黒夜行

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「テネット」を観に行ってきました

脳が溶けるかと思うぐらい訳わからんかったけど、面白かった!
で、見ている時には理解できなかったことを、後から思い返してみて、自分なりに整理したつもりだ。
まだ、考察サイトなどは見ていない。
とりあえず、自分なりの解釈であれこれ書いてみようと思う。

以下、ネタバレを気にせずに色々と書いていくつもりなので、映画を観ていない人は読まない方がいいと思います。
ただ、ストーリーそのものについては、そんなに触れるつもりはありません。
僕が書こうと思ってるのは、物理の話です。
僕は物理学が好きなので、この映画の背景に使われている物理の話が、なんとなくは理解できる。
たぶん、「量子論」とか「反物質」とかそういうものを全然知らない人には、この設定をちゃんと理解するのは難しいんじゃないかなと思います(それでも、エンターテインメントとしては十分面白く観れる映画だと思うけど。クリストファー・ノーランの映画は、複雑だけど、複雑なりに面白く観れるように作ってるから凄いなと思う)
そんなわけで僕は、物理の方面から、この映画を観るための補助線みたいなものを引けたらいいなと思います。
ちなみに、あくまで僕の理解を書いているので、間違ってたらすいません。



この映画では、「時間の逆光」というものがテーマになっている。
そしてこれ、実際物理の世界で実際に扱われる話だ。

映画の中でも、【陽電子は時間を逆行する】というセリフが出てくる。知らない人にはなんのこっちゃという話だろうけど、まずこの陽電子の話からしよう。

陽電子は、実際の粒子として発見される前に、その存在が予言されていた。予言したのは、ディラックという天才物理学者。彼は、それまで誰もなし得なかった、「特殊相対性理論」と「量子論」を融合する方程式というのを初めて作り上げた。当時これは信じがたい偉業とみなされ、「奇跡」と言われるほどだった。

しかしディラックは、ディラック方程式と呼ばれるその式を作り上げたことで一つの代償を得ることになる。それは、通常の電子とは電荷が逆の粒子の存在だった。普通、電子というのはマイナスの電荷を持つ。しかしディラック方程式からは、他のすべての要素は電子とまったく同じだけど、電荷だけがプラスという粒子が必然的に出てきてしまうことになった。当時、そんな意味不明な粒子は発見されていなかったし、ディラックもしばらくの間信じなかった。しかしその数年後、実際にそういう性質を持つ粒子が発見されたのだ。当初この粒子は「反電子」と呼ばれたが、今では「陽電子」と呼ばれている。ディラックは、自身の方程式から導き出された陽電子が実際に見つかった時、「自分の理論は自分よりも賢かった」と言ったという。

さてこの「陽電子」は、「正の電荷を持つ電子」のことだが、時間のことも含めて正確に表現すると「正の電荷を持ち、時間を順行している電子」ということになる。そしてこの「正の電荷を持ち、時間を順行している電子」というのは、数学的には、「負の電荷を持ち、時間を逆行している電子」と同じだ(何故同じなのか、と聞かれても僕には答えられないが、そうらしい)。つまり、「陽電子」というのは、「時間を逆行する電子」のことでもあるのである。

もうこの辺りで「???」となっている人は多いだろう。大丈夫。僕も、知識として頭に入っているだけで、理解しているわけではない。「電子が時間を逆行する」の意味は、僕にはよく分からないが、とりあえず物理の世界ではそう捉えられているのだ。

しかしそもそも、「時間を逆行する」なんてことが許されるのだろうか?実は、現在知られている物理法則の中で、「時間が過去から未来に流れている」という制約が必要なものは存在しない(確かそうだったはず。もしかしたらすべての物理理論に当てはまる話ではなかったかもだけど、でもほとんどの物理理論には当てはまるはず)。つまり、相対性理論も量子論も万有引力の法則も、時間が未来から過去に流れていても、同じように成り立つのだ。少なくとも、知られている物理理論の中から、「時間の流れ(「時間の矢」と呼ばれることもある。この「時間の矢」という表現は、映画の中にも出てくる)」が一方向に限られている、という制約を見つけることはできない。

またアインシュタインは、タイムトラベルについても真剣に研究していたことがあったらしい。アインシュタインが導き出した相対性理論では、「どんなものも光より早く移動してはいけない」という「光速不変の原理」と呼ばれるものがある。つまり、世の中のあらゆるものの上限速度は、光速と決まっている、ということだ。

しかし一方で、量子力学と呼ばれる物理理論の骨格を成す一つである「不確定性原理」によると、メッチャ短い時間であれば光速を超えてもいい、ということになる。何故そんなことになるのか?つまり、バレなきゃいい、ということだ。

たとえばこういうことを考えてみよう。ある車を警察がヘリコプターで監視している。スピード違反を調べているのだ。その車は、まもなく短いトンネルに差し掛かる。トンネル内部のことはヘリコプターでは見えない。でも、トンネルに入った時に制限速度内で、トンネルから出た時も制限速度内だったら、見えていないトンネル内部でも制限速度内、と考えるだろう。でも実際は、トンネル内部でだけ超加速をして、制限速度を大幅に超過しているかもしれない。でもそれは、ヘリコプターに乗っている人には分からない。

これと同じような感じで、量子力学の世界では、観測にある制約がかけられている。その制約が「不確定性原理」だ。その制約は、先程のトンネルのようなものだ。人間には、観測できない部分がある。そして、その観測できない部分で、粒子がどう振る舞ってるかは、理論の制約を受けないのだ。だから、メッチャ短い時間だったら、光速を超えても大丈夫、ということになる。

そして、相対性理論によれば、光速より速く動くということは、時間を逆行することと同じになる、らしい。これも、理由を聞かれても答えられないが、そういうことのようだ。

さて、ここまでの話をまとめよう。ディラック方程式から、電荷だけが逆の粒子が予言され、実際に見つかった。電荷が逆の粒子(例えばプラス電荷)が時間を順行しているというのは、まっとうな電荷(マイナス電荷)の粒子が時間を逆行しているということであり、それは相対性理論と量子力学から許容されている。初めて発見されたそういう粒子は電子と電荷が逆だったので「陽電子」と呼ばれているが、実際にはすべての物質に電荷が反対の「反物質」が存在している。

そしてこの「反物質」が、この映画の肝になっている。

この映画では、「反転装置」と呼ばれるものが登場する。初めこれは、「時間を反転する装置」なんだと思ってたのだけど、主人公が初めてこの装置に入った後の説明から考えると、たぶんそうではないのだと思う。

映画の中では、こんな説明があった。

【こちらの世界の自分自身には接触しないで。対消滅して大爆発を起こすから】

これは、まさに「反物質」の性質である。

「物質と「反物質」は、触れ合うと「対消滅」という爆発を起こして両方とも消えてしまう。その時、どれぐらいのエネルギーが放出されるのかというと、有名な「E=mc^2(「^」は「乗」を意味する)」で計算できる。「c」というのは光速で、それが2乗されているから、「m(質量)」がごくわずかであってもとんでもないエネルギーが放出される。この式を現実に利用しているのが、核兵器や原子力発電である。

つまり、この「反転装置」というのは、「物質⇔反物質の反転装置」ということなのだと思う。映画の物語を理解する上では、「時間の反転装置」でも「物質⇔反物質の反転装置」でもどっちでも解釈上の問題はないと思うけど、「なぜ時間が逆行するのか」という説明を「反物質」を持ってくることでリアリティを出している、ということだと思う。まあその分、メッチャ複雑になってると思うけど。

映画はもの凄いスピード感で展開されるから、観ている時にはうまく理解できなかった部分が色々ある。その一つが、「彼らは一体、どうやって過去のある時点に戻ってるんだろう?」ということだ。この「反転装置」は、いわゆるタイムマシンのようなものではない。その装置に入ってボタンを押せば、好きな時間に飛べる、みたいなものではないのだ。ただ、時間が逆行する(時計が巻き戻る)だけだ。それなのに彼らは、ある作戦のために過去のある時点まで戻れている。

さらに、彼らはある場面で、時間の逆行している船内にいる。これも観ている時には謎だった。彼らは二度「反転装置」に入ることで、時間の逆行から抜け出していたはずなのに、どうしてまた時間が逆行してるんだろう?

この2つの謎は、彼らが作戦のために過去のある時点まで戻ろうとしている、ということで理解できる。

「反転装置」に入ると時間が逆行する。つまり、1週間前の過去に戻りたければ、「反転装置」に入ってから一週間過ごせばいいのだ。彼らはそれを、船上で過ごしている(船上なら、隔離空間を確保しやすいし、時間が逆行する世界の中で過ごしやすいということなのだと思う)。映画を観終わった後でいろいろ思い出して、ようやくそれが理解できた。

また、何故キャットを、オスロ空港の爆破現場に連れて行ったのかというのも、同じ理屈で理解できる。彼らは、キャットが撃たれた現場で「反転装置」に入り、時間を遡り始めた。それによって、キャットの回復のための猶予が得られたわけだけど、でも4日から1週間時間が必要、ということだった。キャットが撃たれた場所は、彼らの敵のアジトである。本当は、1週間そこでじっとしていてキャットの回復を待ち、その後再び「反転装置」に入って元に戻ればいいのだけど、そこに留まっていたら敵がいつ戻ってくるか分からない。だからそこは離れなければならない。だから、別の「反転装置」から戻るしかないが、その場所を彼らはもう一箇所知っていた。オスロ空港である。しかも、ちょうど1週間くらい前に、彼らがそこでドタバタを起こしていた。普通だったらオスロ空港内部のその「反転装置」まで忍び込むのは不可能だけど、あのドタバタの日ならなんとかなる。ということで、キャットの安全を確保しつつ、時間の逆行から脱出する唯一の手段として、あのドタバタ現場まで戻ってきた、ということだろう。彼ら3人以外の、キャットが撃たれた場所で「反転装置」に入った人たちは、キャットを手放した(主人公たちに預けた)以上、その時間が逆行する世界に留まる必要がないから、その場ですぐに戻ったのだろう。これも、映画を観ている最中は理解できなかった。

しかしそう考えると、結構初めの方で出てきた「銃弾と壁」はどうなるのか。主人公が初めて「時間の逆行」を体感することになる「銃弾と壁」は、「未来から送られてきた」という設定だった。確かに原理的には可能だ。ある人物が「反転装置」に入り、そのまま10年過ごせば10年前に戻れるし、50年過ごせば50年前に戻れる。ただ、その技術が開発されるのは、もっとずっと未来、それこそ数百年先とかじゃないのか?とすると、リレー形式で渡していったのかもしれないけど、色んな人間にバトンを渡しつつ、時間逆行を数百年続けないと「銃弾と壁」を過去に届けられないんじゃないか。

もっと深刻なのは、「反転装置」そのものだ。これだって、数百年先の未来の発明のはずだけど、これが現在に存在するということは、誰かが数百年分過去に遡らなければならない。まあ装置の部品だけ持っていって、現代で組み立てるってことも出来るかもしれないけど、いずれにしても「銃弾と壁」よりもデカイから過去に送るにはさらに厄介だろう。これはどうクリアしてるんだろう?それとも、僕の解釈が間違ってるかな???

そんなわけで、この「反物質」という捉え方で、この映画の基本の仕組みみたいなものは大体捉えられているような気がする。一回しか観てないから、当然見落としてる部分も多々あると思うけど。

しかしホント、よく考えるよなぁ、と思う。「時間」というのは未だに謎めいた存在のようで、「時間なんてホントは存在しないんじゃないか?」という人もいたりする。また、物理法則の中で、「時間の矢」と関係しているのは「エントロピー」という概念で、これもまた映画の中に登場する。「エントロピー」というのはよく「乱雑さ」と表現される。例えば、メチャクチャキレイにしている部屋でも、時間経過と共に埃が溜まったりものが散らかったりする。これが「エントロピーが増大した状態」だ。そして、人間が掃除したり片付けたりすることで乱雑さが減る。これが「エントロピーが減少した状態」だ。そして、熱力学第二法則として知られているのが、「エントロピー増大の法則」である。つまり、放っておいたらエントロピーは増大する方向に進んでいくよ、というものだ。部屋がひとりでに片付くことがないのと同じように、何もせずエントロピーが減少することはない、というものだ。

しかしこの法則は、「僕らが生きている世界を観察するとそうなってるね」ということでしかない。さきほど言ったように、物理理論がそういう制約を課しているのではなく、あくまでも僕らが生きている世界を観察した結果そうなってるね、ということだ。だから、もしかしたら、ひとりでのエントロピーが減少する世界が存在するかもしれない。

で、「時間の矢」はこの「エントロピーの増大」と結び付けられることが多い。つまり、「エントロピーが増大する方向が、時間の矢が進む向きだ」というものだ。とはいえ、これも説明になっているわけではない。仮にそれが正しいとして、「Why?(何故そうなっているか?)」を説明しているわけではないからだ。

そんなわけで、時間というのは不思議なものなのだ。ちなみに、「エントロピー」に関して言うと、この映画の中で、「ガソリン爆発による低体温症」というのが出てくる。普通そんなことありえないが、「時間が逆行する」というのを、この映画では「エントロピーが減少する」という形で描いているので、通常爆発によって発生する熱ではなく、冷却が発生する、ということになるのだ。よく考えるものだ。

クリストファー・ノーランの「インターステラー」という映画は、「重力波」の観測によってノーベル賞を受賞したキップ・ソーンという物理学者が監修している。この映画では誰が関わっているのか分からないが、恐らくまた現役の物理学者が関係していることだろう。僕はそこまで物理に詳しいわけではないから、劇中の細かな描写まで拾えないが、きっと詳しい人が見ればいろんなところにこだわりがあるのだと思う。

しかし、クリストファー・ノーランと言えば、魔法のような映像を極力CGを使わずに生み出すことで有名だが、今回もまた、魔術的で脳が溶け出しそうな映像満載だった。事前に僕が知っていたのは、「ジャンボジェット機は、実際に購入して爆発させた」ということで、あれはCGではないという。しかし、別の時間軸に存在する人たちが混在する映像は、どうやって撮ってるんだろう?その部分にCGが使われているのかどうか、まだ調べてないから知らないけど、使っていないんだとしたらどうやって撮ってるのか知りたい。時間の順行と逆行が同じ映像の中で混ざっているというのは、本当に頭が混乱するというか、意味不明というか、よくこんなこと考えるなという感じだった。

しかしまあ、とにかく、凄かった。もう一回、観たいなぁ。今度は、考察サイトとかをメチャクチャ読み込んでから観たい。

「テネット」を観に行ってきました
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