水晶萬年筆(吉田篤弘)
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内容に入ろうと思います。
本書は、6編の短編が収録された短編集です。
「雨を聴いた家」
何故か映画の脚本を書くように頼まれた主人公。彼はその話を考える中で、かつて読んだ、<水読み>という職業の青年の物語を思い出す。一字違いの<水飲み>と呼ばれる青年に会い、町にある甘い水の話を聞く。主人公は、大家である「車掌」と、かつての住人である女性の物語を知る。
「水晶萬年筆」
オビタダは絵を描く人だ。絵を描いて生計を立てているが、仕事以外では何を描くべきなのかいつもよくわからなくなっている。おでんやで出会ったつみれさん。つみれさんの父もまた、絵を描く人だったようだ。
「ティファニーまで」
坂の上に、「洋食堂ティファニー」がある。研究室からそこまで、昼飯を食いに行こうとする私とサクラバシ君。彼らはいつもの昼飯を食べにティファニーを目指すのだが、寄り道だか道草だがに捕まって一向に辿り着かない。
「黒砂糖」
伊吹先生の跡をつぎ、月夜に種を蒔く人となった主人公。先生から譲り受けた「夜の上着」を着、黒砂糖を持ち、水を詰めたポリタンクを背負っている。夜に魅入られ、夜の話ばかりしていた先生は、やがて、活気を失った町中の森に水を蒔くことにするのだった。
「アシャとピストル」
買えないものを売ろうとする鴉射(アシャ)。往診医(オーシンイ)と出会い、買えないもの探しを続けていたアシャだが、しかしある時突然、ピストルを発見してしまう。そういうことではないのに。
「ルパンの片眼鏡」
ルパン、だと後に師匠は名乗った。かつては怪盗だったとも言った。出会いは、師匠が片目を落とした時。コンタクトをね、と言った師匠は、何かオーラを放つ存在だった。それから、何を教わっているのかも分からないまま僕はルパンの弟子になった。
というような話です。
吉田篤弘の作品は、雰囲気で読ませる作品がとても多い。ストーリー自体に力がある場合もあるのだけど、そういう作品はあまり多くないように思う。とにかく、ストーリー自体よりも、雰囲気に力がある作品が多い。
本書もまさにそういう作品だ。そしてそういう作品は、なかなか評価が難しい。
うまく説明できないけどドンピシャハマることもある。けど、うまく説明できないけどまったくハマらないこともある。その時の気分みたいな、作品とは関係のない外的な要因も関係してくることが多いから、余計に難しい。
吉田篤弘の作品は、日常からちょっとズレたような世界の中で、淡々と何かを描いていくような作品が多い。それがハマることもあるしハマらないこともある。今回の作品は僕としてはあまりハマらなかった。
吉田篤弘のスイスイ流れるような語り口はなかなか軽妙でいいなと思うんだけど、ストーリーで追えるような作品ではないから、どうしても物足りなさを感じてしまう部分がある。「ティファニー」や「ルパンの片眼鏡」なんかはなかなか面白かったなと思うんだけど、作品全体で見るとちょっとなあ、という感じに僕は受けとりました。
どれも短いし、雰囲気はとてもいいので、寝る前なんかにゆったりとした気分になりたいみたいな時に読むといいのかも。
吉田篤弘「水晶萬年筆」
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