黒夜行

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「15thシングルキャンペーン・新センター齋藤飛鳥の1人でヒット祈願inミャンマー」を見て

24時間テレビを横目で見ながら感じることがある。
それは、みんな泣いていて不自然だな、ということだ。

僕にはそこに、「泣かなければならない圧力」みたいなものを感じ取ってしまう。
その圧力は、現実に存在するものかもしれないし、出演者個々の妄想の集合体みたいなものなのかもしれないが、いずれにしてもそういう圧力に「屈して」泣いているように見えてしまう。

これは語弊があるだろうからきちんと説明するが、
本当に悲しいと思って泣いている人ももちろんいることだろう。
それを疑っているわけではない。
ただ、実際に悲しいと感じて、あるいは感動して泣いているのだとしても、前述したような圧力がある場(あるように見える場)で泣くということは、そういう圧力に「屈して」泣いているように受け取られても仕方がない、と僕は思う。

別に24時間テレビに限る話ではない。オリンピックやワールドカップなどでみんなが日本を応援してる感じとか、バラエティ番組で、ここで笑ってというように笑い声が挿入されている感じなど、昔から「そう感じなければいけない圧力」「感じたことを表に出さなければいけない圧力」みたいなものに強烈に違和感を覚えてきたし、そういう場所からは出来る限り逃げるようにしてきた。

さて、齋藤飛鳥の話である。

先日「乃木坂工事中」で、15thシングルキャンペーンである、齋藤飛鳥のミャンマー一人旅を見た。以前齋藤飛鳥の料理に強烈なナレーションを入れたディレクターが担当だとかで、齋藤飛鳥の自由奔放な感じとか、他人とは感じ方の違う部分なんかがうまくフィーチャーされていて、齋藤飛鳥のファンとしてはとても面白い回だった。

その中で、僕がとても気になって、とても共感できた部分がある。

『撮れ高は(スタッフが)満足して帰ることはないと思います。
お寺とか好きなので凄くテンション上がってたんですけど、それであれなので(テンション上がってるように見えませんでしたよね?という確認の発言)。』

『今結構テンション上がってるし、感動してる(と割と低いテンションで話す)』

『嬉しさ伝わってますか?』

この旅中、齋藤飛鳥は何度かこういう類の発言を繰り返していた。
そしてこういう部分を、僕はとてもいいなぁ、と感じてしまう。

悲しかったら涙を流すとか、嬉しかったらはしゃぐとか、怖かったら叫ぶみたいな「反応」って、どうしても「他者」の目を意識したものになる。もちろんこれも先ほどの24時間テレビの話と同じだが、例えば「他者」が誰もいなくても嬉しかったらはしゃぐ、という人はいるだろう。しかし同時に、そういう振る舞いが「他者」を意識したものであるように受け取られることは仕方ない、と僕は思っている。

アイドルというのは、そういう「反応」をどれだけ自然に見せられるか、ということも人気を左右する一つの指標となるだろう。何らかの感情の動きに対して、それを外側に分かりやすく「反応」として提示することで興味を持ってもらったり好きになってもらったりする。それを意識的にやろうが無意識的にやろうがどちらでも構わないが、いかに自然にそう振る舞えるかで、人気や評価が変わってくる存在であるように僕は感じている。

齋藤飛鳥は、恐らくではあるが、そういう存在としてのアイドルを「THEアイドル」と呼んでいる。

齋藤飛鳥はインタビューなどで頻繁に、「昔はTHEアイドルを目指してたけど、そうじゃなくても受け入れられることが分かってからはそれを目指さなくなった」というような発言をしている。そこで言う「THEアイドル」は、恐らく僕が前述したようなものではないかと思うのだ。

齋藤飛鳥は、その「THEアイドル」を目標にすることを止めた。「THEアイドル」を目指していた頃の齋藤飛鳥のことは知らないが、僕は今の齋藤飛鳥の振る舞いが好きだ。

ミャンマー一人旅をしている齋藤飛鳥は、確かに笑顔ではあるが、物凄く楽しそうに見えるわけではない。馬がただぐるぐる回っている土産物を見て瞬間的にテンションが上がったりするような場面はあるが、全般的に同じようなトーンで過ごしているように見える。

しかし齋藤飛鳥自身の感覚としては、凄く感動している時とそうでない時がきちんとあったのだという。
そして、凄く感動している時に、それを「反応」としてわざわざ提示しない齋藤飛鳥に、僕はとても好感を抱く。

齋藤飛鳥がどういう感覚でそういう振る舞いをしているのかは分からないし、別に意識的にやっているわけではない、ということだってあるだろう。ただ、どういう感覚でそうしているかに関わらず、感情を「反応」として提示しないという選択はなかなか勇気がいるものだと僕は感じるし、それを結果的に選びとっている齋藤飛鳥は凄いと感じてしまう。

感情に合わせた「反応」を普通に見せる方が、一般人としても楽だし、当然アイドルとしても楽なはずだ。「反応」を見せないことで、周りを不安にさせたり、余計な誤解を生んだりすることもあるだろう。特別良いことはないはずなのだ。

だからこそ、そういう行動を取る齋藤飛鳥に僕は、強い意志を感じてしまう。それが本来の自分であるのかどうかはともかく(僕は、そういうあり方が本来の齋藤飛鳥に近いのだろうと思ってはいるが)、「反応」を見せないという自分を提示する、という選択に、自分自身を貫く意志や、何か大きなものに抵抗する意志など、敢えて苦しい道を選んでいるような強い何かを感じてしまう。その分生きづらくなるはずだが、たとえそうだとしても自分の感覚に正直でいようとする振る舞いに、好感を抱く。

齋藤飛鳥自身は恐らくそこまで意識的にはやっていないだろう。僕も、「反応」を見せることが苦手なタイプだから、齋藤飛鳥の振る舞いはそもそも共感できる。別に自分がどう思ったかが大事なわけで、それを周りにいる「他者」(面識があろうがなかろうが)に見せる必要はない。きっとそれぐらいの感覚だろうと思う。自分のあり方に素直なだけだ。
しかし一方で、「反応」を見せないことで、周りの人を不安にさせたり、要らぬ誤解を与えたりする経験も数多くしてきたはずだ。アイドルであれば、なおさらそれが不利に働く場面もあるだろう。そういう不利益があることが分かっていて、なおそういうあり方を貫く齋藤飛鳥の姿に僕は惹かれる。

しかも、「反応」を見せない振る舞いが基本だからこそ、「反応」を見せた時の真実味みたいなものが増す、ということもあるはずだ。
メンバーのインタビューを読むと、齋藤飛鳥はよく泣くのだという。僕には齋藤飛鳥がよく泣くというイメージは特にないのだが、しかし本当に齋藤飛鳥がよく泣くのだとすれば、その涙はより本物に近いように映ると僕には思える。

何故なら、普段「反応」を示さない齋藤飛鳥が、「泣く」という「反応」を露わにしているからだ。

僕はライブや握手会に行ったことがないので、そういう場で齋藤飛鳥が涙を見せているのかどうかは知らない。ファンにも見せるのか、あるいはメンバーの前でだけなのか、それは僕には判断できないが、いずれにしても、齋藤飛鳥の涙を見た者は、それが普段見られない齋藤飛鳥の「反応」であるという意味で、よりその「反応」を強くリアルに感じ取るのではないかと僕は思うのだ。

もちろん、その辺りのことを齋藤飛鳥が計算でやっている、なんてことを主張したいわけではない。計算だろうが計算じゃなかろうが僕にはどっちでも構わない。いずれにしても、見せる必要がないと齋藤飛鳥が感じる「反応」は敢えては見せない、というミャンマー一人旅の企画で見せたそのスタンスは、齋藤飛鳥に対する僕の関心をより強くした。


ミャンマー一人旅の企画はそれ以外にも、齋藤飛鳥の魅力に溢れた企画だった。

例えばその独特な言語感覚。ある料理を食べた時、齋藤飛鳥はこんなコメントをしていた。

『台湾についた瞬間、その国の匂いってあるじゃないですか?その味です』

味についてはまったく何も伝わらないのだが、その独特の言語センスがとても素敵だ。ミャンマーでご飯を食べていて台湾が出てくるのも謎だし、匂いが味です、という日本語はメチャクチャなのだけど、でもそういうことを言っても齋藤飛鳥はバカっぽく映らない。安部公房や遠藤周作などの作品を読んでいるというイメージがそうさせるのか、常に一本芯が通っているかのような雰囲気がそう見せるのか分からないが、齋藤飛鳥の発言は、内容的にそれがどれだけ意味不明なものであっても、的を外した感じにならない、という点は、齋藤飛鳥の強みであるように思う。

「張り切りチャイティーヨー」という謎のフレーズも印象的だった。この発言の意図を説明する齋藤飛鳥の言葉は正直意味不明で、ディレクターも「齋藤飛鳥は疲労にやられてしまっていたようだ」というようなナレーションを入れていた。しかしこちらも先程と同じで、意味不明なのだけど面白いし、外した感じがない。齋藤飛鳥はまだ、「乃木坂工事中」の中でもそこまで喋る方ではないが、深い思索を感じさせる橋本奈々未や、異次元の発想を繰り出す堀未央奈などとはまた違った形の言語感覚を見せてくれるはずだと期待している。

母親から、ミャンマーのご飯は味が濃いから日本から何か食べ物を持っていけ、と言われて齋藤飛鳥が持ってきたのが「おかゆ お茶漬け リゾット」という「三大べちゃべちゃしたご飯(僕が勝手に名づけました)」なのはもう鉄板のネタだし、雨季のため状況次第ではロケを中止しなくてはならなかったかもしれない中、齋藤飛鳥が外にいる時間だけ雨が一切降らなかったという奇跡を呼び寄せたのも、持ってるなという感じがする。齋藤飛鳥らしさを存分に引き出す面白いナレーションも健在で、見た目のテンションに変化がない齋藤飛鳥の姿をとぼけた感じに見せるのに大いに貢献していると感じた。

今回初めてセンターに選ばれ、そのことによって今までやる機会のなかった仕事や状況に直面する機会も触れるだろう。齋藤飛鳥は、まだまだ秘めたものを持っていると僕は勝手に感じている。齋藤飛鳥自身は、「何かを知らないことは恥ずかしいこと」「努力している姿を見せたくない」とインタビューなどで語っているが、そういう部分も垣間見せていくようになると、より齋藤飛鳥の魅力的な部分が表に出るのではないか、と感じさせる今回の企画だった。

「15thシングルキャンペーン・新センター齋藤飛鳥の1人でヒット祈願inミャンマー」を見て

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10位 辻村深月「島はぼくらと
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5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
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3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
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17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

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2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
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16位 朝井リョウ「何者
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18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
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1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

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3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
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10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
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