天才ガロアの発想力 対称性と群が明かす方程式の秘密(小島寛之)
難しかった!
一応、自分が読んでいる分には、理解できなくもないっていうか、なんとなく理解したような気になれる部分もあるみたいな感じだったんだけど、いざそれを誰かに説明しようとしても、絶対に無理だ。それぐらい、かなり難しい本だった。
巻末に著者は、【本書は、13歳だった頃のぼくを想定読者に書きました】と書いてあって絶望しました(笑)。著者は東大の数理学部数学科卒業だとかで、「数学科」っていうだけで超絶頭の良い連中揃いだってのに、さらに東大なんだから、まあ天才中の天才と言っていいでしょう。そんな天才中の天才の「13歳」に遠く及ばない知性しか持たない僕には、なかなか難しい本でした。
いや、僕だって、たぶん15時間ぐらい本書を読むのに時間掛ければ、今よりずっと理解できると思います。そういう意味で、確かに凡人でも頑張ればそこそこ理解できる内容だとは思います。決して本書での説明が悪いとかではなく、本書で扱われている数学のレベルがメチャクチャ高いのです。
著者も巻末で、
【ぼくは、代数学、集合論、微積分学の初等的な知識は独習で身につけましたが、ガロア理論にだけは歯が立ちませんでした】
【数学科に在籍したとき、ガロア理論の教科書を何冊か勉強しましたが、視界のきかない山道を延々と登らされているように苦しく、青息吐息でした。どうにか期末試験にはパスしたものに、「心からわかった」という気分にはなりませんでした】
と書いています。東大の数学科なんていう、正直化け物みたいな人間しか行けないような頭脳を持った人間でも相当に難しく感じる、というほど、このガロア理論は難しいわけです。
しかし、そんなガロア理論を、ガロアは弱冠20歳の頃に完成させるんですね。しかも、彼が書いた数学論文は、なんと遺書だったわけです。その翌日、決闘をすることになっており、その決闘によって天才ガロアは命を落としてしまうのです。マンガみたいな話ですけど、ホントみたいです。
ガロアが数学に成した功績は、莫大だったようです。
【このようなガロアの発想は、20世紀以降の数学の研究の方向性を劇的に変えることになりました。】
僕は昔何かで、こんな文章を読んだ記憶があります。天才と言われる人の中に、アインシュタインがいます。アインシュタインは、相対性理論を生み出して物理学の世界を一変させましたが、しかしこの相対性理論は、恐らくアインシュタインじゃなくてもきっと別の人間が作り上げただろう、と言われています。たまたま最初に見つけたのがアインシュタインだっただけで(それももちろん十分凄いことですが)、アインシュタインが存在しなかったとしてもきっと別の誰かが相対性理論を生み出しただろう、と。しかし、ガロアが生み出した群論と呼ばれる新しい数学の分野は、天才ガロアがいなければ誰も生み出せなかったかもしれない。それぐらい、群論というのは独創的で特異な発想であり、さらにあらゆる分野に広範囲に関係してくるものであるということが、ガロアが天才と言われるゆえんだそうです。
さて、そんなガロアはじゃあ一体何をしたのか、というと、基本的には「五次以上の方程式には解の公式は存在しないよ!」ということを、その理由まで含めて明確に示したわけです。そしてその過程で、「体」や「群」という、それまでの数学には存在しなかった新しい概念を生み出したわけです。この「体」や「群」が、数学だけではなく、生物学や物理学など他の分野でも威力を発揮する、凄いツールになっていくわけです。
じゃあ、「体」とか「群」って何よ、って話になるんですけど、僕の理解はここで止まります。本書を読んで「体」とか「群」について分かった部分ももちろんあるけど、まとまった形で誰かに説明できるほどの理解度にはまったく達していません。「体」とか「群」って、割と色んな本を読んでるんだけど、未だにすんなりと頭の中に入ってくれないなぁ、という感じです。難しい、ホントに。
面白いと思ったのが、人工甘味料の話です。何で数学の話に人工甘味料が出てくるかというと、「群」というのが「対称性」というものに関係するからです。「対称性」にも色んな種類があるんだけど、例えば鏡に写すのと同じ「鏡像対称性」というのもあります。で、ここから数学の話から外れますが、化学物質というのは、構成する分子や結合の仕方が同じでも、「鏡像」つまり「鏡に写した形」は別の物質になるものがほとんどなんだそうです。で、「鏡像」が異なる物質になるものを「キラル」と呼ぶそうですが、「キラル」の「鏡像物質」は自然界には存在しないことがほとんどなんだとか。だから、「キラル」の「鏡像物質」を人工的に作り出したものが「人工甘味料」なんだそう。「人工甘味料」は、「キラルの鏡像物質」という特性を活かして、甘みは感じるんだけど体には吸収されない物質なんだそうですよ。こんなところにも数学の話が関係してくるんですね!
小島寛之「天才ガロアの発想力 対称性と群が明かす方程式の秘密」
一応、自分が読んでいる分には、理解できなくもないっていうか、なんとなく理解したような気になれる部分もあるみたいな感じだったんだけど、いざそれを誰かに説明しようとしても、絶対に無理だ。それぐらい、かなり難しい本だった。
巻末に著者は、【本書は、13歳だった頃のぼくを想定読者に書きました】と書いてあって絶望しました(笑)。著者は東大の数理学部数学科卒業だとかで、「数学科」っていうだけで超絶頭の良い連中揃いだってのに、さらに東大なんだから、まあ天才中の天才と言っていいでしょう。そんな天才中の天才の「13歳」に遠く及ばない知性しか持たない僕には、なかなか難しい本でした。
いや、僕だって、たぶん15時間ぐらい本書を読むのに時間掛ければ、今よりずっと理解できると思います。そういう意味で、確かに凡人でも頑張ればそこそこ理解できる内容だとは思います。決して本書での説明が悪いとかではなく、本書で扱われている数学のレベルがメチャクチャ高いのです。
著者も巻末で、
【ぼくは、代数学、集合論、微積分学の初等的な知識は独習で身につけましたが、ガロア理論にだけは歯が立ちませんでした】
【数学科に在籍したとき、ガロア理論の教科書を何冊か勉強しましたが、視界のきかない山道を延々と登らされているように苦しく、青息吐息でした。どうにか期末試験にはパスしたものに、「心からわかった」という気分にはなりませんでした】
と書いています。東大の数学科なんていう、正直化け物みたいな人間しか行けないような頭脳を持った人間でも相当に難しく感じる、というほど、このガロア理論は難しいわけです。
しかし、そんなガロア理論を、ガロアは弱冠20歳の頃に完成させるんですね。しかも、彼が書いた数学論文は、なんと遺書だったわけです。その翌日、決闘をすることになっており、その決闘によって天才ガロアは命を落としてしまうのです。マンガみたいな話ですけど、ホントみたいです。
ガロアが数学に成した功績は、莫大だったようです。
【このようなガロアの発想は、20世紀以降の数学の研究の方向性を劇的に変えることになりました。】
僕は昔何かで、こんな文章を読んだ記憶があります。天才と言われる人の中に、アインシュタインがいます。アインシュタインは、相対性理論を生み出して物理学の世界を一変させましたが、しかしこの相対性理論は、恐らくアインシュタインじゃなくてもきっと別の人間が作り上げただろう、と言われています。たまたま最初に見つけたのがアインシュタインだっただけで(それももちろん十分凄いことですが)、アインシュタインが存在しなかったとしてもきっと別の誰かが相対性理論を生み出しただろう、と。しかし、ガロアが生み出した群論と呼ばれる新しい数学の分野は、天才ガロアがいなければ誰も生み出せなかったかもしれない。それぐらい、群論というのは独創的で特異な発想であり、さらにあらゆる分野に広範囲に関係してくるものであるということが、ガロアが天才と言われるゆえんだそうです。
さて、そんなガロアはじゃあ一体何をしたのか、というと、基本的には「五次以上の方程式には解の公式は存在しないよ!」ということを、その理由まで含めて明確に示したわけです。そしてその過程で、「体」や「群」という、それまでの数学には存在しなかった新しい概念を生み出したわけです。この「体」や「群」が、数学だけではなく、生物学や物理学など他の分野でも威力を発揮する、凄いツールになっていくわけです。
じゃあ、「体」とか「群」って何よ、って話になるんですけど、僕の理解はここで止まります。本書を読んで「体」とか「群」について分かった部分ももちろんあるけど、まとまった形で誰かに説明できるほどの理解度にはまったく達していません。「体」とか「群」って、割と色んな本を読んでるんだけど、未だにすんなりと頭の中に入ってくれないなぁ、という感じです。難しい、ホントに。
面白いと思ったのが、人工甘味料の話です。何で数学の話に人工甘味料が出てくるかというと、「群」というのが「対称性」というものに関係するからです。「対称性」にも色んな種類があるんだけど、例えば鏡に写すのと同じ「鏡像対称性」というのもあります。で、ここから数学の話から外れますが、化学物質というのは、構成する分子や結合の仕方が同じでも、「鏡像」つまり「鏡に写した形」は別の物質になるものがほとんどなんだそうです。で、「鏡像」が異なる物質になるものを「キラル」と呼ぶそうですが、「キラル」の「鏡像物質」は自然界には存在しないことがほとんどなんだとか。だから、「キラル」の「鏡像物質」を人工的に作り出したものが「人工甘味料」なんだそう。「人工甘味料」は、「キラルの鏡像物質」という特性を活かして、甘みは感じるんだけど体には吸収されない物質なんだそうですよ。こんなところにも数学の話が関係してくるんですね!
小島寛之「天才ガロアの発想力 対称性と群が明かす方程式の秘密」
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