「オリエント急行殺人事件」を観に行ってきました
正義とルールは相性が悪い。
ルールだけで正義が実現できるなら、例えば弁護士は要らないだろう。
きっと、名探偵も。
『誰がなんと言おうと、この世界には善と悪しかない。その中間はない』
エルキュール・ポアロの言葉だ。そう簡単に行けば世の中難しくはないんだけど、なかなかそうも行かない。善も悪も、そしてその中間もある。
ルールはルールである以上、善か悪かをはっきりさせる。そうでなければ、ルールが存在する意味がないからだ。しかし、ルールはすべてを明示することは出来ない。善か悪かははっきりするが、記述されない事柄が残る。その正義は、一体誰が判断するのか。
正義は、結局のところ、人の数だけ存在する。そして、それが正義であると他者に認めさせる、その意志と行動にこそ、正義は宿るのだろう。
だから、正義を主張する者は、意志を持ち行動しなければならない。
『ここで言う正義とは?』
そう、常にそう問い続けねばならないのだ。
内容に入ろうと思います。
1934年、エルサレムで事件を解決したエルキュール・ポアロは、そのまま休暇に入るはずだったが、ロンドンでの事件に駆り出されることになった。そこで急遽、オリエント急行に乗ることを決め、ロンドンに戻るまでの間を休暇とすることに決めた。古くからの友人であり、オリエント急行の社員でもあるブークに空きを探してもらったが、冬の寒い中なのになんと満車。相部屋となった。
オリエント急行の中でポアロは様々な人物と出会うが、その中の一人、骨董商であるラチェットという男からある依頼を受ける。なんでも、売買した商品が偽物ではないかと疑われ返金を要求されており、ついには脅迫状まで届いたという。ついては護衛をしてもらえないか、という依頼だったが、ポアロは、悪人を手助けすることは出来ないと言って断った。
夜、冬の山岳地帯を通り抜ける最中雪崩に遭遇し、オリエント急行は線路の途中で立ち往生してしまう。すぐに応援が来る手はずになってはいるが、しばらく動けない状態だ。
そんな折、ラチェットの部屋をノックする車掌が、反応がないのを不審に思う。ポアロも手助けしドアをこじ開けると、ラチェットの死体がそこにあった。ブークはポアロに事件解決を依頼するが、休暇中だと言って断る。しかし、「正義を導けるのはあなたしかいない」と言われ、ポアロは事件の謎を解くことに決める。
夜、客室同士のドアは施錠されており、容疑者はラチェットと同じコンパートメントにいた者たちに絞られる。乗客全員から話を聞くが、推理がうまくまとまらない。
やがてこの殺人の背景に、一つの事件が関わっているのではないかとポアロは推測する。アームストロング事件。アメリカで大佐の娘が誘拐され、身代金を払ったにも関わらず遺体となって発見。身籠っていた妻はお腹の中の子どもと共に亡くなり、アームストロング大佐も自殺してしまったという、悲劇的な事件だった。
しかし、一体誰が犯行を犯したのだろうか…。
というような話です。
なかなか面白い映画でした。
僕はそもそも原作を読んでいません。こういう観客は、なかなか珍しいかもしれません。原作小説はあまりにも有名ですが、とはいえ、原作を読んでいない人間が観ようと感じるような映画ではないと思うからです。
原作を読んでいない僕は、謎解きの部分も含めて楽しむことが出来ました。原作を読んでいる人的には、どの辺りに注目しながら観るのかちょっと分からないけど、映像は綺麗だったし、僕はあんまり知らないけど、みんな有名な俳優らしいので、そういう部分を楽しむのかもしれません。
物語にはほとんど触れられないので、書けることが極端に少ないですが、映画を観終わった後で感じたのは、「この物語をどうやって小説として成立させているんだろう?」ということです。
映画としては、十分成立していると思います。というのも、「事件の捜査」と「人物紹介」がほぼ同時だからです(何故それが同時だと、映画としては成立するのか、という説明は、ネタバレに繋がるので避けますが)。ただ、勝手な予想ですが、原作小説の場合、もっと「事件の捜査」のボリュームが多いだろうと思います。その場合、物語を成立させるのが難しくなりそうだなという印象を受けました。
事件そのものは、現実世界でも成立し得るでしょう。そういうことではなくて、この事件を「ミステリー小説」として成立させるのは難しいだろうなぁ、ということです。「事件の捜査」の描写が多ければ多いほど、最終的にそれを「ミステリー小説」として成立させるのが難しくなりそうな気がしました。どうやってるんだろう、ホント。
容疑者が多くて、顔と名前を覚えるのがなかなか大変でしたけど、その点以外はなかなか楽しめたと思います。
「オリエント急行殺人事件」を観に行ってきました
ルールだけで正義が実現できるなら、例えば弁護士は要らないだろう。
きっと、名探偵も。
『誰がなんと言おうと、この世界には善と悪しかない。その中間はない』
エルキュール・ポアロの言葉だ。そう簡単に行けば世の中難しくはないんだけど、なかなかそうも行かない。善も悪も、そしてその中間もある。
ルールはルールである以上、善か悪かをはっきりさせる。そうでなければ、ルールが存在する意味がないからだ。しかし、ルールはすべてを明示することは出来ない。善か悪かははっきりするが、記述されない事柄が残る。その正義は、一体誰が判断するのか。
正義は、結局のところ、人の数だけ存在する。そして、それが正義であると他者に認めさせる、その意志と行動にこそ、正義は宿るのだろう。
だから、正義を主張する者は、意志を持ち行動しなければならない。
『ここで言う正義とは?』
そう、常にそう問い続けねばならないのだ。
内容に入ろうと思います。
1934年、エルサレムで事件を解決したエルキュール・ポアロは、そのまま休暇に入るはずだったが、ロンドンでの事件に駆り出されることになった。そこで急遽、オリエント急行に乗ることを決め、ロンドンに戻るまでの間を休暇とすることに決めた。古くからの友人であり、オリエント急行の社員でもあるブークに空きを探してもらったが、冬の寒い中なのになんと満車。相部屋となった。
オリエント急行の中でポアロは様々な人物と出会うが、その中の一人、骨董商であるラチェットという男からある依頼を受ける。なんでも、売買した商品が偽物ではないかと疑われ返金を要求されており、ついには脅迫状まで届いたという。ついては護衛をしてもらえないか、という依頼だったが、ポアロは、悪人を手助けすることは出来ないと言って断った。
夜、冬の山岳地帯を通り抜ける最中雪崩に遭遇し、オリエント急行は線路の途中で立ち往生してしまう。すぐに応援が来る手はずになってはいるが、しばらく動けない状態だ。
そんな折、ラチェットの部屋をノックする車掌が、反応がないのを不審に思う。ポアロも手助けしドアをこじ開けると、ラチェットの死体がそこにあった。ブークはポアロに事件解決を依頼するが、休暇中だと言って断る。しかし、「正義を導けるのはあなたしかいない」と言われ、ポアロは事件の謎を解くことに決める。
夜、客室同士のドアは施錠されており、容疑者はラチェットと同じコンパートメントにいた者たちに絞られる。乗客全員から話を聞くが、推理がうまくまとまらない。
やがてこの殺人の背景に、一つの事件が関わっているのではないかとポアロは推測する。アームストロング事件。アメリカで大佐の娘が誘拐され、身代金を払ったにも関わらず遺体となって発見。身籠っていた妻はお腹の中の子どもと共に亡くなり、アームストロング大佐も自殺してしまったという、悲劇的な事件だった。
しかし、一体誰が犯行を犯したのだろうか…。
というような話です。
なかなか面白い映画でした。
僕はそもそも原作を読んでいません。こういう観客は、なかなか珍しいかもしれません。原作小説はあまりにも有名ですが、とはいえ、原作を読んでいない人間が観ようと感じるような映画ではないと思うからです。
原作を読んでいない僕は、謎解きの部分も含めて楽しむことが出来ました。原作を読んでいる人的には、どの辺りに注目しながら観るのかちょっと分からないけど、映像は綺麗だったし、僕はあんまり知らないけど、みんな有名な俳優らしいので、そういう部分を楽しむのかもしれません。
物語にはほとんど触れられないので、書けることが極端に少ないですが、映画を観終わった後で感じたのは、「この物語をどうやって小説として成立させているんだろう?」ということです。
映画としては、十分成立していると思います。というのも、「事件の捜査」と「人物紹介」がほぼ同時だからです(何故それが同時だと、映画としては成立するのか、という説明は、ネタバレに繋がるので避けますが)。ただ、勝手な予想ですが、原作小説の場合、もっと「事件の捜査」のボリュームが多いだろうと思います。その場合、物語を成立させるのが難しくなりそうだなという印象を受けました。
事件そのものは、現実世界でも成立し得るでしょう。そういうことではなくて、この事件を「ミステリー小説」として成立させるのは難しいだろうなぁ、ということです。「事件の捜査」の描写が多ければ多いほど、最終的にそれを「ミステリー小説」として成立させるのが難しくなりそうな気がしました。どうやってるんだろう、ホント。
容疑者が多くて、顔と名前を覚えるのがなかなか大変でしたけど、その点以外はなかなか楽しめたと思います。
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