黒夜行

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お金はおつも正しい(堀江貴文)

内容に入ろうと思います。
本書は、堀江貴文が贈る「お金」の話です。
基本的な構成は、各章の最初にまず最初に漫画が4ページある。その章に関係する事柄を、街中で何故か堀江貴文に出会ったフリーター目線で描いています。それから、堀江貴文の文章が続く、という構成になっています。
扱われているテーマは、「お金」に関する結構基本的なことだと思います。「お金」とは「信用」である、というところをスタートとして、貯金の是非や借金・ギャンブルについて、結婚や自己投資、世代間格差や働かない生き方など、「お金」というものをテーマにして様々な話が展開されます。
本書を読んで、堀江貴文が本書を通じてこれを伝えたいのだろうなと僕が思ったことは、

『これからの日本は、これまでの常識が通用しない社会になっていくよ(既になり始めているよ)』
『そんな中で、それまでの社会では成り立っていたのかもしれない「お金」に関する幻想を引きずっててもいいの?』
『それまでの概念に囚われずに、「お金」に関する適切な知識と正しい態度を身につけて、自分で自分の道を切り開いて行った方がいいよ』

というような感じだろうと思います。
そして僕は、そんな堀江貴文の考え方に、かなり共感できるんだよなぁ。
例えば、こんなことを書いている。

『「貯蓄は美徳」という考え方は完了が作り出したキャンペーンでありそれに多くの人々はずっと騙されているのです。』

『年収をはるかに超える預金を持つことには意味がありません。お金を活かしきれていないことになります。』

『十分勉強して、お金を預けること以外の資産形成の努力を普段から行う。それが貯金という思考停止状態かrあ抜け出す唯一の手段だとボクは思います。』

『いまのように変化の激しい時代においては、「持ち家=幸せ」という既存の価値観だけでは対応しきれなくなっています。』

『労働という概念において、現代人は大きな誤解をしていると思います。多くの人たちは食うために働いているのではありません。働くために働いているのです。』

『働かざるもの食うべからず、という言葉もありますが、働くことが社会の義務であるかのように思い込まされています。』

堀江貴文の議論は、あまりにも「お金」を中心に据えすぎていて(まあ、そういう趣旨の本だから当然なのかもしれないけど)、そういう意味で受け入れ難さを感じる人もいるかもしれません。僕も、堀江貴文の提示する結論には賛成だけど、その理由にはちょっとなぁ…という部分がないわけでもありません。それでも、今世の中にはびこっている『常識とされる考え方』をひっくり返してみせるスタンスに、僕は凄く好感が持てます。
僕自身はなんというか、みんなが同じ方向を向きすぎているように見える状況が凄く怖くなることがあります。みなが向いている方向が正しいかどうか、というのは正直そこまで僕には関心がなかったりします。どの道、正しいかどうかが個人の価値観に帰着される事柄ばかりだと思うからです。
しかしそういう事柄について、何故かみな同じ方向を向いているなと感じられることがある。えっーー!!って正直思います。そこはみんな、もっとバラけてもいいんじゃない?そりゃあ昔みたいに、選択肢も少なくて格差を乗り越えるためのツールもなかなか存在しなかった時代ならともかくも、今は選択肢も多様だし、インターネットを初めとして、使いようによっては格差をひっくり返すことが出来るツールもたくさんある。そういう中で、どうしてみんな魚の群れみたいに同じ方向を向いているんだろうなぁ、と怖くなることがあります。
そりゃあ、大多数の中に紛れていれば安心は出来ます。でも、その安心は、どんどん幻想になりつつあるよなぁ、と思います。
東日本大震災の時、政府の「ただちに影響はない」と繰り返された発表に、懲り懲りした人は多いのではないでしょうか?それは、「お上が言っている」以上の価値が一切ない言葉だったと、僕たちは実感したはずです。それなのにまだ、国を信じている。信じているのは国だけではなくて、大企業とか銀行とか、そういうのも信じている。
確かに、そういう部分へのある程度の信頼がなければ、社会がまとまっていかない、というのは確かでしょう。だから、信じてはいけない、なんて思っているわけではありません。でも、「盲信」はちょっとマズイんじゃないかなぁ、なんていつも思っていたりしました。もちろんそんな僕も、無意識の内に「盲信」している事柄があるだろうなと思います。とはいえ、出来るだけ既存の価値観を疑い、世間一般では異端であっても、自分がそうしようとか、自分が正しいと思う方向へ、僕は進んできたという気持ちがあります。
だから僕は、今の自分の人生に結構満足しています。
仕事は楽しいし、生活上の不満や制限はないし、困っていることも辛いことも特にない。楽しいことは割と日常の中の色んなところにあって、ちょっとしたことだけど変わったところから評価を得られているかも、なんて実感もある。僕は、フリーターだし、将来のことなんて真剣に考えてないし、履歴書に書けるような特別なスキルも何もないけど、でもかなり満足した人生を送れているな、と思います。
もちろん、10年後どうなっているか分かりません。10年後は、僕の方が辛い生き方をしていて、今同じ方向を向いてちょっと辛いかもしれない人生を生きている人たちの方が楽しい人生を送れているかもしれません。
でも、それは分かりません。
僕は、遠い将来の自分の安定のために、今を犠牲にすることはできません。今が楽しければそれでいい、というのも短絡的過ぎますけど、堀江貴文も、激動の時代なのだから10年後の目標なんて考えない、1~2年先の目標を考えて進んでいく、みたいなことを書いていました。
そう、今から遠い遠い将来のことを心配しても、どうしようもないよなぁ、なんて思ったりしています。
そりゃあ、不安がまったくないわけでもないけど、でもそれは、どれだけ準備したって不安が消えるわけではないと思うんですね。人生、どんなことだって起こりうる。もちろん、無理しすぎることなく出来る努力はするべきかもしれないけど、今を犠牲にしてまで将来のことなんて考えたくありません。
それに、お金にも頼りすぎたくありません。
本書で堀江貴文は面白いことを書いています。

『先の見えない混迷の時代。無意味な貯金や生命保険にお金を費やすなら、家族や友人との関係を深める方がよっぽど意味があります。』

素晴らしい。「お金」についての本とは思えないほどの、素晴らしい正論だなぁと思いました。
そうなのですよね。どれだけお金を持っていても、いざという時に誰も助けてくれなければ、それは辛く悲しい人生でしょう。一方、たとえお金がなくても、いざという時に力になってくれる人がたくさんいる方が、安心な人生を送れるのではないでしょうか?
僕は本書には、とても当たり前のことしか書かれていない、という風に感じました。もちろん、僕のこれまでの価値観や考えの中にはない発想もたくさんありましたが、そうでなければ、そうだよなぁ俺も前からそんなようなこと考えてたんだよなぁ、と思えるようなことが凄く多いなと思いました。もちろん、全部ではありません。「借金」についての考え方なんかは、まだまだ僕は硬直的なのかもしれないな、と思ったりもします。まあともかく、書かれている内容の真っ当さに驚きました。本書は、どうやってとんでもなくお金儲けするかなんて話も出てこないし、「お金」こそすべてだなんて発想もまったく出てきません。むしろ、稼ぎたくない人は別にお金なんて稼がなくたっていいんじゃないの、みたいなスタンスでさえあります。
「お金」について真剣に考えることは、自分自身の人生について真剣に考えること。なんだかそんな風に感じました。
本書を読んでも、具体的な「答え」が描かれていることは、むしろ少ないと思います。そうではなくて、「お金を稼ぐのも使うのも下手な日本人」に、それまでの「お金」に関する価値観が間違っていることを伝え、さらに自分の頭で考えるためのヒントを提示してくれる作品です。人それぞれ人生がまるで違うように、「お金」との関わり方も違う。誰にでも当てはまる正解なんてどこにもない。そういうスタンスが結構好きだったりします。
受け入れられない考え方もあるでしょう。人それぞれ違うのだから、別に本書のすべてを受け入れなければいけない、なんてことはありません。ただ、自分が「お金」というものをどんな風に捉えているのか、そしてその価値観は自分の求める人生にピッタリ合っているのか。そんなことを考えるきっかけになる一冊になるのではないかと思います。是非読んでみて下さい。

堀江貴文「お金はおつも正しい」



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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)