黒夜行

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ぼくたちに、もうモノは必要ない(佐々木典士)

本書で書かれていることが、僕にあまり響かなかったのには理由がある。
それは、本書に書かれていることが、元から僕が考えていることと同じだからだ。

僕は決して、ミニマリストではない。
確かに、他の人よりも無駄なものは買わないだろうけど、別に部屋にモノが少ないわけでもないし、捨てられないなぁと思うものもある。
ただ、本書で書かれている思考の方向性は、だいぶ近いものがあるなぁ、と感じる。

本書には、こんな文章がある。

【最初からモノに執着がない人や、モノのカオスの中から宝物を見つけられる天才はいる。だけど、ぼくが考えたいのは、「普通」の人が、もっと「普通」の幸せを感じられるような在り方だ】

なるほど、そうなのかなぁ、という気はする。まあ確かに、モノがほしいという人は多い気がするし、年配の人だと余計に、捨てられないという感覚を持っている人が多いのかなぁ、とは思う。

とにかく、本書を紹介する上で、僕が最も伝えたいことは、以下の点だ。

【モノを少なくすることは「目的」ではない。ミニマリズムはそれぞれが違う大事なものを見つけるための「手段」】

本書の著者はこれを、「捨てること自体が目的になっちゃダメだよ、何かちゃんとした目的を持って捨てようね」という意味で書いているのだけど、僕はこの文章をさらに強めに解釈したい。つまり、「捨てることで本書に書いてあるような変化が起こるけど、捨てなくても起こせるよ」ということだ。

僕が本書をあまりすんなり受け入れられなかったのは、「本書のような変化」は、本当に「捨てる」という行為を伴わなければ実現されないのか、という部分に疑問があるからだ。確かに、「モノを持つ」ということの呪縛はかなり大きなものだろう。だから、その呪縛から逃れるためには、逆に振るためのショック療法的なことをしなければならないかもしれない。ただそもそもが、「モノを捨てる」という行動も、なかなか実行に抵抗のあることだろう。だから、「モノを持つ」ことの呪縛を振り払うために「モノを捨てる」という行動をする、という提案は、結局同程度の困難さを乗り越える必要があるんじゃないかなぁ、と思ってしまったからだ。

そして、「モノを捨てる」という大きな決断ができる人であれば、「モノを捨てる」という行為を伴わなくても、「本書のような変化」は起こせるんじゃないかなぁ、と思ってしまった。

もちろん、本書の記述に共感する人が多いのであれば、僕としてはなんの問題もない。僕が抱いている感覚は、単なるおせっかいというか、「勝手に自分以外の人のことを心配している」ということなので、その心配が的外れなのであればそれはそれで全然いい。

本書ではまず、「モノを持つ」ことによってどういうマイナスが引き起こされているのかが書かれている。要するにそれは「無駄なエネルギーを使うよ」ということだ。それはその通りだと思う。モノがあることが当たり前すぎて実感するのはなかなか難しいだろうけど、モノがたくさんあることで、時間やパワーを無駄に浪費させられる。

じゃあ何故モノを持ってしまうのかと言えば、それは「モノによって自分の価値を伝えられる」と思っているからだ。内面の良さを伝えることは難しいが、それをモノに託せば目に見えるようになる。群れで生きる人間には「孤独アプリ」がプリインストールされており、だからこそ自分の価値を伝えたい、という欲求が当然のようにある。だからモノが増えてしまうのだ、という。

また一方で、人間は「差」を捉える生き物である。良い感情も悪い感情も、物事の変化を捉えることで感じられる。人間は「差」を感じられないとすぐに慣れてしまう生き物なので、どれほど良いモノを手に入れても、それにすぐ慣れて、より良いモノが欲しくなってしまう。人間は未来を、現在をベースにしてしか考えられない。今テンションが上がれば、1年後もその感情が続くと考えてしまうが、実際はそうならない。そういう人間の機能的にも、人間はモノを持ちすぎてしまうのだ。

そういう話をした上で、じゃあどうやったら捨てられるのかという55のアドバイスについて触れている。著者は、もともとメチャクチャモノを持っていた人で、だから、今現在モノを持ちすぎている人向けに書いてあるので、「さすがにそれは書かかなくても別にいいんじゃない?」的な、そりゃあそうでしょう、みたいなことも書いてあるのだけど、なるほどと思うものも結構あった。「捨てて後悔するモノはない」「まず収納を捨てろ」「もらったモノは捨てられないかもだけど、自分が誰かにあげたモノって覚えてる?」など、確かに言われてみるとなるほどなぁ、と思うようなアドバイスがあって、結構実践的に使えるかなとも思う。

【ミニマリズムのひとつの帰結は、「あなたに足りないモノなんかない!」ということだ。】

この感覚は、なるほどと思う。美輪明宏の言葉に、「足りないものを数えるのではなく、持っているものを数えなさい」的なものがあるが、確かに強制的にそういう状況に身を置くというのはいいと思う。

あと、面白いなと思ったのが、著者のこの感覚だ。近藤麻理恵の掃除術である「ときめかないものを捨てる」という話に絡めて、

【十字架は捨てたときも心がときめくモノだった。だけど本当に手放してよかった。これ以降、旅行に行ったとき、お土産探しに時間を取られることはなくなった。ついつい欲しくなるお土産も、スナフキンを見習って「見るだけ」にする。するとより旅自体に集中できるようになった】

と書いている。なるほど、理屈として凄く分かるし、こういう「変化」をちゃんと捉えることが出来ているというのは、やはり大事だなぁ、と思う。やはり大事なのは、「モノを捨てる」ことは「手段」だと認識することであり、捨てることでどんな変化がもたらされたのかを、言語化できるレベルで捉えることだな、と思う。

そういう意識で捨てるのであれば、捨てることは非常に有効かもしれないと思う。

佐々木典士「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」

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2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
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6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
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4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
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3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
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10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)