「search サーチ」を観に行ってきました
これはよく出来てたなぁ。
メッチャ面白かった!
最初から最後まで、「パソコンの画面上のみで完結する映画」で、その設定自体も斬新なんだけど、さらに、その設定を物語の中に実に見事に取り込んでいるから、うまく出来てるなぁ、ってメッチャ思いました。
まずは内容から。
主人公のキムは、パムという女性と結婚し、マーゴットという娘をもうけ、幸せに暮らしていた。妻や娘との思い出は、写真や映像で様々に記録し、パソコン内やSNS上にある。ピアノを習い始めた娘、入学した娘、病気と闘う妻。困難もありながら、彼らは慎ましやかに、幸せに暮らしていた。
しかし、リンパ腫によって妻が亡くなり、キムは男で一つでマーゴットを育てることになった。オンラインではよくやり取りをしていたけど、「Mom would be too(ママもそう思ってると思うよ)」と一文を娘に送れないでいるように、亡くなった妻のことについては父娘の間でまだうまく消化することが出来ていない。
そんなある日、娘からの連絡が途絶えた。いつもなら学校からも返信が来るのに、今日は一向に音沙汰なしだ。不審に思って何度も連絡するキムだが、彼は今日が金曜であることを思い出した。なるほど、金曜はピアノ教室の日だ。早速教室の先生に連絡をしてみると、驚くべき事実が明らかになる。
なんとマーゴットは、半年前にピアノ教室を辞めていたというのだ。
ピアノ教室の代金として、100ドルを定期的に娘に渡していたキムは不審に思い、マーゴットを知っている人間に連絡を取るが、みなマーゴットとはさほど親しかったわけではないと話す。ついにキムは警察に連絡をし、ヴィックという女性刑事と共に娘を探すことにした。
マーゴットが偽造IDを作成していたり、2500ドルを自分宛てに送金していたりと不審な行動を取っていることが分かり、ヴィックはマーゴットが逃亡したのではないかと推測するが…。
というような話です。
本当に、よく出来た物語だったなと思います。
とにかく、ホントに、パソコン上ですべてが完結します。もちろん、「ニュース映像をパソコンで見ている」とか「防犯カメラの映像をパソコンで見ている」など、厳密に考えるとちょっと違うような描写もあるんだけど、でも概ねグーグルの検索とか、各種SNSとか、パソコン内のフォルダとか、そういうものがバンバン出てきて、そういうものを駆使しながら物語が展開されていく。
この映画の制約(パソコン上から出ない)のために、映像はすべて「カメラが存在することが不自然ではない場所のもの」ということになります。この点で色々難しい部分もあったと思うけど、うまくクリアしています。例えばある場面で、主人公のキムは映画館に行くことになるんだけど、そこでの映像は、「一般人がスマホで撮ってYoutubeに上げた映像をパソコンで見ている」という形になっています。逆に、「カメラが存在することが不自然ではない場所のもの」という制約によって、映画がよりリアルに感じられるというプラスがあります。普通の映像作品ではどうしても、カメラがある必然性のない場所にカメラがある。もちろん僕らはもう映像作品を見慣れているから、それに違和感を覚えることはないんだけど、この「サーチ」を観て、なるほどこれまでの映像作品の意識されない違和感みたいなものを浮き彫りにしているな、という感じがしました。
さらに、冒頭で少し触れたけど、この映画では「パソコン上から出ない」という制約を、物語の展開的に実にうまく組み込んでいます。この映画が、ただの手法として「パソコン上から出ない」というやり方をしていたとしても、それはそれで悪くはなかったと思うけど、その設定がストーリーとうまく結びついているから、見事だなと思いました。特にラストの方で、主人公がある2つの事実に気づく瞬間は、まさに「パソコンから出ない」という制約を劇的に活かしているもので、ちょっと鳥肌モノでした。その2つに気づくことが、最後のピースを埋めるというか、たどり着けなかった真相へのルートというか、そういう感じで物語が展開されるので、メチャクチャ上手いなと思いました。
ちゃんと調べてないけど、この映画は低予算で撮られたそうです。確かにそうかもしれません。何せ、この映画で映し出される映像は基本的に、「一般人が撮れるレベルの構図・画質であることがむしろ望ましい」わけだから、高度な機材も必要ないし、画質が粗っぽい感じでも問題ありません。SNSなんかに載せる写真や映像を用意するのは結構大変だったかもしれないけど、それでも普通の映画よりカット数は少ないんじゃないかなぁ。「パソコンから出ない」という手法ありきだったのか、低予算で作れるアイデアという制約が先にあったのかは分からないけど、いずれにしても、最小のコストで最大の効果を上げる、実に見事なアイデアと構想力だったと思います。
「search サーチ」を観に行ってきました
メッチャ面白かった!
最初から最後まで、「パソコンの画面上のみで完結する映画」で、その設定自体も斬新なんだけど、さらに、その設定を物語の中に実に見事に取り込んでいるから、うまく出来てるなぁ、ってメッチャ思いました。
まずは内容から。
主人公のキムは、パムという女性と結婚し、マーゴットという娘をもうけ、幸せに暮らしていた。妻や娘との思い出は、写真や映像で様々に記録し、パソコン内やSNS上にある。ピアノを習い始めた娘、入学した娘、病気と闘う妻。困難もありながら、彼らは慎ましやかに、幸せに暮らしていた。
しかし、リンパ腫によって妻が亡くなり、キムは男で一つでマーゴットを育てることになった。オンラインではよくやり取りをしていたけど、「Mom would be too(ママもそう思ってると思うよ)」と一文を娘に送れないでいるように、亡くなった妻のことについては父娘の間でまだうまく消化することが出来ていない。
そんなある日、娘からの連絡が途絶えた。いつもなら学校からも返信が来るのに、今日は一向に音沙汰なしだ。不審に思って何度も連絡するキムだが、彼は今日が金曜であることを思い出した。なるほど、金曜はピアノ教室の日だ。早速教室の先生に連絡をしてみると、驚くべき事実が明らかになる。
なんとマーゴットは、半年前にピアノ教室を辞めていたというのだ。
ピアノ教室の代金として、100ドルを定期的に娘に渡していたキムは不審に思い、マーゴットを知っている人間に連絡を取るが、みなマーゴットとはさほど親しかったわけではないと話す。ついにキムは警察に連絡をし、ヴィックという女性刑事と共に娘を探すことにした。
マーゴットが偽造IDを作成していたり、2500ドルを自分宛てに送金していたりと不審な行動を取っていることが分かり、ヴィックはマーゴットが逃亡したのではないかと推測するが…。
というような話です。
本当に、よく出来た物語だったなと思います。
とにかく、ホントに、パソコン上ですべてが完結します。もちろん、「ニュース映像をパソコンで見ている」とか「防犯カメラの映像をパソコンで見ている」など、厳密に考えるとちょっと違うような描写もあるんだけど、でも概ねグーグルの検索とか、各種SNSとか、パソコン内のフォルダとか、そういうものがバンバン出てきて、そういうものを駆使しながら物語が展開されていく。
この映画の制約(パソコン上から出ない)のために、映像はすべて「カメラが存在することが不自然ではない場所のもの」ということになります。この点で色々難しい部分もあったと思うけど、うまくクリアしています。例えばある場面で、主人公のキムは映画館に行くことになるんだけど、そこでの映像は、「一般人がスマホで撮ってYoutubeに上げた映像をパソコンで見ている」という形になっています。逆に、「カメラが存在することが不自然ではない場所のもの」という制約によって、映画がよりリアルに感じられるというプラスがあります。普通の映像作品ではどうしても、カメラがある必然性のない場所にカメラがある。もちろん僕らはもう映像作品を見慣れているから、それに違和感を覚えることはないんだけど、この「サーチ」を観て、なるほどこれまでの映像作品の意識されない違和感みたいなものを浮き彫りにしているな、という感じがしました。
さらに、冒頭で少し触れたけど、この映画では「パソコン上から出ない」という制約を、物語の展開的に実にうまく組み込んでいます。この映画が、ただの手法として「パソコン上から出ない」というやり方をしていたとしても、それはそれで悪くはなかったと思うけど、その設定がストーリーとうまく結びついているから、見事だなと思いました。特にラストの方で、主人公がある2つの事実に気づく瞬間は、まさに「パソコンから出ない」という制約を劇的に活かしているもので、ちょっと鳥肌モノでした。その2つに気づくことが、最後のピースを埋めるというか、たどり着けなかった真相へのルートというか、そういう感じで物語が展開されるので、メチャクチャ上手いなと思いました。
ちゃんと調べてないけど、この映画は低予算で撮られたそうです。確かにそうかもしれません。何せ、この映画で映し出される映像は基本的に、「一般人が撮れるレベルの構図・画質であることがむしろ望ましい」わけだから、高度な機材も必要ないし、画質が粗っぽい感じでも問題ありません。SNSなんかに載せる写真や映像を用意するのは結構大変だったかもしれないけど、それでも普通の映画よりカット数は少ないんじゃないかなぁ。「パソコンから出ない」という手法ありきだったのか、低予算で作れるアイデアという制約が先にあったのかは分からないけど、いずれにしても、最小のコストで最大の効果を上げる、実に見事なアイデアと構想力だったと思います。
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