黒夜行

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「レヴェナント 蘇りし者」を観に行ってきました

この映画は、どう見るかで評価は大きく変わるように思う。

僕は、見て良かったと思った。特に、映画館で見て良かったと思った。けれど、ストーリーだけ取り出した時、面白いとは思えない。さらに、この映画の撮影のバックグラウンドを知っているか否かで、見え方も変わってくる。恐らく、賛否両論出てくる映画だろう。

個人的に、あまり良くないと感じた部分から先に書こう。
ついさっき少し触れたが、それはストーリーだ。

映画は、「息子を殺された男が、復讐のために死の淵から這い上がる」と要約出来る。これ以外にも枝葉のストーリーはある。娘のポアカを探すアリカラ族の話や、それ以外のインディアンの物語だ。しかしそれらは、本当に枝葉に過ぎない。物語の舞台設定をよりリアルに見せるための要素とでも言おうか。メインの物語は、基本的には主人公の復讐譚である。

ストーリーそのものに、何かあるわけではない。純粋にストーリーだけ取り出して、別の設定、別の舞台で映画を取ったら、映画全体として大したものにはならないだろう。平凡、と表現するわけにはいかないが、核となるストーリーに魅力は感じなかった。

しかし、ストーリーに関しては二点、押さえておかなければならない点がある。

一つは、これは実話だ、ということだ。
映画を見れば分かるが、これが実話だとはとてもじゃないけど信じられないような話だ。ストーリー自体はそこまで大したことはないのだけど、しかしそれはフィクションだと捉えるからだ。これが現実に起こったことなのだ、と思うと、また違った見方が出来るだろう。しかし、現実だと分かっていても、やはり映画になるストーリーとしては、あまりにもストレート過ぎるので(実話だから当然なのだけど)、ちょっと見劣りするという印象を持ってしまった。

もう一つは、この物語は、アメリカ人の多くが知っている、有名な話だということだ。この点はきちんと踏まえておかなければいけないだろう。
何故なら、これを見るアメリカ人は、ストーリーそのものを観に行っているわけではないからだ。

彼らにとっては、繰り返し読んでもらった絵本のような物語なのではないだろうか。別に、ストーリーそのものは知っている。だから、そこに不満はない。知っているストーリーをどんな風に描いているのか。この映画の基本的な観客であるアメリカ人はそう見るはずだ。

また、アメリカ人にとってはよく知られたストーリーであるが故に、説明的な描写を入れ込む必要もあまりなかったはずだ。そしてそれは、外国人から見た場合には、物語の舞台設定や展開が分かりにくいものになってしまう、ということになる。実際僕は、誰と誰が戦っているのか、いつの時代の話なのか、舞台はアメリカの中のどの辺りなのかということは、映画を見ているだけでは全然分からなかった。

そういう意味で、外国人がこの映画を見る場合には、少しハンデがあると言えるだろう。外国人にとっては、この映画のストーリーは、馴染みのあるものではない。だからこそ、映画全体として捉える場合、ストーリーも評価に含めたくなってしまう。そこが、この映画をアメリカ人が観る場合と外国人が観る場合の大きな違いだろう。ストーリーそのものを魅力的にしなくても、少なくともアメリカ人に対しては大丈夫。そういう判断がきっとあっただろうし、だからこういう映画になったのだろうと思う。

そういうわけで、ストーリーそのものにはさほど魅力を感じなかった。

ネットで調べた情報も含めながら内容紹介をざっと書いてみる。

19世紀前半。白人のハンター達は山に入り込み、毛皮を獲って大儲けを企む。しかしその山は、いくつもあるインディアン部族達の土地でもあった。彼らは、生活の糧となる動物を殺す白人に怒りを抱き、敵対的な関係にある。
白人ハンター達をインディアンから守り、無事砦まで送り届けるガイドの役目をするのは、白人でありながら原住民族と結婚し、白人と原住民族の言葉の両方が話せ、地理にも明るいヒュー・グラス。彼らは、彼らに娘をさらわれたと思い込んでいるアリカラ族の襲撃に遭い、船を捨て山に分け入って砦を目指すことにした。
しかしそこでグラスは、グリズリーに襲われ瀕死の重傷を負う。
グラスを恩人だと考えている隊長は、グラスを運びつつ砦を目指すが、これ以上グラスを連れて行くと自分たちまで危ういと判断。初めはグラスを死なせようと思っていた隊長だが、隊のメンバーに、グラスの死を看取り埋葬した後隊に追いつけと命ずる。
しかし、グラスは死なない。
グラスの死を看取る役を買って出たフィッツジェラルドは、父・グラスを殺そうとするフィッツジェラルドに抵抗した息子・ホークを殺害し、さらにもう一人の付き添いである若者を騙し、瀕死のグラスを置き去りにしてしまう。

『俺には息子がすべてだった』

そう思っているグラスは、息子を殺したフィッツジェラルドを許さない。足が動かず、這うようにして進むしかない身体でありながら、復讐のため、フィッツジェラルドを追う。

この映画の凄さは、その特殊な撮影手法にある。

まずこの映画は、自然光のみで撮られているという。照明は一切使わなかったようだ。基本的に逆光で、画面のどこかに常に太陽が映っている。夜のシーンでは、焚き火の光だけで撮影されている。

この自然光のみで撮影するという手法が、映像全体をとても美しくする。撮影は、実際に事件が起こったのと同じ場所で行われているらしいが(しかし、撮影期間が延びたために雪がなくなり、チリで撮った部分もあるらしい)、雪と川と木しかないような荒涼とした土地を、実に美しく切り取っていく。この映像美が圧巻だと思う。自然が持つ美しさ、そしてそれが与える冷たさと強さ。そういうものが、映画であるということを忘れさせるようなレベルで迫ってくる。

この映像美を観るだけでも十分価値があるような気がする。

この自然光による映像美を生み出すために、撮影はなんと一日一時間、光が最良のタイミングだけを使って行われたようだ。そのこだわりも凄まじい。

撮影手法で言えばもう一つ、映画を観ながらずっと思っていたのは、このシーンは一体どうやって撮ったんだ?ということだ。
そう思わせる場面が多すぎる。

最初に驚いたのは、冒頭でグラスがグリズリーに襲われるシーンだ。
このシーンは、圧巻としか言いようがない。

後で調べたところ、CGらしいのだけど、CGだとしてもちょっと凄い。よくもまああんなリアルな感じに出来るものだなと感心させられた。さすがに本物の熊だとは思わなかったものの(本物と思いたくなるほどのリアルさだったけど、さすがにそんなわけないと思った)、じゃあどうやってるんだろう?と不思議だった。繰り返すけど、CGだとしても凄まじすぎる。

他にも、不思議なシーンは山程あった。銃で撃たれた馬が倒れるシーン、グラスが乗せたまま馬が崖から落ちるシーン、雪崩のシーン、大量の何かの動物の群れのシーン。すべてCGだと言われればそうなのかもしれないけど、ネットで調べると、出来るだけCGは使っていないというようなことが書いてある(この点に関しては記述は色々で、CGや特殊撮影は一切使っていないと書いてあるものと、一部CGなど使っていると書いてあるものがある。いずれにせよ、スタントは使っていないらしい)。可能なかぎりCGを使わないで撮影されたのだとすれば、僕が気になったこれらのシーンは一体どんな風に撮影されたのか。映画を観ながら僕はそんなことがとても気になってしまった。

それだけ、映像に圧倒された、ということだ。どの程度CGを使っているのか僕には分からないとはいえ、出来るかぎりCGを使わずにこんな映像が撮れるのだ、という驚きがあった。

ここまで書いてきたことを総合すると、この映画単体で評価する場合、映像美が素晴らしく、ストーリーはさほどでもない。ただ、撮影手法や撮影の裏話なんかも含めて映画全体を評価すると、その凄さに圧倒させられる、という感じだ。この惹きこまれるような圧巻の映像に触れるだけでも、この映画を観る価値はあるのではないかと思う。

「レヴェナント 蘇りし者」を観に行ってきました
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