自分の考えを「5分でまとめ」「3分で伝える」技術(和田秀樹)
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内容に入ろうと思います。
本書は、まあタイトル通り本であると、とりあえず言うことは出来ます。
本書では「まとめる力」という言葉が多用されます。長い文章や誰かとの会話、本や資料の内容などを要約して言葉にする、というような力のことを指しています。
日本人は、この「まとめる力」が身についていない人が多い、と著者は言います。その理由を、国語教育に求めます。
『ただ、日本の国語教育においては読解力というと、登場人物の心情を理解する「心情読解」のことと考えられていたので、それを身につけるのはとてもむずかしかったし、結果としてきちんと「まとめる力」のトレーニングを受けてこなかったことになります』
この指摘は、なるほどという感じがしました。僕も確かに、子供の頃は、あまりちゃんと文章が書けなかった記憶があります。このブログは2003年に始まりましたが、2003年頃の記事を読むと、今とは全然違って驚きます。今とは比べ物にならないくらい文章を書く力がなかったし、それはつまり「まとめる力」がなかったということだと思います。
欧米での国語教育についても触れています。
『一方、外国では、長い文章や論文を読んで「内容をまとめなさい」という教育になります。「まとめる力」をしっかり身につけさせようとします。そうしなければ「読解力」が育たないと考えられているからです』
まあ、どちらが良い悪いというのは難しい部分もあるでしょう。僕はそもそも日本の国語教育は嫌いですが、それは「主人公の心情」に正解があるように教えられるからです。試験をしなければいけないので仕方ないのですが、僕には納得が出来ません。ただ、「主人公の心情」を問うことそのものは悪くないと思っています。そういう問いかけをし、その問いかけに答える経験によって、豊かな情緒みたいなものが育まれる、ということだってあるでしょう。だから、一概に日本のやり方を否定するつもりはありません。
とはいえ、その一方で、「まとめる力」は絶対的に必要です。外国にように国語の授業で訓練できるなら別ですが、そうではないのだからなんとか身につける方法を考えなければいけません。その指針になる、と言ってもいい作品だとは思います。
ただ…僕が本書を読んで思うことは、「この作品はもっとまとめられなかったのか」ということです。全体を読んで、本書の内容なら1/3ぐらいに圧縮出来そうだな、と僕は感じました。
タイトルに「技術」と入っているのだから、「どうすれば「まとめる力」が身につくのか」ということが書かれていることを期待したいところですけど、実際の中身は少し違います。本書は、「あなたが別に原因があると捉えている問題は、実は「まとめる力」不足が原因なんですよ」という事例をたくさん載せている本、という感じです。口下手、話が面白くない、長い文章が書けない、的確な指示が出せない…。それ、全部「まとめる力」不足なんですよ!ということが書かれている本です。
「技術」ということで言えば、「メモを取る」「結論から話す」「話し方の型を持つ」「本はこう読む」みたいなことが、それぞれのページにそこそこ散りばめられている、という感じでしょうか。正直、本書を読むだけでは、「まとめる力」を身につけるためのトレーニングをスタートさせるのは難しそうな気がしてしまいました。
とはいえ、本書にも利点はあります。それは、「問題を問題と捉えることが出来る」という点です。
誰の言葉だったか忘れましたが、「問題は、それが問題であると認識した時点で7割解決している」というようなことを言った人がいたはずです。なるほど、確かにその通りだな、と思います。問題を抱えている人でも、自分ではそれを問題だと認識出来ていない人がいます。あるいは、問題だとは思っているのだけどその原因をまるで捉え間違っているという場合もあるでしょう。
そういう人が本書を読むと、著者が挙げた様々な事例に対して、「なるほど、これに当てはまっている自分は「まとめる力」不足なのだな」と認識出来るのではないか、という感じがします。これは、苦手克服の大きな一步と言えるでしょう。そういう意味で本書は役に立つと言えるかもしれません。
本書では色々書いていますが、僕は、「まとめる力」を身につけたければまとめてみるしかない、と思っています。僕はこのブログにひたすら文章を書き続けたことで、今ではすいすい文章が書けるようになりました。情報を取り込んで自分の頭の中でまとめて、それを文字にしてアウトプットするというのは結構出来る方だと思います。僕も、最初は文章なんて全然書けませんでした。それでも、無理矢理でもいいから書き続ければその内身につくと思います。
あるいは、自分で文章を書くのが苦手なら、誰かの文章を写してみるというのもいいんだろうと思います。「天声人語」を書き写す、みたいな話ってよくありますけど、あんなイメージです。前に何かで読みましたけど、「天声人語」をまず写して、それからその内容を半分の文字数で要約してみる、あるいは2倍の文字数に増やしてみる、という訓練をしたらいい、と書いている人がいました。「天声人語」に限らず、新聞記事(ネットでも拾えるでしょうし)で同じことをやってみればいい訓練になるのではないかと思います。
もっと日常的に出来るかもしれないことだと、メールやLINEで絵文字やスタンプを使わないことにしてみる、というのは面白いと思います。絵文字やスタンプに載せた気持ちや感情を、言葉だけで表現するとしたらどうするか。有名ブロガーであるちきりんは、「(笑)という表現さえ自分は使わない。(笑)で表現していることこそ、文字にしなければ表現力は鍛えられない」というような趣旨のことを書いていたように思います。
問題を認識する、という意味では役立つ本ではないかと思います。
和田秀樹「自分の考えを「5分でまとめ」「3分で伝える」技術」
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