黒夜行

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「パトリオット・デイ」を観に行ってきました

「テロ等準備罪」、いわゆる「共謀罪」が審議されている。この記事を書いているタイミングでは、あと僅かで可決を目指そうという流れのようだ。個人的な意見では、「テロ等準備罪」には賛成できないが、とはいえ、テロを防ぐべきだという考え方は当然理解できる。

日本では、地下鉄サリン事件という、世界中を震撼させたテロが起こったことがあるが、ここ最近ではテロと呼べるような事件は起こっていないだろう。恐らくそれは、日本という国の特殊性がある。海に囲まれた島国であり、外から入ってくる人を水際で食い止めることが出来る。また、概ね単一民族で構成され、価値観や思想が近い者同士で生活をしている。そういう環境だからこそ、テロによって自分の主張を伝えよう、何かを破壊してやろう、という気持ちに向きにくい、という面はあるだろう。

とはいえ、状況はどんどんと変化している。日本は観光立国を標榜し、世界中から観光客を呼び寄せようとしている。2020年には東京オリンピックも控えている。また、移民が仕事を奪う、という世界の潮流に反し、日本では人手不足が深刻化している。一時期企業が、アルバイトを社員に切り替えるという流れがあったが、あれも人材の流動化を防ぎ人材不足に陥らないようにするためだ。そのために、特に介護などの分野で外国からの働き手をより受け入れなければならない、と言われている。

外国人がやってくるからと言ってテロが起こるわけではない。とはいえ、先程挙げた「外から入ってくる人を水際で食い止める」「概ね単一民族で構成されている」という日本の特殊性が、状況の変化によって崩れてきているのは間違いないだろう。それに、世界中でテロが頻発している。日本が標的にならない、と考える理由はどこにもない。

だから、テロが起こることを前提に、僕たちは様々なことを考えていかなければならない、ということは十分に理解できる。

昨日、「橋本×羽鳥の番組」というテレビ番組の中で、「テロ等準備罪」が取り上げられていた。様々な議論が展開されていたが、パネリストたちの主張は概ね似たような方向を向いていたと思う。それは、

「テロ対策は必要だ。そのためには、捜査権限の拡大が必要だ。しかし政府は、それをやらないと嘘をついている。そんな信用できない政府が権限を拡大することには納得がいかない」

この主張は、凄くよく分かると感じた。

「捜査権限の拡大」というのは、つまり通信傍受などの監視だ。それが強化される、ということだ。心情的には嫌だし、監視されていると思いながら生活をすることには嫌悪感がある。しかし、もし本当に準備段階でテロを摘発するのであれば監視は必要だし、それで被害を未然に防ぐことが出来るなら許容してもいいかもしれない、という気持ちもないではない。

しかしそのためには、その権限を有する存在に対する信頼が絶対的に必要だ。プライバシーと引き換えに、あなた方に監視する権利を与えます、というのは、信頼関係が構築されているところでしか成り立たない。そして、政府に対して不信感を募らせるような様々な出来事が日々ニュースで取り上げられている現状の中で、そんな信頼関係が構築されるはずもない。政府は、本当に「テロ等準備罪」をその趣旨通りに機能させるつもりであるならば、信頼感を高めるように振る舞わなければならない、と思うのだ。

そして、そういう振る舞いが見られないからこそ、「テロ等準備罪」は、テロを事前に防ぐという本来の目的のためではなく、もっと違う思惑のために成立させようとしているのではないか、と勘ぐられてしまうのだ。

「テロ等準備罪」に関わらず、何らかの法律や制度を作れば、テロを未然に防ぐことは出来るだろうか?
僕は、無理だと思う。何故なら、テロは一人でも出来る(つまり、通信を使わずに計画出来る)し、「監視されている」ことが前提となれば、その監視の目を掻い潜りながら計画を立てる方法は必ず発見されるだろうと思うからだ(例えば、手紙を使ってやり取りすれば計画を事前に知ることは不可能なのではないか)。AIとのが進化すれば、より高度なテロも登場することになるだろう(自爆テロロボットなどを開発されたら、手も足も出ないのではないだろうか)。

だったらどうすればいいのか、ということは分からない。テロで命を落とすことは、本当に不幸であり避けなければならない。とはいえ、それを完全に防ぐ方法があるとも、僕には思えない。テロがなるべく起こりにくい世の中を世界中で目指しながら、どうしても起こってしまうテロは自然災害のようなものとして諦めるしかないのではないか。僕は残念ながら、そんな悲観的な結論しか持つことが出来ない。

内容に入ろうと思います。

2013年4月15日。「愛国者の日(パトリオット・デイ)」に行われるのがボストンマラソンだ。アメリカで最も古い歴史を持つマラソン大会であり、50万人もの観客が詰めかける一代イベントだ。ボストン警察巡査部長であるトミーは、何かをしでかしたために今は謹慎中のような扱いだ。翌日に迫ったボストンマラソンで警備を担当すれば、晴れてお仕置きは終了、通常業務に戻れるはずだった。
しかしその日は、普通には終わらなかった。二人組の若者が、観覧車がひしめきあう歩道上に爆弾を置き爆発させたのだ。
現場は大混乱に陥った。負傷者を必死に運び出している間にFBIがやってきて、テロと断定。FBIの指揮の元大規模な捜査が行われることになった。
爆発から犯人逮捕まで僅か102時間。その間に、一体何があったのかを緻密に描き出していく物語だ。

非常に真に迫る映画だった。そう感じたのには、この映画の構成にもある。場面場面で、当時の実際のニュース映像などが流され、虚構と現実が入り混じっていく。さらに映画の最後では、その映画に登場した人物のモデルとなった人たちがインタビューを受けていた。警官、FBI、被害に遭った者など、彼らがそこで何をし、何を感じたのかが語られる。全体的にはフィクションなのだが、ノンフィクションの要素を多分に取り込んだ映画だった。

またこの映画では、町を愛する者たちの強い気持ちみたいなものが随所で描かれていく。FBIが捜査の主導権を握るのだが、地元ボストンの警察は、自分たちの生まれ育った土地でこんなバカげた事件が起こったことに怒りを感じている。この事件は、自分たちの手で何とかしなければ気が済まない。そういう強い思いが彼らを動かしていく。

捜査やその後の展開は、ホントにこんなことが現実に起こったのか…と疑いたくなるようなものだ。メチャクチャとしか言いようがない。主義主張があればテロが許されるなどということはあり得ないが、しかしテロを起こした二人には真っ当な主義主張があるようにも感じられない。それなのに、ただ逃げるためだけにあれだけの抵抗をするというのは、ちょっと信じられない思いだった。

捜査の過程で、容疑者の顔写真を公開するかどうかが議論になる場面がある。激論が交わされたが、結局事態の急変によってある決断がなされることになる。僕はそれを見ながら、結果的にその行為が状況を混乱させることになってしまったのではないか、と感じた。確かに難しい決断だったことは分かるし、色んな人の感情的な部分も理解できる。とはいえ、やはりあれは間違いだったのではないか、という気がした。

決して多くはないが、被害に遭った者たちにもきちんと目が向けられていく。彼らがその後、自分がテロに遭ったという事実をどう受け止めていったのか、最後の本人たちのインタビューでそれは明らかになっていく。もちろん、彼らほどタフにはいられなかった者も多いはずだろう。被害を受けた人がきちんと前を向いて進んでいけるように祈っている。

「パトリオット・デイ」を観に行ってきました

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2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
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3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
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17位 神林長平「言壺
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19位 奥泉光「黄色い水着の謎
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新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
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10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
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7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)