黒夜行

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「GODZILLA 星を喰う者」を観に行ってきました

シリーズ完結編も凄い!
1作目の感想→「GODZILLA 怪獣惑星」を観に行ってきました
2作目の感想→「GODZILLA 決戦機動増殖都市」を観に行ってきました
しかし、1作目を見た時は、まさかここまで壮大で、深淵で、哲学的思考に溢れた作品だとは思いもよらなかったなぁ。
(2作目の感想までは、可能な限りネタバレをしないように感想を書いてきましたが、今回では、シリーズ全体を通じてのネタバレ込みの感想を書きたいので、この映画をまだ見ていないという人は、以下の感想を読まないでください)












大前提としてこのシリーズは、「人類」「ビルサルド」「エクシフ」という三つの異なる種族が共同でゴジラと立ち向かう、という構成になっている。元々地球にいたのが「人類」だが、色んなことがあって、「人類」から見れば地球外生命体である「ビルサルド」と「エクシフ」という異種族を受け入れ、ゴジラに対する共同戦線を張ることになる。

そして、このシリーズの絶対的主役は、「人類」であるサカキ・ハルオだ。彼の視点で物語が進んでいくので、基本的にこの映画を観る者は、「人類」側の視点で物事を捉えることになる。

シリーズ1作目は、それでなんの問題もなかった。何故なら1作目は「人類」の物語だったからだ。ゴジラによって地球を追われ、宇宙船での20年にも及ぶ漂流生活を余儀なくされた。そして、居住可能な惑星を探索するというミッションを諦め、ゴジラを打ち倒してまた地球に住む、という目標のために、強大すぎる敵に立ち向かっていくのだ。奪還しようとしているのが、「人類」の母星である地球でもあるし、やはりハルオが全体の統率を担っているので、「人類」側の価値観が優位となって話が展開していく。というか、1作目を見ている時点ではそんな意識もすることはなく、色んな描写を当然だと思いながら受け入れていた。

しかし、2作目から様子が変わってくる。2作目では、「ビルサルド」が主役に躍り出ることになる。ゴジラを倒せたかと思いきや、それはまだ雑魚で、さらに巨大なゴジラがいたことが判明し絶望する彼ら。もう打ち倒す手段などないかに思われたが、実は地球には、フツワと名乗る種族が生き延びていた。昆虫の遺伝子を取り込んでいると思われる彼らの助けを借りながら態勢を整えた彼らは、フツワのとある技術に目を付けた。いや、目を付けたのは「ビルサルド」の面々だ。彼らはそれが、「ビルサルド」がかつて開発し、研究を進めていた「ナノメタル」であることに気づいた。自己増殖し、設計図通りに自己を形成していくことが可能なナノメタルを使えば、ゴジラを打ち倒すための「メカゴジラシティ」を生み出すことが出来る。「ビルサルド」の考えるゴジラ討伐プランを進めていくことになるのだが、その過程で、「ビルサルド」という種族の特異性が浮き彫りになってくるのだ。

それが、「ビルサルドという種全体で一つの存在である」というような捉え方だ。個の存在に価値はなく、「ビルサルド」という種族全体のためには、「人類」から見れば命を捨てているようにしか見えない犠牲も厭わない。彼らは非常に合理的な思考をする種族であり、個よりも全体を優先する。彼らは「人類」や「エクシフ」にも全体への合一(つまりそれは、ナノメタルに飲み込まれる、ということ)を強要し、さらに、ゴジラを討伐するための作戦に、「ハルオたちがその全体に組み込まれる」という条件が内包されていたのだ。確かに、彼らが主張する方法でゴジラは倒せるだろう。しかし、ゴジラを倒した後の世界はどうなるのか。すべての存在が「メカゴジラシティ」という全体に組み込まれ、個人という概念が存在しないまま、「メカゴジラシティ」が地球上を覆い尽くす世界がやってくる。果たしてそれは「人類」にとって、意味のある勝利と言えるのか?

そのことに納得できなかったハルオは、自らの意志で全体への合一を拒絶、結果、ゴジラは休眠するに留まり、討伐するには至らなかった。

ここまではシリーズ2作目までの物語だ。

完結編である今回は、主役を「エクシフ」に移すことになる。

「エクシフ」はシリーズを通じて、宗教的な導きをする者として描かれる。争いは好まず、祈りによって現状を肯定しよう、というような考え方だ。「エクシフ」のトップであるメトフィエスは、「メカゴジラシティ」によるゴジラ討伐の失敗をうまく利用し、自らの宗教的地位をさらに高めた。実はこの戦闘を生き延びた者の中に、ナノメタルに接触されながら飲み込まれなかった者たちがいた。彼らはそこに合理的な説明を見いだせず、「奇跡だ」と受け取ることになる。そしてそのことを利用し、メトフィエスは自らの存在感を高めたのだ。しかし実際には、ナノメタルに飲み込まれなかった者たちには共通項があった。彼らは、フツワによる治療を受けていたのだ。それはハルオも同様だった。医師はそれを見抜き、フツワの治療の何かがナノメタルと親和性がないのだとハルオに告げたが、彼は状況を読みそれを他の者に伝えようとはしない。メトフィエスが残った者たちを実に上手く掌握し、ハルオでさえ実質的な実権が奪われているような状況なのだ。

そんな中、ようやくメトフィエスがその正体を現し始める。彼はハルオに、「神がゴジラを打ち倒す」と伝えた。与太話だとつっかかり、さらに、もしそれが本当であるなら、何故今まで伏せていたのだと詰め寄る。これまでゴジラとの戦闘でどれだけの命が奪われたと思っているのだ、と。しかしメトフィエスは意に介さない。彼はある場面で、こんなことを口にする。

『怪獣を怪獣足らしめるものは、怒りだ。
英雄を英雄足らしめるものは、憎しみだ。
そして神を神足らしめるものは、英雄による祈りだ。』

そしてその条件が揃うのを待っていたのだ、とハルオに言うのだ。

「エクシフ」にとっての「神」とは、実は「数学的演算の帰結」であることが徐々に明らかになっていく。そして実際に「ギドラ」と神の名を呼ぶことで、異空間から「神」がやってきた。どんな観測方法によっても捉えられないが目の前に現に存在する、異様な「神」だ。

「エクシフ」にとっての「祝福」とは、「恐怖からの離脱」だ。彼ら種族は、高度な数学・科学的な知見によって、宇宙の果てまでを計算し尽くしてしまった。そしてその結果、宇宙は有限であり、いずれ終焉を迎えることが演算によって明らかになった。そこで「エクシフ」は、自らを供物として「神」に捧げることで、終焉のその向こう側の世界を探求する決断を下した。そして、ごく僅かの「神官」のみが残され、彼らは「収穫」のための活動を続ける。

「収穫」とは何か。それは、高度な文明がいずれ辿ることになる、ゴジラという「果実」を「神」が喰らい尽くすことだ。

テクノロジーによる進化を希求し、高度な文明を手に入れた者たちは、やがて「ゴジラ」の出現によって滅びる。「ゴジラ」というのは、高度な文明の終焉の象徴であると同時に、終焉を彩る「神」に捧げられる「果実」でもあるのだ。メトフィエスたちは、様々な高度文明を渡り歩きながら、「収穫」の時を待つ存在だったのだ。

あらゆるものを喰らい尽くす、ゴジラ以上の最悪の存在である「ギドラ」に対し、「人類」代表であるハルオはどのような結論を導き出すのか…。

とまあ、こんな感じで、完結編の中身をほぼほぼ全部書いちゃったけど、凄かったなぁ。この映画は、確かにこれまでのゴジラのシリーズの流れの中にはあるのだと思う。ゴジラが現水爆実験に端を発して生まれた、という設定は同じだし、さらにそこから、高度文明の終焉に必ず現れる怪物、という性格を付与するのは自然な流れだと思う。しかしその一方で、「人類」「ビルサルド」「エクシフ」という、「生きる」ということに対する価値観がまったく異なる種族の思想を物語にうまく噛み合わせていくことで、これまでのゴジラシリーズとはまったく異質な作品にも仕上がっている。

これまでのゴジラは、なんだかんだと言っても「ゴジラ」が主役だったのだと思う。ゴジラという強大な存在を圧倒的な存在感で描き出すことが重要であり、そこから派生して、そういう巨大な存在に対して人類はどう立ち向かっていくのか、ということが描かれていくわけです。

しかしこの映画では、もはやゴジラは主役ではない、と僕は感じた。ゴジラはあくまでも触媒であり、何の触媒であるかと言えば、「人類」「ビルサルド」「エクシフ」の根本的な違いをあぶり出すための触媒だ。彼らは長い年月を掛けて、共に生きてきた。その過程で様々な衝突はあっただろうが、共存できているということはその衝突は致命的なものではなかったということだ。しかし、この映画を最後まで見れば分かる通り、「人類」「ビルサルド」「エクシフ」の、「生きる」ということに対する価値観には絶望的な乖離がある。本来であれば共存など出来るはずがないほどの断絶が、しかし、それまでの関わり合いの中では浮き彫りにはならなかったのだ。

ゴジラという存在は、その圧倒的なまでの断絶を浮き上がらせる触媒としての機能を持つ脇役として描かれているのだ、と僕は感じた。この映画の根本的な革新さは、ここにあるのではないかと思う。圧倒的だったのはゴジラの存在そのものではなく、三種族の間にある絶望的な断絶の方である、という描き方をすることによって、深淵で哲学的な思考を展開する異次元の物語に仕上がっている。

しかし、やはり凄いなと感じるのは、このシリーズでは「ゴジラ」という存在に、これまでなかった新たな意味を付与したことだろう。これまで「ゴジラ」は、「人類を破壊する怪獣」としての意味以外に、「人類の傲慢さが生み出した罰」というような意味があった。もちろんこの映画でもそういう側面はしっかりと描かれていくのだが、さらにこの映画では、「高度な文明が滅びることによる果実」だという意味が付与される。地球というスケールの生態系ではなく、宇宙(それも、僕らの宇宙以外の宇宙も含む)全体で成り立つ壮大な生態系を描き出し、その中で、「ゴジラ」という「高度な文明が滅びることによる果実」を捕食する「数学的演算の帰結」としての存在が「神」である、という発想は、ちょっと壮大過ぎて震えた。その構造の中に、「エクシフ」という異種族をうまく組み込み、さらに「人類」「ビルサルド」「エクシフ」という三つ巴の混沌を、ゴジラを起点に描き出していく、というこのシリーズの構成は、ちょっと凄すぎるように思う。もう、ちゃんと理解できている自信はないし、意味不明なんだけど、面白すぎたなぁ。

普段はあまり、一度見た作品(映画も小説も)をまた見たいとは思わないのだけど、この映画は、最後まで物語を理解した上で、改めて最初から見たいなと、久々に思わされた作品だった。

「GODZILLA 星を喰う者」を観に行ってきました
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