黒夜行

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鸚鵡楼の惨劇(真梨幸子)

内容に入ろうと思います。
舞台は、西新宿・十二社の花街にずっと昔から存在していた洋館「鸚鵡楼」。初めは、「料亭」の名を騙った置屋だったが、バブル全盛期に超高級マンションに生まれ変わる。その後も幾度も姿を変えながら、「鸚鵡楼」の名前だけは引き継がれていく。当時飼われていた鸚鵡から取られた名は、長い寿命を誇る鸚鵡そのもののように、ずっと残り続ける。
1962年に発生した鸚鵡楼での殺人事件。鸚鵡楼で日常的に行われていた出来事を覗き見していた少年。1991年に、鸚鵡楼の跡地に建った超高級マンションに住んでいた、人気エッセイストの蜂塚沙保里。自分の息子は犯罪者になるのではないかと怯えながら、華やかな生活を維持するために心を売り渡していく。2006年、世間で「鸚鵡楼の惨劇」と呼ばれている事件をモチーフにした映画が制作されることになる。来歴の分からない謎の主演俳優と、彼が書いた自叙伝…。
というような話です。
なかなか面白い作品だったと思います。
本書の一番の特徴は、映画で言う「カットバック」のような、視点人物・場面の切り替えでしょうか。とにかく、めまぐるしいと言ってもいい程です。そして、この手法は人それぞれ感じ方は様々でしょうが、全体的にスピード感を生み出すことには成功しているのだろうなという感じはします。とにかく、テンポがいいです。視点人物や場面が頻繁に切り替わることで、読みにくさもあったり、ストーリーを追うのについていけなかったりする部分もあるでしょう。本書の場合、この切り替えの頻繁さをどう評価するかで、作品への感じ方が変わってくるような気がします。
ストーリーのメインは、1991年を舞台にした、人気エッセイスト・蜂塚沙保里の物語です。このパートが最も長いでしょう。蜂塚沙保里のパートでは、沙保里の妄想や過去の回想なども頻繁に挿入されることで、より切り替えが頻繁になります。
真梨幸子らしさが一番発揮されるのも、この沙保里のパートかなと思います。沙保里は、たまたま書いたエッセイが当たり、いくつもの連載をこなす人気エッセイストとなっていく。が、それに合わせて自分の生活を変えていったために、それまで趣味程度で書いてきたエッセイで、お金を稼がなくてはならなくなる。
そうして沙保里は、周囲にいる人間を、読者から反感を買わない程度に貶すエッセイを書いて人気を維持しようとしたり、あるいはお金をもらうタイアップ記事に手を染めるようになっていく。そういう、沙保里が余裕をなくしていく過程はなかなか面白い。また、沙保里が書いたエッセイが、結果的に周囲の人間関係をどう引っ掻き回していくのか、それも読みどころの一つだろう。
とにかく沙保里は、自分のことしか考えていない。自分がいかにこの生活を維持出来るのか、自分がいかに周囲から羨望の眼差しを集められるか、そういうことしか。だから、息子の存在も疎ましいのだ。息子の存在は沙保里にとって、足枷の一つになっていく。
息子の存在が疎ましい理由はもう一つある。そしてその理由こそが、「私の息子は、犯罪者になるに違いない」と沙保里に思わせる。過去のしがらみに囚われながら、現実に必死にしがみつこうとする醜さと、それを決して表に出すまいとする見栄にがんじがらめにされた残念な女性の姿は、痛々しくも面白い。
半世紀に渡る「鸚鵡楼」を舞台にしたゴタゴタは、ある男の執念によって一つの解決を見る。その解決自体も、なるほどという感じではあるのだけど、やはり真梨幸子は、人間の愚かさや醜さを書く部分の方が面白いと思う。そういう意味でやはり、沙保里のパートが一番読み応えがあったかな。
それなりに面白く読ませる作品だと思います。

真梨幸子「鸚鵡楼の惨劇」


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2013年の個人的ベストです。

小説

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3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
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8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
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10位 辻村深月「島はぼくらと
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13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
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新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
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10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
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2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
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10位 原田マハ「キネマの神様
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16位 小川洋子「人質の朗読会
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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小説以外
1位 「死のテレビ実験
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)