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仙台文庫別冊 月刊佐藤純子(佐藤純子)

内容に入ろうと思います。
本書は、仙台駅前の書店「ジュンク堂書店仙台ロフト店」で書店員として働く佐藤純子さんが、3年間書き続けてきた「異色フリーペーパー」をまとめたものです。
書店員がフリーペーパーを作って店頭を配布するというのは、ここ最近ではもう珍しいことでもなくなりましたけど、3年前だとまだやっている人も多くはなかったでしょう。それに加えてこの「月刊佐藤純子」が異色なのは、「店頭で配布しているわけではない」という点だ。佐藤純子さんが、好きな時に書いて(だから、「月刊」と銘打ってはいるものの、月に何回も出るし、2ヶ月描かなかったこともあるという)、友人やお客さんに「押し配り」しているのだという。なかなかそんなフリーペーパーはないでしょう。しかも、この「月刊佐藤純子」は、結構全国区レベルの知名度を誇っている(もちろん、書店・出版界隈では、ということだけど)。だからこうして書籍化もされるわけである。佐藤純子さん自身の知名度がどんどん上がっていって、それにともなって「月刊佐藤純子」の知名度も上がっていくという感じなんだと思うんだけど、凄いもんだなぁと思います。
内容はというと、まあこれがかなり脱力的といいますか。「自分で髪を切ったら結構酷い感じになっちゃいました」とか「病気したり怪我したりしました」とか「酒飲み過ぎて記憶を失いました」みたいな、日常の色んなことが描かれていく。本書を読む限り、かなり変わった女性で、変わった人が好きな僕としてはなかなか惹かれる感じです。
あと凄いなぁと思うのは、とにかく人との繋がりの幅の広さ。書店・出版関係のみならず、とにかく色んなことに興味を持って、手当たり次第色んなところに突っ込んでいく。だから、別に親族がやっているわけではないお店屋さんの店番を頼まれて引き受けたり、取材に無理やりついていって挿絵を描かせてもらったりなんてことをしている。「人と繋がる力」なんて書くと、最近の風潮っぽくてちょっと嫌だけど、でも本当にそういう力が強いなぁ、という感じがしました。羨ましい限りです。
自分の備忘録的な感じで、琴線に触れた部分をざっと列挙してみようかな。

・「こたつをしまうと寒くなるよねぇ」に続けて、「本も返品すると問い合わせがあるよねぇ」
・ボーダーの服が好きで、かつ、店内で背中が出ていると注意される佐藤純子さん。だから、「背中にボーダーの刺青をしちゃえばいいよねぇ」って
・店内で台車を通すために「失礼します~」とお客さんに。だからついうっかり街中で自転車に乗ってる時も、周りの人に「失礼します~」って言っちゃう
・血管がまったく出なくて、驚異的に採血が不可能
・レジ閉め中にやることがなくなると、ムーンウォーク

さて本書には、通常の「月刊佐藤純子」とは別に、「ゆらゆら日記」と題された特別編も収録されている。これは、2012年3月12日から4月5日まで毎日描かれた、震災日記である。
どんな想いでこの日記を描いていたのかは想像するしかないのだけど、描かれたものを読むと、「楽しかったことを覚えておきたい/誰かに知ってほしい」というような気持ちが伝わってくる。辛い、辛いと描いても、心は晴れないし、周りも明るくなれない。しんどい日常の中にも、良かったこと、嬉しかったこと、楽しかったことはちゃんとある。そういうものをきちんと残しておこう。そういう心持ちでこの日記を描いていたのではないかな、と想像させてくれる。
やはりここでも佐藤純子さんは人との繋がり力を目一杯発揮していて、震災直後の厳しい毎日を、みんなでワイワイやりながら過ごしている。そういうワイワイした感じは、なんとなく、震災という現実に直面している人たちの話ではないように思えることもあって、なんだか心強い。こっちも、備忘録的に、ハッとさせられた部分をいくつか描いておこう。

・「かずくーん、地震よー」と声を掛けるお母さん
・「難しい専門知識やどんどん増える死者数じゃなくて、もっと別のことをききたい」
・「命にかかわらない買い物をすると申し訳ない気持ち。でもうれしい」
・左上に「配給 こうら 19:30」というメモ書き
・テレビで、リビアの戦争のニュースが流れる。「二日目の夜にみんなで星を見た。おなじはずの夜空に、ミサイルが飛んでた」
・4/3、23日目にして書店再開。お客さんから、「食べ物はこんなに入ってきてるのにどうして本は用意できないの?」と。

さて、本書は巻末に豪華な対談がある。「聞き手;伊坂幸太郎」というゴージャスな聞き手(であり、「月刊佐藤純子」の第一号からの愛読者)と、本書の編集者の三人で、「月刊佐藤純子」について語っている。佐藤純子さんから「「月刊佐藤純子」の新刊が出来ました」と連絡があって店に行った伊坂幸太郎だが、佐藤純子さんは不在。それでお店のスタッフに「新刊を取りにきたんだけど」と声を掛けると、当時はまだ「月刊佐藤純子」が店内でそこまで知名度がなかったのか、「そんな新刊はない!」ってなって大騒ぎになった、っていう話とか、面白いですよね。
最後に、交流のあるライター・編集者である南蛇楼綾繁という人が、「月刊佐藤純子」について語った文章が載っています。
佐藤純子さんのことは名前だけしか聞いたことがありませんでしたけど、本書を読んで、自分の中でなんとなくイメージが膨らみました。こういう、面白おかしく日々を生きている人って羨ましいなぁ、って凄く思います。自由人最高。これからもユルユルで楽しいマンガを描き続けてくださいと、遠くからお祈りしております。
そうそうこの本、なんと豪華なことに、栞紐つきなんでございます。

佐藤純子「仙台文庫別冊 月刊佐藤純子」


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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
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5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)