黒夜行

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短歌ください 君の抜け殻篇(穂村弘)

今回の記事は、感想というよりは、ちょっとした報告、という感じです。

最近、「短歌ください 君の抜け殻篇」という本が発売になりました。これは、月刊誌「ダ・ヴィンチ」で穂村弘がコーナーを持っている「短歌ください」を書籍化したものです。穂村弘が一般の人から短歌を募集し、それを講評するようなコーナーです。

この本の中に、僕が作った短歌が二首掲載されています。ありがたいことです。

【「絶対」と名付けた犬に行き先を決めてもらってやっと進める】(P122)

【真空で死なない虫がいる そんな些細なことでまだ生きられる】(P146)

僕は、それまで短歌など作ったこともなく、読んだことさえほとんどなかったのに、2014年の1月から唐突に短歌を始めてみました。色々あって、ずっと続けてきた読書を一旦止めてみるか、と思い立ちまして、じゃあ何をしようか、と考え始めました。前の職場のスタッフに聞いてみたところ、俳句とか短歌がいいんじゃない?というアイデアが出てきました。

そう言われた時点で、俳句にも短歌にもまるで興味はなかったですが、とりあえず千野帽子の「俳句いきなり入門」(感想はこちら)という本を読んでみました。その本が結構面白くて、超絶初心者でもなんかやれそうだ、と思わせてくれました。ただ俳句は、季語や切れ字などルールが多くて難しそうだなと思ったので、じゃあ短歌だなと決めたのでした。

ちゃんと数えたわけではありませんけど、一年間で恐らく700~1000首ぐらいは作ったんじゃないかな、と思います。当時作った短歌の中から、自分なりに良く出来たと思うもの、印象深いものをまとめた「2014の短歌まとめ」という記事も以前書いたので見てみてください。

自分でも時々見返してみると、よくこんなん考えたな、と思えてきます。短歌をやっていた年は、本当にひたすら短歌のことを考え続けていたなぁ、と。作り方なんてまるで分からない頃から、とりあえず分からないなりに作りまくることで、それなりの歌も作れるようになるものだな、と。なんだかんだ、雑誌に掲載していただいた歌もありますし。凄く面白かったです。また本を読みはじめたり、環境が変わったりと、短歌は一年で止めてしまったけど、またやりたいなぁ、と思ったりします。

「短歌ください」を見てみるとわかりますが、結構若い世代の人の投稿が多いです。20代30代の投稿が結構な割合を占めています。僕が短歌をやっていた頃、ネット上で様々に短歌を投稿する場がありましたけど、そこでも若い世代の人が多かった印象がありました。俳句や短歌というと、年配の方の趣味、というイメージがあるかもしれませんけど、ネットが普及したことで短歌をやれる場がかなり増えたのでしょう。短歌は31文字という短さだからSNSとも相性がいいし、作り手の顔が見えない方が純粋に歌を評価しやすくなるという側面もあるだろうから、ネットで歌会をやるというのは環境として良いのだろうと思います。

難しそうなイメージがあるかもしれませんけど、短歌は本当に、「五七五七七」以外のルールはないと言っていいです。その文字数の中に言葉を収めて、そしてその中で何を表現するか、という遊びなので、やったことがない、という人も気軽にチャレンジしてみてください。

ネットで歌会に参加したい、という方は、まず「うたの日」というサイトを覗いて見て下さい。毎日歌会が開かれていて、誰でも参加できます。作った短歌がその日の内に評価される、という環境はそうそうないので、短歌を作り続けるモチベーションを維持しやすいと思います。短歌をやっている人のサイトへのリンクや、関連ツイートやツイッターアカウントも分かるので、ネットで短歌を始めたいという人の良いガイドになると思います。


「短歌ください 君の抜け殻篇」の話に戻ろうと思います。
僕の歌に穂村弘がつけてくれた講評も引用してみようと思います。

【「絶対」と名付けた犬に行き先を決めてもらってやっと進める】
『私も言葉を持たない「犬」や猫の行動の確かさに憧れることがあります。言葉で考えれば考えるほど、判断の精度が下がっていくような気がして。と云いつつ、「絶対」という「名付け」もまた言葉によるもの。』

【真空で死なない虫がいる そんな些細なことでまだ生きられる】
『想像を超えた生き物が実在する。そう思うことで閉塞感が薄らぐ。まだ見ぬ世界の可能性が広がるのでしょう』

嬉しいですね。ありがたいです。

短歌が面白いなと思うのは、作り手の意図とは違う受け取られ方をしても、それはまた面白い、ということです。例えば【「絶対」と名付けた犬に行き先を決めてもらってやっと進める】の歌は、僕の感覚では、「やっと進める」主体(主体というのは、歌の中の主人公、ぐらいの意味です)の弱さの方に力点を置いているつもりでした。ただ穂村弘氏はこの歌を、言葉を持たない犬の強さ、に力点を置いて読んでくれているように思います。

短歌を作り、それが評価される、という経験を繰り返すと、自分自身と他者との価値観の差異を意識することが出来る。僕らはみんな、自分なりの常識を持っていて、普段はそれを意識することはない。でも、短歌という、三十一文字しかない表現を作って提示し、そしてその受け取られ方を知ることで、自分が持っている常識が他人の持っている常識と違うのだと気付かされる瞬間がある。短く、いかようにでも受け取れる短歌という表現だからこそ、差異が浮き彫りになる。

前述した「俳句いきなり入門」の中には、「他人の句を読んで投票し、句評すること」ことにこそ俳句という活動の真髄がある、というような趣旨の文章があります。極端に言えば、俳句を作らなくても俳句という活動に関われるのだ、と。これは僕も実感していて、自分で作れなくても、他者の俳句や短歌を取り込んで、どう感じたのかを文章にすることで、自分自身にも作り手にも価値をもたらすことが出来る、という点が面白いなと思います。

僕はもう止めてしまってるからあんまり説得力はないかもしれないけど、短歌はとても面白いので、今まるで興味がない、という人も、触れたり作ったり評価したりしてみてほしいなと思います。
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2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
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新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
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4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
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10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
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1位 「死のテレビ実験
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4位 「消された一家
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9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)