黒夜行

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「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」を観に行ってきました

何かと話題のこの映画を観に行ってきました。とはいえ、メディアの評判とかはよく知らないで観に行きましたけどね。

さて、先に僕自身の「進撃の巨人」に対する予備知識について書こうと思います。
まず、原作は、7巻ぐらいまで読んだことがあります(続きを読まなかったのは、つまらなかったからとかではありません。漫画喫茶の最後の余った時間で「進撃の巨人」に手を出したので、途中で時間切れになった、みたいな感じです)。一回読んだだけで、しかもちょっと前の話なので、ざっくりした内容しか覚えていません。登場人物の名前も、「エレン」「ミカサ」「アルミン」「リヴァイ兵長」が分かるぐらいで、後はあやふやです。
原作以外には、まったく触れていません。基本的には、「進撃の巨人」のファンというわけではない、という感じで思っておいてもらえたらいいと思います。

そんなわけで、「原作と比較してどうか」「キャラクターは原作のイメージと合っているか」「映画用にストーリーが改変されたためにここが削られている」みたいな話はさっぱり分かりませんし、僕個人としては、そういう部分は映画の評価には含めません。原作のファンが見れば、まあいろいろあるんでしょうけど、僕にはそういうものは分からないし、もし僕が原作のファンだったとしても、気持ちの上では出来るだけ原作と映画は切り離して観ようと意識しています。

ということを踏まえて、映画全体の感想を書くと、「あまり面白くなかった」となります。
ただこれには、一つ大きな理由があると思っています。それについて書きます。
僕がこの映画を「あまり面白くなかった」と感じた最大の原因は、「コミックを7巻ぐらいまで読んでいたから」となると思います。つまり、設定や大体の展開の流れは知っていたわけです。もし、「進撃の巨人」について、一切の予備知識がない人が映画を観たら、結構面白く観れると思います。随所で予想外の展開が起こるし(あの人物があそこでああなった後まさかああなるなんて!みたいな部分は、結構驚くでしょうし)、異様な設定や、衝撃的なシーンなどが散りばめられているので、映画単体として観た場合、かなり楽しめるのではないかと思います。
ただ僕は、少なくともこの映画で描かれていた部分ぐらいまでは、話を知っていたので、原作未読の人であれば驚くような場面でも驚く感じにはなりませんでした。この点が、僕がこの映画をつまらなく感じた最大の理由だと思います。

あと、当然ではありますが、この映画は前後編で分かれているので、物語の結末に当たる部分は続編の方に含まれるわけです。前編では、舞台設定と、物語の始動、どうなれば作戦が成功であるのかというゴール地点の明示と、予期せぬトラブル。さらに予想外の事態を迎えて、それが解明されないまま物語は閉じるわけです。前編だけで物語が閉じているわけではない、という意味で、この映画単体で面白さを感じられなかったのは仕方ないかもしれません。

とはいえ、僕がつまらなさを感じた部分は、「原作で物語を知っていたが故に、映画の物語に魅力を感じなかった」という点であって、映画の映像の観点で言えば、なかなか楽しめました。僕は、物語が進んで街が荒廃してからよりも、物語の始まり、街にまだ活気があって、みんなが生き生きと暮らしている場面が結構好きでした。狭い路地に売り物や生活物資が山と積まれ、人が様々に行き交い、多様な音が聞こえてきて、その活気全部が「人が暮らしている感じ」を凄く滲ませているので、いいなぁと思いました。その冒頭に、幸せな部分はすぐ終わっちゃうんで、残念なんですけど。

冒頭しばらくして、巨人が街を襲うわけですけど、この場面のスピード感も見事だと思いました。街は大混乱に陥って、狂気に包まれる中、誰もが自分はどうにか生き延びようと必死になる。しかし、無情にも人はあっさりと巨人に食われていき、狂気は益々増大していく。確かに、街を破壊しているのは巨人なんだけど、次第に、人間が生み出す狂気と混沌こそが人間をさらに混乱に陥らせていって、巨人の存在と同じく脅威となっていく。その人間が生み出す脅威の成長過程が、人々が逃げ惑う場面から凄く伝わってきて、これも好きな場面です。

また、これは映画を見てて初めての経験でしたけど、ある場面でびっくりしすぎて席でちょっと飛び跳ねてしまいました(マジです。そんな振る舞いをした自分自身にびっくりしました)。どの場面かは言いませんが、随所で不意打ちを食らわすような場面が出てくるので、ハッとさせる力のある映像が多いと思いました。

個人的には、もう少し「虚無感」が映像から伝わるといいなと思いました。映画の大部分は、巨人の襲撃を受けた2年後の世界を描くわけですが、「2年前の活気のあった街」と比べて、「2年後の世界」がもっと「虚無感」に溢れていてほしかった気がしました。物語の設定としては、その2年前の巨人の襲撃というのは、100年ぶりに起こったものです。つまり、壁の内側で生活しているほとんどの人は、実際に巨人を見たことはなく、主人公の一人も「本当に巨人なんかいるのかよ」と疑問を呈するような発言をします。だから人々は、壁が存在しているという事実は常に認識した上で、「でも平和な世界になったんじゃないか」という楽観をかなり持ってたと思うんですね。
しかし、そんなある日、巨人がやってきてしまった。巨人という存在がそもそも異質で圧倒的で、それが存在しているというだけでも絶望的なのに、そいつらは人間を無残に食い散らかしていくわけです。100年間の平和を享受してきた人たちにとって、これはあまりにも絶望的な状況だと思うわけです。
確かに、2年後の世界で主に描かれるのは、「兵士たち」(たぶん表現的には正しくないと思いますが)です。巨人と立ち向かう決意をした者達の集まりではあるので、ごく普通に暮らしている人よりは、絶望感は薄い、と見ることは出来ます。しかし、物語が進むにつれて、彼らが「兵士」に志願した理由が露わになります。家族との生活を守るため、育児給付が出るから、食いっぱぐれないから…。「巨人に立ち向かうため」という前向きな理由ではなく、かなり現実的で後ろ向きな理由から「兵士」を志願した者ばかりです。
だからこそ、もっと絶望感が画面から伝わったら良かったのに、と感じました。映画の尺の都合など、色んな理由があるとは思いますが、僕は少しそこが物足りないような感じを受けました。

2年後の世界の描かれ方で興味深いと感じたのは、「敵」「味方」が混沌としている、という点です。もちろん、当然人類にとっての共通の敵は「巨人」です。しかしでは、そこに生きる者すべてが、そういうはっきりとした線引をしているかと言えば、そうではないと思いました。それは、「巨人」を「味方」だと感じる者がいる、という意味ではなく、「巨人」という「敵」があまりにも強大過ぎる故に、「巨人」を「敵」と見なすことを恐れ(あるいは、現実味を感じられず)、直接的な「敵」を「巨人」ではないものに設定してしまう者がいる、という意味です。こういう者の存在により、「敵」「味方」という色分けが実に曖昧になっていきます。「敵」である「巨人」が、人類には到底立ち向かえないほどの強大過ぎる存在である、という世界観が生み出す混沌とした世界は非常に不安定で、いつどんなことが起こりうるのかわからないというぐらぐらした感じを観客に与えると思います。その不安定さが、映画全体をまた違った意味で緊張させる要素としてうまく機能しているなと感じました。

原作ファンが観たらどうかは僕には判断出来ませんが、原作を中途半端に読んでしまっていた僕としては、「映画のストーリーは(知っているが故に)面白く感じられなかった」けど、「場面場面での映像や緊迫させるような瞬間的なシーン」なんかは結構面白かったと思いました。

「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」を観に行ってきました
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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
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小説以外
1位 「死のテレビ実験
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4位 「消された一家
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7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)