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ジャイロモノレール(森博嗣)

さて本書は、人気作家である森博嗣が、「個人研究」として「ジャイロモノレール」という失われた技術を再発明した、という軌跡をまとめたものだ。

というわけでまずは、ジャイロモノレールの話からいこう。

ジャイロモノレールというのは、20世紀初め、1900年~1910年頃に開発され、イギリスで特許が取られた技術だ。しかし今では、その技術の詳細は一切残っていない。100年前に作成された実機は廃棄され、模型は残っているが稼働しない。動く証拠が一切ない技術だった。また、ジャイロモノレールの技術を再現しようとした人が、森博嗣以前にも数人いたようだが、成功者はいなかったという。

そんなわけで、森博嗣が再現する以前には、ジャイロモノレールはトリックだった、と決めつける記述もあったという。実際にはそういう技術は存在しなかったのだけど、存在したかのように見せかけただけなのだ、と。

森博嗣がこのジャイロモノレールを知ったきっかけは、模型分野で有名は方からの依頼だったという。ジャイロモノレールを作ってみようとしたが無理だった、それならかつて工学の研究者だった森博嗣なら出来るんじゃないか、と話がきたのだ。

その時森博嗣は、「無理だろう」と判断したという。依頼に対しても、「無理だと思う」と伝えて断ったようだ。しかし頭の片隅にはずっと残っており、余裕が出てきたから調べ直してみようと考えた。

それで、イギリスまで行き、写真を見て、また当時の特許申請に使われた図面も手に入れた。そしてそれらを総合して森博嗣は、「これは可能なのではないか」という感触を抱いた。少なくとも、理屈は正しい。ならば作ってみよう。

そうやって森博嗣は、100年前に完全に失われた技術を、「個人研究」によって復活させたのだ。これは模型などの分野では広く話題になり、世界中から問い合わせが殺到したという。

さて、そんなジャイロモノレールだが、どんなものなのかを僕が説明するのはなかなか難しい。本書では、図もあり、また森博嗣が非常にわかりやすい説明を加えてくれているので、僕でもなんとなく理解できるのだけど、僕自身もふわっとしか理解できていないので、とても他人に説明できるレベルではない。

とはいえ、説明が難しいのは「ジャイロ」の部分であり、「モノレール」の部分はそう難しくない。というか、何故「ジャイロ」を必要とする「モノレール」が望まれたのか、という話をしよう。

モノレールというのは、一本のレールの上を走る電車みたいなものだ。普通の電車は二本のレールの上を走るが、100年以上前の時点では、二本のレールの上を走る電車の仕組みには問題があった。レールが二本あるせいで、カーブを曲がる際に、どちらかのタイヤがスリップするしかない。つまり、エネルギーが無駄に失われる、ということだ。これを解消し、電車をより高速にするために、一本のレールの上を走るモノレールに期待が集まった。

しかし、普通にしていたら、一本のレールの上に電車を自立・自走させることはとても難しいと理解できるだろう。そこで「ジャイロ」の登場である。原理的な部分については、僕はうまく説明できないが、要するに「ジャイロ」をモノレールに搭載することで、電車が安定し、走っていなくても自立出来るのだ。

「ジャイロ」とは、回っているコマのことだと思えばいい。そして、そんな「ジャイロ」が生み出すのが「ジャイロ効果」だ。この「ジャイロ効果」は、本書を読んで初めてそこそこ理解できたけど、非常に直感に反するもので、なかなかイメージしにくい。しかし、この「ジャイロ効果」が生み出されることによって、一本のレールの上を走れるのだ。

「ジャイロ効果」は、実は身近なものだ。例えば、自転車に乗っていて倒れないのは、「ジャイロ効果」のお陰だ。同じく僕には理屈をちゃんとは説明できないけど、なるほどなぁ、という感じだった。

そんなわけで本書では、森博嗣がどのようにしてジャイロモノレールを完成させたのかというのを、理論と実践の両面から書いていく。ジャイロモノレールの作製には、「反摩擦力」とでも呼ぶべき、直感に反する力を加える必要があり、それをいかにしてクリアするか、という問題に長く時間を費やすことになる。まあその辺りの詳細は、興味がある人は是非読んでほしい。

で、本書の巻末には、「個人研究のすすめ」的な文章が載っている。ジャイロモノレールの話は、多くの人が興味を持てるものではないかもしれないけど、この巻末の文章は、誰が読んでも示唆を得られる可能性があるものだと思う。

ここでは、イギリスにおける「HOBBY」と、日本における「趣味」の違いから始まります。日本では「趣味」と言えば「娯楽」のことだけど、イギリスでは違う。要するにそれは、「個人研究」とでも呼ぶべきものである、となっていきます。

で、この「研究」についても、研究者と一般人では意識が違う、という話になる。一般人の場合、「研究」を大体「勉強」「学習」ぐらいの意味で考えている。しかしそうではない。森博嗣は、こう書いています。

『研究とは、一言で表現すれば、自分が最初に知ることだ』

これは明解な定義だなぁ、と思いました。確かにそうですね。世の中に山程ある「未知のもの」とどう向き合っていくのか、ということが「研究」なわけです。

森博嗣のようなレベルの高いことなんて出来ない、と思う人もいるだろうけど、森博嗣はこうも書いています。

『そんな大それたことが、一個人の力でできるものなのか、と思われる方も多いことと思う。(中略)
だが、ここで筆者は保証したい。研究対象は無限にある。それこそ人間の数の何倍もあるのだ。だから、研究テーマが不足することは絶対にない。むしろ、研究すればするほど、問題は増える。研究者というのは、問題を解決するよりも、新たに問題を見つけ出すことの方が多いといっても良い』

僕は、理系だったけど、途中で大学を辞めているので、まともに研究過程を通っていない。とはいえ、この話は、感覚的に理解できる。そうだろうなぁ、という感じだ。以前ネットニュースで見たが、小学四年生がある発見をしたという。それが、「アリジゴクが排泄をする」というもの。それまではなんと、アリジゴクは排泄をしない、というのが通説だったそうだ。現在通説が変わったのかどうか、その辺のことは詳しく知らないが、そのネットニュースには、「小学生の発見が、通説を覆すことになるかもしれない」的なことが書かれていた。

僕自身も、「個人研究」という表現とはまたちょっと違うが、「何かを生み出すこと」に常にチャレンジしていたい、と思っている。その「何か」が何であってもいい。仕事と関わっていても、関わっていなくてもいい。とにかく、自分の内側から何かを絞り出すような、そんなことをし続けたいとずっと思っている。

そして、その目標のために、僕は常にインプットをしている。何かアウトプットすることを大前提としたインプットなのだ。何をアウトプットするかは、インプットの時点では決まっていないから、何でもかんでもインプットする。それだけ見ていれば、インプットが目的の人に見えるだろうけど、僕の感覚としてはそうではなく、常に何かをアウトプットするためにインプットし続けている。

僕個人としても、そういう感覚を持ち続けていきたいと思う。

森博嗣「ジャイロモノレール」

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