黒夜行

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「ボクは坊さん。」を観に行ってきました

幼稚園の頃、お寺に泊まる、みたいなイベントがあったと思う。幼稚園のすぐ裏手の斜面沿いの墓地があり、その上に寺がある。幼稚園の時、その墓地で肝試しをしたような記憶がある。
父方も母方も、共に祖父が亡くなった。父方の祖父の墓は、そのお寺にある。寺の名前は覚えていない。自分の家がそこの檀家なのかどうかも、自分の家が何宗なのかも知らない。葬式と、何回忌ってのと、あと墓参りに、たまに行った。
お寺と関わるのは、それぐらいしか記憶がない。

『お寺の仕事は、葬式だけではないんですよ』

主人公のお坊さんは、幼なじみにそう言うが、確かにそれ以外の印象はあまりない。
数ヶ月前、僕は青春18きっぷを使って主に西日本をうろうろする旅をした。その際、高野山に寄るプランも考えてはいた。一度行ってみたいような気はしていた。ただ、ルートを検討して、高野山は諦めた。その代わり、というのは違うが、伊勢神宮と出雲大社には行った。どちらもたぶん神社で、でも僕は、神社とお寺の違いもよく分からない。
これまで、寺の息子、という人間に何度か会ったことがある。高校時代の同級生、大学時代の後輩、バイト先の後輩。家を継いだ者も、どうしたのか分からない者もいる。また、高校の同級生で、寺に嫁いだ、という女性もいた。それがかなり大きなお寺で、僕も行ったことがあるところだったので驚いた。彼らは、日常の中に「お寺」というものが存在する生活をしている。それがどういうものなのか、興味はあるけど、なかなか知る機会はない。
かつて、「スリーピングブッダ」という小説を読んだことがある。お坊さんになるための修行を行う若者たちの物語で、実際どんな修行が行われるのかをリアルに描いている。また、「食う寝る坐る永平寺修行記」という本を読んだこともある。これは、坊さんになる修行を実際に行った人間が書いたノンフィクションだ。こちらも、リアルで面白かった。
そんな形で、少しずつ、寺というものと関わることはある。しかしそれは、ほんの瞬間すれ違うみたいな関わり方でしかなくて、ほとんど知らない。もっとお寺が身近にあるような生活をしている人もいるだろうけど、僕はそうではなかった。知らない世界のことを知ることには興味があって、そういう意味でお寺にも関心がある。

映画の舞台は、四国にある永福寺というお寺だ。お遍路で回る八十八のお寺の内、57番目のお寺である。主人公は、その永福寺に生まれた、現住職の孫である。高野山大学に学び、阿闍梨という位を得たが、今は地元の本屋で働いている。
現住職は、地元の多くの人に慕われているのだが、ある日倒れ、すい臓がんを言い渡される。それを機に、坊さんになるかどうか迷っていた主人公は、坊さん用に名前を変え、祖父の跡を継ぐが、坊さんの世界は知らないことの連続だ…。
というような話です。

映画として見た時に、ちょっと全体的に弱いな、と感じました。あまり知られていないお坊さんの日常を描く、というのは分かるんだけど、ちょっと内容にまとまりがないような気がしました。メインのストーリーとなるのは、幼なじみが関係する部分と、檀家の長老が関係する部分でしょうか。幼なじみのパートは、突発的な出来事により関係性が変わってしまう様を、そして檀家の長老のパートは、若くして住職になった主人公と、先代を慕う檀家たちの行き違いを描いている、という感じでしょうか。幼なじみパートは、ちょっとありがちなストーリー過ぎてちょっとなんとも言えなかったし、檀家の長老パートは、もう少し対立構造がはっきりするストーリーじゃないと入り込めないかなぁ、と思いました。
高野山大学時代の友人パートの話もあるんだけど、これは正直、なくてもストーリー全体には影響しないというか、なんでストーリーに組み込まれているのかイマイチよくわからない感じがしました。
そしてそれらの合間に、お坊さんの謎めいた日常的な話が組み込まれるんだけど、どうも中途半端な感じがしてしまいました。どうせなら、これらの「お坊さんあるある」をうまく発端にして全体のストーリーを組み上げられれば面白かったような気がするんだけど、これらの「お坊さんあるある」は、映画中で本当に挿入エピソード的な扱いなので、なるほどなぁと思いはするけど、映画の全体のストーリーの中で印象的な要素になれているわけではありません。
メインはやはり、幼なじみパートなんだけど、この幼なじみパートのせいで、「お坊さんという異世界に飛び込んだ主人公の葛藤」みたいなものが上書きされてしまっているような気がするのがもったいない気がしました。この映画は、僕の勝手なイメージでは、「突然お坊さんになってあたふたしている若い住職の奮闘」を描く部分に主眼があるような気がしたんだけど、幼なじみパートのエピソードがそれを全部かっさらって行ってしまっている気がします。お坊さんになったことへの葛藤よりも、ずっと仲良くしていた幼なじみへの心情が勝ってしまって、お坊さんになったことへの葛藤をうまく描ききれていないような印象を受けました。それでも、幼なじみパートが面白かったら別に問題はないんだけど、うーん、そうでもないと思うんだよなぁ。

なんとなく全体的に、もう少しやりようがあったような気がするので、ちょっともったいない気がしました。

「ボクは坊さん。」を観に行ってきました

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)