黒夜行

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表現者・平手友梨奈

僕は、グループとしては乃木坂46の方が圧倒的に好きだ。齋藤飛鳥を始め、考え方や価値観に共感できたり、その特異さに惹かれたりするメンバーがとても多いからだ。ただ、楽曲だけに限ってみると、欅坂46の方が好きだ。大人への反抗だったり、自分の中の抑えがたい衝動だったりを、パフォーマンスまで含めて見事に歌い上げる欅坂46は素敵だと思う。特に僕は「エキセントリック」が好きで、自分のテーマ曲だとさえ思っている。乃木坂46の楽曲にも共感できるものはたくさんあるけど、「エキセントリック」ほど心を掴まれた曲はない。

その欅坂46の背骨として、結成当時から不動のセンターとして牽引しているのが平手友梨奈だ。

平手は凄い、という話は、様々なインタビューを読んでいて知っていた。欅坂46のメンバーのみならず、乃木坂46のメンバーからもそういう話が出る。また雑誌には、アイドルという枠を越えて、様々なアーティストたちが欅坂46を支持する記事があり、そういう記事の中でも、平手友梨奈の凄さに驚く反応が載っていたりする。

しかし僕自身は、自分の感覚として、平手友梨奈のどこが凄いのか、きちんとは理解できていなかった。

もちろん、外側の情報だけからでも、平手友梨奈は十分に凄いと感じる。デビューは弱冠15歳。最年少メンバーにしてセンターに抜擢された。憑依型とも呼ばれる圧倒的なパフォーマンスで度肝を抜き、不動のセンターとして欅坂46を支えている―。しかし、そういう情報では捉えきれない何かが、彼女にはあるはずだと思っていた。

僕は、乃木坂46のライヴに行ったことがない。欅坂46にしても同様だ。欅坂46のMVを見る機会はある。しかし僕自身は、欅坂46全体、あるいは平手友梨奈単体のパフォーマンスを見ても、自分の言葉で凄さの本質を捉えられないでいた。MVを見て、「凄い」とは思う。思うのだけど、その凄さが何から来ているのか、ずっと分からないでいた。

また、欅坂46をきちんと追いかけていたわけでもないので、乃木坂46のインタビューが載っている雑誌に平手友梨奈のインタビューが載っていれば読む、という感じでしか彼女の考え方を知る機会はなかった。平手友梨奈の凄さについて、気にはなっていたのだけど、自分の中であまり掘り下げることはしなかった。

そんな状態で、「ロッキンオンジャパン 2017年12月号」の付録を読んだ。平手友梨奈を特集するブックレットのような中身で、そこに長大なインタビューが掲載されていた。ビビった。そうか、平手友梨奈はこんなレベルで物事を考え、行動をしていたのかと驚愕した。そして、彼女の凄さの一端を理解できたような気がした。

平手友梨奈は「表現者」だ。

【―いただいた曲を覚えて、振り付けを覚えて歌う―今やっていることは言ってみればそういうことなんだろうけども、曲の魅力や曲で伝えようとしたことや、あるいは曲に懸けた自分たちのエネルギーを全力で伝える手段ありきで考えないと、平手さんはパフォーマンスできないんですね。
そうですね。曲順にストーリー性がなかったり、ちょっとしたことでも『だったらやめよう』『出たくない』っていう人間なんで、スタッフさんにはすごい迷惑かけてるなと思うんですけど。でも立つなら思いっきりやりたいからっていう感じです。
―大げさな言い方になるけど、背負っているなあと。「欅坂とはこういうものなんです」という一番重要な本質の部分を。自分はそこから目をそむけずに行きたいという。単に「自分のわがままや理想を叶えたいんです」という自分本位ではない話をしてくれていると思うんだけども。
『これを伝えたいんだ』っていうのはあります、『このライヴを通して』とか。そういうものがないとできないです、逆に。私はストーリーがないとできない。私の切り替えもあるんですけど、逆にそのストーリーがあるから、そっちの波に乗れば行けることもあるから、そこは(振り付けの)TAKAHIRO先生とも相談しつつ今後もやっていかなきゃと】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

乃木坂46にも、「表現者」だと感じるメンバーはいる。生田絵梨花や若月佑美、卒業を発表した伊藤万理華などが代表的だろう。しかし乃木坂46の場合、「表現者」としての表現の場は、乃木坂46としての活動以外の場所であることが多いように感じる。生田絵梨花はピアノやミュージカル、若月佑美は絵画やデザイン、伊藤万理華は映像作品やファッション、あるいは女性誌のモデルなども乃木坂46以外の表現の場と言えるだろうか。

繰り返すが、僕は乃木坂46のライヴにも行ったことがないので、どんな感じなのか分からない。しかし、メンバーのインタビューを読んでいる限りは、先程引用した平手友梨奈の発言ほどに、ライヴの演出などに自分の考え方を投影させようとするメンバーはいないように思う。生駒里奈は、いかにライヴで自分を表現するか、そして乃木坂46全体を輝かせるかを考えていると感じるが、しかし「私はストーリーがないとできない」というほどの決然とした意思までは持っていないように思う。

乃木坂46は、アンダーライブも有名で、パフォーマンスとしてはアンダーライブの方が圧倒的にレベルが高いという話も聞く。しかしこちらにしても、「こうしたい」「この方がいい」と主張するメンバーはもちろんたくさんいるだろうけど、「こうじゃなきゃ出来ない」とまで言いそうなのは寺田蘭世ぐらいだろうか。うん、寺田蘭世からは確かに、平手友梨奈に近いものを感じる。寺田蘭世も、平手友梨奈と近い境遇に立たされれば、近い雰囲気を醸し出したかもしれない。

しかし、平手友梨奈の「表現者」としての資質は、努力や実力や才能ではない部分にも及ぶ。

彼女は前述した通り、「憑依型」とも呼ばれる。楽曲やパフォーマンスの世界に憑依して圧倒的な表現を見せるのだ。しかしインタビューの中で彼女は、こんな発言をしている。

【―(4月にリリースされた)“不協和音”は平手さんにとってとても大きい曲だと思っていて。
ほんとに大変だった(笑)
―大きいという以上に、「大変だった」という感じなんだ?
全然わからないし、あまり憶えてないんですよね。周りのみんなからの視線をすごく感じる時もあったし、いつも何かを言われているような気もしたし、誰ともしゃべりたくなかったし。そんな時期に“不協和音”っていう曲が来たので『え?』とは思わなかったですよね。普通に『うんうんうん』『これ、私の気持ちじゃん』みたいな感じになって歌いました
―時には曲の世界に自分を近づけていく作業が必要だと思うんだけど、“不協和音”に関しては「今の私のままだ」という感じだったんですか?
“サイマジョ(サイレントマジョリティ)”から、自分が思ってることがそのまま曲になってたので、あまり自分から成りきろうみたいな感じではなかったです。】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

彼女の感覚では、その時々で目の前にやってくる歌うべき曲は、その時々の自分の感覚にピッタリはまってしまうのだ、という。もちろんこれは、色んな説明をつけることが出来るだろう。作詞の秋元康が彼女の状態を見極めて当て書きのように歌詞を書いているのかもしれない。あるいは、自分の気持ちに合った楽曲が目の前に現れるというのは彼女の勘違いで、楽曲で描かれていることに無意識の内に自分を合わせているということだってありえるだろう。しかしいずれにしても、彼女の感覚の中では、楽曲が自分の気持ちにピッタリとハマってしまうのだという。

【ちょうどそう思っていた時にいただいた曲がまさにそういうことを歌った曲だったり、だからこそ表現しやすかったり。『成りきる』とか、最近だと『憑依型』って言われるけど、成りきってるわけじゃなくて楽曲が合ってきちゃってるので、そのままの自分っていう感じでもあります。】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

運命論者ではないので、こういうことは言いたくはないが、平手友梨奈のこういう発言から僕は、彼女は「表現者」として選ばれているのだな、と感じてしまう。この点が、平手友梨奈が、乃木坂46のメンバーの表現と決定的に違う点なのかもしれない、と思う。彼女には、「楽曲に自分を合わせていく」という作業が不要だった。今の自分そのものが、その時出すべきものに合致していた。だからこそ彼女は、その時々で迷いのない全力のパフォーマンスをすることが出来た。表現に関しては「これが正しいのだろうか?」という葛藤などとは無縁で、1ミリの躊躇もなく動くことが出来た。この強みは計り知れないだろう。

表現すべきものに自分を寄せていくのではなく、表現すべきものを自ら引き寄せる。それが神の配剤なのか、あるいは欅坂46の戦略の結果なのかは僕にとってはどうでもいいことだが、彼女のこの「表現者」としてのあり方が、欅坂46の支柱であることは間違いないだろう。

今の自分に表現すべきものが合ってくる、というのは、そう表現してしまえば楽にも思えるかもしれない。何も考えずに、その時その時の自分の「今」を出せばいいのだから、難しくないと感じる向きもあるかもしれない。しかし、それは違う。

【逆に言えば“不協和音”は気持ちが入ったり、その世界に行かないとできないです。だから、できる時とできない時がだいたいわかるので、(ライブで)『今日はできないな』と思ったらできないし、やれるとしても自信はないですし、もうあの時とはモードが変わってるので、その点については大変だったりはしますね】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

平手友梨奈は現在16歳。アイドルであろうがなかろうが、変化の激しい時期だろう。欅坂46のセンターとして、あり得ないほど過酷な環境にいる彼女なら、その変化はなおのこと激しいだろう。だからこそ、シングルCDの収録のために楽曲が目の前にやってくる時と、その後ライブをする時では、もう「今の自分」は変化してしまっている。だから、CDの収録の時に出来ていたことが、ライブでは出来ない。出来ない、という感覚に支配される。「今の自分」を全力で表現することで圧倒的なパフォーマンスを生み出す彼女は、それ故に、変化する「今の自分」をその都度その都度で思い出すような作業をしなければ、楽曲の世界を表現できなくなってしまう。

【―“不協和音”という曲は本当にすごい曲だと思うんだけども。というのも、ただ歌詞を追って歌うだけでは成立しない曲ですよね。自分の何かを削らないと成立させられないという。
どうだろう、今の自分ではわからないです。その人にならないと何考えてるのかわからない
―曲のなかの「その人にならないと」という感じなんだ、“不協和音”を歌う時は。
はい。『あの子』っていう表現のほうが合ってるのかもしれない。『あの子、すごいなあ』とか思います。だからライヴが大変です
―ロック・イン・ジャパンの時も最後まで“不協和音”をやるかやらないか悩んでくれてたもんね。
自分のなかで勝負に行かなきゃいけない場っていうことはわかってたし、だからできるだけ今までのツアーのなかでやってこなかったんです。スタッフさんも理解してくださったので。で、ここでやってしまったら、できたらすごくいい気分になるけど、できなかったら心が折れるから、そうなった時にどうなるかが自分でもわからないから、ほんとにギリギリまでスタッフさんと相談しました】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

日々変化する「今の自分」を、彼女は「その人」「あの子」と表現する。かつては自分自身だった存在を、「その人」「あの子」と呼ばなければならない程遠く感じられる中で、自分が納得できるパフォーマンスを成立させることは非常に難しいだろう。

また、こんな難しさもある。

【いつも重めに考えちゃうから、こんな軽やかに考えるのは難しい。でも、ほんとに楽しまなきゃ損だし、高校生活も高校生という時代も今しかないから、『絶対楽しんだもん勝ちだ』と思って、そういう気分で(“風に吹かれても”を)歌ってるところもあります。
―平手さんはそう思えるようになったよね。
この曲を歌えるようになった平手を褒めてほしい(笑)。監督と話した時に『どう?気分こんな感じ?』って訊かれたから『いや、まだ大人嫌いです』って言ったら『そうだよね』って(笑)。めっちゃわかってくれるんですよ、監督さん。『大人はほんとヤダよね』とか『平手はそこから抜け出せないと思ってるから』って(笑)。でも『人生は楽しんだほうがいいんだよ』って。】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

欅坂46の歌は、表題曲は特に、「反抗」「抵抗」「反逆」と言ったことがテーマになっているものが多い。「大人が嫌い」だと思っている平手友梨奈には、そういう世界観が合っていると、彼女自身も周りの大人も考えている。しかし、アイドルグループとしては当然、そういう曲ばっかり歌っているわけにもいかないのだろう。欅坂46もどんどんとファン層が広がっており、「反抗」なんかを中心に据えない曲ももちろん必要とされる。しかし彼女は、恐らくそういう曲が必要だということを理解しながら、どう歌ったらいいか分からず戸惑っている。

【でもやっぱり、すごい強いメッセージ性がないと落ち着かない自分もいます。“不協和音”はカメラに向かって『嫌だ』とか『もっと反抗していいんだよ』っていうメッセージを伝えてたけど、『今は何を伝えたらいいんだろうなあ』ってちょっと思いますね】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

歌は彼女にとって、「何かメッセージを伝える手段・表現」だ。だから、「メッセージ」を感じ取れない楽曲では、彼女はどこに焦点を合わせてパフォーマンスしていいのか捉えきれずに悩む。楽曲が自分に合うことで圧巻のパフォーマンスを生み出すことが出来る彼女は、それ故に、自分の合ってこない楽曲をどう消化すればいいのか、まだ捉えきれていない。

もちろん、彼女はまだ若い。若すぎると言っていいくらいだ。だから焦ることはないのだが、欅坂46を結果的に背負ってしまっている格好になっている彼女には、焦る気持ちもきっとあるだろう。デビューから鮮烈なインパクトを与えてしまった宿命として、毎回最高以上のパフォーマンスを求められるという重圧の中で、どう表現すべきなのかという問いは、常に彼女を追い詰めるだろう。

そんな平手友梨奈を救ったのは、メンバーだった。

【とりあえずメンバーとアイコンタクトをとって、笑顔で踊るしかないなと思ってます(笑)。確かに命削ってる感はないですよね、この曲(“風に吹かれても”)は
―でも命を削ってきた自分がアリにしてくれる曲なんじゃないのかな。
ああ、1コ言えるのは、メンバーという存在が大きいかもしれない。メンバーを見られるようになったというか、しゃべれるようになったというか、受け入れてもらえるようになったというか。うまく説明できないけど、メンバーが話しかけてくれるようになったので、ツアーを通じて。メンバーに心を開けるようになったのかなあ…。今までは私はちゃんと見てなかったんだなっていう。たぶん“不協和音”と“月曜の朝、スカートを切られた”がつながっていて、その期間にいろいろ起きて、本当に長く感じられて。今はメンバーといて楽しいなって思いますね。】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

彼女は元々人見知りで自分から行動出来ない性格だったという。そんな自分を変えたくて欅坂46のオーディションを受けた。欅坂46としてデビューして、デビュー曲の「サイレントマジョリティ」で一気にブレイク、センターとして最年少ながら絶大な注目を集めることになった平手友梨奈は、恐らく孤独の中にいた。

【私に直接言う子はいないけど、メンバーによっては「私、(MVに)映ってないから…」と漏らしている子もいるみたいで、そういうのを聞くと、それはまあそうだよなぁ、と思うし。だから、悩みとかも、人には言わないようにしてるんです】「AKB新聞 2016年12月号」

【(大丈夫と周りに言われないように距離を置くという話の中で)わかります!だって「大丈夫?」って聞かれたら、「大丈夫、大丈夫」って言うしかないわけで、もう自分のこの思いは消されてるじゃないですか。例えばパフォーマンスが終わったあとに、「わぁ~、終わった~!」ってなってる時に、自分では納得いかないことがあって一人でいたいなって時は、一人でいようと思っています。その方が考え方がいろんな方向にいかない気がするんです】「BRODY 2017年6月号」

想像でしかないが、彼女には忸怩たる思いがあったことだろう。欅坂46を大きくしていくために、彼女は全力を出し尽くす覚悟があったはずだ。しかし、楽曲が自分に合って来てしまう、というほどのパフォーマンスを見せる彼女は、「憑依型の天才」として、個人として注目を集め続けることになる。【センターばかりが注目されるのが怖いときもあって。(中略)全員を見てほしいっていう思いがあります】「BRODY 2016年10月号」とも発言しているが、欅坂46全体ではなく、自分一人に注目が集まっている現状に危機感を抱いてもいたはずだ。

しかし、その状況は彼女自身にはどうにもしようがない。欅坂46を大きくしていくためには、その時その時で出来る人間が最大限の努力を出し尽くすしかない。デビューからずっと、それを担わざるを得なかったのが平手友梨奈だ。状況としては、生駒里奈も同じだ。生駒里奈がデビューからしばらくセンターという重責を担っていたその頃の話は、インタビューなどで様々に読んだことがある。そのプレッシャーは半端なものではなかったそうだし、「メンバーに理解してもらえない」という気持ちもずっと抱いていたという。平手友梨奈も同じ状況にいた。しかし、頑張れば頑張るほど自分に注目が集まる現状であっても、頑張らないという選択などあり得ない。欅坂46のためには、平手友梨奈の全力は不可欠だからだ。だから彼女は、そういうことを全部理解した上で、欅坂46の中で孤立するしかなかったのだ、と思う。

しかし、ライブを通じて変化が生まれた。

【“エキセントリック”は意外と大変です。ツアー期間、表現ができなくなっちゃっていろいろ悩んでたんですけど、“エキセントリック”とか“不協和音”とか、私の得意な、気持ちを放出する曲なんですけど、そういう曲が逆にできなくなっちゃって。内側にこもるタイプの曲しかできなくなっちゃったんですよ】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

声が出なくなったこともあったようで、様々な形で彼女は「表現が出来ない」という苦しみにさいなまれるようになった。

そうなってみてようやく彼女は、メンバーに頼ることが出来るようになった。

【(メンバーに心を開けるようになった、メンバーといて楽しいと言えるようになったのは)また“不協和音”みたいな曲が来るかもしれないけど、みんな“不協和音”の頃の私を知ってくれてるから、きっとわかってくれるなというか、わかってほしいなと思うから。初めてメンバーに本音を言いました。『表現ができない』って。『だから助けてほしい』って。すごい勇気がいったけど。そしたらすごいみんなが助けてくれた。初めて本音を言ったツアーでした。何回かメンバーが楽屋に来て『平手と話したい』って言ってくれて、そこで正直に話したし、『できない』って。みんながほんとに支えてくれたので助かりました、このツアーは。】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

「出来ない」と口にするのは、勇気が要ることだ。特に欅坂46は、平手友梨奈の存在感がある種グループのベースになっているような部分がある。彼女にしても、そのことは自覚していただろう。そんな自分が「表現できない」と言うことには、非常に勇気が要ったことだろう。それでも、そういう弱さを見せることで、ようやく彼女は孤独を抜け出せる光を感じることが出来た。背負いすぎていたものをメンバーに分けられるようになった彼女が、それでも続くだろう重圧の中でどんなパフォーマンスを見せていくのかは楽しみだ。

そんな平手友梨奈を、メンバーはどんな風に見ているのか。原田葵がインタビューの中でこんな風に言っていた。

【―2人も自分さえよければいいという考え方じゃないですよね
でも、その空気を作ったのは平手だと思うんです。先頭を切ってる子がそういう気持ちだから、他の子も「私もメンバーの役に立ちたい」と思える。最初の頃は他のメンバーに「負けたくない」という気持ちが強い子もいたと思うけど、平手の行動を見てると、誰も「自分さえよければ」とはならないはず】「Top Yell 2018年1月号」

この発言を読んで僕は、あぁ良かった、と感じた。平手友梨奈の想いは、きちんと伝わっている。彼女が、自分に向けられる注目に胡座をかくような人間だったとしたら、あるいは、自分が表現したいものだけをただ追及するような人間だったとしたら、彼女がメンバーに頼ってもメンバーは受け入れられなかったかもしれない。平手友梨奈は、自分ではなく、欅坂46のために全力を出している。そのことが、彼女の一つ一つの振る舞いからきちんと伝わっていたからこそ、メンバーも平手友梨奈の窮地にすぐに手を差し伸べることが出来た。

【今の時点で、自分がどうなりたいっていうのは全然ないんです…。「私は何のためにがんばっているんだろ?」って考えてしまって。今、欅坂46は注目していただいているのですが、これから私たちはどうなっていくのか不安な気持ちもすごくあります】「BRODY 2016年10月号」

2016年の時点ではこう発言していた平手友梨奈だったが、メンバーとの関係が大きく変化した2017年は、気持ちがまた変わったことだろう。今まではメンバーに頼れなかったことで「出来ない」と感じられていたことに、これからはどんどんチャレンジしていくことが出来る。楽曲の世界観を表現するパフォーマンスのベースも、「メンバーの役に立ちたい」という雰囲気も、自らの手で切り拓き作り出してきた彼女の意識は、やはりライブに向いている。

【―複雑だなあと思うんですね。「あれは夢だった」と平手さんは話してくれるんだけども、でも客観的に見ると明らかに自分を削ることで成立させているという。つまり自分を削り続けることが自分のなかの夢になっているという、そういうパーソナリティなんだよね。
自分を削ることに対してそういう気持ちはないですね。たぶんすごいものをやろうやろうとしてるんだと思います。『すごいものをやらないなら、もう出たくない』って言います】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

「パフォーマンスに満足したことがない」と語る彼女は、常に「すごいもの」を提示したいと言う。「びっくりさせたい」「鳥肌を立たせたい」「ファンの期待を裏切っていきたい」と彼女が思い続けていく限り、欅坂46のパフォーマンスは進化していくことだろう。

正直今まで僕は、「乃木坂46のライヴを見に行きたい」と思ったことがない。僕は乃木坂46のファンだけど、動いている姿を見ることよりも、思考や価値観を知ることに重きを置いているからだ。アンダーライブにはちょっと食指が動いたけど、凄く強い衝動ではなかった。でも、平手友梨奈のインタビューを読んで、「欅坂46のライヴは見てみたい」と思った。そう思わせるだけの言葉の強さが、平手友梨奈にはある。

【―そんな1年間、何が平手さんを走らせていたんですか?
大っ嫌いなものと戦おうとしたからかな。
―負けられなかった、ということ?諦められなかった、ということ?
仕返ししてやりたかった(笑)】「ロッキンオンジャパン 2017年12月号特別付録」

欅坂46という注目を集めるアイドルグループのセンターとして、常に視線を浴び続けてきた平手友梨奈だからこそ、「仕返し」という言葉がビビッドに響く。恵まれている、と言っていいはずの環境にいて、それでも「仕返し」という意識を持ち続けることが出来る、そのメンタリティこそが、平手友梨奈を、そして欅坂46を作り出しているのだろうと感じた。

「表現者・平手友梨奈」

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Comment

[8225]

お久しぶりです。以前に「夢を持たない齋藤飛鳥」の記事でコメントさせてもらいました。

一気に記事をあげられていて、全部にコメントしたいぐらいなんですが(笑)、僕もロッキンオンジャパンの平手友梨奈さんには度肝を抜かれたのでここに。立ち読みのつもりが気づいたら買ってました(笑)

テレビ番組でツアーファイナルの演出を見てゾッとしたんですけど、まさかあれが平手さんの演出とは思いませんでした。しかも、「人間のダークな部分を突き刺してしまったかもしれないと心配になってしまった」とまで言っていて、どんな16歳だよって驚きです。

怒りに素直だったり、とにかく良いものを表現することに全てをかけていたりと、ものすごく真っ当に生きていることが伝わってきてハッとさせられました。「今」という感覚が強くて、すぐにでも消えてしまいそうな危うさが良いなと思います。自分の感情をエネルギーに変えられるのは羨ましいような、つらいような…

僕もエキセントリックを始め、欅坂の曲が好きなんで生で見てみたいですねー。ちなみに、僕は一回だけ乃木坂のライブを観に行ったことがあって、エンターテイメント性抜群で素直に楽しかったです(笑)


[8231]

お、お久しぶりでございます~。コメントありがとうございます!

ちょっと時間が出来たので、一気に書きまくってみました(笑)。面白く読んでくれてたらありがたいです~。

ロッキンオンジャパンのインタビュー、ビビりましたよね!マジか!って感じでした。自分の16歳の頃なんて、自分のことで精一杯だったのに(笑)、ちょっと平手友梨奈は次元が違いましたよね。

自分の気持ちを真っ直ぐに捉えて、それに嘘をつかずに、自分の行動で実践していくのが素敵です。そう、それで、おっしゃる通り、「すぐにでも消えてしまいそうな危うさ」が絶妙ですよね。ただ、まあ生き方的にはしんどい部分もあるだろうと思うから、無理しないで欲しいなと思いますけどね。

ライブ、そもそも僕が今住んでいるところではほとんど行われることもないので、それもあって腰が重くなります(笑)。もうちょい、電車でひょいっと行けるぐらいの距離でやってれば、頑張ってチケットを取る気にもなるかもですけど…(笑)

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)