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「君の膵臓をたべたい」を観に行ってきました



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もし原作を読んでいなかったらボロ泣きしていたかもしれない―。
そんな風に思わされる映画だった。

原作の感想も載せておこう(こちら)。
僕はこの作品について、これ以上の文章が書けるとは思わないので、こちらでは、映画としてどうだったのか、という点をメインに文章を書いていこうと思う。


「日常」を生み出すものは何か―。
普段、当たり前のように「日常」の中にいる僕らは、そんなことを考えない。
海で泳いでいる魚が「海」について考えないように、僕らが普段生きている中で「空気」に意識を向けないように、僕たちは「日常」というものに殊更注意を向けない。

しかし、「日常」はあっさりと崩れていく。
たぶん、土台も基礎も何もないまま建っている建物みたいなものなんだろうと思う。普段僕たちは、建物の下に土台や基礎があるかどうかなんて気にしてない。建物が建ってるんだから土台もあるだろう、と思っているぐらいだろう。しかし、いざちょっとしたことで崩れた時、そうか土台なかったんだ、と気づくのだ。

「日常」も同じ。僕たちはそこに、土台があると思い込んでいる。あって欲しいと思っている。そんなに簡単に崩れて欲しくないし、なくなったら困る。だから土台はあるはず。僕たちはそういう思い込みの中で生きている。

でも、実際はそうじゃない。「日常」は実にあっさりと奪われていく。そういう実例を僕たちは日々ニュースなどで目にする。でも、それらを見ながらも思う。あれはテレビの向こう側の話。私の「日常」には関係ない話だ、と。

いつの間にか「日常」が壊れてしまった時、僕たちはどんな風に振る舞うことが出来るだろうか?

『君はただ一人、私に普通の毎日を与えてくれるんだから』

「日常」が奪われた少女は、「日常」に接しないと決めた少年と出会うことで、かりそめの「日常」を維持していく。それが、この作品の大雑把な要約だ。少女には「未来」がない。そして少年には「関係」がない。近いうちに確実に奪われてしまう「未来」に絶望しながらそれでも「日常」を生きようとする少女と、他人との「関係」に無関心でありながらそれでも他人の「日常」を支えようとする少年が出会い、その時その場でしか生まれ得なかった「日常」が生み出されていく。その「日常」は、僕らが普段生きている「日常」とは違う。彼らが作り上げた「日常」は、近い将来確実に崩れ去ってしまうことがわかっている「日常」だ。土台も基礎も、固い地盤もないことが、最初から分かっている。そんなところに二人は、なんとか建物を建てようとする。テントみたいな一時しのぎのものではなくて、堅牢で暖かさを感じさせるような建物を。

『君がくれる日常が、私にとっての宝物なんだ』

その「日常」は、彼らにしか生み出せなかった。残り僅かな命ながら明るく懸命に病から逃げずに生きようとする少女は、崩壊の予兆を感じさせる「日常」を拒み、病気のことは周囲に伏せた。しかし、一人だけ、崩壊の予兆を感じさせない「日常」を生み出してくれそうな人がいた。その少年は、『僕はただ、向き合おうとしていないだけだよ』と自分を卑下する。でも少女にとってその少年は、ある種の希望だった。自分の人生が、未来が、希望がもしかしたら奪われないかもしれない―そんな予感を僅かでも感じさせてくれる人だったからだ。それは、少女にとって逃避ではない。多くの人は、少女にとって避けられない悲しい未来ばかり見る。でも、その少年だけは、少女の今を見てくれる。今そこに、こうして立って笑って泣いて怒っている少女を見てくれる。その視線が、少女の崩れ去る未来の予感を塗りつぶすほどの強さを持っていたということだ。

『一番辛いはずの当人が涙を見せないのに、他の誰かが辛そうにするのはお門違いだから』

少年は、自分が他人との関係の中にいることが想像出来なかった。まったく望まなかったなどということはないかもしれない。でも、得るものより失うものの方が大きいと思って避けていた。他人との関係の中で生まれるものに、価値を見出すことが出来ていなかった。でも少年は少女と出会った。そこで知った。関係の中でしか生まれないものがあるのだ、ということを。少年には、少女のことが理解できなかった。何故自分なんかと関わりを持とうとするのか、クラスの中で最も地味な自分と一緒にいて楽しいのだろうか。でも少年は少女から、自分にも誰かに何かを与えられることを知った。そして自分も、誰かに与えられたもので涙することが出来るのだと知った。

僕はこの二人の関係を、とても陳腐な表現だが、奇跡、と言ってしまいたい。

大雑把な内容は、原作の方の感想を読んで下さい。
ただ映画は、原作とかなり違う部分があります。その点を中心に書いていきましょう。

原作は基本的に、少年と少女の学生時代の話だけでほぼ完結していました。少年がいかに少女と出会い、関わりを持ち、その死に接するのか、という部分だけに焦点が当てられていました。

映画では、少年の12年後の姿が描かれる。これは原作にない設定。教師となった少年は、去年、自分が通っていた高校に赴任することになった。少女と濃密な時間を過ごした、あの高校だ。そこで少年は、長い伝統を持つ図書館の閉鎖に伴って蔵書の整理を任されることとなった。実は、図書館の膨大な蔵書に整理番号を貼り仕分けたのは、12年前図書委員だった少年と少女だったのだ。

少年は、現図書委員の男子高生がやっている蔵書の整理を手伝いながら、少女との思い出を回想していく。少年には一つ、答えを出さなければならない問題がある。かつてのクラスメートから届いた結婚式の招待状に返事を書かなければならないのだ。出席すべきかしないべきか―。少年は、判断を保留したまま、蔵書の整理を続け、少女との回想に耽る。

原作にないこのオリジナルの設定は、素晴らしいと思いました。原作の雰囲気を壊すことなく、その世界観を未来にまで延長しています。12年という時間の重みを映画の中に組み込むことで、映画のラストで現れるとある展開の深みが変わってきます。12年という時間の流れの末にその展開があるからこそ、より彼らの経験や感情がどわっと押し寄せてくる、という構成は見事だなと思いました。

また、この映画で僕が個人的に良かったと感じたのは、高校時代を演じる役者さんたちが(少なくとも僕には)全然知らない人だと思えたことです。もしかしたら彼らは、役者の世界では期待されている若手のホープたちなのかもしれませんが、僕は全然知りませんでした。アイドルとか知名度の高い若手俳優を起用するんじゃなくて、(恐らく)一般的にもさほどメジャーではないだろう若手俳優を起用することで、作品をフラットに見ることが出来たなと思います。俳優のセレクトが違ったら、映画を見た感想も大きく違っていたかもしれません。

もしかしたら、原作と映画で設定が変わっていたのも、その辺りに理由があるのかもしれない、と思いました。これは完全な邪推で根拠はありませんが、アイドルとかを起用しないでくれというのは原作者の希望だったのではないかな、と。なるべく色の付いていない俳優にしてほしい、と。しかしそれだと、興行的には厳しくなる可能性がある。だから、大人になった時代の話も組み込んで、小栗旬や北川景子などの人気俳優を登場させた、ということなのかな、と思ってしまいました。仮にそうだとしても、映画に対する評価はまったく変わりませんが。

主演の女の子は凄く良かったです。この作品で求められるのは、「誰からも人気のあるクラスの中心人物で、誰にも分け隔てなく話し、辛い病気と闘いながら前向きで、それでいて哀しさが表にまったく出ないわけではない」という、なかなか難しい女の子像だと僕は思っています。そして主演の女の子はこの難しい役をかなり見事に演じていたように僕は感じました。凄く明るいんだけど、その明るさはヒマワリみたいなピカーンみたいな感じじゃなくて、スミレとかそういう大人しめの花のような感じ。だから、普段元気に振る舞っていても、ちょっとした瞬間に些細な仕草や表情で哀しみも表すことが出来る。そこが凄く良かったな、と思いました。

映画を見ながら、どの瞬間に、ということもなく、いつの間にか涙がせり上がってくるのを感じました。原作を読んでいて、その後の展開が分かっていたので、それもあって泣く所まではいかなかったのだけど、本当に原作を読んでいなかったら泣いていたと思います。原作がバカ売れした作品の映画化って、勝手ながら大コケするようなイメージがあったんだけど、この映画に関しては映画化は完璧だったと思います。原作ファンの方も、是非見てほしいなと思います。

「君の膵臓をたべたい」を観に行ってきました







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新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
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3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
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コミック

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2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
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14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
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18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
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7位 ジュディ・ダットン「理系の子
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9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)