黒夜行

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「BUBUKA 2016年11月号」を読んで

秋元真夏には、あまり関心を持っていなかった。

齋藤飛鳥は自分で、「THEアイドルを目指していない」とインタビューなどでよく語っている。同じ言葉を使えば、秋元真夏は「THEアイドルそのもの」という風にしか見ていなかった。秋元真夏は、乃木坂46というグループの中では異質な存在だが、アイドル全体で見れば、秋元真夏のような振る舞いは一般的ではないかと思う。可愛く見られる振る舞いをする、ファンが喜んでくれそうな発言をする、いつどんな時も笑顔でいる。秋元真夏はそういう意味でアイドルの王道を進もうとしているのだが、そういう秋元真夏にはさほど関心が持てないでいた。

しかし、「BUBUKA 2016年11月号」の中の、齋藤飛鳥とのインタビューを読んで、こう思うようになった。
齋藤飛鳥と秋元真夏は、発露の仕方が違うだけで、同じ根っこを持っているのではないか、と。

自分を隠す方法には、色んなやり方がある。
齋藤飛鳥は、自分を隠すために、「見せない」というやり方を選択した。

『もともと私はネガティブだから不安やプレッシャーはずっと抱えた状態ではあったんですけど、でも誰かに言うほどではなかったし、言うのもダサいから自分のなかに留めていたんです』

齋藤飛鳥は、平静を装いながら、辛い部分は全部内側に押し込んで外に出さない。そういう発言はこれまでも目にしてきたし、齋藤飛鳥はそんな風にうまく自分を隠すやり方を身に着けてきたのだと思う。

秋元真夏もまた、自分を隠している。そのやり方は、「違う自分を見せる」というものだ。

『でも真夏も根性があるタイプなんですよ。見た目や雰囲気は女の子らしいし、出て来る言葉も女の子だなって思うことが多いんですけど、すごく我慢強いところがあって、さっき自分でも言っていたように真夏も溜め込むタイプで誰かに相談したりしないし、あくまで「秋元真夏」でいようとしているんですよ』

秋元真夏が、「秋元真夏」というアイドル像を意識的に見せている、ということは知っていた。しかし僕はそれを、「仕事と割り切っている」というぐらいの捉え方しかしていなかった。乃木坂46という、アイドルとして王道を行くメンバーが少ないちょっと特異なグループに、他の一期生から遅れて加入した秋元真夏。その中で自分のポジションを確保するために、敢えて乃木坂46らしくない「THEアイドル」というポジションを確保する。そういう目的なのだとずっと思っていた。

もちろん、そういう理由もあるだろう。しかしどうもそれだけではないようだ。秋元真夏が「秋元真夏」のような違う自分を作り出していくのは、自分の人生を生き抜くためのある種の戦術として身についているものであるらしい。

『ちょっと暗い話になっちゃいますけど、小3のときにいじめられていて、周りのひとを疑うようになってしまったんですよ。それからずっとですね。そのときに相談した先生も信用できなくて、大人も同世代もみんな疑うところから始まったから、ひとを信用するのにすごく時間がかかってしまって。だからとりあえずバリアを張って、徐々に信用できるところを探していくのがいいのかなって。そういう結論に行き着いたんです』

この発言を読んで、なるほど、秋元真夏は齋藤飛鳥と同じ根っこを持っているのか、と感じたのだった。

『そこで話を聴いてもらったときに「あ、真夏には言えるな」と思って。それから真夏にだけ話したりとか、言わなくてもなにかあったら目が合ったりとか(笑)』

ここ最近買う、乃木坂46の特集がある雑誌には、「齋藤飛鳥は秋元真夏に支えられた」というような趣旨の文章や発言が結構見つかる。今回のツアーを通じて、齋藤飛鳥と秋元真夏は接近したようだ。

『もとから真夏のことは大好きだったんですけど、たぶんどこかで胡散臭さを感じていたんですよ(笑)でも、今回のツアーでそれは消えました。本当にいいひとなんだなって(笑)』

メンバーに対してだけではなく、家族や友達にもほとんど悩みを言わないという齋藤飛鳥。そんな齋藤飛鳥が、秋元真夏にだけは話せるという感触を掴む。そこには色んな要因があるだろうが、齋藤飛鳥が秋元真夏のことを同根だと認識したということなのではないか、という風にも捉えることが出来る。

『ただ、飛鳥にならウザいって思われてもまあいいかなって』

『あのときの飛鳥を見てからは、自分がどう思われてもいいからとりあえず飛鳥の近くにいてあげたいなって』

秋元真夏のこのスタンスも、齋藤飛鳥にとってはいい距離感だったのだろう。たとえば僕の話をすると、おおっぴらに心配されたり、悩みを大げさに捉えられたりするのは得意じゃないし、困る。そんな反応をするだろうな、という人には、ちょっと何も言えなくなる。むしろ、どれだけ深刻な話でも「へぇ」ぐらいに受け取ってくれると気が楽だし、そんな話をした後も特に態度が変わらないとなお素敵だ、と思う。齋藤飛鳥もきっと、似たような感覚を持っているような気がする。そんな齋藤飛鳥の感覚に、秋元真夏のスタンスがマッチしたのだろう。

『でも、真夏は自分からいろいろと動くからお節介って言ってるんだと思うんですけど、傍からするとぜんぜんお節介な感じはしなくて。別に押し付けもしないし、逆にいい距離感だと思います。話やすくする空気をつくってくれるのが上手なんですよね。そう、上手なお節介。』

秋元真夏も、他人に対してバリアを張っていると言っているように、距離感を大事にする人なのだろう。だから、齋藤飛鳥が必要とする距離感が分かる。しかし、それだけでは、齋藤飛鳥を支えるのは難しい。何故なら、齋藤飛鳥が必要とする距離感は、手を差し伸べて支えるには遠すぎるからだ。

だから、秋元真夏の「おせっかい」というスタンスが生きてくる。秋元真夏は、齋藤飛鳥が必要とする距離感を理解した上で、「私っておせっかいだからエヘヘ」というスタンスで、その距離をちょっと縮める。齋藤飛鳥も、「鬱陶しいなぁ」と思いつつも、「おせっかいだからしょうがないか」という諦めでその距離の詰め方を少しずつ許容する。そういう関係性をベースとして築いていたからこそ、齋藤飛鳥がセンターになって一杯一杯になっているまさにこのタイミングで、齋藤飛鳥は秋元真夏に手を伸ばしたし、秋元真夏は齋藤飛鳥が伸ばした手を掴める場所にいられたのだろう。

少し前に買った「AKB新聞2016年9月号」の齋藤飛鳥と秋元真夏のインタビューの中でも、秋元真夏はこんな風に言っている。

『いや、違うんです。今までは、誰かが初めてセンターになった時も、自分のことだけで精いっぱいだったんですけど、ようやく周りにも気を配れるようになってきていて。そんな中での飛鳥のセンターだったので、みんなでサポートして、飛鳥らしく自由にやれるようにしたいな、と思っていたんです。でも結局、できなかった。あれだけ泣いて爆発しちゃうくらいに抱えていたのを知って、すごく反省しました』

「すごく反省しました」と言える秋元真夏が凄いと思う。他のメンバーに目を向けて実際に行動に移せるメンバーとしては、生駒里奈や松村沙友理が浮かぶが、秋元真夏もその一人だと言える。秋元真夏は、自分自身も「THEアイドル」を演じて輝きながら、同時に、グループ内の触媒としての役割を果たしている。「THEアイドル」としての秋元真夏には今後も興味が持てないような気がするが、僕らファンの視界にはほとんど映らない、陰で暗躍(?)しているだろう秋元真夏には、今回のインタビューを通じてと強く関心を抱いた。

『私はあまりひとに興味がないからみんなのことをよく理解できていなかったんですけど、』

こういう発言が出来る齋藤飛鳥が、僕は好きだ。僕も少し前から、「ひとに興味がない」と言えるようになったけど、昔はそんなことを言ったら人間関係やっていけない、と思っていた。齋藤飛鳥は18歳にして、しかもアイドルという多くの人に好かれなければならない立場でありながら、こういうことをさらっと言ってのける。その強さに惹かれる。

秋元真夏はそれとは真逆の方向を向いている。

『あとはもう人間力。真夏だからこそ、こういうキャラでいられるというのはあると思います。私は誰からも好かれたいとは思ってないんですけど、でも真夏みたいにこれだけ周りから愛されているひとを見ると、そういう人生もアリなのかなってすごい思います』

基本的には興味のないタイプのはずの秋元真夏に関心を持つに至ったのは、秋元真夏が幾重もの思考を重ねた末に今のスタイルにたどり着いたからなのだろう。その試行錯誤の一端を今回のインタビューで垣間見ることが出来た気がした。

初めこそ僕は乃木坂46を箱推ししていたが、すぐに齋藤飛鳥を好きになって、それからは基本的に齋藤飛鳥にしか目がいっていなかった。齋藤飛鳥をきっかけとして、色んな雑誌などのインタビューを読むにつれて、橋本奈々未、松村沙友理、そして今回の秋元真夏と、関心の幅が広がっていく。自分の言葉で思考し、自分の言葉で語れるメンバーが、乃木坂46には多いように思う。自分自身で考えて組み上げた価値観によって、自分の人生を進んでいるメンバーが、多いように思う。秋元真夏はこのインタビューの中で、『でも中身が!顔から入っても全然構わないから、ちゃんと中身まで辿り着いてくれ!』という風に、齋藤飛鳥の中身の深さを賞賛している。僕も同じように、顔から乃木坂46を好きになっていいから、こういうメンバーの中身にまで辿り着いて欲しいな、と思って、こんな風に乃木坂46の文章を書いているつもりだ。

最後に。このインタビューの中で一番好きなのが、齋藤飛鳥のこの言葉だ。

『(今回、センターを務め上げたことで齋藤さんが得た最大の収穫はなんだと思いますか?)
なんだろう…「人間になれたこと」がいちばんの収穫ですね』

今の齋藤飛鳥が、人間らしさまで身につけたら、最強なんじゃないかと僕は思う。

「BUBUKA 2016年11月号」を読んで
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