黒夜行

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数学文章作法 基礎編(結城浩)

内容に入ろうと思います。
本書は、プログラミング言語などの入門書などの執筆の他、高校を舞台にした小説仕立ての構成で、「数学」をものすごく楽しく分かりやすく描く「数学ガール」シリーズでも知られる著者による、文章の書き方講座です。タイトルの通り、数式などを含む文章の書き方の話ではあるのですが、具体例にそういう話がメインで出てくる、というだけで、本書は、物語以外の文章を書くすべての人に読んでもらいたい作品です。それぐらい、細部に到るまで細かく注意深く様々な指摘をしてくれるし、「書くこと」=「考えること」なのだということが凄く伝わってきます。
本書は本当に「文章の書き方講座」という感じの作品であって、微に入り細を穿つようなとてもきめ細かな話が色々書かれます。なので、内容全体を紹介することはほぼ不可能です。
どれぐらい細かいかというと、例えば、

『「とき・こと・もの」を形式的に表現するときも、以下のようにひらがなをつかいましょう。

~する時→~するとき
~する事→~すること
~する物→~するもの』

『列挙の順序を入れ替えてもかまわないときには、列挙の区切りにナカグロ(・)を使います。順序を入れ替えないときには、読点(、)やカンマ(,)を使います

◯ 信号は青、黄、赤の順に点灯する
☓ 信号は青・黄・赤の順に点灯する』

というような部分から様々な注意点を教えてくれます。もちろんそれだけではなくて、どういう意図でその文章を書くのか考えなさいとか、一つの文章で主張は一つだけにすること、などもっと踏み込んだ内容も描かれていくわけなんですけど、とにかく文章を書くのに際して必要な知識・考え方が網羅されているような気がします。
さてまあそんなわけで、内容全体について書くことは諦めます。ここでは、本書の18ページまでの内容について触れ、著者がどんなスタンスで本書を書いたのか、というような部分について触れたいと思います。

まず冒頭で、こんな風に書かれています。

『こんにちは。本書「数学文章作法」では、

 正確で読みやすい文章を書く心がけ

をお話します。数式まじりの説明文が題材の中心です。』

本書は、「正確で読みやすい文章を書く心がけ」についての本です。そういう目的を持った文章を書く際には、非常に役立つと思います。企画書でも報告書でも論文でもなんでもいいのですけど、そういう、「正確さ」「読みやすさ」が重視される文章について、「正確さ」「読みやすさ」をどのようにして生み出していくか、というのが放しの中心です。
著者は、本書の著者としての立ち位置を、こんな風に書いています。

『私は文章を書く「権威」としてではなく「現役の執筆者」として本書を書こうと思います。私自身、ここに書かれていることを日々の執筆で実践し、読者のために正確で読みやすい文章を書こうと努力しています。』

僕は著者の作品は「数学ガール」シリーズしか読んだことがありませんが、「数学ガール」シリーズの読みやすさはちょっと凄いです。本書を読んでいると、なるほど「数学ガール」シリーズの読みやすさは、こういう細部にわたる心がけのお陰なのだなぁと実感することが出来ました。
本書は、こんな人に役立つのではないか、と著者は書きます。

『本書は「数式まじりの文章を書く人」に役立ちます。たとえば学生、学校の教師、塾の抗し、Web・雑誌・書籍の執筆者などに役立つでしょう。
本書は「文章を書く人」全般にも役立ちます。本書では数式についてだけ書いているのではなく、論文・Webページ・レポート・書籍など、どのような種類の文章にも共通の心がけを書いているからです。
また本書は「文章を読む人」にも役立つでしょう。本書の内容は、文章がどのように組み立てられているかを理解する助けになるからです』

きっとタイトルを見て、「数学の文章かぁ。じゃあいいや」って思ってしまう人はいるだろうと思います。でも本書は、「数式まじりの文章を書く人」だけに役立つ本というわけではありません。それは、読んだ僕自身が実感として持っていることでもあります。「正確で読みやすい文章」を書きたいと思っているすべての人が読むべき本だと思います。
さてでは著者は、「正確で読みやすい文章」を書くためにどうしろと言っているでしょうか。それはなんと、たった一言で表現できてしまいます。

『本書では、正確で読みやすい文章を書く原則をお話します。その原則は、

 読者のことを考える

と一言でいえます。本書は《読者のことを考える》というたった一つの原則を具体化したものといえるでしょう』

さらにこうも書きます。

『読者のことを考える。これが文章を書くときに最も大切なことです。数式が含まれているか否かに関わらず、あなたが文章を書く目的は、読者にあなたの考えを伝えることです。あなたの考えが読者に伝われば良い文章であり、読者に伝わらなければ悪い文章といえるでしょう。ですから、文章を書くときに読者のことを考えるのは当然です』

そして本書では、《読者のことを考える》ということを、それこそ徹底して解説してくれます。
僕はこのブログを、まあそれはそれは適当に書いているんですけど(それこそ、文章の構成を考えもせずに書き始めて、そして最後に読み返しもしないで投稿します)、もう少し本書で書かれているようなことを意識してみようと思いました。
とても細かく書かれていて、中には「こんなん知ってるよ」と感じる部分も多くあるかもしれません。でも、そういうものも漏らさず含まれているからこそ、本書に書かれてることをきちんとやれば「正確で読みやすい文章」が書けるのだろう、と思うことが出来るのではないかと思います。文章を書くのが苦手だという人、または、文章はなんだかんだいって書けるのだけど、自分が普段やっていることを体系的にきちんと捉え直したい人など、とにかく色んな人に向いている本だと思います。是非読んでみてください。

結城浩「数学文章作法」


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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)