家族終了(酒井順子)
内容に入ろうと思います。
本書は、エッセイストの酒井順子が書く、家族についてのエッセイです。
何故今こういう本を書いたのか、という明確な理由があります。それは、著者にとっての「生育家族」がすべていなくなった、ということです。
「生育家族」というのは読んで字の如く「生まれ育った家族」で、「創設家族」というのが、結婚などによって新しく出来た家族のことを指すそうです。で、著者の「生育家族」は全員亡くなり、また著者自身は結婚しておらず、子供もいないので、家族を継続させるということもやっていない。そういう中で改めて、「家族」というものの移り変わりを、自身の経験や時代背景などをうまく織り交ぜながら描いていきます。
なるほど、と思う指摘もちらほらあるんですけど、個人的には、ちょっとまとまりがない感じがしてしまうなぁ、と思いました。まあ、エッセイなのだから、まとまりがなくても当然なのかもしれませんが、「家族」という核となるキーワードがあるのだから、もう少しまとまりを感じさせてくれる構成でも良かったんじゃないかなぁ、と個人的には思いました。
個人的に、一番面白いと感じた指摘が、嫁と姑が夫(息子)を挟んでどのように張り合っているのか、というこの記述です。
【さらに根源にあるのは、嫁と姑は「同じ男を愛する二人の女」であり、ということでしょう。とても下品な書き方で恐縮ですが、姑は「この男を私は自分の股から出した」という自負を持つ。対して嫁は、「この男を、私は自分の股に迎え入れた」という自信を持つ。股から出した方か入れた方か、男が引き裂かれることになります】
確かに下品な表現かもですけど、この捉え方はなるほどなぁ、と感じました。嫁と姑の折り合いのつかなさを、こんな風に表現してみせるというのは、さすがだなと思います。
あと、個人的に共感できるのは、「法律婚をしないという生き方」についてです。著者自身も、籍を入れていない男性と同居している状態らしく、
【が、事実婚カップルにおいては、夫でもなければ妻でもないので、相手に対する「これをしてくれて当然」と思う気持ちが薄い】
というのは、僕も凄く分かるし(別に事実婚をしているわけではないけど)、僕が「法律婚」にまったく興味が持てないのは、「法律婚」にはこういうめんどくささみたいなのがあるよなぁ、と思ってしまうからです。
また、これは最近20代の女子と話していて同意見だったんだけど、本書にある、
【性的欲求の処理は、互いに家庭の外で行う。しかし生活においては、暮らしの感覚が合う相手と助け合っていく。…ということで、性と生活の分離を、中村(うさぎ)さんはとても早い時期から取り入れていたらしいのです】
というのも、凄く分かるなぁ、という感じでした。僕も出来れば、性と生活を分けたいし、それが出来るなら、事実婚でも法律婚でも別にしてもいいかな、と思ってたりします。
「家族」には「普通」なんてものはないということがよく分かる一冊です。特に、昔は家父長制が当たりまえで、娘を「片付ける」なんて表現が当たり前に使われていましたが、価値観が多様化したことで、国民全員が「それって当たり前だよね」と思う家族に関する共通認識が薄れていっている。じゃあどんな風に「家族観」が拡散していっているのかを、自分や自分の周囲の人間の話を踏まえながら捉えていくのは、読ませる部分もあるかなという感じでした。
酒井順子「家族終了」
本書は、エッセイストの酒井順子が書く、家族についてのエッセイです。
何故今こういう本を書いたのか、という明確な理由があります。それは、著者にとっての「生育家族」がすべていなくなった、ということです。
「生育家族」というのは読んで字の如く「生まれ育った家族」で、「創設家族」というのが、結婚などによって新しく出来た家族のことを指すそうです。で、著者の「生育家族」は全員亡くなり、また著者自身は結婚しておらず、子供もいないので、家族を継続させるということもやっていない。そういう中で改めて、「家族」というものの移り変わりを、自身の経験や時代背景などをうまく織り交ぜながら描いていきます。
なるほど、と思う指摘もちらほらあるんですけど、個人的には、ちょっとまとまりがない感じがしてしまうなぁ、と思いました。まあ、エッセイなのだから、まとまりがなくても当然なのかもしれませんが、「家族」という核となるキーワードがあるのだから、もう少しまとまりを感じさせてくれる構成でも良かったんじゃないかなぁ、と個人的には思いました。
個人的に、一番面白いと感じた指摘が、嫁と姑が夫(息子)を挟んでどのように張り合っているのか、というこの記述です。
【さらに根源にあるのは、嫁と姑は「同じ男を愛する二人の女」であり、ということでしょう。とても下品な書き方で恐縮ですが、姑は「この男を私は自分の股から出した」という自負を持つ。対して嫁は、「この男を、私は自分の股に迎え入れた」という自信を持つ。股から出した方か入れた方か、男が引き裂かれることになります】
確かに下品な表現かもですけど、この捉え方はなるほどなぁ、と感じました。嫁と姑の折り合いのつかなさを、こんな風に表現してみせるというのは、さすがだなと思います。
あと、個人的に共感できるのは、「法律婚をしないという生き方」についてです。著者自身も、籍を入れていない男性と同居している状態らしく、
【が、事実婚カップルにおいては、夫でもなければ妻でもないので、相手に対する「これをしてくれて当然」と思う気持ちが薄い】
というのは、僕も凄く分かるし(別に事実婚をしているわけではないけど)、僕が「法律婚」にまったく興味が持てないのは、「法律婚」にはこういうめんどくささみたいなのがあるよなぁ、と思ってしまうからです。
また、これは最近20代の女子と話していて同意見だったんだけど、本書にある、
【性的欲求の処理は、互いに家庭の外で行う。しかし生活においては、暮らしの感覚が合う相手と助け合っていく。…ということで、性と生活の分離を、中村(うさぎ)さんはとても早い時期から取り入れていたらしいのです】
というのも、凄く分かるなぁ、という感じでした。僕も出来れば、性と生活を分けたいし、それが出来るなら、事実婚でも法律婚でも別にしてもいいかな、と思ってたりします。
「家族」には「普通」なんてものはないということがよく分かる一冊です。特に、昔は家父長制が当たりまえで、娘を「片付ける」なんて表現が当たり前に使われていましたが、価値観が多様化したことで、国民全員が「それって当たり前だよね」と思う家族に関する共通認識が薄れていっている。じゃあどんな風に「家族観」が拡散していっているのかを、自分や自分の周囲の人間の話を踏まえながら捉えていくのは、読ませる部分もあるかなという感じでした。
酒井順子「家族終了」
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