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しつけ屋美月の事件手帖 ~その飼い主、取扱い注意!?~(相戸結衣)

少し前、国が騒音に関する指針を発表した中に「風鈴」という項目が入っていたというニュースを見かけた。日本では今、風鈴の音が騒音だと捉えられてしまうらしい。世知辛い世の中だと思う。

生活環境をどこまで自分にとって快適なものに保つか、というのは多くの人にとって重大な問題だろう。しかし、ちょっと度が過ぎる、と感じることは多い。他人が住む街中で暮らしている以上、多少の不都合は仕方ない。そういうことをすべて排除したいなら、山奥にでも住むしかない。

とはいえ、当然だが、限度もある。その辺りの線引が難しいのだけど、ペットが多大な迷惑を掛けるということも当然あるだろう。だからこそ、ペットの躾は大事だなと、本書を読んで改めて感じた。

僕自身はペットという存在には興味がない。犬にも猫にも特に関心はない。だからペットに思い入れを持つ人の気持ちはよく分からないが、社会の中でペットと人間が共生出来るように奮闘する人々には、頑張ってほしいと思う。

内容に入ろうと思います。
本書は、4編の短編が収録された連作短編集です。
天野美月は、「愛犬しつけ教室STELLA」で、飼い犬を躾ける訓練を行っている。オーナーの須寺は著名な動物行動学の専門家であり、老後の道楽的なスタンスで経営を続けている。美月は、幼馴染であり獣医でもある糸川宙と共に、日夜地域のペット問題に関わり合っている。

「第一章」
二階堂という高齢夫婦が勝っているゴールデン・レトリバーが薬を誤飲し、糸川が働く「スバル動物病院」に運び込まれてきた。大事には至らなかったが、問題はその体重だ。オスの標準体重が35キロ程度であるのに、そのゴールデン・レトリバーは50キロもあったという。飼い主への教育が必要かもしれない、とのことで、美月に話が回ってきた。
しかし二階堂氏は、自分が正しいと信じて疑わない人物。少しでも否定するようなことを言えばすぐに関係が途絶えてしまうだろう。金も時間もある彼らは、飼い犬のことも大事に思っているので、餌をあげすぎてしまう、というのがどうにも解せないのだが…

「第二章」
通勤途中、愛犬であるスピカに挨拶をしていく眼鏡屋の少年から、美月はある日手紙を受け取った。夜8時、北瀬川沿いのドッグランまで来てもらえないか、と書かれていた。行ってみるとそこには、三条文哉と名乗る眼鏡屋の店主と、一匹の迷子犬らしいチワワがいた。店の前に捨てられていたのだ、という事情を聞いた美月は、飼い主を探し出す手はずを整えつつ、その間三条家でそのチワワを預かってもらう態勢を整えた。
しかし、おかしい。少年も店主も、何故かチワワを飼うつもりでいる。飼い主が見つかったら手放さなければならないのに。それに少年は、あの日ドッグランにはやってこなかった。何がどうなっているのか…

「第三章」
美月の高校時代の友人である美少女・一ノ瀬ミラは、重大な問題に直面していた。12年連れ添ってきた柴犬の北斗を取るか、彼氏と結婚するか、だ。彼氏は、犬が苦手なのだという。一緒に住むのはどうしても難しい。そう言われているらしい。相談を受けた美月は、難しい問題だと思いながらも、なんとか打開策を見出すが…。

「第四章」
きっかけは、五島陽華とその友人のケンタが「STELLA」にやってきたことだった。陽華が飼っている「ソラ」というトイプードルが連れ去られた、というのだ。陽華の友人である八木沼ユキナの母親が大の犬嫌いで、テレビにも出る代議士の妻であるその母親の扇動で、町内の犬規制を強めようという動きがここ最近活発になっている。ソラがいなくなった事件は、その流れをさらに加速させる結果となり…。

というような話です。

なかなか面白い作品でした。美月は犬の訓練士として働くが、犬を訓練するというのは同時に、飼い主を訓練するということでもある。必然的にカウンセラーみたいなこともする立ち位置になり、そこからトラブル解決という流れになっていく。

犬に限らず、ペットに愛情を注ぐ人の中には、怖いなと感じるほどの愛情を見せる人もいる。本書のプロローグで登場するドーベルマンの飼い主などはその典型だろう。自分の飼い犬さえ良ければいい、悪いのはすべて周り、というような歪んだ発想を持たれると、怖いなと感じてしまう。

美月は普段から、そういうタイプの人とも関わっていくわけで、対人対処能力は高いだろう。相手の立場に立ってどうすべきか、ということを常に考えている。本書は、犬を取り巻く物語ではあるが、飼い主とも対処する美月の存在が、ただそれだけの物語にはしない。

僕自身は犬にはさほど興味は持てないが、そんな人間でも犬の習性やふるまいの意味などに多少は関心が持てるように描写がされている。物語が小粒でちょっと派手さに欠ける部分がアピールのしにくさに繋がってしまうが、読みやすくてほどよく面白いという意味では手に取りやすい小説だ。

幼馴染である美月と糸川の関係もなかなか面白いのだけど、個人的にはこの二人の関係性の話がもう少しあってもいいような気がした。四話目の最後の方の美月のセリフはなかなか良かったけど、それまでの二人に何か進展なり変化なり軋轢なりがないので、ちょっと唐突だなぁ、という感じもしてしまった。

使命感を持って働く面々と、犬との様々な接し方を見せる者たちが関わり合う中で、犬を含めた家族との関わり方を問いかけていく物語だ。

相戸結衣「しつけ屋美月の事件手帖 ~その飼い主、取扱い注意!?~」

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2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
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16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
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1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
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4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
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7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
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1位 千早茜「からまる
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
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14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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7位 「自分探しと楽しさについて
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1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
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7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)