奇跡の「地球絶景」(ライフサイエンス)
内容に入ろうと思います。
本書は、タイトルの通り、地球の様々な「絶景」を、「大地」「気象」「生命」「水」の4つに分けて、写真入りで解説する本です。
「ウユニ塩湖」「カッパドキア」「ヒマラヤ山脈」「オーロラ」「日食」「フィヨルド」など、誰でも知っているだろう有名なものも載っていれば、『つい最近までベトナムの熱帯雨林に姿を隠していた』「ソンドン洞窟」や、『人類は20世紀後半まで誰一人頂上に到達できなかった』「ロライマ山」、『2003年に発見された』「パリア・キャニオン」、『1989年までその存在を誰にも気づかれていなかった』「スプライト(宇宙へ向かう雷)」など、存在そのものが知られたことが実はつい最近、というものも結構ある。
またそれぞれの景色や現象が、どのような理屈によって生み出されているのかという解説もなされるので、メカニズムに興味があるという人にも、簡単にだけどその概要を知ることが出来るだろう。個人的に一番「熱い」と思ったのは「フライガイザー」。これは、民間企業の私有地にあるという奇妙な色をした岩であり、何故民間企業の敷地内にそんなものがあるのかと言えば、この「フライガイザー」が、地熱発電の開発計画が頓挫したことで作り上げられたものだからだ。つまり、完全に自然だけによる景色ではなく、人間が関わったからこそ生まれた景色ということだ。また、「アブラハム湖」も、貯水池として作られた人工湖であり、ある意味で半人造と言っていいかもしれない。
また、僕が意外に感じたのは、日本の「紅葉(こうよう)」である。
『日本人は秋になると紅葉狩りに出かけるが、世界的には、紅葉が赤・黄・茶・緑と、くっきり鮮やかに色づく地域はあまりない。
これは、日本の特殊な自然環境による。
紅葉(カエデ)のほか温帯性落葉広葉樹は、寒さと乾燥に弱く、東アジア以外の地域では氷河期にほぼ死滅してしまったが、日本は黒潮によって温暖な気候が保たれたため、生き残った。
日本人が紅葉狩りを楽しめるのは、黒潮のおかげなのである』
知らなかったぁ。確かに、「日本の紅葉はキレイだ」というような話は聞いたことがあるんだけど、まさか「温帯性落葉広葉樹が他の地域では絶滅していた」とは知らなかった。
さて最後に。本書には、どうやってそれが生み出されたのか、という説明が結構出てくる、という話は既に書いた通り。例えば、「ソンドン洞窟」の説明はこうである。
『この巨大洞窟があるフォンニャ・ケバン国立公園周辺は約4億年前、海の底だった。そこに生物の死骸がどんどん堆積していき、厚さ数百メートルの石灰岩層に成長。この層が隆起して陸地になると、約500万年前から石灰岩層が雨水や地下水によって削られ始めた。
さらに石灰岩層の割れ目に沿って流れる水によって割れ目が広がり、地下に巨大な空洞が形成される。そして100万年前頃から、空洞の天井部分がところどころ崩れ落ち、地表に開口部がある現在のような姿になったのである』
なるほど、そうだったんだなー、と思う一方で、僕は、(見てきたのかよ…)と思ってしまうのだ。もちろん、僕は科学調査の厳密さみたいなものは割と知っているつもりだから、こう書かれているということは、学界の中で「定説」として認められている、ということは間違いないだろう。あらゆる科学分析などの結果、証拠を積み上げて、そういう結論に達しているのだろう。しかし、「定説」として認められているからと言って、必ず正しいわけではない。誰も形成過程を見ていないし、実験して「定説」を確かめることだって出来ないからだ。本書に登場する「チョコレート・ヒルズ」には、
『ここには2人の巨人の物語が伝えられている。
巨人は仲が悪かった。ある日、2人は喧嘩をして石を投げ合ったが、石はそのまま放置されたという。
その喧嘩の舞台となったのが、ボホール島中央部の「チョコレート・ヒルズ」。』
という伝説があるのだが、この「巨人が投げあった石が放置されたものだ」という「仮説」だって、100%絶対に間違っている、とは言えないだろう(まあ、僕はまったく信じていないけど 笑)。
その一方で、やはりというか当然ながら、未だに解明されていないものも多くある。実は「チョコレート・ヒルズ」も形成過程は不明だそうだし、マラカイボ湖の雷(1日に10時間、1時間に280回も雷が発生する)も、どうして発生するか分からないし、「スプライト(宇宙へ向かう雷)」も謎だそうだ。
未だに解明されていないことがたくさんある、ということを知るだけでも、ワクワクしてくるではないか。
ライフサイエンス「奇跡の「地球絶景」」
本書は、タイトルの通り、地球の様々な「絶景」を、「大地」「気象」「生命」「水」の4つに分けて、写真入りで解説する本です。
「ウユニ塩湖」「カッパドキア」「ヒマラヤ山脈」「オーロラ」「日食」「フィヨルド」など、誰でも知っているだろう有名なものも載っていれば、『つい最近までベトナムの熱帯雨林に姿を隠していた』「ソンドン洞窟」や、『人類は20世紀後半まで誰一人頂上に到達できなかった』「ロライマ山」、『2003年に発見された』「パリア・キャニオン」、『1989年までその存在を誰にも気づかれていなかった』「スプライト(宇宙へ向かう雷)」など、存在そのものが知られたことが実はつい最近、というものも結構ある。
またそれぞれの景色や現象が、どのような理屈によって生み出されているのかという解説もなされるので、メカニズムに興味があるという人にも、簡単にだけどその概要を知ることが出来るだろう。個人的に一番「熱い」と思ったのは「フライガイザー」。これは、民間企業の私有地にあるという奇妙な色をした岩であり、何故民間企業の敷地内にそんなものがあるのかと言えば、この「フライガイザー」が、地熱発電の開発計画が頓挫したことで作り上げられたものだからだ。つまり、完全に自然だけによる景色ではなく、人間が関わったからこそ生まれた景色ということだ。また、「アブラハム湖」も、貯水池として作られた人工湖であり、ある意味で半人造と言っていいかもしれない。
また、僕が意外に感じたのは、日本の「紅葉(こうよう)」である。
『日本人は秋になると紅葉狩りに出かけるが、世界的には、紅葉が赤・黄・茶・緑と、くっきり鮮やかに色づく地域はあまりない。
これは、日本の特殊な自然環境による。
紅葉(カエデ)のほか温帯性落葉広葉樹は、寒さと乾燥に弱く、東アジア以外の地域では氷河期にほぼ死滅してしまったが、日本は黒潮によって温暖な気候が保たれたため、生き残った。
日本人が紅葉狩りを楽しめるのは、黒潮のおかげなのである』
知らなかったぁ。確かに、「日本の紅葉はキレイだ」というような話は聞いたことがあるんだけど、まさか「温帯性落葉広葉樹が他の地域では絶滅していた」とは知らなかった。
さて最後に。本書には、どうやってそれが生み出されたのか、という説明が結構出てくる、という話は既に書いた通り。例えば、「ソンドン洞窟」の説明はこうである。
『この巨大洞窟があるフォンニャ・ケバン国立公園周辺は約4億年前、海の底だった。そこに生物の死骸がどんどん堆積していき、厚さ数百メートルの石灰岩層に成長。この層が隆起して陸地になると、約500万年前から石灰岩層が雨水や地下水によって削られ始めた。
さらに石灰岩層の割れ目に沿って流れる水によって割れ目が広がり、地下に巨大な空洞が形成される。そして100万年前頃から、空洞の天井部分がところどころ崩れ落ち、地表に開口部がある現在のような姿になったのである』
なるほど、そうだったんだなー、と思う一方で、僕は、(見てきたのかよ…)と思ってしまうのだ。もちろん、僕は科学調査の厳密さみたいなものは割と知っているつもりだから、こう書かれているということは、学界の中で「定説」として認められている、ということは間違いないだろう。あらゆる科学分析などの結果、証拠を積み上げて、そういう結論に達しているのだろう。しかし、「定説」として認められているからと言って、必ず正しいわけではない。誰も形成過程を見ていないし、実験して「定説」を確かめることだって出来ないからだ。本書に登場する「チョコレート・ヒルズ」には、
『ここには2人の巨人の物語が伝えられている。
巨人は仲が悪かった。ある日、2人は喧嘩をして石を投げ合ったが、石はそのまま放置されたという。
その喧嘩の舞台となったのが、ボホール島中央部の「チョコレート・ヒルズ」。』
という伝説があるのだが、この「巨人が投げあった石が放置されたものだ」という「仮説」だって、100%絶対に間違っている、とは言えないだろう(まあ、僕はまったく信じていないけど 笑)。
その一方で、やはりというか当然ながら、未だに解明されていないものも多くある。実は「チョコレート・ヒルズ」も形成過程は不明だそうだし、マラカイボ湖の雷(1日に10時間、1時間に280回も雷が発生する)も、どうして発生するか分からないし、「スプライト(宇宙へ向かう雷)」も謎だそうだ。
未だに解明されていないことがたくさんある、ということを知るだけでも、ワクワクしてくるではないか。
ライフサイエンス「奇跡の「地球絶景」」
- 関連記事
-
- レトリック感覚(佐藤信夫) (2019/06/17)
- 電気じかけのクジラは歌う(逸木裕) (2019/08/09)
- キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語(小林さやか) (2019/04/03)
- 人生にゆとりを生み出す知の整理術(pha) (2019/08/10)
- レンタルなんもしない人「<レンタルなんもしない人>というサービスをはじめます。 スペックゼロでお金と仕事と人間関係をめぐって考えたこと」(レンタルなんもしない人) (2019/07/19)
- 天才ガロアの発想力 対称性と群が明かす方程式の秘密(小島寛之) (2019/01/09)
- マンガ はじめましてファインマン先生 超天才物理学者の頭の中(ジム・オッタヴィアニ) (2019/08/28)
- 世界の名画 仕掛けられたメッセージ(博学面白倶楽部) (2019/07/25)
- アネモネの姉妹 リコリスの兄弟(古内一絵) (2019/08/20)
- 家族終了(酒井順子) (2019/04/08)
Comment
コメントの投稿
Trackback
http://blacknightgo.blog.fc2.com/tb.php/3781-64df7f4e