黒夜行

左脇のプロフィールにある「サイト全体の索引」から読みたい記事を探して下さい。

「メッセージ」を観に行ってきました



style="display:block"
data-ad-client="ca-pub-6432176788840966"
data-ad-slot="9019976374"
data-ad-format="auto">



僕が好きな話がある。
フランス語には、「蝶」と「蛾」を区別する言葉はない、というものだ。
どちらも同じ単語(「バタフライ」なのかな?)で表現されるのだと言う。

最近知った話もある。
数学には、「ユークリッド幾何学」と呼ばれるものがある。これは本来、紀元前の時代から、ただ「幾何学」とだけ呼ばれていた。「ユークリッド幾何学」という名前が付くようになったのは、ごく最近のことだ。
では何故そう呼ばれるようになったのか。
それは、「ユークリッド幾何学(幾何学)」が成り立たない、新たな幾何学が発見されたからだ。数学者はそれに、「非ユークリッド幾何学」という名前をつけた。それと同時に、「幾何学」も、「ユークリッド幾何学」と呼ばれるようになったのだ。

この話から何が分かるのか。
それは、「言語」が生まれる瞬間についてだ。

モノや概念があれば言語が生まれるのではない。
言語は、モノや概念同士を「区別する」必要に迫られた時に生まれるのだ。

僕はこのことを、かつて何かの本で読んだ。
ウィトゲンシュタインの言語ゲームの話やソシュール言語学の話の流れで読んだ記憶があるのだけど、ちゃんとは覚えていない。
フランスでは、「蝶」と「蛾」を区別する必要に迫られることはなかった。
だから両者は、同じ単語で呼ばれることになっているのだ。
逆に、外国語を学ぶと良く出て来る「男性名詞」「女性名詞」という区別には、日本語にはない。
名詞を男性・女性で区別する必要がなかった、ということなのだろう。

今ここに挙げた例だけから敷衍するのはちょっと無理があるのだが、
言語というのは思考や認識に影響を与える。
そのことについて触れた、「サピア・ウォーフの仮説」が、映画の中でちょっと登場する場面があった。

どんな言語体系を採用しているかで、モノの見え方や感じ方が変わるのだという。
例えば、日本人にはおなじみの「肩こり」という言葉が、アジア以外の国には「肩こり」という単語が存在しないようだ。
だからそういう国には、「肩こり」は存在しない。
しかし、「肩こり」という概念を彼らに教えると、途端に「肩こり」が発生する。

似たような話を思い出した。
UFOに連れ去られた、という記憶を思い出す人々のことだ(彼らには何か固有の名前がついているはずなのだけど、覚えていない)。
ある時から、UFOに連れ去られ人体実験をされた、という証言が世界中で現れ始めた。そうなると、そういう証言がますます大量に現れるようになってくる。これは、UFOを目撃した、という話でも同じだ。UFOという単語が登場したことで、UFOを目撃する人が大量に現れたのだ。

ちょっと前に、「虐殺器官」という映画を観た。この中でも、似たような話が扱われている。言語体系が内包するある文法と、脳内に存在するある器官が結びつくことで起こる未来を描く物語だ。言語体系がいかに人間の行動や思考を変えうるのかを、明確な形で示す作品だ。

言語がなければ、僕たちは現実を認識することは出来ない。例えば、目の前にリンゴがあれば、僕たちはそれを「リンゴ」という言葉で捉える。これは、分かりやすい。しかし、じゃあ人類はいつから「空気」というものを認識したのだろうか?僕たちは普段、空気を意識しない。目に見えないからだ。僕たちはもちろん、「空気」という言葉を知っているし意識すれば「空気」というものを捉えることが出来る。しかし、「空気」という言葉がまだ存在しなかった人には、空気は存在しないものだっただろう。

かつては「マイナスの数」というのは存在しなかった。「-1」のような数字は、存在しないものとして扱われていたのだ。今では、存在するかどうかはともかく、2乗して-1になるような「i」という数字さえ僕たちは認識することが出来る。しかしこれも、言葉がなければ認識することは出来ないのだ。

この映画で示されるとある結論は、僕にははっきりとイメージ出来たわけではなかった。しかし、言語が認識にどれだけ影響を与えているのか、という想像をしてみれば、あながちあり得ないことでもないのかもしれない、とも思うのだ。

内容に入ろうと思います。

言語学の第一人者であるバンクス博士は、ある日軍の招集を受けた。それは、数日前から地球上の12の地点に突如現れた謎の飛行体に関わるものだった。
アメリカ、ロシア、中国、日本など、全世界12の箇所に現れた、通称“殻”は、全長450メートルもある巨大な飛行体だ。出現目的は不明で、“殻”の出現により、世界中で暴動や株の暴落などが発生している。アメリカでは軍がただちに派遣され、“殻”の内部に入っていた。そこには、7本脚の謎の生命体が二体いた。鳴き声らしきものは採取出来たが、それが言葉なのかどうか、判然としない。
当初軍は、音声だけを聞かせてバンクス博士に解読させようとしたが、それは不可能だと断った。それにより、バンクス博士は“殻”のある現場まで招集されることになったのだ。
バンクス博士は、理論物理学者であるイアンと共に、後に“ヘプタポッド”と名付けられる謎の生命体とのコミュニケーションを図ろうとする。音声によるコミュニケーションはやはり意味不明だったが、バンクス博士が文字を見せたことで事態は展開する。「HUMAN」という文字を見せたことで、“ヘプタポッド”から文字らしき反応が返ってきたのだ。バンクス博士は、彼らに文字を教え込みながら意思の疎通を図ろうとする。
彼らは一体、なんのために地球にやってきたのか…。
というような話です。

なかなか面白い作品でした。正直、うまく捉えきれない部分もあって、全体像を把握するのはちょっと難しいと感じましたが、「未知の生命体との遭遇」という部分だけでも十分に面白い作品だと思います。

映画の中で軍の人間がバンクス博士に、「文字を教え込むなんて時間が掛かりすぎないか?」とか、最初に教え込む単語について「なんでこんな簡単な単語を?」などと問いかける場面があります。それに対するバンクス博士の回答を聞いて、なるほど、未知の言語を持つ存在とのコミュニケーションにはこういう問題があるのか、と感じました。

軍が最も聞きたい質問は、「何故地球にやってきたか?」です。そしてこの質問を問うためには、様々な前提を理解しなくてはならない、とバンクス博士は言います。例えば、この問いでは「目的」を聞いているのだから、まずは「目的」という概念があるのかを確認しなければならない。あるいは「意志」。もし彼らが、ただ本能に従っているだけであれば、「目的」を聞いても意味がない。そこに「意志」があるのかどうか確認しなければならない。また、「個の意識」があるのかどうか。“ヘプタポッド”は二体いるが、それぞれが個として識別される存在なのか、あるいは総体として一つの存在なのか。その辺りのことをきちんと理解してからでないと、「何故地球にやってきたか?」という問いを発して、その答えが返ってきたとしても、意味のある情報にならない、というのです。なるほど、確かにそれはその通りだなと思いました。

僕は理系なので、どうしても理系的には、未知の生命体とのコミュニケーションは「素数」や「フィボナッチ数列」などで知性があるのかどうかを確かめる、的な方向に言ってしまいます。実際に、そういう調査も同時に行われていたようです。“ヘプタポッド”は、代数学を理解できないのに複雑な数学を理解したと驚く場面がありました。

けれど、知性のあるなしもそうだけど、コミュニケーションを取っていくためには、まず相手がどんな前提に立っているのか、ということをきちんと理解しなければならない、というのは、なるほどなと感じました。

彼らが地球にやってきた目的については、正直、はっきりとは捉えきれませんでした。ここは、ちょっと難しいと思いました。ただ、言語と認識が密接に結びついているのだ、ということが大前提となっている話で、はっきりと想像することは難しいんだけど、方向性としてなんとなくのイメージは出来ないことはないかもしれない、と思いました。

いや、もしこの作品の中で示唆されていることが、言語によって本当に可能なんだとしたら、それは凄く面白いなと思います。もしそうであれば、僕たちの認識が言語に影響を与え、言語が僕たちの認識に影響を与えることで、どんな言語を使っていようが僕らが当然だと考えているとある大前提を覆すことが出来るかもしれない…。そういう可能性の話は、ちょっと考えてみると面白いなと思いました。

「メッセージ」を観に行ってきました



関連記事

Comment

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

http://blacknightgo.blog.fc2.com/tb.php/3318-7cd675a1

 | ホーム | 

プロフィール

通りすがり

Author:通りすがり
災害エバノ(災害時に役立ちそうな情報をまとめたサイト)

サイト全体の索引
--------------------------
著者名で記事を分けています

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行~わ行

乃木坂46関係の記事をまとめました
(「Nogizaka Journal」様に記事を掲載させていただいています)

本の感想以外の文章の索引(映画の感想もここにあります)

この本は、こんな人に読んで欲しい!!part1
この本は、こんな人に読んで欲しい!!part2

BL作品の感想をまとめました

管理人自身が選ぶ良記事リスト

アクセス数ランキングトップ50

TOEICの勉強を一切せずに、7ヶ月で485点から710点に上げた勉強法

一年間の勉強で、宅建・簿記2級を含む8つの資格に合格する勉強法

国語の授業が嫌いで仕方なかった僕が考える、「本の読み方・本屋の使い方」

2014の短歌まとめ



------------------------

本をたくさん読みます。
映画もたまに見ます。
短歌をやってた時期もあります。
資格を取りまくったこともあります。
英語を勉強してます。













下のバナーをクリックしていただけると、ブログのランキングが上がるっぽいです。気が向いた方、ご協力お願いします。
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

アフィリエイトです

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
14位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
11位
アクセスランキングを見る>>

アフィリエイトです

最新記事

サイト内検索 作家名・作品名等を入れてみてくださいな

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

カウンター

2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)