者はほとんど何も手にすることができずさらに貧しくなる。非常に無機質で人工的なこの<穴>は、現代社会から様々な虚飾を剥ぎ取って残る骨格のようなものだと思う。基本的に階層ごとに交流は発生し得ないことや、交流が発生する場合、それは争いとして結実する場合が多いなどの描写も、非常に現代的だろう。現代社会と<穴>の最大の違いは、階層が一ヶ月ごとにランダムに変わること。そしてこの設定があることでさらに、人間の愚かさみたいなものが浮かび上がる仕掛けになっている。

現代社会では、人間の階層はほぼ固定されてしまいがちだ。それは、教育や労働のチャンスみたいなものが、お金があるかどうかに大分左右されてしまう世の中だからだ。確かに、例えば今ならYouTuberになって一発当てるみたいな成り上がり方はある。しかし、よほどのことがない限り、今いる階層から大幅にジャンプアップすることは難しい。

しかし<穴>の場合、先月は132階でも、今月は8階ということもあり得る。自分の努力がまったく反映されない一方で、まったくの偶然によって上位に行ける可能性が誰に対しても(恐らく)平等に与えられている。

さて、自分がそういう環境にいるとしよう。どういう行動を取るだろうか?頭で考えれば、誰だってこう考えるのではないか。今自分は8階にいる。上から降りてくる食い物を、下層のことを考えずに食べたいだけ腹いっぱい食べることはできる。しかし、来月になったら132階に落ちるかもしれない。そうなった時、何も食べられないのは困る。だったら、8階にいる今、自分が節度を持った行動を取れば、下層まで全員に食い物が行き渡るのではないか…。

頭で考えれば、これが一番合理的な方法だ。全員が同じように考えるならば、毎月どの階層に振り分けられようが、さほど大きな差の無い生活を送ることができる。

しかし、やはり実際にはそうはならない。恐らくこの映画の描写は、ゲーム理論的な知見も含まれているように思うけど、ゲーム理論には、全員が全員にとって良い選択をすれば全員が損せずに済むのに、自分ひとりの利益を追求しようとすることで全員が損をする、というモデルが存在する。何故そうなってしまうかと言えば、自分以外の人間が、全員にとって良い選択をするということを信じきれないからだ。

<穴>も同じだ。<穴>の住人全員が同じような選択をすれば、全員が長期に渡って利益を得られるのに、他の住人がそういう選択をするとは信じられないが故に、結果的に長期的には不利になることが分かっていて、短期的な個人的な利益を追求する行動を取ってしまう。

映画の中で一人、自分に出来る範囲で(つまり、すぐ下の階層の人間への依頼という形で)、全員の利益を共に追求しようと呼びかける。しかし、すぐ下の階層とさえ、上手く連携を取ることができない。僕も<穴>にいなければならなくなったら、理性的には行動出来ないかもしれないけど、他人事だと思ってみるとやはり、人間の愚かさみたいなものを感じざるを得ない。

主人公のゴレンは、めくるめく環境の変化に翻弄されるが、翻弄されっぱなしでもない。彼はある決断をし、自らの行動によって状況を変えようとする。最終的に彼の行動がどういう結末を導いたのか、その辺りは上手く理解できなかったけど、僕の予想ではたぶん、キリスト教だとか何かの神話みたいなものを重ね合わせた描写がなされているのではないか、と思う。後半は、「◯◯は伝言になり得る」という言葉が頻発するのだけど、恐らくこれがキーワードなんだろうなぁ、と。だから、結末をどう解釈したらいいかというような僕にはなんとも言えない。

<穴>とは一体なんなのか、主人公を含めた住人たちは何故ここにいるのか、管理者の思惑なんなのか、時折挿入される料理を作るシーンは一体どういうことなのか。こういう疑問にはっきりと答えてくれるような場面はなく、観る側が想像力で補わなければならない。そういう読み取りの力が高くない僕としては、若干モヤモヤする部分もあるのだけど、全体的には、非常に斬新で面白い映画だと感じました。でも、グロいのが苦手な人は止めた方がいいと思います。

「プラットフォーム」を観に行ってきました
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5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
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8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
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13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
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5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
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7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
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3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
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18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
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18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
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9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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1位 千早茜「からまる
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
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7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
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14位 辻村深月「水底フェスタ
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)