黒夜行

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「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」を観に行ってきました

内容に入ろうと思います。
本書は、名作「若草物語」を元にした物語(とはいえ、僕は原作を読んでいません)
マーチ家は、4人姉妹。次女のジョーは、子どもの頃から物語をずっと書いていて、雑誌に持ち込んで採用されたりもする。でも、上手く行ってるなんて感じじゃない。娯楽小説だからと言って哲学的な描写を削られるし、女性が主人公なら最後は結婚させなければならないと言われたりする。ジョーは、その感覚に、どうもしっくりこない。
ジョーは一人ニューヨークに住んでいて、家族はマサチューセッツ州コンコードに住んでいる。父親は、従軍牧師として長い間家を空けており、母娘など女性だけの生活だ。家の近くに、子沢山だが貧しくて、クリスマスなのに食べ物を買えない一家と、ローレンスというお金持ちの一家が住んでいた。姉妹の母親は、慈しむ心を持っていて、その貧しい一家に食べ物を分けてあげた。そして、それを見ていたローレンス家の当主が、マーチ家のために豪勢な食事を用意してくれたのだ。これがきっかけとなって、ローレンス家と交流が生まれる。
ニューヨークで執筆中、三女のベスの体調が良くないと連絡があり、ジョーはニューヨークの下宿を引き払ってコンコードに戻る。それから、四姉妹での、仲良く、時には喧嘩もある日々が続くことになる。ローレンス家の息子の一人であるローリーは、ジョーのことが好きだったが、「家族と一緒にいられれば幸せ」と、結婚願望がまったくなかったジョーとは進展がないままだった。
コンコードに戻ってきて、ジョーはめっきり小説を書かなくなった。「誰も私の小説なんて待ってない」と言うと、ベスが「私のために書いて」と言う…。
というような話です。
(正直、原作を読んだことがないので、この内容紹介がどこまで正しいか自信はありません)

全体的な感想としては、かなり面白かったです。人から勧められて見たんだけど、普段だったらまず見ないタイプの映画です。有名な俳優が出てて、お金掛かってそうだなぁ、という映画はあんまり普段見ないのだけど、この映画は、お金掛かってそうだなぁという映画からよく感じるような「嫌らしさ(上手い言葉が見つからないのだけど)」をあまり感じることがなくて、人間の繊細な心の動きとか、当時の時代背景の中で女性が生きていくことの難しさみたいなものとかが描かれていて面白いと思いました。

良かった点はちょっと一旦後回しにすることにして、この映画を見る上で難しかった点を先に書いておきます。それは、恐らくですけど「観客はみんな原作のあらすじぐらいは知ってるよね?」という前提でこの映画が作られているだろう、という点にあります。

映画を見ていて、とにかく、登場人物の名前とか、状況設定を把握するのが凄く大変でした。もちろん、「若草物語」を読んで知っている人であれば、それらは説明不要でしょう。この映画は、たぶんアメリカで作られていて、そのアメリカ人の多くがきっと、実際に読んだことがあるかどうかはともかくとして、「若草物語」の概要ぐらいは知っている、という前提で映画が展開されていると僕は感じました。

だから、「若草物語」の概要をまったく知らない人間からすると、人物や状況の把握に結構大変な映画だなと思いました。正直、四姉妹の関係性とか名前を把握するのに、中盤ぐらいまで時間が掛かった気がします。

そして何より大変だったのが、時系列が唐突に飛びまくることです。一度だけ、「7年前」というクレジットが表示されたけど、それ以外は、いつの話なのかがはっきり示されないまま時間があちこち飛ぶ。これも、原作を知っている人であれば、そんなに混乱しないんだと思います。原作を読んだ人なら、あぁあのシーンか、と頭の中で繋がるんだろうと思います。ただ、原作を読んでないと、「あれ?これさっきの場面と繋がってないよな?一体いつどこの場面に飛んだんだろう?」と思う場面が結構あって、ストーリーを追うのに苦労しました。

たぶん制作側としては、「(少なくともアメリカ人なら)ストーリーは誰でも知ってるし、その辺りのことは細かく説明せずにやろう」という判断だったんだと思います。「若草物語」一冊を一本の映画にしようと思ったら、大分省略しないといけないと思うんで。そういう意味で、「若草物語」を読んだことのない人には、ストーリーを追うという点でちょっと苦労する映画じゃないかな、と思いました。

原作の「若草物語」がどんなテイストで描かれる物語なのか知らないけど、この映画で明確に焦点が当たっているのは「女性としての幸せ」です。四姉妹はそれぞれ、まったく別々の人生を歩もうとします。長女のメグは、結婚願望が強く、さらにお金は無くてもいいから愛する人と結ばれたい、と思っています。次女のジョーは、小説家になるのが大目標。結婚が「女の幸せ」だとされる現実に反発したいと思っています。三女のベスは、未来を描くよりも前に病気との闘いがあります。そして四女のエイミーは、なんとかしてお金持ちになろうとします。その手段として画家を目指すが、トップオブトップになれないと悟って止めてしまう。そして、愛よりもお金目的で結婚しよう、とします。

ジョーは、美しく控えめな姉・メグを慕っているが、メグの強い結婚願望には賛同できていない。ジョーは、家族と一緒に暮らせれば幸せ、とずっと思ってきたから、結婚はメグとの別れを意味するように思えたのだ。またジョーは、四姉妹で行う劇の脚本も書いていて、その劇での演技から、メグには女優の才能があると信じていた。しかしメグは、女優になることなんかより、結婚を強く願うのだ。

また、この四姉妹には伯母がいる。四姉妹の母親の姉(だったと思うけど妹だったかも)だ。「マーチ伯母さん」と呼ばれている彼女は、大金持ちだが未婚だ。彼女は、自ら貧しさの中に飛び込もうとする妹(四姉妹の母親)のことをまったく理解できない。そして、自身は結婚していないにも関わらず、「女が自立するには売春宿の経営か女優ぐらいしかない」と言って、金持ちと結婚するように姪たちを諭すのだ。

女性としてどう生きるのか、というのは、現代的な問題でもある。というか、いつの時代も、社会のルールは男が決め、その陰で女性は翻弄されてきただろう。そして、時代時代のそういう価値観と対峙し、闘い続けてきた女性たちが、それでも未だに、「結婚=女の幸せ」という価値観のはびこる社会の中に生きざるを得ない。別に結婚が悪いと言いたいわけではないが、「結婚=女の幸せ」という価値観が強すぎると、「結婚していない=不幸」という図式が自然と生まれてしまう。それは、間違っていると思うのだ。

少し前にベストセラーとなった「君たちはどう生きるか」という本のタイトルのように、この映画もまさに「あなたはどう生きるか?」と問うてくる。結局のところ、理解しておかなければならないことは一つだ。

幸せに、正解はない。

「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」を観に行ってきました
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6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
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3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
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6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
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11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
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18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
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コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
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13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
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2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
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9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)