黒夜行

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if サヨナラが言えない理由(垣谷美雨)

内容に入ろうと思います。
早坂ルミ子は、「患者の気持ちがわからない女医」というレッテルの中で、本人としては日々真面目に仕事をしている。確かに、空気が読めないというか、相手の気持ちを汲み取れないために、相手を怒らせたり不愉快にさせたりすることが度々あった。
そんな折ルミ子は、変わった聴診器を拾う。それは、患者の胸に当てると、患者の心の内側を読むことが出来る代物だった。
ルミ子は、末期がんの患者を受け持つことが多く、これまでに看取ってきた患者も多数に上る。ルミ子は、死を前にした患者の気持ちを知り、空想の中で人生のやり直しをさせてあげる。

「dream」
大女優の娘である小都子は、芸能界入りを希望した娘に反対し続けた母親にわだかまりを抱いている。どうせ若くして死んでしまうなら、芸能界入りさせてくれても良かったのに、と。母親は、あなたには芸能界は無理よ、というばかりだったが、ルミ子の力を借りて空想の中で芸能界入りを果たす。

「family」
典型的な日本のサラリーマンである日向は、見舞いに来た妻がお金の話しかしないことに苛立っている。もっと夫をいたわる気持ちはないのか、と。しかし、郊外に一戸建てを買ったせいで通勤時間が伸び、家族と過ごす時間が激減していた。見舞いに来た子どもたちとも、何を話したらいいのかわからない始末だ。自分は家族として、間違っていたのだろうか…

「marriage」
雪村は、46歳にもなって未だ独身を貫く娘に対して負い目を感じている。かつて娘が一度だけ、この人と結婚したいと言って男性を連れてきたことがあったが、大反対してしまったのだ。この人と結婚できないなら私は一生結婚しないと言って、娘はそのまま独身を貫き通した。あの時、結婚を認めてあげるべきだったのだろうか。

「friend」
八重樫は、中学時代のある出来事に未だに負い目を感じている。親友が、他人の罪を被ったせいで、その後人生がしっちゃかめっちゃかになったと感じている。あの時、自分がやったと名乗り出れば良かった。たぶん自分が名乗りでてれば、きっとそれほど悪い結果にはならなかったはずなのに…。

というような話です。
全体的には、ちょっと小ぶりな印象でした。連作短編集ということもあるのかもしれないけど、全体的に掘り下げ方が薄いかなぁ、と。「こういう後悔をしているのだ」という告白と、「そうじゃなかった場合の人生」の両方が短編の中に詰め込まれているので、必然的に掘り下げが甘くなってしまうのだと思います。どのエピソードも、駆け足で進んでいくような、そんな印象を抱きました。
「人の心が読める聴診器」というモチーフ自体は別にいいんだけど、毎回それの使われ方が同じなのも、もう少し工夫がほしい気はしました。使われ方というか、登場の仕方というか。連作短編集の中で固定の枠組みがあるというのは、コメディタッチの作品の場合には有効に機能しそうですが、本書のような、シリアスな作品(雰囲気としてあまりシリアスさは感じないのだけど、モチーフとしてはシリアスでしょう)の場合には、その固定した枠組みはあんまりうまく機能していない印象を持ちました。
それぞれのエピーソードが、ちょっとリアリティを持ちにくいほど極端というのも、気になる部分です。女優の娘や、結婚しなかった相手がビジネスでとんでもない成功をしたなど、振り切れ方が極端で、もう少し地に足がついたというか、馴染みを感じやすいというか、そういう設定にしても良かったのではないかなと感じました。
個人的に一番興味深かったのは、ルミ子の同僚である岩清水という医師です。少しずつ彼の背景が明らかになっていくんだけど、一番興味深い登場人物かなという感じがしました。
全般的に、もう少しうまくやれるような感じがします。

垣谷美雨「if サヨナラが言えない理由」


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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)