黒夜行

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謎解き古代文明(ASIOS)

本書は、いわゆる「オーパーツ」と呼ばれる、世界中で見つかっている「不可思議なものたち」について、ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)というグループが、これまでに発表されたデータや文献などを調査し、「オーパーツ」を検証していく作品です。

本書では、とにかく色んな「オーパーツ」が扱われていますが、有名どころでは、「ナスカの地上絵」「イースター島のモアイ」「クリスタル・スカル」「トリノの聖骸布」「ストーンヘンジ」「ノアの箱舟」「アトランティス大陸」「ピラミッド」「スフィンクス」「ムー大陸」「邪馬台国」などが扱われています。個人的には、こういう有名どころの「オーパーツ」が、学術的にどういう評価が下されているのかに興味があったので読んでみました。

ちなみに「オーパーツ」というのは、「Out of place artifacts(場違いな人工物)」の略だそうです。そういう意味では、「アトランティス大陸」とか「ムー大陸」とかは人工物なのか?って気もするけど、とはいえ、結局それらが偽物だって断定するわけだし、偽物である以上生み出した人間がいる、という意味では「人工物」と言っていいんだろうかな、という感じがします。

本書は、なかなか面白い構成になっています。「オーパーツ」単位でまとまっているのだけど、そのまとまりの中で、最初に【伝説】を書き、その後【真相】を書く、という構成になっています。【伝説】では、この「オーパーツ」について一般的にどんな伝説が存在するのかが描かれます。そして【真相】で、現在までのところ判明している、確からしい事実について詳しく触れられます。【伝説】の部分は、いわゆる「世間的にそう伝えられていること」なので、正確ではない描写も出てきます。例えば最初に登場する「ナスカの地上絵」の【伝説】には、「これほど巨大な絵をどうやって描いたのか、その方法では現在でもまったく分かっていない」と書かれているのだけど、【真相】の方では、実際に分かっていると記述される。つまり本書は1冊で、「あやしげなオカルティックな記述」と「正確な調査によって判明した事実」を両方知ることが出来る、というわけです。

本書を読んで全体的に感じることは、世の中には「嘘をつきたい人」と「嘘を信じたい人」がたくさんいるんだなぁ、ということです。本書の【真相】で描かれることの多くは、「最初っから全部嘘っぱちで、嘘をついた人間もほぼ分かっている」か、「悪戯や誤報、混入、早とちりだと判明しているし、それが公式に発表されてもいるのに、それを知ってなお嘘を信じたい」というのが大半でした。例えば本書には、「11世紀に作られたサラマンカ大聖堂に宇宙飛行士を模した彫刻がある」という話が出てくるんですけど、実はこれ、1992年に修復をした際に芸術家が勝手に付け足したものだという。なんだそりゃ、という結論だが、それが分かっていてなお、11世紀に宇宙飛行士がいた証拠だ、と主張したい人がいる、というのは、本当に斬新だなぁ、と思いました。

他にも、「トリノの聖骸布は、イエスを覆った布ではない、と教皇も公言している」とか、「ムー大陸が存在すると主張している人物が参照したとする古文書は、その人以外に誰も見たことがないし、実在する可能性は低い」とか、「日本の潜水艇「しんかい6500」がアトランティス大陸を発見したというのはブラジル政府による誤報」など面白い話が色々と出てくる。中には、「175万年前の人工橋と騒がれた、通称「アダムの橋」は、実際には人工橋でも何でもないのだけど、強硬にそれを真実人たちがいるせいで、海上輸送を圧倒的に効率化する水路の建設が頓挫している」なんて話もある。こうなってくると、実害が出ていると言えるので、はたはた迷惑である。

そんな中、本書で唯一「これは実際に古代の遺物である」と高い確率で認められているものが一つだけ登場する。その名前はここでは触れないが、それが見つかった経緯が実に面白い。なんと、盗掘団の情報をキャッチした警察と考古学者がおとり捜査を行う、その押収品の中にあったものだ、というのだ。凄い話である。そんな特異な経緯で発見されたものだが、色んな調査の結果、古代のものであることは確実だろうとされている。なるほど、こういうこともあるから、超古代史ファンは止められないのかもしれない。

本書の項目で、一番意外なのは「江戸しぐさ」だろう。本書を読んで、確かにそういう記述を昔読んだ記憶あるなぁ、と思い出したのだけど、「江戸しぐさ」というのは1980年代に「作られた」ものなのだ。江戸時代の知識がある人なら、今広まっている「江戸しぐさ」が、江戸時代の生活の中で有効のはずがない、と気づくという。別に「江戸しぐさ」は、現代人が現代人のために作ったマナーだから、実用的ではあるし、学ぶこと自体は悪くないが、これが「江戸時代から連綿と続く日本の伝統である」と教えるのはいかがなものか、と本書では苦言を呈している。

最後に一つ。
本書の注釈の中に、こんな記述がある。

【アメリカには「神が過去1万年ほどの間に、人間を現在のような姿で創造した」と考える人々が人口の44~47%近くいるという(ギャラップ社調べ)。ICRのようなキリスト教原理主義者の団体は、こうした考えを「創造科学」「ID(インテリジェント・デザイン)論」と呼び、公立学校の理科の時間に教えるべきだ、と主張している】

アメリカ、凄いなぁ。確かに、どんな学説も常に更新される可能性があるし、今正しいと信じられている通説が絶対に正しいとも限らないけど、しかしそうだとしてもさすがに、「神が過去1万年ほどの間に、人間を現在のような姿で創造した」という主張は、あらゆる物的証拠と照らし合わせて整合性が取れないだろうと思う。彼らは、原人は原人で存在していたが、別に我々の祖先なわけではなく、我々の祖先は原人とは別に起源を持つ存在だ、という主張であるらしい。どうも彼らは、人間が猿から進化したのだ、ということを受け入れたくないようだ。

まあ、何を信じるかは自由だ。しかし、教育は教育として区別しないといけないよなぁ、と思う。「進化論を否定する」という思考が見についてしまうと、自分のその信念に合わせるように、他の正しさも歪めてしまう可能性があるだろう。そうなってしまうのは、科学にとっても子供たちにとっても不幸でしかない。アメリカ人は、目を覚ました方がいい。

凄く面白かったわけではないけど、なかなかおもしろく読めた作品です。

ASIOS「謎解き古代文明」

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
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小説以外
1位 「死のテレビ実験
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4位 「消された一家
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8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)