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逆襲、にっぽんの明るい奥さま(夏石鈴子)

両親は、結婚して良かったと思っているだろうか。
本書を読んで、少しそんな風に考えた。

子どもの頃、僕はとても優等生だったが、それは優等生のフリをしているだけだった。大学二年の時、何かに対する仕返しであるかのように、僕は突如両親に牙を向き、10年弱ほとんど関わり合いを持たないまま生きていた。妹と弟は、子どもの頃、まあ鬱陶しい子どもだった。母親が作った料理をマズイと言って母親を怒らせ、言うことを聞かず、勉強もしない。僕が実家を出た後、弟は家の離れみたいな場所を溜まり場にして、弟がいなくても知らない連中がたむろしていたらしいし、弟は警察に捕まったこともある。僕も妹も大学を辞めており(妹が大学を辞めたのは、多分に僕のせいという面もあるが)、弟は結果的に高校中退らしい。父親は確か二度、飲酒運転で捕まっている。そういえば弟も、飲酒運転で捕まってたんじゃなかったかな?弟は、今では兄弟の中では一番まともになったが(結婚し、子どもを産み、実家の近くに家を建てた)、僕と妹は碌に親と連絡を取らず、実家にも寄り付かず、好き勝手やっている。

子どもの頃、両親の喧嘩が一番嫌だった。それから逃げるために、僕は勉強に逃避した(繋がりは意味不明だろうけど)。母親は、何かある度に父親に突っかかっていた。何で喧嘩していたのかもう覚えていないし、子どもの目線では汲み取れない何かもあったのかもしれないけど、でも僕には、なんだかどうでもいいようなことで喧嘩してるなこの人達、というような印象を持っていた。父親は、朝早く出て、夜は遅く帰ってきた。土日は、自身がコーチを務めていたテニスに行っていた。両親が一緒に何かをしているのを見た記憶はない(覚えていないだけかもしれないけど)。まあ、子どもが成人するまでは二人で何かするというのはなかなか難しいものなのかもしれないし、その辺りのことは結婚していない僕にはよく分からないのだけど。母親は、父方の祖母に対する不快感を示していたような記憶がある。まあ、母親自身あまり社交的な人間ではないので、祖母が悪いのかは一概には判断出来ないが。

本書に、こんな文章がある。

『そしてきのうから、わたしの体全部をうっすらと包んでいるイケンは、
「やっぱり子どもには、当たりとハズレがある」
ということで、うちの太郎は多分、ハズレなのだ』

当たりかハズレで言えば、我々子どもは三人ともハズレであろう。少なくとも、当たりではない。

両親は、結婚して子どもを産んで良かったと思っているのだろうか。
結婚しなかったらどうだっただろう?と考える瞬間はあるのだろうか。

『でも、全ては蓋を開けないとわからないのだ。一体どんな子どもが生まれるのか、自分の生活がどう変わるのか。今から想像しても無駄なのに、どうしてそうも自信満々に澄ましていられるのだろう。どうせ、あなたたちだって、バカにしているわたしと同じ道をたどるに決まっている。』

僕は未婚だが、周りに結婚している人間は様々にいる。そして、色々話を聞いていると、結婚したことを後悔するような発言ばかり耳にはいる。

もちろんそこにはある種のバイアスが存在する。日本人は、特に身内のことに対して外に向かってあまり良く言わないものだし、特にSNSが発達した現代、自分が幸せであることをアピールすることがどういう評価に繋がるのか理解している人は多いはずだ。長く一緒に暮らしていれば、良い部分は当たり前になり、悪い部分ばかり目立つということもあるだろう。だから一概に、既婚者たちの言葉を言葉通りに受け取るわけにはいかない。

とはいえ。話しぶりから、どうしても、幸せな結婚生活みたいなものを想像することが出来ない。別れるのがめんどくさいから、世間体があるから、子どもがいるから…。そんな消極的な理由で一緒にいるだけ、という夫婦も多いような印象を持ってしまう。

僕自身は、結婚したいと思ったことがない。いや、それはちょっと嘘だ。気まぐれのようにそう思う瞬間を足し算すれば、これまで33年生きてきた中で、1分ぐらいは「結婚したい」と思考したことがあるかもしれない。まあ、せいぜい1分ぐらいだろう。基本的に、結婚はゴメンだ、と思っている。

どうしてみんな結婚したいと思うのか、僕にはイマイチ理解できない。子どもが欲しいとか、専業主婦になって安定した暮らしをしたい、という理由は理解できる。そういう、打算という言い方は棘があるが、物事を天秤にかけた結果結婚を選択する、というのは理解できないでもない。けど、世の中の多くの人は、そういう部分ももちろん含みつつも、やっぱり「結婚というものをしたい」という、ある種の憧れみたいなものを持っているのだろうと思う。子どもや生活手段や、そういう実際的な部分はともかくとして、「結婚」という場所に辿り着くことが一つの幸せのゴールなのだ、という価値観が広く受け入れられていることが、僕にはイマイチ理解できない。

皆きっと、自分は何もかも理想通りの生活を手に入れられる、と思って結婚に臨むのだろう。結婚してからも夫は相変わらず恋愛期間中と同じだけ優しくて、子どもは五体満足で生まれ、相手方の家族(他人も他人だぞ)ともうまくやっていける。夫はリストラに遭わないし、子どもはいじめられないし、住んでいる場所は地震にならないし、親族は誰も犯罪を犯さないし…、と言った具合に。

でも、そんなわけねーだろ、と僕は思ってしまう。

『ハズレの子の親には誰も優しくなんてしてくれないのだ』

『わたしは、この義母と一緒にいると、自分の心にどんどん酷いものが湧いてくることが苦しい。自分はこんな人間だったのだろうかと、驚くほどだ』

『この男は、わたしの味方であったことがあるのか。あるいは、味方になろうとしたことはあるのか。もしかしたら、味方にならなくてはいけない、ということすら一度も考えたことがないのかもしれない。なぜ、わたしを助けようとしないのか。夫であり、父親ではないか。それなのに、いつまでたっても当事者の自覚を持たないでいる。この男のやっていることは、他人よりも酷いことだとわたしは思う』

『わたし自身の大きな欠陥は、自分の娘を全然かわいいと思えないということだ。いくら上辺をとりつくろっていても、心の芯では、貴子のことが好きではない』

『わたしたちが楽しく普通に過ごせるわけがない。心のどこかで、そう思っている自分をわたしは知っている』

『延々とハイテンションでひたすら喋り続けるお義母さんは、わたしにとって恐怖だった。そして、この電話の相手をさせられるわたしの都合を一瞬も考えないその神経が嫌だった』

結婚前は、誰もが夢を見ている。自分は、幸せなお嫁さんなのだ、と。これから幸せな人生がスタートするのだと。でも、誰に対しても、「こんなはずじゃなかったのに」は起こりうる。どんな金持ちと結婚しても、どんなに優しい人と結婚しても、「こんなはずじゃなかったのに」は誰にだって降りかかる可能性がある。

そして非常に残念なことに、現代の日本では、そんな「こんなはずじゃなかったのに」を受け止めるのは、ほとんど女性の側なのだ。これは、社会の仕組みが悪い。法律や社会制度や前時代的な価値観など、今の日本を取り巻く様々な環境が悪い。「こんなはずじゃなかったのに」のしわ寄せは、不幸にも女性が受け止めざるを得ない社会になっている。

『誰かわたしを知って欲しい、と思う。そして優しい声で言われたい。忙しいのに、あなたはがんばっていて本当に偉いねえと、どうか言ってくれないか。やらなくてはいけないことが山ほどあるのに、一生懸命やっているね、子どもたちも元気で丈夫で、とてもいい子に育っている、きっとお母さんが上手に育てたからだね。そんな風に一度でもいい、誰かあたたかい手で、私の手を握って言ってくれないか』

こんな、些細にも思えるようなことを願わねばならないほど、主婦たちは追い詰められている。

『それなのに、わたしがいられる世界はここしかないのだ』

『この世で唯一わたしがそっと静かにしていられる場所は、電気もつけないこの自分の寝室だけだ』

それは、あまりにも寂しすぎはしないだろうか?

だから、本書のタイトルは「逆襲」なのである。
男は気づいていない。主婦たちが、これほどまでに追い詰められていることを、辛いということを、やってられないと思っていることを、言ってはいけない様々な感情に支配されているということを。

『妻で母親なら、自動的にできるものだとすっかり安心しているだろう』

『でもねシスター。そういう教育を女の子にするのなら、男の子にも同じようにしてもらわないと。男って、女を、かわいいか、かわいくないかだけで判断しているみたいなんですよ』

しかし、男にはどうすることも出来ない。どう考えても男は、女性と比べて、あらゆる点で劣っていると僕は思う。男は、主婦たちが置かれている状況を理解しようとしないが、仮に理解できたとしても、何もしない。出来ないのだ。男とはそういう、愚かな生き物なのである(僕は、自分のそういう愚かさを知っているから、結婚という選択肢を考えもしない、という部分もある)。

『わたしにとっては、主婦とは雄々しい人たちです。たった一人で、家族のために自分の全てを差し出している善意の人です』

あとがきで著者はそう書いている。その通りだろう。男が働き、女性が専業主婦として家庭を守っていた時代には、男のそういう無能さは表面化しなかった。男は家庭の中で威張るものだっただろうし、女性は家庭の中で耐えるものだった。それが当たり前とされている時代があった。しかし今は違う。様々な社会構造や人々の意識の変化によって、家庭というものは、夫婦が二人で作らなければ守り切れない、ということになってきた。そして、そうなって初めて、男の無能さが露わになったのだ。

男は、家庭というものを共同でつくり上げるには極めて無能である。この事実をきちんと理解した上で女性のみなさんは結婚なさるといいと思う。結婚なんてメリットがない、と言っている男が増えているようだが、むしろそれは逆だろう。どう考えても、女性の方にメリットがないと思う。子どもを産む機能は女性の側にあるのだし、家庭や家族というものを維持する能力も女性の方が高い。子育てや金銭面の問題は多々あるが、結婚して子どもを産めばすべて安泰、とは言い切れない以上、子どもが欲しい女性は最初から結婚しないで一人で育てる選択肢を検討してもいいだろうし、子どもに興味がない女性には結婚するメリットは何もないだろう。

結婚が悪いことばかりではない、ということは当然理解した上で僕なりの考えを書いたつもりだ。結婚というのは、人生において数多ある選択肢の内の一つでしかない、ということを、もっとみんな意識した方がいいのではないかと思う。

内容に入ろうと思います。
本書は、基本的に主婦を主人公とした8編の短編を収録した短編集です(主婦ではない人が主人公の話も1編ある)。主人公はすべて別々で、子どもがいたりいなかったり、夫と仲が良かったり不仲だったり、義母と揉めていたりいなかったりと様々だ。しかしどの話にも、主婦である自分の行き詰まり感がポップな感じで描かれていると思う。

「お茶くみ奥さま」
夫の正樹は、禿げ始めている。でも、それを堂々と受け入れている彼を、わたしは尊敬している。子どもは二人。今日は、下の子どもの保護者会の日。今村君のお母さんが怒っている。働いているお母さんと働いていないお母さん。PTAの分担をどうするか。めんどくさい。働いているお母さんの方が偉い、みたいな雰囲気にうんざりする。でも、口には出さない。昔もらったアドバイス通り、苛立って文句を言っている相手がセックスをしている時の様子を思い浮かべてみる。

「レジ打ち奥さま」
太郎はハズレの子だ。どうしてもそう思ってしまう。何をさせても、全然出来ない。授業中に勝手に歩き回るし、筆箱の中身は一日で無くしてくる。いくら言っても聞かない。夫の昌一は、太郎の味方をしてやれ、みたいに言う。あなたが先生と関わるわけじゃないからそんなことが言えるんだ。夏休み中太郎と一緒にいたくなくて、スーパーでレジ打ちのバイトを始める。私は、レジ打ちに向いているみたいだ。

「長生き奥さま」
会社に行こうとしていた夫の荘一に、何この変な亀?と突っ込まれた。上野の国立博物館の「仏像展」で買った「贔屓」だ。神様として飾っている。ずっと、子どもはいない。子どもを産まないことは悪ではないはずだが、周囲からは悪であるかのように見られる。私、みなさんに何か迷惑を掛けていますか?不妊治療の相談のために病院へ行ったあの日、乳がんが見つかった。

「安心奥さま」
家族でクリーニング店を営んでいる夫の功一の家族。わたしは、葬儀屋で働いている。義母はわたしの職業を、周囲には「花屋」だと言っている。功一さんの妹が家を出て、二世帯住宅に改築した。娘の晴子は、アレルギー持ちだ。義母は、そのことを、まるで理解していない。わたしは、自分の作った食事で晴子を育てたい。しかし、義母のせいでそれが出来ない。

「加味逍遥散奥さま」
わたしは漢方医に、何がストレスなのか、と聞かれている。結婚し、子どももいて、仕事もしている。幸せなはずだ。でもわたしは、いつもいらいらしている。息子の遊大は、お茶碗も持てないし、言われたことが全然出来ない。夫は、子どもなんだから出来なくて当然だ、みたいなことを言う。小さな時から躾けなくてはいけないということが分かっていない。当事者意識の薄い夫。この人は私の味方であったことが一度でもあっただろうか?会社でも、子どもを育てているが故の勤務状況をネチネチ言われる。あなたの奥さんは専業主婦だから、時間があっていいですね。

「天城越え奥さま」
娘の貴子のことを、まったく可愛いと思えない。泣き出すと、また始まった、うるさいな、と思うだけだ。自分は、良い母親でありたいといつも願っている。しかしいつもその願いは、貴子の振る舞いによって打ち砕かれる。わたしが怒る前から謝るような貴子の有り様が気に食わない。子どもが出来た時、夫の元妻に「勝った」と思えたのに。授業参観の時、教室の後ろに貼られていた貴子の作文を読んで、わたしは大きく息を吸った。そこには、架空の幸せな家族の光景が書かれていた。

「にせもの奥さま」
わたしは、ネイルサロンを開いている。初めてのお客さんが来ると、みな、他にスタッフがいるのだろうとキョロキョロする。わたしがデブでブスだからだ。デブでブスだから、この人がネイルをするわけがないと思われるのだ。そういう視線には、もう慣れた。腕が良ければいいのだ。美しいけどネイルの腕がないよりは、全然ましだ。閉店間際、初めてのお客さんがやってきた。彼女は、息子が失明した出来事から、自分の身の上をつらつらと話し始める。

「逆襲奥さま」
夫の洋一と向かい合っている。土曜日、平日の仕事の疲れを取るべくまだ寝ていたいと思っている10時半。なんの予告もなく義母がやってきた。夫に追い返させた。義母の行動は、わたしには理解できない。勝手に料理を作ってきて、連絡もなしに押しかける。夫を通じて嫌だと言っているつもりだが、全然伝わらない。夫は、両親を毛嫌いするわたしに苛立っているようだが、仕方ない。夫の実家には、確実に「何か」がいるし、義母の行動はわたしにはまったく許容出来ないのだから。

というような話です。

非常に面白い作品でした。僕は結婚もしていないし女性でもないから、本書に書かれていることを当事者目線ではまるで読めないわけだけど、著者自身の、女性であること、女性として生きること、そういうこと全般に対する観察眼みたいなものが非常に鋭く発揮されている作品だと思いました。

幸せな結婚生活を送っている人も世の中にはいるだろうけど、もちろんそうではない人もいる。どっちが多いのか、僕には分からないけど、イメージでは、幸せではない結婚生活を送っている人の方が多いのではないか、と感じる。特に女性は。男は結婚しても、自分自身の看板を大きく変える必要はない。苗字も(今の社会通念では)男の側は変わらないし、お腹を痛めて子どもを産むわけじゃないから、明確に「父親」になる瞬間があるわけでもない。仕事だって、そのまま続けられるし、いわゆる「ママ友」みたいな、子どもを介した新たな他人との人間関係もうまくすれば回避できる。

女性はそうは行かない。結婚すれば(大抵は)苗字が変わり、仕事は続けられるかもしれないが、子どもが生まれれば何らかの形で働き方については考えなければいけない。子どもとの兼ね合いで、ママ友や義母との関係性が発生するのも女性の側だ。結婚すれば女性は、あらゆる場面で立場や呼び名が変わることになる。

それは本当に大変なことだよなぁ、と思う。

先程も引用した、この文章が非常に印象的だった。
『妻で母親なら、自動的にできるものだとすっかり安心しているだろう』
男の方は、夫になっても父親になっても、自分の立ち位置やすべきことが劇的に変わることはない(本当はそうではないはずだが、劇的に変化しないでいいような価値観がずっと続いている)。だからそれと同じ感覚で、女性の側が妻になり母親になっても、劇的な変化はないと思ってしまうのではないか。

女性は、様々な場面でそんな激変にもみくちゃにされながら生きていくことになる。主婦にとっての敵は、あちこちにいる。どういう存在がどういう理由で敵認定されるのか。女性側がどんな場面でどう感じるから揉め事が起こるのか。僕は女性ではないからきちんとは理解できていないにせよ、その一端を垣間見ることが出来る作品だと思う。

この作品からは、著者の躊躇を感じない。「こんなことを書いたらこんな風に思われてしまうかもしれない」というようなためらいを感じない。著者自身の体験や感覚がどれぐらい作品に盛り込まれているのか、それは想像するしかないが、しかし、なかなかぶっ飛んだあとがきを読む限りでは、かなり著者自身の体験や感覚が詰め込まれているのだろう、と思わせる。子どもを好きになれなかったり、夫に怒りを抱いたり、義母に恐怖を抱いたり。それらの場面での主人公たちの内面描写は、普通他人に言葉にして言ったり出来ない類のことだ。妻であれば、母であれば、そんな感情を抱くべきではない。そんな風に思ってしまうようなものだ。

著者は、臆せず書く。主婦というものの在り方をリアルに提示してみせるために、著者は、それらの感情をそのまま切り取ってみせる。その臆しない書きぶりが、作品を自立させているのだと思う。

筆致は、比較的ポップだ。湿っぽくはならない。そこに僕は、辛さを押し隠しながら、それでも幸せであるように他者に見てもらいたいというような、主婦たちの葛藤を見る。もうここにしかいられないのだ、という諦念と共に生きる彼女たちには、現実を丸ごと受け入れながら、それでも前に進んでいくような強さが必要とされる。その強さを手に入れるために、彼女たちは結局、湿っぽくなってなんかいられないのだ。

「こんなはずじゃなかったのに」と、誰もが思っている。結婚というのは、彼女たちにとって、もっと違う何かであるはずだった。大それたことを理想としていたわけではない。平凡な日常を求めていただけだ。しかし、その平凡な日常さえ、簡単には手にはいらない。「こんなはずじゃなかったのに」と思いたい気持ちは、分かるような気がする。

女性がどれぐらいこの作品に共感するのか分からない。まだ結婚していない人は、「自分はこうはならない」と思うだろう。きっと彼女たちには、この作品は響かないのだろう。幸せな結婚生活を送っている人にも理解できない世界だろう。しかし、多くの結婚している女性には、彼女たちの人生のどこかに、自分自身を重ねてしまうのではないだろうかと思う。にっちもさっちもいかなくなってしまった自分の人生を振り返らずにはいられなくなるのではないか。

鋭い観察力と卓越した表現力を駆使して、ポップな筆致で主婦たちの悲哀を切り取っていく。著者自身も、結婚というものに相当苦労させられたようだ(あとがきを読めば分かる)。著者の実感のこもっているセリフや感情も多くあることだろう。主婦たちの逆襲。男は(特に既婚男性は)、受け止めようと努力してみる必要がある。そして男女とも、こういう現実も起こりうるのだということを知った上で結婚すべきだろうと、改めて僕は思うのだ。

夏石鈴子「逆襲、にっぽんの明るい奥さま」


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[7696] こんばんは~

今日のドキッ!
「男は、家庭というものを共同でつくり上げるには極めて無能である。」
あ、そうなのね。時々、自分の夫を「この人、発達障害じゃないの?」と思うことがあるんだけど、そうじゃなくて、こういうこと?
何故結婚したか、と聞かれたら、私の場合は「一生、一人で生きていく自信がなかったから」です。自分の結婚生活を、否定も肯定もしないけど。
井上さん、読み終わったら、読んでみまーす。

[7697]

僕は結婚した経験がないんで分かんないですけど、
小説とかノンフィクションとか読んでると、
「男には家庭を維持する能力とか皆無だろ」と思うことばっかりです。
これはもう、性質の問題なんじゃないかという気がします。
もちろん中には、家事とか育児とかちゃんとやる男もいるんだと思うんですけど。

僕は、「ずっと一人で生きていられるかは分からないけど、結婚したらまず後悔するだろうな」と思うから結婚するつもりはありません。したらしたで、上手くいくのかもですけどね。

是非是非読んでみてください~

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5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
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6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
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8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
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6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
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10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
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16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
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新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
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3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
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17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)