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浜風商店街 ふるさと久之浜で生きる(武田悦江)

『浜風商店街は、我が国における仮設商店街第一号である。2011年9月3日、いわき市久之浜町にオープンした』

本書の冒頭の一文だ。なかなかカッコイイ冒頭ではないか。「第一号」である。

先日、【解放食堂・ふくしま弾丸ツアー】で、いわき市に行ってきました。そこの「浜風商店街」で売っていたのが本書です。
【浜風商店街】というのは、冒頭の一文でも描かれている通り、「仮設商店街」です。なんと浜風商店街は、久之浜第一小学校のグラウンドに建てられているのだ。

浜風商店街

何故小学校のグラウンドに仮設の商店街が誕生したのか、その経緯と、商店街の面々の震災時の記憶を収録したのが本書である。

『ブイチェーンはたや店長・遠藤利勝さんは、避難先で久之浜町の住民に会うと必ず、「(店を)やってもらわないとね」と言われた。ある人からは、「はたやさんがやんねぇと、おいら出て行くしかないんだ。久之浜町にいらんないから」とまで言われた。商売人冥利に尽きる言葉を受けて、「焦点を再開するのが、約束みたいになっていましたね」。利勝さんは、決意を固めた。そこまで言われたら、やはり嬉しいしがんばろうと誰でも思える。利勝さんをはじめとする事業主たちは資金繰りが大変な中、事業再開への道を模索し、歩き出した。』

この言葉に代表されるように、浜風商店街は住民の要望を受ける形で誕生した。

『しかし日常生活を一日でも早く取り戻すためには、震災以前のように食料品や生活用品を取り扱う地元のお店がなければ、高齢者世帯を中心に、たとえ自宅に戻ったとしても孤立してしまう。町の復興に向けて踏み出すためには、まず商業者が立ち上がらなければならない』

とはいえ、久之浜商工会が「仮設商店街」の構想をいわき市に提案したのが、3月下旬。震災からひと月も断たず、市内のあちこちでまだ断水状態が続いている時だったというから凄い。みな被災して大変だったろうに(久之浜は、いわき市内で唯一火災が起こった地域でもある)、それでも復興の青写真を描くために立ち上がった人がいたのだ。
もちろん、簡単な話ではない。何よりも皆、資金繰りが大変だ。それまであった借金を返済しつつ、新たな資金を調達して来なくてはならない。しかも、保険や賠償金などがどの程度になるのか、まだ判然としていなかった時期だろう。場所があっても、設備を整えなくては営業出来ない店舗もある。

『スガハラ理容店主、菅原紀友夫妻は、阪神淡路大震災を経験した神戸市理容連合会から、福島県理容生活衛生同業組合を通じて理容店の商売道具一式を譲り受けた』

そんな支援もありながら、みな資金繰りを模索していく。
また場所の問題もある。選択肢はほとんどなく、場所は小学校しかないと早々と決まるが、クリアしなくてはならない問題はたくさんある。

『それでもやはり学校である。小学校内に商店街が立ち並ぶ事例は過去にはない。買い物をする場所が小学校の近くにできることによる治安の問題や、飲食店からでる臭いの問題などは大丈夫だろうか等々、想定される問題に対しては関係者が集まって、一つ一つ対処を検討していった』

本書には、久之浜第一小学校の校長の話も載っているが、敷地内に商店街があることについて、こんな風に語っている。

『でも学校の行き帰りに浜風商店街を通ってバスに乗り降りするんですよ。そういう時、商店街のみなさんは、どんなに忙しくても、子どもたちが変える時間には出てきてくれて「学校どうだったか」とか「ちゃんと明日も元気に来いよ」と、子どもたちに声をかけてくれる。
そのことによって子どもたちは、「久之浜」という地域を忘れずにいることができるし、地域の暖かさを感じ続けることができるのです。浜風商店街そのものが、久之浜を集約している人たちの集まりかな』

シューズショップさいとう・斉藤洋子さんは、元々事業再開は難しいだろう、と考えており、避難先の新潟でのんびり暮らしていたという。

『「久之浜に戻らないと、子どもたちが上履きや運動着などを揃えるのに苦労するだろう」
学校関係の商品だけ揃えればそれでいいと思い、地元の子どもたちのため、洋子さんは久之浜町に戻ることを決断した』

そんな人たちが集まって、浜風商店街は誕生したのだ。

『「みんなすごいなと思った」
白●建築設計事務所の白●哲也さん(●は「土」に点)の言葉に象徴されるように、自分たちも被災者であるにも関わらず、地元の焦点主は立ち上がった。出店した事業主の中には、もう商売を辞めるつもりだった人もいる。でも、
「子どもたちの運動着や靴がないと困るだろう」
「床屋があったほうがいい」
「電器屋もあった方がいい」
と、地域に住む人たちのことを考えて出店をみんな決意したのだ。事業者たち一人一人が、商売を通じて久之浜町の灯りとなろうとしていた』

オープン当日は台風でももの凄い雨風だったという。それでも2000人の来場者があった。久之浜商工会の根本信一主査は、オープン前後から毎日取材に追われ、他の仕事が出来ないほどだったという。大勢の人の期待を背負って浜風商店街は誕生したのだった。
そんな浜風商店街は、同時期に他地域で誕生した他の仮設商店街と一緒に、「2012年日経優秀製品・サービス賞 審査員特別賞」を受賞した。本書巻末には、浜風商店街を訪れた全国各地の団体名が列挙されているが、注目度の高さが伺える。

『仕事ができるありがたさを実感した』

そう語るからすや食堂・遠藤義康さん夫妻には、こんなエピソードがある。

『浜風商店街オープンの2~3日後に、どんぶりを返しに来た常連客がいた。その日返却してもらったどんぶりは、大地震が起こるわずか数時間前、3月11日の昼に出前したものだ。震災後から6ヶ月間、配達先のお客様が自宅で大切に保管していてくれたのだ。』

僕が浜風商店街を訪れた際は、コーヒーを振る舞ってくれ、みな元気に楽しく明るく仕事をされていた。浜風商店街という仮設商店街は期限が存在するものだし、今でさえ資金繰りはきっと厳しいだろう。何ごともうまく行っているというわけではないかもしれない。それでも、傷ついた子どもたちを見守る存在として、地域の人が集う場として、そして何よりも住民の生活の基盤を提供する場として、これからもその役割を担っていって欲しいと感じました。
さて本書は冒頭で、浜風商店街の方々の震災時の体験談が載っている。その中からいくつか抜き出してみようと思う。

『とっさに新妻賢一郎さんは車から降りて、遮断機を持ち上げた。
「車がどんどん来るんで、誰かがやらなくちゃいけないですよね。それで車が途切れるまでは続けました。それから所属する、消防団の屯所に向かいましたね」』

『内郷にある共立病院を出るのが、あと10分遅かったら、私も帰宅途中で津波に巻き込まれていたかもしれないと思います。本当にぎりぎりの判断でしたね』

『何日かたって消防活動をしていた人に会ったのよ。そしたら「ごめん」って言うんだよね。「からすやさんの店を守れなくてごめん」て』

『なんか狩猟民族みたいでしたね。川にも水をくみに行きましたね。嫁さんの弟と二人で「今日はあれがなかった」とか「今日は収穫があった」とか。でも二人でいろいろ考えて「あそこ行ってみっぺ」とか「ここ行ってみっぺ」とか』

震災の記憶はどんどんと薄れている、という実感がある。それは、正直なところ、ある程度は仕方ないと思えてしまう。実際、日常生活の中に、もう「震災」とか「原発」とか「被災者」とかが入り込んでくる余地はないのだ。それは、それぞれの人が意識して引き寄せようとしなくては、もう日常の中に居場所はない。多くの人の記憶から、震災のことが消えて行ってしまうのは、ある程度仕方ないのだろうなと思える。だからこそ、僕はこう言いたい。少しでも震災に関わることに関心を持っている人は、是非そのままその関心を持ち続けていてください。行動が出来なくても、発信が出来なくても、「知識として知り、共感すること」は出来ると思う。そして、それは決定的に大切なことなのだろうなと僕は思う。すぐにではないかもしれないが、やがてそれは意味を持つだろうと思う。ほんの少しだけだけれども、僕が被災地と関わった経験で言うと、やはり被災地にいる方々は「忘れられることの怖さ」を時折覗かせる。だから、関心を持ち続けられる人は、意識して自分の日常に「震災」を引き寄せる。そういう意識を持ち続けて欲しいなと思います。
本書は、amazonでも楽天BOOKSでも扱いがないみたいなので(ISBNがついてたから、あるかなと思ったんだけど)、浜風商店街のサイトのリンクを貼っておきます。

武田悦江「浜風商店街 ふるさと久之浜で生きる」
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コミック

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2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

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2012年の個人的ベストです
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5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
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9位 山本弘「詩羽のいる街
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16位 朝井リョウ「何者
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18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
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1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
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4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
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17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
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