黒夜行

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これがメンタリズムです メンタリズムになれる本(DaiGo)

内容に入ろうと思います。
本書は、メンタリストとしてテレビなどで活躍するDaiGoお著作です。DaiGoの著作は結構たくさんあるんですけど、僕はこれが初めて読むDaiGoの本です。そんなわけで、他のDaiGoの作品と比較したりなんてことは出来ないです。
本書は4章から成っていて、大雑把にそれぞれの章をざっくり紹介していきます。
第一章は、DaiGoが実際に行なっている様々なパフォーマンス(もちろんそれには、フォーク曲げも含まれています)の実例を出しながら、それぞれを「どんな風に行なっているのか」ということが解説されます。こういうパフォーマンスの時は、こんな風にしてるんですよ、みたいなことが解説されちゃうわけです。
これが凄いなと思いました。後でも書くつもりですけど、DaiGoは、メンタリズムがマジックと違うことを主張するためにかなり闘って来た歴史を持っています。マジックのようだけど、メンタリズムってマジックと何が違うんだろう?そういう疑問に答えるための、入り口みたいな感じでしょうか。
この章では、DaiGoのフォーク曲げのパフォーマンスのコマ割りの写真が載ってたりするんですけど、やっぱり何をやってるのかわかりません。
あれ?「どんな風に行なっているのか」っていう解説をしてくれるんじゃないの?と思った方。
そうなんですけど、でもわかんないんです。
DaiGoは、「こんな風にやってるんですよー」と書きます。でも、読んでいるだけじゃ、それが具体的にどんな動きで、どんな仕草で、どんな口調で、みたいなことが全然わからなかったりする。
そう、それがメンタリストであるDaiGoの強みなんだろうなと思いました。
本書を読んで強く感じたことは、「手法を明かしたとしても真似できない」という自信です。DaiGoは、自分が何をしているのかを語ることは出来る。でも、その語られた内容は、とてもじゃないけど常人にはできそうな気がしない。っていうか、無理でしょう。そういうテクニックをいくつも組み合わせて、DaiGoは不思議なパフォーマンスを演出している。
舞台裏は覗かせてくれるんだけど、でも分かった気にはなれない。そこが、マジックとメンタリズムの大きな違うの一つかもしれません。
第二章は、第一章をさらに深めたような内容と言えるかもしれません。第二章では、色彩理論や心理学など、具体的な科学的背景を解説したり、DaiGoが自分で様々に実験してきて得た統計的な結果なんかを織り交ぜながら、DaiGoのパフォーマンスを支える科学やロジックについて詳細に描かれている感じがします。
この章を読むと、人間って不可思議だし面白いなって思います。
僕らは、色んなことを自分の意思で選んでいるつもりでいるし、嘘をつき通せているような気がしてしまう。でも全然そんなことはなくて、自分の意思以外の影響によって物事を選択させられることもあるし、嘘はすぐバレる。もちろん、DaiGoのように訓練によってテクニックを身につけないとそういうのはわからないわけなんだけど、人間ってこんなに色んな情報を発しているんだなぁと思うと、凄く不思議な感じがしました。
僕は、心理学とか脳科学の本なんかをそれなりに読んでいたりするんで、人間の認知に関する不可思議さみたいなものは実は結構知ってたりします。視界に入っているはずのものが見えなかったり、無意識に働きかけられる情報によって行動が左右されたりというのは、現実に様々な科学の結果として知られている事実です。
でも、メンタリズムの凄い点は、それらの様々なジャンルにまたがる知識(催眠術・色彩理論・心理学・物理学などなど)を様々に組み合わせることで、パフォーマンスとして見事なものを生み出してしまう、という点だと思います。
まさにそれは想像力の要求される部分だと思います。それぞれの専門知識を知っているだけではダメで、それらをどんな風に組み合わせたらどんなことが出来るだろうか。そういう発想で色んなことを考えていくことで、DaiGoがやるような不思議なパフォーマンスを生み出すことが出来るわけです。人間の行動の不可思議さみたいなものもやっぱり不思議ではあるんですけど、僕的には、それらの知識を使ってパフォーマンスを創造するメンタリズムの凄さみたいなものを実感しました。
第三章は大体、どんな風に訓練したらいいか、みたいな話になります。
DaiGoは、センター試験が終わった直後に見たマジックの特番がきっかけでマジックを始めるようになったそうです。それから、メンタリズムというものに出会い、不断の努力を積み重ねてここまで来ました。
僕がテレビでDaiGoを初めて見た時は、まだ慶応大学の学生でした。今何歳か知りませんけど、数年間の間にあのメンタリズムの手法を身につけたわけです。
いや、それは凄すぎるだろと思いました。僕はてっきり、子供の頃からマジックが大好きで、それでメンタリズムも…みたいなことかと思ってたんですけど、全然違ったみたいです。
あの華麗なるフォーク曲げにしても、あらゆることを調べ、そして一日に100本ぐらいフォークを曲げる練習をして、それであれだけ洗練された、誰も見たことがないようなフォーク曲げのパフォーマンスを完成させたようです。
メンタリズムの訓練は、マジックとはまた違った難しさがあります。
マジックの場合、一人でネタを練習すればいいですが(まあでも、会話のタイミングとか、視線をどうするかとか、そういう相手がいないと出来ないこともあるだろうけど)、メンタリズムの場合、まず基本となるのは『観察』です。
DaiGoは、二週間『目』だけを観察し続ける、その後は『口元』だけを観察し続ける、みたいな風にして、少しずつ人間の反応のデータを蓄積していったみたいです。やるとなったら徹底的にやらないと気がすまない性格のようで、とにかくあらゆるテクニックを自分のものにするために、相当な努力を重ねたんだそうです。
本書でも、まあDaiGoみたいになるのは難しいだろうけど、日常でも使えるレベルのテクニックをどう身につけるか、みたいな話が描かれます。
そして第四章は、さっきもちらっと書いた、マジックとメンタリズムの違いの話です。というかそれはあくまでも背景的な話で、メインはDaiGoがどんな風にテレビの世界に出てこれたのか、みたいな話です。
DaiGoは、マジックとは違う魅力を持ったメンタリズムというものをもっと広めたいと思っていた。
でも、テレビというのは、わかりにくいものは徹底して扱わない。

『「不思議」を見せるパフォーマンスは、すべて手品(マジック)か超能力のいずれかに属するという決め付けた常識が邪魔して、理解されないことも多かったが、それ以外に、バラエティ番組でのやらせ問題の露呈も重なり、「不明確なもの」を扱うことに、どこもピリピリと神経質になっていた。』

『マジック』や『超能力』であれば、視聴者の方にもイメージがあるし、分かりやすい。でも、いきなり『メンタリズム』とか言われても、なんのこっちゃわからない。それで、プロデューサーはDaiGoらに、メンタリズムって何?って聞くんだけど、長々しいなんだかよくわからないような説明をしないとなかなか伝わらなかったりする。
この、マジックとは違うメンタリズムって何?っていう部分が上手く伝えられなかったせいで、かなり長い間DaiGoはテレビの世界で活躍することが出来なかった。
一番初めにテレビに出た時は、DaiGoの代名詞みたいなフォーク曲げのパフォーマンスだったんだけど、それ以来、フォーク曲げばかりにオファーがくる。実際にやりたいメンタリズムは、テレビで披露するどころか、プロデューサーが耳を貸そうともしてくれない。
そういう状況が長く続くのだけど、でもDaiGoは諦めずにメンタリズムのことを伝えたいと思って努力したから、今のようにメンタリストという形で名が知られるようになった。これが途中で折れて、まあいいや、マジックとか超能力ってことにしよう、なんて思ってたら、今のDaiGoはないだろう。
本書ではこんなことも書かれている。

『本書を買いている2012年現在、パフォーマンスはすべて心理学やトリック、ロジックに基づくもので、そこに超能力や霊能力の類は一切ないという言い方をしているのは、僕とダレン・ブラウン(とバナチェック)だけだ』

メンタリストと呼ばれている人は、日本には非常に少ないのだけど、海外には結構いる。でもその人達も、心理学などに基づいていると言いつつも、同時に、超能力的な存在についても触れるのだという。僕は初めてDaiGoを見た時、これは科学とかロジックで超能力を再現してるんだ、みたいなことを言ってるのを聞いて、なんかすげぇこと言うなぁって思ってましたけど、やっぱりあれは、世界的にもかなり凄いことだったみたいです。
この章で書かれていて面白いなと思ったのは、『失敗』についての話。実はテレビの収録で失敗したことがちょっとあって、それはオンエアされなかったんだけど、みたいな小話もあって、それはそれで凄く好感が持てるんだけど、僕が面白いなと思ったのは、『笑っていいとも!』での話。
生放送だから、失敗したらテレビ的には相当マズイ。でも番組ディレクターが、「失敗してもいい」と言ってくれたという。そして実際に失敗することもあったらしいのだけど(もちろん生放送だからそのまま放送される)、視聴率も落ちなかったし、逆にリアリティがあってドキドキさせられたみたいな反応が多かったのだそうだ。
本書で、マジックは「これこれをやりましょう」と言うわけで、つまりそれは「これこれが出来なかったら失敗」と、失敗を定義しているのと同じだ、とDaiGoは書きます。メンタリズムの場合は、究極的には失敗は存在しない。どこに着地させるのかを、コミュニケーションの中で探っていきながら決めることが出来る。初めから着地点を明示しなくていいので、状況に応じてあらゆる方向に手をのばすことができるのだ。
そんなDaiGoの格闘の章がラストにあります。
思ってたよりずっと面白い作品でした。個別の話なら、心理学とか脳科学の本で読んだことがあるものも結構あったんだけど、でもそれらを組み合わせることでこんなことまで出来るのか!という驚きに満ちた作品だなと思います。
とにかく、徹底的に手の内をさらけ出している。マジックの本では、なかなかこんなものはないだろうと思います。あくまでマジックの場合だと、ネタの暴露本、みたいな感じになってしまうだろうと思います。
でも本書は、テクニックの暴露本、というのとは違う。『暴露』というのは、そうされることで致命的で不可逆な影響を与える、みたいな印象があるけど、でもDaiGoの場合は、手の内をさらけ出したところでどうにかなる。まったく大丈夫なわけではないけど、でもあらゆる手段でそれを乗り越えることが出来る。その自信があるからこそ、こういう本を出せているのだろうなと思います。
とにかくDaiGoが正直な感じがいい。自分を大きく見せすぎない。もちろんそれも、メンタリズム的な手法を使って印象を誘導しようとしているのかもしれないけど、だとしてもこの正直さはいいと思う。テレビの収録で失敗したことがあって、実はオンエアされなかったんだけどね、みたいな話とか、なかなか書けないんじゃないかなぁって気がします。
DaiGoのパフォーマンスを見てると、相手の考えてることなんか何でも分かっちゃうんじゃないか、みたいに思っちゃうけど、でもそんなわきゃない、って書いていました。それが、こんな感じの文章で書かれてて、面白い。

『おそらくあまりにも僕がうまくやるもんで、ときどき、
「人が何を考えているのか、手に取るようにわかるでしょう?」
と言われることもあるけれど、残念ながらそうではない。
ここでだけ本当のことを言うけど、すべて手に取るようにわかっていたら、この仕事はしていない。それは断言できる。
だって、人が考えていることを「すべて」わかったら…あなただって今の仕事はしていないんじゃないかな。』

まあ、確かにねー。
あともう一つ。DaiGoには、村山というプロデューサー的な立場の人がいるんだけど、とにかくその人が凄かった。
元々メンタリズム的な知識に関しては村山の方が上だったという。その村山に、

『3年間だけやってくれ。それまでにお前を絶対にスターにしてみせるから』

と言われ続け、カメラに向かって格好つけるのとか恥ずかしいとか思ってたDaiGoにありとあらゆるテクニックを伝授し、そして本当に毎週のようにテレビに出る人間にしてしまった。研究熱心で努力をし続けられるDaiGoも凄いけど、村山という存在も非常に大きかったんだろうなと思います。
僕は本書を読んで、どうにかこのメンタリズム的な発想を書店の売り場に活かせないだろうか、とちょっと考えてみることに決めています。僕としては、ある本だけが爆発的に売れる、なんていうのはそんなに魅力的ではないので、『いかにもう一冊買ってもらうか』『いかに棚から買ってもらうか』というこの二点を重視して、なんとかメンタリズム的な知識を組み合わせて面白い売り場を作れたりしないかなぁ、と考えてみることにしました。
DaiGoは、とんでもない量の努力をし続けて、人前でパフォーマンスできるほどになりましたけど、僕らは別にそんなところまで行く必要はない。日常生活で役立つレベルのメンタリズム的テクニックであれば、確かに本書で描かれていることに注意して訓練し続ければ、もしかしたらどうにかなるのかもしれない、なんて思わせてくれる作品でした。いや、ホント凄いです、DaiGo。本書を読む前から凄いと思っていましたけど、本書を読んでより凄いと思えるようになりました。

DaiGo「これがメンタリズムです メンタリストになれる本」


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2013年の個人的ベストです。

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10位 辻村深月「島はぼくらと
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13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
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15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
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1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
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5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
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3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
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6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
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18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

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3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
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2011年の個人的ベストです
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