黒夜行

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決定版 AI 人工知能(樋口晋也+城塚音也)

本書は、かなりライトなAI本だと思う。
著者はNTTデータの方で、実際にAI開発の現場にいる方々のようだ。純粋な研究者としての側面ももちろんあるだろうけど、企業人という側面もあり、だからこそ「ビジネスにAIをどう組み込むか」という観点を中心に、様々なことが書かれている。実際冒頭には、

【本書では、AIへの誤解を解き、実際にビジネスに適応して効果をあげるため、AI活用について様々な角度から説明を行う】

と書かれている。

「AIへの誤解を解き」という部分については、本書の様々な場面で言及している。たとえば、AIを動かすアルゴリズムの一つが「ディープラーニング」なのだが、「AI=ディープラーニング」だと思っている人から、「ディープラーニングをやってほしい」と依頼されるケースがあるという。しかし実際に話を聞くと、その場合だとディープラーニングではなくて別のアルゴリズムの方が有効だということが分かるのだけど、「AI=ディープラーニング」だと思っている人にはなかなかそこが通じない、みたいなことが書かれている。あるいは、経営者がAIを使えと号令を出し、現場が翻弄されるケースも見るという。この場合、「AIを使うこと」そのものが目的化してしまっており、それではうまくいかない、と著者らは指摘する。AIには向き不向きな仕事があり、また「ディープラーニング」にしても「強化学習」にしても、とにかく時間が掛かる。入力するデータがある程度以上のボリュームで揃っていないと始められないこともあるし、またAIは「完璧に動作するわけではない」ということを前提に使わなければならないのだけど、その点に関する知識もなかったりする、という。

本書ではそういう、一般的によくある誤解などについても触れられているので、「AI」というものを自分が捉え間違っていないかどうか確かめる、という読み方にも使えるのではないかと思う。

本書では、「実際に今AIがどう使われているのか」という事例がたくさん扱われるのは当然として、「AIが社会に浸透していくとどうなるのか」という予測についても描かれる。例えば、AIによって自動運転が実現する場合、「深夜タクシーの料金が下がるだろうから都市が24時間化するだろう」「交通としての鉄道の優位性が減るかもだから、駅周辺の地価が下がるかもしれない」「飲酒運転の心配がなくなるから郊外に飲食店が出店するだろう」などの予測が描かれている。こんな風に、今何が行われていて、またどういう変化が起こりうるのかということが様々な事例の紹介と共に描かれていくので、「AIが仕事や社会をどう変えるのか」や「AIが自分の仕事や生活にどう関わってくるか」などをイメージしやすくなるんじゃないかと思う。

よくAIによって仕事がなくなる、という話があるが、本書ではそれほど悲観的には描いていない。しかし、覚えておいた方がいいことは、「知的専門業務ほどAIで代替しやすい」ということだ。いわゆる弁護士や医者のことだ。

何故そうなるのか。AIは、「ディープラーニング」などが代表格だが、基本的に大量の入力データを必要とする。「知的専門業務」であればあるほど、法律文書や論文などでデータがきちっとした体系でまとまっているし、正確性も高い。だから入力データとして非常に有効なのだ。しかも「知的専門業務」では、「昨日正しかったことが今日急に正しくなくなる」ということは少ない。例えば小売業であれば、店の一等地に並べる商品は、「テレビで紹介されたかどうか」「その日の天気」「生産量・漁獲量」「店のカラー」などによって日々変わりうるだろうが、AIにそれを判断させることは難しいだろう。しかし、法律や病気の話であれば、もちろん法改正や研究などによって新しい情報が付け加わることはあるが、それでも昨日今日で情報が一新されることは少ないだろう。そういう意味で、「知的専門業務」ほどAIで代替しやすいという。この「知的専門業務」については、「ブロックチェーン」という技術によっても代替されうるという話が結構出てきていて、だからこそそういう専門職の人ほど、これからの世の中の変化に敏感でいなければいけないだろうな、という感じはします。

本書を読んで、僕がまったく知らなかったし想像もしなかったことが、「著作権」に関しての話です。これは非常に興味深いし、今後AIがどんどん広まっていく過程で確実にトラブルになりうる部分だと思うので、認識しておいた方がいいかもしれません。

どんな話かと言えば、「AIが生成したコンテンツには著作権が発生しない」というものだ。

何故か。それは「著作権」の定義を知ればすぐに理解できる。

「著作権上の創作物の定義」:
【思想または感情を独創的に表現したもの】

この定義によれば、「思想も感情も持たないAI」が生み出したものには著作権が発生しない、ということになる。

また著作権絡みだと他にも問題がある。例えば、「AIに創作を手伝ってもらった場合の著作権はどうなるのか?」「AIに創らせたものを自分が作ったと主張する場合どう対処するか」「著作権は死後50年保護されるが、AIに死はないので、仮にAIが作ったものに著作権が認められた場合、保護期間をどうするか」などなど、他にも難しい問題がたくさんある。この著作権の問題は、まったく知らなかったので、なるほど非常に興味深いし、かなり現実的な対応が迫られる部分だろうと感じた。

一方で本書には、こんな指摘もある。

【以上のように、将来的にはルール変更や倫理における国民合意の重要性がかつてなく高まる可能性がある。しかし、社会の透明性が増すため、説明できる形でルール変更を行う必要があり、しっかりとした議論も必要になる。そしてルール変更は人により行われるので、各国で策定スピードに差がつきやすいともいえる。納得感のある説明とスピードを両立できる検討体制が求められているのだ】

【このようにサービス自体で他社と差をつけるのが難しい時代になると、次は倫理的な議論や法律策定などが競争力の源泉になるのではないかと著者らは感じている】

AIの技術に関しては、学習ツールを無償で公開するなど、多くの人が土俵に立てる状況になってはいる。確かにAIの分野では、amazonやFacebookなどのビッグデータを大量に保有している企業が強い側面はあるが、しかしビッグデータがなくても「強化学習」などでもAIを教育出来るし、日本独自の強みを発揮できる部分はあるだろう。だからこそ何よりも難しいのは、法整備なのだろう。実際に中国は、そういう巨大IT企業が国と一体となって戦略を進めており、また中国人は他の国に比べて個人情報に対する考え方が厳しくなく、しかも圧倒的な人口がいる、という意味で、益々強大な存在になっていうだろうと考えられている(これは本書に書かれていたことではなく、最近テレビを見ていて僕が感じたことだ)。そういう国と対抗していかなければならないのだから、ある程度トップダウン的にルールを決めてしまう場面も時には必要なのかもしれないな、と思う。しかしその際には、AIなどの技術的な側面についてきちんと理解している人が主導して欲しいものだと思うけども、

アメリカの起業家のイーロン・マスクは「AIは原子力より危険だ」という趣旨の発言をしているという。原子力には厳重な規制が掛けられており、一般人は原子力設備に立ち入れないのに、それと同じくらい危険なAIは誰もが簡単に実験出来てしまう、という点を危惧しているそうだ。まあ確かにそうだろう。AIの話ではないが、先ごろ中国の科学者が、倫理的には認められていな、遺伝子組み換えの操作を人体に対して行ったことで、世界的な非難を浴びたが、AIも個人情報が関わってくる以上、同じような問題が起こらないとも限らない。AIを積極的に使う側に立つにせよ、そうでないにせよ、AIが生み出す社会がどうなっていくのか、僕らは注視していかなくてはいけないのだろう。

樋口晋也+城塚音也「決定版 AI 人工知能」

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
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5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
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小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
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7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)