黒夜行

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アネモネの姉妹 リコリスの兄弟(古内一絵)

内容に入ろうと思います。
本書は、6編の短編が収録された連作短編集です。

「アネモネの姉妹」
昔から完璧で、美貌も資産家の夫も努力によって手に入れたと感じている絹子。彼女は今、妹を迎え入れる準備をしている。表向きそれは、妹のお祝いだ。しかし、子どもの頃から愚図で、絹子とは似ても似つかない容姿で、勉強も出来なかった綾子への複雑な感情が昔からあった。自分は努力に努力を重ねて今ここにいるというのに、綾子は、自分とはまったく違う土俵にいて、何を考えているのか分からない。子どもの頃の些細な記憶を思い起こしながら、相変わらず方向音痴でかなり遅れてくると連絡のあった綾子を待つためにツイッターを開く。
そこに「#花言葉診断」というキーワードが。名前を入れると診断してくれるのだという。絹子の診断は、アネモネ。花言葉は「嫉妬のための無実の犠牲」だ。綾子のことを思い出す。嫉妬。絹子は、妹に嫉妬しているのだろうか?

「ヒエンソウの兄弟」
中堅出版社に新卒で入社して6年、昨年念願だった文芸部に異動となった桐生啓二は、新人の原稿を読み漁っていた。啓二でも名前を知っている作家の担当は、ベテラン編集者がしている。啓二は、早く結果を出すためにも、応募原稿の山から原石を見つけ出さなければならないのだ。
妹の美郷から、お兄ちゃんと連絡が取れたのかと催促の連絡が来る。来月の両親の結婚記念日を兄弟三人で祝おうと美郷が言うのだが、長男の祐一は、事実上行方不明、今どこにいるのかも分からないし、メールは届くが返信はこない。形だけメールは送るものの、祐一と連絡を取るのは難しいと美郷も分かっているはずだ。
そんな時、ダンボールの中から見つけた原稿が、それまでのものとは明らかに違った。そして読んでいく内に啓二は確信した。これはまさに、祐一が書いた原稿に違いない…。

「マツムシソウの兄妹」
冴島春奈は、海外出張の多い兄・慎吾と電話でやり取りするのを楽しみにしている。そこには、付き合っている森川卓也の存在も大きな理由だ。春奈と同じ専門商社の営業に勤める卓也の元には最近、妹の美佳が引越してきた。働いていたデザイン事務所を辞めてしまったので、仕事が見つかるまでだと言っているが、美佳は春奈と卓也が仲良くすることを嫌がっているようで、何かにつけて邪魔をしようとしてくる。そんな愚痴も、兄にしか言えない。花言葉診断ではマツムシソウ、花言葉は「あなたは私を置き去りにする」と出た。
美佳の態度がどんどんと酷くなっていく。まるで春奈を、邪険にするような扱いだ。一体美佳は、何が気に食わなくて嫌がらせしてくるのだろう…

「リコリスの兄弟」
双子の水泳選手として注目を集めた高森颯馬は、今は一人で泳いでいる。片割れは、事故で療養中だ。クローンのように育ち、常に同じように決断してきた二人だったが、今は一人。
颯馬は、オーストラリアへの留学が決まっていて、だから三年生が受験を控えて引退する中、プールで泳ぎ続けている。しかし、納得の行くタイムがまったく出ない。苛立ちからつい泳ぎすぎ、教諭の静止も聞かずに泳いだせいで、病院に運ばれてしまう。
すべてが同じ遺伝子を持つクローンだという彼岸花。その花言葉は「悲しき思い出」だ。二人で築き上げてきた数々の記録も、すべて「悲しき思い出」となってしまうのだろうか…。

「ツリフネソウの姉弟」
潮見隼人は、骨折で入院している母を見舞うために病院へと向かっている。幼い頃、両親の離婚によって会う機会が減った姉・苑子は相変わらずの陰気さで、すべてが面倒だが、女性の扱いの巧さだけで生き延びてきた隼人はほどよくそつなくこなす。妻とは冷え切った関係だが、一人娘である七海が成人するまではと思って、夫婦関係を維持する努力をしている。
そんなある日、妻から意外な事実を聞かされる。広告代理店に勤める隼人には、妻の望みを叶えることなど容易いが、しかし七海がどう思うだろうか。そんなことを思っていると、母が認知症になったと姉から連絡があり、色々あって七海と一緒に向かうことになった。その帰り…。

「カリフォルニアポピーの義妹」
寺内雪美は、祖父が興し、父が大きくした生花店「フローラル・テラ」の三代目社長だ。しかし、若くして父が亡くなった今、会社の経営は難航している。営業部長の谷岡が社内で様々な扇動をしているようで、若い女社長である雪美では事態を抑えにくくなっている。本来なら、長男である弟・泉が継ぐべきであるように思うが、しかし泉にはとてもじゃないが無理だ。姉である雪美とは違って、甘やかされて育った泉は、大手IT企業に就職したと思ったらすぐに辞め、今はライトノベル作家になっている。
そんな泉が結婚するというから驚いた。さらに、その結婚相手として連れてきた女が、雪美のことを「ユキミン」と呼ぶのはともかくとしても、雪美・泉の母である緑のことを「ミドリン」と呼ぶ、とんでもない女だった…。

というような話です。

後半に面白さが加速してきたなぁ、という感じの作品でした。

一番好きなのは、5話目の「ツリフネソウの姉弟」。物語全体を通して関係のある「花言葉診断」についてある謎が明らかにされ、それを遠景にしながら、家族のわだかまりを見事に描きだす作品で非常に面白いと思いました。いきなり変転する展開に「おっ!」と思わされるし、七海のキャラクターは凄くいいなと思いますね。僕も、七海と同じ動機で作りそうだもんなぁ、あれ。

また隼人については、他人に基本的な関心がないのに、表向きのそつのなさが見事だからなかなかそれを周りは見破れないし、結婚相手として優良物件と見られて当然のスペックだから結婚しちゃったけど(できちゃった結婚)、でも本来的には家族を持つこととは絶対に向いてないタイプの人間で、その点は凄く共感しました。僕は、それを自覚しているから、結婚とかするつもりはないけど。

最終話の「カリフォルニアポピーの義妹」は、泉の結婚相手として登場するキャロライン(日本人)のキャラクターが好きだなぁ。特に、まさかあの場面で出てくるとは思わなかったから驚いた!(笑) 物語の展開的には明らかに、「泉もキャロラインも実は良い人だよね」っていう流れになるのは分かってたけど、それにしても、キャロラインはなかなか想定外の人物・登場の仕方で、非常に面白いなと思いました。まあ、近くにいてほしいとは思わないけど(笑)

古内一絵「アネモネの姉妹 リコリスの兄弟」

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)