黒夜行

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「ウィンド・リバー」を観に行ってきました

内容に入ろうと思います。
ワイオミング州にある、ネイティブアメリカンの保留地である「ウィンド・リバー」。ここでは、ネイティブアメリカンの少女たちがよく殺される。
野生生物局のコリーは、この地で猛獣などを駆除する仕事をしている。雪深い山岳地帯で、静寂以外何もない土地。そこで彼は仕事中、少女の死体を発見する。少女は雪に埋もれた状態で、裸足だった。死因は、マイナス30度にもなる冷気を走りながら一気に吸い込んだことによって肺が破裂、自らの血液による窒息死だ。少女の名は、ナタリー。3年前に亡くなったコリーの娘の親友であり、コリーは、やってきたFBI捜査官・ジェーンと共に捜査をすることにした。
一番近い民家は、5.5キロ離れたところにある、荒くれ者の兄弟が住む家。そして8キロ離れたところには、採掘所がある。彼女が裸足である理由は、それらの場所から逃げ出したとしか考えられない。司法解剖の結果、少女はレイプされていたことが分かった。
監察医は、「どうしても死因を他殺には出来ない」と主張する。FBIの規定により、他殺でなければ応援を動員できない。彼らは、数少ない人員で、ナタリーを追い詰めた者を探し出さなければならなくなった。
この雪深い土地で、一体何が起こっているのか…。
というような話です。

冒頭で、「事実に基づく」と表記されました。そして映画の最後に、「ネイティブアメリカンの失踪者の統計は存在しない」と表記されました。この映画で描かれている出来事が事実に基づいているのか、あるいは、ネイティブアメリカンの少女が頻繁に失踪している、という現実がベースとなっていて、物語そのものは事実が基になっているわけではないのか、それは分からないけど、とにかくこの映画の背景として強く印象付けられているのは、「ネイティブアメリカンに対する迫害、そして無知」である。

物語で描かれる、ナタリー殺害の真相は、なんというのか胸糞悪くなるようなもので、身も蓋もない、という感じがする。『この土地は、凍った地獄だ』というセリフがあって、「だから仕方がないんだ」みたいな言い訳として発言している感じがある。そして恐らくだが、この言い訳を発するメンタリティは、アメリカ人全体が持っているものだぞ、と訴えるような映画であるように僕には感じられました。

もちろんこれは、「アメリカにおけるネイティブアメリカンの問題」だけではありません。多くの国が民族の問題を抱えているだろうし、民族に限らず、性的マイノリティや宗教による差別などがあることだろう。そういう「多数派ではない者」に対し、直接的に迫害や暴力をもたらす人は、そう多くはないだろうと思う。しかしこの映画では、「多数派ではない者」に対する無関心こそが問題の根深いところにあるのだ、と指摘しているように思う。

そう感じるのは、「ウィンド・リバー」という土地にある。ネイティブアメリカンたちは、ほとんど何もかもを奪われ、この雪と静寂しかない土地に無理やり連れてこられたという。確かに、そういう行為をしたのは、ずっと昔の世代の人達かもしれない。ただだからと言って、「隔離されている」「視界に入らない」という理由で「見ない」という無意識の選択をしている人達にまったく罪がない、ということはないだろう。

その「無関心さ」を象徴する存在として描かれているのが、FBI捜査官のジェーンだ。彼女はフロリダ出身で、この「ウィンド・リバー」にやってくるのに、防寒具を持ってくることもなかった。部族警察のベンは、『この土地をナメてる』と発言したが、まさにその通りだろう。ネイティブアメリカンの人達が、どんな生活を強いられているのか、そういう想像を人生の中ですることがないからこそ、何の用意もなくやってくる。

そんなジェーンに対して、ナタリーの父親は、『そう言ってお前たちはいつも侮辱する』と、白人という存在に対する嫌悪感を示し、協力的になることが出来ない。そんなジェーンは、この土地やそこに住む者たちのこと、そしてこの土地で起こっていることを知る過程で少しずつ考え方が変わっていくように見える。

『ここには運はない』
『ここでは生き残るか諦めるしかない』

コリーが言うこのセリフは、結構好きだ。なんというかこの言葉には、「ウィンド・リバー」という過酷な土地に生きざるを得ない人々に対し、生きる意思を持つ強い者たちであると称賛するような響きを感じる。コリーは、結果的には命を落とすことになってしまったナタリーさえも、その強さを称賛する。勇者でなければ、ナタリーはあの場所までたどり着くことは出来なかっただろう。

「ウィンド・リバー」を観に行ってきました
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6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
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10位 辻村深月「島はぼくらと
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小説・新書以外

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3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
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6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
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2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
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5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

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1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
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3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
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