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夫婦脳 夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか(黒川伊保子)



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僕は、自分が女脳なんじゃないかなぁ、と思うことが時々ある。もちろん、完全にではない。けど、普通の男よりは、女脳要素が強いんじゃないかなぁ、と思う。

女性同士のとりとめのない会話がまったく苦にならない(だから女子会に混ざれる)。
男が苦手だという、女性のウィンドウショッピングもまったく苦痛ではない。
空間把握能力がなさすぎて、地図がまるで読めない。
競争にさほど興味がなく、だから昇進にも関心がないし、男同士の序列もどうでもいい。
女性は、考えたことがすぐことばになる生き物らしいけど、まさに僕がこのブログを書く中でやっているのはそういうことだ。

女脳じゃないなぁ、と思う部分ももちろんある。ある出来事をきっかけに、それに付随する過去の出来事が一気に蘇ってきたりしないし、割と結論から喋るようにしてるし、言葉で言わないと伝わらないと思ってるので察して欲しい欲みたいなのもあまりない。だから、完全に女脳だとは思わないけど、女脳要素は結構あるんじゃないかな、という気がしている。

だから僕は本書を、男と女、両方の視点から読めたように思う。女脳に共感できる部分では、わかるわーと思い、女脳に共感できない部分では、あーそういう女性いるよなぁ、と思う。ちょっとそれは我田引水では…と思うような話もあったけど、概ね本書に書かれていることは、なるほどなぁ、と思わせる面白い話だった。

ちなみに僕は結婚していないので、夫婦のことはよく分からない。分からないけど、結婚している人から断片的に話を聞いていると、本書に書かれているような状況を耳にすることはあるので、やっぱり夫婦ってこうなっちゃうのね、と思いながら読んだ。脳科学だけですべて説明できるとは思っていないけど、脳の機能がそもそもそうなっているなら、このスレ違いはしょうがないよなぁと、本書を読んだ人はみな思うのではないかと思う。

『つまり、恋に落ちる相手とは、そもそも生体としての相性は最悪、その行動は、かなり理解に苦しむ相手ということになる』

本書ではそう断言されている。何故そんなことになってしまうのか。そこにはこんな理由がある。

『動物は、小さな昆虫から人間に至るまで、すべからくフェロモンと呼ばれる生殖ホルモン由来の体臭を発散している。このフェロモン、嗅覚細胞が完治する“匂い物質”だが、食べ物や花の匂いとは別の受容体が受け取っていて、顕在意識を通らない。すなわち、知らず知らずのうちに嗅ぎ取っている匂いなのだ。
フェロモンには役割がある。異性には、遺伝子情報(免疫抗体の型)を匂いで知らせているのだ。動物たちは、なんと、生殖行為に至る前に、互いの遺伝子の生殖相性を、確認しているのである。
生殖の相性は、免疫抗体の方が遠くはなれて一致しないほどいい。理由は、異なる免疫の組合せを増やすほど多様性が増え、子孫の生存可能性が上がるからだ。
すなわち、動物は、互いの体臭から遺伝子の免疫抗体の型を嗅ぎ取り、免疫抗体の型が一致せず、この相手とはいい生殖ができると判れば好意を抱く。これが恋の核なのである。
さて、ここで、よく考えてみて欲しい。免疫抗体の方は、生体としての外界への反応を牛耳っている。免疫抗体の型が近ければ、生体としての反応が似ている。逆に、免疫抗体の型が遠く離れて一致しないということは、生体の反応がま逆になる、ということになる』

少し引用が長いが、理解していただけただろうか?簡単に要約すると、こういうことだ。

動物は、フェロモンによって、生殖行為の前に相手の免疫抗体の型を知っている

免疫抗体の型が異なる異性の方が子孫が生き残る確率が高くなり、そういう人に恋をするようになっている

免疫抗体の型が異なるということは、物事への反応や考え方が真逆、ということ

つまり、子孫を残すのに最適な相手は、一緒に暮らすには最悪な相手である

いかがだろうか?だから、夫婦がうまくいかないなんて、当然至極のことなのだ。太陽が東から上ったり、夏の次は秋が来たり、夜になれば暗くなるのと同じくらい当たり前のことなのである。

まずこのことを理解するだけでも、夫婦というものを営んでいくやり方が大きく変わるのではないかと思う。子孫を残すのに最適な相手は、一緒に生活するには最悪な相手。子孫を残す本能を無視できない以上、夫婦はお互いに理解し合えない相手と暮らす覚悟を持って結婚しなくてはいけない、ということだ。脳科学的には。

さらにその上で、「女性は生殖に最適な相手を見つけた瞬間からある一定期間だけバリアを解くようになっている」「人間の骨髄液は7年で入れ替わり、そのため7年毎に免疫システムが変わり、それによって夫婦の関係性も変わる」など、人体の機能をベースにして、夫婦間の謎めいた関係性に理由を与えていく。人体の機能だから仕方ない、と諦めるのは癪ではあるが、しかし、そうなってるんだから仕方ない、とも思えてくる。特にやっぱり、フェロモンの話はインパクトあるなぁ、と思った。最近、結婚はするけど子どもは欲しくない、みたいな夫婦もいたりするけど、そういう方が夫婦としてはうまく行くのではないか、とも思えてくる。生殖や子孫を残すという本能を無視して、この人となら一緒に暮らせる、という相手と結婚する方がいいのかもしれない。生まれてくる子どもは多少遺伝子的には弱くなるのかもだけど、まあ現代日本なら、ちょっとぐらい遺伝子が弱くたって死ぬことはないだろう。
なんて思ったりもしたのだ。

さらに著者はこの上に、男女の脳の違いをはめ込んでくる。これも実に興味深い。

著者は、男女の脳の最大の違いは、右脳と左脳の連携だという。

『女性脳は、男性脳に比べ、右脳(感じる領域)が左脳(考える領域、言語機能局在側)の連携が遥かにいい。そのため、感じたことが即ことばになる脳なのである』

もちろん、男女の脳の違いがすべてこの連携の差から来るわけではないだろうが、この連携が強いからこその女性の振る舞い、あるいはこの連携が弱いからこその男の振る舞いというものがあって、そしてそれらが、見事にすれ違っていくのである。

女性脳、男性脳の差がどんなスレ違いを生むのか。個別の話は是非本書を読んで欲しいが、男も女性も、かなり共感できる部分が多いのではないだろうか。著者は女性なので、恐らく、女性について書かれている部分についての女性からの共感の方が強い気がする。僕も、今まで女性と何らかの形で関わった経験を様々に思い出しては、なるほどあの時あの人はこういう思考・感情だったのか、なんて思ったりしたものだ。

本書の記述から、女性脳の最大の特徴を一つ拾い上げるとすれば、

『女は褒めてほしいわけじゃない。わかってほしいのである』

かなと思う。ここに、男女のスレ違いのかなりの部分が集約されているように感じた。

女性が「可愛い!」という時、それは「見ているものが可愛い」ということを伝えたいのではなくて、「私が見ているものに一緒に注目して」という合図なのだ。「可愛い!」と評価に共感して欲しいのではなく、「それに注目した私」に共感して欲しいのだ。

女性は、起こった出来事を結論から話さず、最初から臨場感たっぷりに話す。これも分かって欲しいからだ。話の内容を理解して欲しいわけじゃない。どの場面で私がどんな風に感じたのか、それを一緒に追体験して、その時々の私のことを分かってほしいのだ。

女性は、何か問題が起きた時、まず共感して欲しい。「痛い!」と言ったら、「今度からこうすればぶつからないよ」じゃなくて、「痛かったね」と言ってほしい。「忘れ物をして困った!」と言ったら、「次は忘れないようにこうしたらいいよ」じゃなくて、「大変だったね」と言って欲しい。解決策など望んでいないのだ。

とまあこんな感じで、女性はとにかく「わかってほしい」と思っている。
これは、女子会によく呼ばれていた僕には、実感として理解できることでもある。

男同士の会話というのは、割と、議論っぽくなりやすい。ある問題や命題に対して、色んな人間がどう思うのか、どの意見が妥当なのか、という話になりがちだ。

しかし女性同士の会話は、そんなことにはならない。「そうそう!」「わかる!」「やっぱり!」みたいなことをみんなで言い合って、共感するのだ。僕はこういう女性の会話を楽しいと思える人間なのでまったく苦にならないのだが、男はそういう女性同士の会話を、なんの意味もないつまらない会話、だと感じるようだ。まあ確かに、女性同士の会話に交じると、後々「あの時どんな話したっけ?」と思い返してみても誰も思い出せない、ということになる(笑)。話の中身ではなく、その場その場での共感が重要なのだから、どんな話をしたのかという記憶は残らないのである。

この「女は褒めてほしいわけじゃない。わかってほしいのである」というのは、会社で女性が昇進を拒む原因にもなっていると著者は言う。男は脳の性質上、客観的な指標で評価されることを望む。しかし女性は、そういう評価にはさほど関心がないらしい。そうではなくて、自分の頑張っている部分を、誰かがきちんと見てくれて、それに対して主観的に評価してくれる方が嬉しいようだ。「◯◯さんの朝の挨拶は元気で気持ちがいいね」というようなひと言で、女性は「わかってもらえた」と感じられ、やる気になるという。だから、男が望むような評価指標しかない環境だと、女性は有能であっても、「そんな評価のされ方しかないならいいや」と思って昇進に対して興味を失ってしまうのだという。すべての女性に当てはまるわけではないだろうが、女性の部下がいる環境(今ほとんどの職場ではそうだろう)では、男は女性の評価のやり方を意識的に変えてみるべきかもしれない。

著者は、女性の上司に対しても、「報告書の斜め読みは、男性を案外傷つけるから気をつけて」とアドバイスをする。報告書や日報みたいなものは男が安心するために存在するのであって、女性には向かないのだそう。だから女性上司は、部下の報告書なんかを軽視してしまう傾向にあるらしい。そういう態度は、女性としては悪気がなくても、男は「蔑ろにされている」と感じてしまう、みたいなことが書いてあった。

みたいなことを書いていくといくらでも書けてしまうのでこの辺りで止めておくが、とにかく、男女の脳の違いは、男女の行動をどんな風に規定し、それが男女のスレ違いをどう生み出しているのか、という実例が様々に載っているので、非常に面白い。先程も触れたように、我田引水に感じる話もあるし、すべてが脳科学で説明できると考えるのも危険だろう。しかし、脳の機能というものを理解して、自分の行動を少し変えることで、異性とのコミュニケーションがスムーズに行くのだとしたら、知識として知っておいてもいいのではないか、と感じるネタがたくさんある。

例えば男性諸君は、P144を読むことをオススメする。ここには、著者がオススメするデートプランの立て方が書いてある。手間を書けずに女性の満足度を引き上げる脳科学方法が書かれているので、通用するのかどうか、是非実際に試してみて欲しいものである。

夫婦やこれから夫婦になろうとしている人は是非読んだほうがいいし、そうでなくても本書は、異性との関わり方の指南書になると思う。男女どちらも読んだほうがいいんだけど、男は読まなそうだなぁ、こういう本。

黒川伊保子「夫婦脳 夫心と妻心は、なぜこうも相容れないのか」


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3位 浅野いにお「うみべの女の子
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5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

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感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

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6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
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9位 山本弘「詩羽のいる街
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1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
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