黒夜行

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「AKIRA」を観に行ってきました

どんな映画なのか全然知らなかったし、観終わってもちゃんと理解できたとは言えない感じだけど、でも、「AKIRA」カッコいい映画だなぁ。いつ作られた映画なのかも知らないけど、普段アニメを観ない僕からすれば、特段古さを感じさせなかった。今の時代にも、全然通用するだろうなぁ。


たぶん、核のことなんだろうと思う。この映画の、中心の中心で描かれているものというのは。

物語の冒頭は、「1988/7/10」から始まる。その日に、東京で爆発が起こり、首都が壊滅するのだ。僕らの世界では、1986年4月26日に、チェルノブイリ原発事故が発生している。とここまで書いて、「AKIRA」の漫画の連載開始のタイミングを調べると、1982年12月だそうだ。チェルノブイリ原発事故より前だ。しかし、東西冷戦による核の恐怖はずっとあっただろうし、そういう時代背景があっての作品なんだろう、と思う。

僕らが核の恐怖をリアルに理解したのは、東日本大震災においてだ。福島第一原発事故が、原子力発電の危険性を明白に露呈させた。しかし、あれだけのことが起こってなお、日本は脱原発に舵を切らなかった。もちろんそこには、様々な要因があるだろう。僕自身、脱原発が唯一の選択肢だなどというつもりはない。現在の物質社会を維持したまま、脱原発に舵を切るのは相当困難だ。脱原発を指向するのであれば、多少なりとも不自由さを享受せざるを得ないだろう。その社会合意を日本で作れるかというと、僕は難しいだろうと思ってしまう。

一応、元々理系だった僕は、「原子力発電」という技術そのものは信頼している。もちろん、核分裂というのは、究極的には制御不能な反応であり、不測の事態は常に起こりうる。しかし一方で、科学者や技術者は(あるいは、ごく一般的な科学者・技術者は、と言うべきだろうか)、出来ないことを出来るとは言わない。だから、彼らが「出来る」というのであれば、それは出来るのだと思う。しかし、原子力発電は、科学者・技術者だけの判断では運用できない。経済や政治の問題が絡んでくる。そして、経済や政治は、科学者は技術者に、出来ないことをやれと言う場合もある。往々にして、そうやって事故は起こるのだ。物語では一般的に、マッドサイエンティストが暴走して危険な実験を行う姿が描かれるし(「AKIRA」の中にも、そういう科学者が登場する)、実際にそういう科学者がゼロとは言わないが、しかし、科学者・技術者の暴走によって致命的な事故が起きる確率よりも、科学者・技術者以外の者の無知や横暴によって致命的な事故が起きる確率の方が遥かに高いだろう。

だから僕は、「原子力発電の技術」は信頼しているが、「原子力発電を動かすシステム(人間を含む)」は信頼していない。

さて、先程、科学者や技術者は出来ないことを出来るとは言わないと書いたが、それも程度次第の話だ。特に科学者は、自然界のことをコントロール出来るなんて思ってる人はいないんじゃないかと思う。天気予報は、メチャクチャ当たるようになってきたけど、それでもまだ、災害級の豪雨などについては予測もままならない。地震予知が実用的になるのもまだまだ先の話だろう。それでも科学者は、予算を取ってきたりするために、ギリギリ嘘になるかならないかのライン上で、「出来ます」と口にしている場合も多いだろう。特に現代は、ビッグサイエンスと言って研究にお金が掛かるようになったし(素粒子や宇宙などの研究ともなれば、国際協力が必要なレベルだ)、研究予算をどうやって引っ張ってくるかは難しい問題だ。そういう中での駆け引きとして、まだ出来ていないしもしかしたら出来ないかもしれないことを「出来る」と言ってしまうこともあるだろう。

しかしだとしても、その「出来る」という発言が、不可逆的なダメージを負わせる可能性に繋がってしまうとしたら、さすがに予算獲得のためとは言っても断言することはないだろう。

自然は永遠に未知の存在であり続けるだろうし、核分裂は、そんな自然から濡れ手で粟のようにエネルギーを取り出そうとする魔法のような仕組みだ。しかし、人類の歴史は、自然からのしっぺ返しの歴史と言ってもいいだろう。ここ最近の異常気象は、基本的には人類の環境破壊が遠因だろうし、感染症は人類の歴史において度々発生している。核も、人類に度々牙を向いてきたが、人類はそろそろその警告を受け取った方がいいんじゃないか、と思う。いつ、不可逆的で回復不能な事態が発生しても、おかしくはないと思う。

内容に入ろうと思います。
カネダは、テツオら仲間と共に、夜な夜なバイクを乗り回している。敵対するグループと張り合って、夜の道路を爆走している。2019年、翌年にオリンピックを控えた東京は、31年前に謎の爆発により甚大な被害を受けた。現在は、高層ビルが立ち並ぶなど目覚ましい発展を遂げているが、一方で街には失業者が溢れ、革命を志向する若者によるテロ行為が発生している。きらびやかなネオン群とは対照的に、荒廃した街並みは終末感が漂い、カネダやテツオたちが通っている底辺学校では、授業など成立しないほどの有様だ。
そんなある夜、カネダたちは謎の人物と遭遇する。敵対するグループとのレース中、テツオの姿が見えなくなり、見つけた時にはテツオは大怪我を負っていた。その近くには、全身の皮膚が青色の子どものような体型で老人のような顔をした男がいて、しかもその男を回収するために軍が出動していた。彼らは軍によって手足を拘束され、また重体のテツオは軍のヘリで回収されてしまう。何が起こっているのかよく分からないまま、カネダらは日常に戻った。
その後、軍の病院から抜け出してきたらしいテツオと再会するが、テツオの様子がどうもおかしい。街中で錯乱したテツオは、再び軍によって回収され、その後行方が分からなくなってしまう。カネダは、ある場所で知り合ったケイという女性を救ったことがきっかけで、ケイが所属する革命組織と行動を共にすることになるが、話によるとどうも、テツオがある実験体にさせられているらしい…。

というような話です。

僕が「AKIRA」を観る前に知っていた情報は1つだけ。「舞台が、翌年東京オリンピックを控えた2019年だ」ということ。これは、「現実を予言している」と話題になったので知っていた。しかし、それ以外は何も知らなかった。そもそも、あの赤いバイクに乗っている少年の名前が「アキラ」だと思っていたくらいだ。

冒頭から、どんな風に話が展開していくのかまったく分からないまま見ていたけど、面白かったなぁ。最初にも書いたけど、結局どういう話なのかよくは分からなかった。でもそういうのは、たとえばジブリアニメもそうで、分からないからつまらない、というわけではない。分からないけど、面白かった。

冒頭で書いた、「核」という解釈が正しいかどうかはともかくとして、人間が踏み入れてはいけない領域がある、という感覚は誰にとってもあるだろうと思う。それは、例えば「バチが当たる」というような感覚にも近いものがある。日本人は無宗教だと言われるけど、一方で、「バチが当たる」というような感覚は持っている。誰から罰を受けるのか、ということは特別明確にしないまま、悪さをすると何か悪いことが帰ってくる、というような感覚を持っている。そういう感覚は、時代と共に薄れつつあるかもしれないけど、僕は大事じゃないかと思う。先ごろ世界遺産に登録された、大阪の前方後円墳は、天皇家の所有で、立ち入りの調査が許可されていない。名前は忘れたけど、誰か有名な人の墓だとされている。もちろん、学術的な調査をすれば真偽は判明するだろう。しかし、それを学術的に確定させることより、「踏み入れてはいけない」という感覚を大事にしてもいいんじゃないか、と思う。科学の世界でも、「人間のクローン」とか「人工脳」などというアイデアが存在する。もちろん、技術的に出来ちゃうものもあるし、いずれ出来ちゃうものもあるだろう。しかし、技術的に可能だからと言って、踏み込んでいいということにはならないはずだ。明確にルール化は出来なくても、「踏み込んだらマズイよな」という多数の感覚があれば、僕はそこで踏みとどまるべきだと思う。

そしてこの映画では、結局のところ、「そういう時に踏み込んでしまう人類」が描かれていると思うのだ。もちろん、実際に踏み込んだのはごく僅かな人たち(少数の科学者)だろうが、一方で人間には、よく分からない何かを待ち望む、みたいな気持ちがあったりもする。この映画の中でも、「アキラ様の覚醒を待ち望む人たち」が時々描かれる。彼らは、「アキラ様」と呼んではいるが、それがなんであるかは知らない。名前だけが独り歩きしている状態だ。しかし、そのなんだか分からない存在を待ち望んでしまう。しかも、「アキラ様」を待ち望む人たちは、最初はごく少数だったかもしれないが、その波がちょっとずつ広がることで、いつの間にか「みんなが待ち望んでいるもの」に変わっていたりする。トランプ大統領が誕生した背景には、そんな感覚があった、という文章を読んだ記憶がある。とにかく、強いリーダーを望んでいる、アメリカを再び蘇らせてくれるリーダーを望んでいる。そういう、表にはあまり可視化されなかった想いが、トランプが登場したことで顕在化することになったのだ。

そういう意味でこれは、僕らみんなの物語だと言っていい。マッドサイエンティストだけの話ではないし、革命を志向する少数派だけの話でもない。

現在地球は、6度目の大量絶滅期にあるらしい。もちろん、その主たる原因は、人類の存在だ。人類は既に、地球を崩壊させられるほどの力を持ってしまっている。人類がどういう選択と共に生きていくかによって、地球の命運は決まると言っていい(近いうちに、地球に隕石が落ちてきたりしない限りは)。そういう状況下にあって、個人が、組織が、国家がどのような判断をすべきなのか。そんなことを考えさせられた。

「AKIRA」を観に行ってきました
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