「エル ELLE」を観に行ってきました
実に面白い映画だった。でも、面白さの源泉がどこにあるのか、はっきり掴みにくい映画でもあった。
主人公のミシェルがイカれている、というのは、面白さを生み出す理由の一つだろうと思う。ミシェルの行動原理は、うまく掴むことが出来ない。こういう場合、普通こういう行動をするだろう、という予測を、ことごとく裏切る。
最初こそ、ミシェルのその行動には違和感しか抱けなかった。行動があまりにも過激だからだ。映画の比較的初めの方で、ミシェルが車の窓ガラスを割るシーンがある。何故そんなことをしたのか、という状況説明はしないことにするが、ミシェルの判断は、僕からすると常軌を逸しているように感じられた。そういう行動が、いくつも重なる。その尋常ではなさに、最初はついていくことが出来なかった。
しかし、ある事実が判明することで、そこに一定の説明がついたと観客が納得させられてしまう。なるほど、こういう過去を持っているのならば、こういう振る舞いをするような人になっても仕方ないのかもしれない、と思える。そう思わされて以降は、どこかミシェルを受け入れている自分がいた。不思議な魅力があるのだ。
しかし、イカれているのは決してミシェルだけではない。程度の差こそあれ、ミシェルの周囲にいる人間も大分イカれている。物語はミシェルが中心なので、ミシェルとの関係で他の人との関係も描かれていくことになるのだが、ミシェルの行動や判断に対して、周りにいる人間もちょっとズレた反応をする。それが、ミシェルがいることによる歪みなのか、個々人が持つ歪みなのかは分からないが、とにかく、大体の人がイカれているのだ。
この映画を見て、まったく意味が分からない、という感想を抱く人もきっといるだろうと思う。それぐらい、彼らの価値判断は「共感」とは程遠い。しかし僕は、観ていくに従ってどんどん面白く感じられるようになった。皆、普通に働き、普通に日常を送っているように見えるのに、皆どこか狂っている。観れば観るほど、日常が歪んでいくような感じがして、そういう部分に面白さを感じたんだろうと思います。
内容に入ろうと思います。
ゲーム会社の社長であるミシェルは、ある日自宅にいるところを覆面を被った男に襲われ、レイプされた。しかしミシェルは、そのことを警察に通報しなかった。ミシェルには、警察とはどうしても関わりたくない理由があったのだ。
レイプされた後も、いつも通りの日常を送るミシェル。しかし普段からミシェルの周りには、ミシェルに対する悪意で溢れている。社内でも、ミシェルは嫌われている。カフェでは、知らないオバサンからトレーの中身をぶっかけられた。そう、ミシェルはある意味で有名人であり、そういう誹謗中傷と共に育ってきたのだ。
母親は若い恋人と付き合い、夫(あるいは元夫)の小説家とは微妙な関係性を続けている。息子が結婚するが、その嫁とも対立がある。社内では、ミシェルの右腕であるアンナの夫とセックスをする関係だ。
そんな中、隣人の男性が、ミシェルの家を見張っている男がいた、と警察に通報した。覆面を被っていたという。それをきっかけにして、ミシェルはその隣人の男性を気にかけるようになるのだが…。
というような話です。
こう書いてもストーリーが全然想像出来ないでしょうが、観ていてもどんな風に展開していくのか全然想像出来ません。ミシェルを取り巻く様々な情報が色んな形で提示されるのですが、それらがどう繋がっていくのか分からないのです。結局、タイトルの「ELLE」の意味も分からないままでした。それでも面白かった。とにかく、全編で不安定な感覚が継続して、どうなるのか分からないストーリーが魅力的な作品でした。
ミシェルの判断の異常さは随所で感じましたが、僕が一番凄いなと思ったのが、ミシェルが事故を起こした場面です。その事故の直後で、ミシェルはある行動を取るんですが、それが尋常ではないと僕には感じられました。ホントに、ちょっと理解不能でした。
個人的には、ミシェルみたいな人は好きです。僕は、行動原理が分からない人の方が好きなので、ミシェルの振る舞いにはゾクゾクとさせられる。見ていて、次にどうするのか分からない人というのは面白い。確かに、近くにいたら色々面倒なことに巻き込まれそうな気はするんだけど、魅力的な女性だと思う。
映画の面白さを全然伝えられていないと思うけど、僕としては非常に面白い映画でした。ミシェルの女性の、体当たりの演技も良かったです。あと、フランス語(だと思うんだけど)は、やっぱりかっこいいなと思いました。
「エル ELLE」を観に行ってきました
主人公のミシェルがイカれている、というのは、面白さを生み出す理由の一つだろうと思う。ミシェルの行動原理は、うまく掴むことが出来ない。こういう場合、普通こういう行動をするだろう、という予測を、ことごとく裏切る。
最初こそ、ミシェルのその行動には違和感しか抱けなかった。行動があまりにも過激だからだ。映画の比較的初めの方で、ミシェルが車の窓ガラスを割るシーンがある。何故そんなことをしたのか、という状況説明はしないことにするが、ミシェルの判断は、僕からすると常軌を逸しているように感じられた。そういう行動が、いくつも重なる。その尋常ではなさに、最初はついていくことが出来なかった。
しかし、ある事実が判明することで、そこに一定の説明がついたと観客が納得させられてしまう。なるほど、こういう過去を持っているのならば、こういう振る舞いをするような人になっても仕方ないのかもしれない、と思える。そう思わされて以降は、どこかミシェルを受け入れている自分がいた。不思議な魅力があるのだ。
しかし、イカれているのは決してミシェルだけではない。程度の差こそあれ、ミシェルの周囲にいる人間も大分イカれている。物語はミシェルが中心なので、ミシェルとの関係で他の人との関係も描かれていくことになるのだが、ミシェルの行動や判断に対して、周りにいる人間もちょっとズレた反応をする。それが、ミシェルがいることによる歪みなのか、個々人が持つ歪みなのかは分からないが、とにかく、大体の人がイカれているのだ。
この映画を見て、まったく意味が分からない、という感想を抱く人もきっといるだろうと思う。それぐらい、彼らの価値判断は「共感」とは程遠い。しかし僕は、観ていくに従ってどんどん面白く感じられるようになった。皆、普通に働き、普通に日常を送っているように見えるのに、皆どこか狂っている。観れば観るほど、日常が歪んでいくような感じがして、そういう部分に面白さを感じたんだろうと思います。
内容に入ろうと思います。
ゲーム会社の社長であるミシェルは、ある日自宅にいるところを覆面を被った男に襲われ、レイプされた。しかしミシェルは、そのことを警察に通報しなかった。ミシェルには、警察とはどうしても関わりたくない理由があったのだ。
レイプされた後も、いつも通りの日常を送るミシェル。しかし普段からミシェルの周りには、ミシェルに対する悪意で溢れている。社内でも、ミシェルは嫌われている。カフェでは、知らないオバサンからトレーの中身をぶっかけられた。そう、ミシェルはある意味で有名人であり、そういう誹謗中傷と共に育ってきたのだ。
母親は若い恋人と付き合い、夫(あるいは元夫)の小説家とは微妙な関係性を続けている。息子が結婚するが、その嫁とも対立がある。社内では、ミシェルの右腕であるアンナの夫とセックスをする関係だ。
そんな中、隣人の男性が、ミシェルの家を見張っている男がいた、と警察に通報した。覆面を被っていたという。それをきっかけにして、ミシェルはその隣人の男性を気にかけるようになるのだが…。
というような話です。
こう書いてもストーリーが全然想像出来ないでしょうが、観ていてもどんな風に展開していくのか全然想像出来ません。ミシェルを取り巻く様々な情報が色んな形で提示されるのですが、それらがどう繋がっていくのか分からないのです。結局、タイトルの「ELLE」の意味も分からないままでした。それでも面白かった。とにかく、全編で不安定な感覚が継続して、どうなるのか分からないストーリーが魅力的な作品でした。
ミシェルの判断の異常さは随所で感じましたが、僕が一番凄いなと思ったのが、ミシェルが事故を起こした場面です。その事故の直後で、ミシェルはある行動を取るんですが、それが尋常ではないと僕には感じられました。ホントに、ちょっと理解不能でした。
個人的には、ミシェルみたいな人は好きです。僕は、行動原理が分からない人の方が好きなので、ミシェルの振る舞いにはゾクゾクとさせられる。見ていて、次にどうするのか分からない人というのは面白い。確かに、近くにいたら色々面倒なことに巻き込まれそうな気はするんだけど、魅力的な女性だと思う。
映画の面白さを全然伝えられていないと思うけど、僕としては非常に面白い映画でした。ミシェルの女性の、体当たりの演技も良かったです。あと、フランス語(だと思うんだけど)は、やっぱりかっこいいなと思いました。
「エル ELLE」を観に行ってきました
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