黒夜行

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海賊とよばれた男(百田尚樹)





震えた。

まさかこんな男が、日本にいたとは。

国岡鐵造は、終戦時還暦だった。
異端の石油会社「国岡商店」の社長、いや、店主だった。
それまでも様々な苦難を乗り越えて「国岡商店」を率いてきた田岡だったが、この戦争で資産のすべてを失い、また、戦前・戦時中と国内の石油販売に統制をかけていた石統の方針に逆らっていた国岡は、しばらく石油をまったく扱えない状況だった。石統に頭を下げに言っても、状況は変わらなかった。
国岡は、一千名にものぼる社員の首を、一切切らないと決断した。
幹部たちは、社員の首を切らねばこの難局を乗り越えられないと主張したが、国岡には、それだけは受け入れられなかった。
社員は、家族だ。出勤簿も定年退職もない国岡商店は、店主である国岡が社員全員を信頼するところにそのすべてがあった。
だからこそ、社員の首を切ることはできない。
とはいえ国岡にも、何か手があったわけではない。国岡は、昔から収集し続けてきた骨董品などを売る決断をし、最終的に会社が立ち行かなくなれば、その時は乞食をしよう、と決めていた。それは、国岡商店を立ち上げる時に、何の見返りも求めずに大金を提供してくれた日田重太郎に言われた言葉で、国岡にとっては当然のことだった。
国岡商店は、石油に関わらずどんな仕事でも見つけてきてはやった。しかし、経営は思わしくなかった。軍人だった男が持ち込んできたラジオ修理などを手がけていたが、うまくいかない。
ある時、GHQの嫌がらせで、国内に残っているタンクの底をすべて浚えという要請が石統にあった。それをやれば、アメリカが石油を回してくれるというのだ。しかし、石統に加盟している石油会社は、誰も手を挙げなかった。タンクの底を攫うのは、戦時中石油が欲しくて欲しくてたまらなかった旧海軍でさえやらなかった、キツイ仕事だ。
しかし国岡は、自身は石統の加盟会社ではないにも関わらず、その仕事を引き受けることにした。これをやればアメリカが石油をくれるというなら、それが国岡商店に回らずとも、日本のためになる。
国岡は常に、自分の会社のことよりも、日本の将来のことを考える男だった。
戦後の日本の石油業界は、「メジャー」と呼ばれるアメリカ資本の大石油会社に蹂躙されていた。「メジャー」は、とんでもない条件を突きつけて日本の石油会社を傘下に入れ、日本市場を自らの手の内に入れようとあらゆる画策をしていた。GHQもその方針に賛同し、また石統や政府も、そんなGHQの方針にただ流されるだけだった。
国岡だけが、それではマズイと考えていた。このまま、民族会社が日本からなくなり、「メジャー」に支配されるようになれば、日本の復興は覚束ない。国岡は、日本の将来を見据え、それが13対1という非情な闘いであることを承知した上で、「メジャー」に対抗する決意をする。
それほど前に日本の将来を考えている国岡だが、国岡には敵が多かった。
それは多分に、ライバルたちによるやっかみがほとんどだった。
ライバルたちは、国岡商店の恐ろしさを様々な場面で思い知らされている。それは、「メジャー」も同じだ。石油業界は、日本の未来のことなど考えず、ただ目障りな国岡商店を潰すためだけに、ありとあらゆる画策を仕掛けてきた。
しかし同時に、国岡には良き理解者も多かった。というか、国岡という男と一瞬関わるだけで、みな魔法のように国岡の虜になってしまうのだ。
国岡商店の社員も、みなそうだった。どれほど辛い状況であっても、国岡のためにと思えばこそ頑張れるのだった。
国岡商店は、世界をアッと言わせる、とんでもないことをやってのけた。イギリス資本の石油会社を国内から追い出し、経済的に孤立を深めたイランのアバダン製油所に、自社のタンカーで石油を取りに行ったのだ…。
というような話です。
いやはや、これはちょっと凄すぎる!読んでてここまで興奮させられる作品は、本当に久しぶりだった。
先に書いておこう。本書は、「ノンフィクションノベル」と呼ばれている。国岡には、実在のモデルがいるのだ。それは、出光興産の創業者である。
本書で描かれていることのどこまでが事実で、どこまでの人が実名なのか、僕にはよくわからない(少なくとも「国岡鐵造」は本名ではない)。とはいえ、恐らく描かれていることのほとんどが事実なのだろう。
こんなに凄い日本人のことを、どうしてこれまで知らなかったんだろうと不思議な気がしてくる。本書を読むとわかるけど、「セブン・シスターズ(七人の魔女)」と呼ばれる、かつて石油業界を牛耳っていた7つの石油会社の有り様は、本当に酷いと思うし、あまりにも強大すぎる。なのに、ほとんどの期間精油設備を持てなかった、ただの一石油販売会社が、「メジャー」相手に奮闘し、そして着実に勝利を収めていくのだ。これは痛快だ。
国岡の凄さは、敵に回した時の恐ろしさばかりではない。というかそれは、あくまでも副次的なものだ。国岡の一番の凄さは、「その時何が最も大事であるか」という判断力だ。
さっきも書いたけど、終戦直後すべての資産を失った国岡商店は、しかし社員の首を切らないことに決めた。これは、「我社の最大の財産は人だ」と判断していたからだ。
またこんなシーンもある。イランから石油を持ってくることに関して、様々な困難があったのだけど、そのすべてが報われた瞬間がある。その場面で、幹部たちは喜ぶのだが、国岡は頷くだけだ。嬉しくないのかと聞かれて国岡は、「社員が契約を成立させた時に、この勝負に負けはないと思った。そして日章丸が無電を打ってきた時に、勝った、と思った(大雑把な引用です)」と言う。彼がどれほど社員を信頼し、社員の信頼を評価しているのかがよく理解できるエピソードだと思う。
とにかく国岡は、人を大事にする。国岡は、ダメな社員がいても可能な限り教育を与え、すばらしい人材がいれば全権を与える。タンクの底を浚ったり、あるいはイギリス海軍に追われるだろう日章丸に乗せたりと、かなり辛いこともさせるが、しかしそれは、社員を家族と思い、どんなことがあっても自分が面倒を見ると決意を固めているからだ。
そんな国岡の気持ちは、一瞬で伝染してしまうようだ。国岡自身から何か電波のようなものでも出ているのではないかと思うほどだ。みな、国岡が言うならばという気持ちになってしまう。それは、初めて会った人間にも伝わってしまう。何せ、終戦直後のGHQさえ、国岡に惚れ込んだのだ。それほどの凄みを国岡は持っている。
製油所建設に関する話は、印象的だ。
「メジャー」と対抗するには、自社で製油所を持たねばならないと奮起した国岡は、製油所の建設に取り掛かるが、そこでとんでもないことを言い出す。絶対に、これよりも工期を短くすることは出来ないと専門家が断言するその半分以下の工期で仕上げろというのだ。担当の東雲は、あらゆる手を尽くして計画を練るが、ある程度までは短く出来るが、国岡の言う工期では絶対に無理だ。東雲はそれを隠したままで作業を続けることにした。
この顛末は是非読んでほしいけど、最後東雲が、何故その工期にこだわったのか、と国岡に問うた時の国岡の答えが素晴らしかった。
国岡自身も凄いが、国岡の周りにいる人間も凄い。国岡の雰囲気に酔わされるという部分もあるだろうけど、素晴らしい信念を持つ人間の周りには素晴らしい人材が集まるということなのかもしれない。
本書を読むと、初めの50ページで、すべての人間に惚れるだろう。

『鐵造さんも一緒にやってくださるのでしょう。だったら、平気です』

『「国岡商店のことよりも国家のことを第一に考えよ」』

『「国岡商店は、お前が軍隊に行っている間、ずっとうちに給金を送り続けてくれたんだ。辞めるなら、その四年分の恩返しをしてから辞めろ!」』

かっこ良すぎる。国岡だけではなく、国岡の周りにいる人間みなが、信念を持っている。本当にかっこいい。国岡自身、教育的なこともしてきたのだろうけど、でも実際は、国岡の存在そのものが教科書だったのだろう。これだけの男たちを育て、率い、さらにそれだけの男たちが思いつかないような決断を次々と繰り出す国岡の凄さに、改めて感じ入る。
また、女房も実にいい。
本書では、女性はそこまで多く描かれないのだけど、時折描かれる女房の描写は本当に好きだ。国岡の女房も、日田の女房も素晴らしかったけど、僕が結構好きなのは、日章丸の船長である新田の女房だ。新田が航海中に思う、「満壽子に百回でも土下座をしよう。ああ、満壽子の怒る顔が見たい」っていう表現も、凄く好きだ。
本書で描かれる女房はみな、「日本の女」という感じがする。かっこいい。こういうのって凄いなぁ、と思ったりした。かっこいいんだよなぁ。
本書では、国岡商店の創業時から国岡が死去するまでが描かれ、その中で様々なエピソードが積み重ねられていくのだけど、やはりタイトルと考えあわせて、作品のメインとなるのは、イランのアバダン製油所絡みの話だろう。この部分は、やはり圧巻だ。
それまで「メジャー」に対抗し、奇策で相手を翻弄してきた国岡商店だったが、次第に「メジャー」の包囲網が厳しくなってきた。そんな折持ち込まれたのが、イランのアバダン製油所の話だった。
元々国岡は、アバダン製油所から石油を取る気はなかった。何故なら、イランがイギリスの石油会社を乗っ取ったのは、明らかに間違いであり、イランから石油を買えば、それは盗品故買に当たる、と考えていたからだ。
しかし、次第に状況がはっきりしてきた。
イランは、長年イギリスから搾取され続けてきた。イギリスは世界に向けて、アバダン製油所を正式に保有しているという発信をしてきたが、実情はどうもそうではないらしい。国岡は様々な状況を付きあわせ、世界の他の石油会社がイランに行くのをためらっているタイミングでイラン行きを決めた。
しかし、これは本当に難事業であった。
そもそも、イギリスやアメリカに秘密裏に行動しなければならない。イランと揉めているイギリスや、イランの石油利権を虎視眈々と狙っている「メジャー」に国岡商店の動きを察知されたらおしまいだ。しかし、秘密裏にイランに入国することも、外貨を準備することも、その他さまざまな準備を進めることも、とてつもない困難であった。この事業は、どこかに綻びがあって失敗すれば、間違いなく国岡商店を倒産させるものだった。しかし国岡商店の面々は、それをやり切った。
アバダン製油所に絡む話では、本当に困難な状況が次々と現れる。そんなあるワンシーンで、東雲はこんな述懐をする。

『東雲は今、国岡鐵造という一代の傑物の、生涯でもっとも美しい決断の瞬間を見た、と思った。』

しかし、アバダン製油所絡みの話が、サンフランシスコ講和条約が締結されて、日本が正式に独立を果たしてからたった1年しか経ってない頃の話だというのが、なんだか信じられない思いだ。
国岡は常に、国のことを考えていた。社員のことは、もちろん第一に考えていた。しかし、短期的な利益を追うことには、関心を持たなかった。常に先を読み、日本の将来を見据え、その中で自らがどう振る舞うのが最適であるのか。常にそれを考えていた。

『そして残るもう一つの理由は、国家のため、日本人のために尽くしたいという思いだった。戦争で灰燼に帰したこのにほんを、今一度、立ち直らせる、そして自信を失った日本人の心に、もう一度輝く火を灯すのだ。そのためなら、この老骨が砕け散ろうともかまわない。』

東雲は45年の国岡商店人生を回顧して、こんな風に思う。

『自分は四十五年も仕えてきたにもかかわらず、一度も言われたことがない言葉がある。それは、「儲けよ」という言葉だった―。』

国岡は、創業五十年の式典で、この五十年を振り返って、こんな言葉を伝える。

『五十年は長い時間であるが、私自身は自分の五十年で一言で言いあらわせる。すなわち、誘惑に迷わず、妥協を排し、人間尊重の信念を貫きとおした五十年であった、と』

まさにこれは、国岡の人生を端的に言い表しているだろう。敗戦後、すべてを失い、まさにゼロから始めなければならなかった日本に、これほどの人物がいた。国岡がいなければ、日本の石油業界は今とはまるで違った状態になっていたことだろう。それほどのことを、国岡はやった。凄い。本当に凄いとしか言いようがない。
翻って、今どうだろう。これほどのスケールの人物が、いるだろうか。目の前の利益に汲々とするしかない。与えられた状況に言い訳をするしかない。決して人のことを言えるような人間ではないが、なんというか、今の日本が悲しくなってしまう。
国岡というもの凄い人物の一代記を、百田尚樹はこうして物語にし、僕たちに提示してくれた。正直僕は、この作品がなければ、これだけ凄い日本人のことを知らないままだっただろう。本当に素晴らしい作品を書いてくれたと思う。
しかし僕は同時に、こんな風にも思ってしまう。信念を持ちながら、様々な事情で果たせず、名を残すことが出来なかった人の話も知りたい。僕は、信念を持ち、突き進めば、すべてが報われるというのが、常に成り立つとは思えない。本書のように、信念が実った男の話も、もちろん素晴らしいし、震わされる。でも、信念を持ちながら果たせなかった人物の話も、また知りたい。いや、もしかしたら、そういう物語も、どこかには存在しているのかもしれないけれども。
最後に。タンカーの竣工記念パーティの場で、国岡と東雲は21世紀に想いを馳せる。二人共、21世紀を生きて迎えられない。どんな国になっているでしょうか、と問う東雲に、国岡はこう答える。

『日本人が誇りと自信を持っているかぎり、今以上に素晴らしい国になっておる』

21世紀に生きる僕たちはこの言葉を、正面から受け止めることが出来るだろうか。

これから読む人の興をなるべく削がないようにと、できるだけ内容に具体的に触れないように感想を書いたつもりなんで、僕が本書を読んで得た感動をあまりうまく伝えられていないかもしれません。でも、これは本当に凄い。国岡がいう「日本人」に、自分が当てはまっているだろうかと、きっと考えてしまうはずだ。国岡が望んだ「未来」を、僕たちは作れているだろうか、と考えてしまうはずだ。凄い男がいたものだ。これほどに感動に震える作品は、そう多くない。是非とも読んでみてほしい。あなたの中の「日本人」が、きっと目を覚ますことでしょう。

百田尚樹「海賊とよばれた男」







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Comment

[4392]

こんばんは。
少々ご無沙汰しましたが、お元気でバンバン読書されているようで、安心しました。
今日、この本の(上)を読みました。本屋大賞を受賞される前に読みたかったなぁ、と思いました。ノンフィクションノベルですか。感動のひと言ですよね。日本人に生まれて良かった!と誇らしく思いました。国岡鐵造氏、「人物」ですよね。サムライの風格がありますし、曲がったことをトコトン排除します。どんな相手でも、怯まずに自分の主張を述べる態度には、相手の方が歩み寄ってきます。こんな凄い人物がいたとは、本当に驚きですし、感動です。商人は自分が儲けることしか頭にないのかと思っていましたが、国岡の信条は‘人に尽くす’ことで、己は二の次です。いかに安い値段で人々の供給するか、が最優先ですので、同業者の反発が出るのも道理です。しかし、一度彼に会うと、皆彼の信奉者になってしまうので、このこともまた凄いですよね。

彼が今生きていたら、私利私欲に走るこの国の様子をどう評価したでしょうね。嘆かわしい、と愚痴を言うだけでなく、対応策を提案してくれたのでは…と思います。大人物がいなくなって、またはそういう人材が育たない環境になってから久しいですよね。他力本願ではなく、自分がどうすればよいのか?と考えても、何も浮かびません(泣)。国岡商店の従業員のように自分やお店のためだけでなく、みんな(店主は「国」と言っていましたが、今は「みんな」の方は相応しいと思います)のために骨身を惜しまず働くという姿勢に戻らないといけないのでしょうね。みんながそんな気持ちで働いたら、もっと温かい世の中になるはずですが、現実は余りに過酷です(泣)。我が子を虐待したり、弱い立場のお年寄りの財産をだまし取ろうとする輩がいるのですからね。

話は変わりますが、この本の売り上げが100万部に達したと報道されていましたね。村上春樹の新作が出たばかりなので、百田さんご本人が心配(?)されていたようですが、やはりそんなことはありませんでしたね。本屋大賞の威力って大きいなとも思いますが、この作品の素晴らしさ、国岡鐵造氏の魅力が売り上げに貢献しているのでしょう。また、通りすがりさんがこの黒夜行で手放しで絶賛されていたことも、大きいと思いますよ(笑)。私としては、とりあえず急いで下巻を読むことにします。どうぞ、お元気で。

[4393]

こんばんはでございます。相変わらず、どうにか頑張って、バリバリ本を読んでおりますですよ~。ブログに書く感想がどんどん長くなって、書いてる方もしんどくなってきました(笑 読んでくれる人的には、前々から結構大変だったことでしょう)

本当に、この本は素晴らしいなと思いました。田岡のような人物が実在していた、ということがなんだか誇らしいですよね。しかも、終戦当時、田岡は60歳。それまでも獅子奮迅の働きだったのでしょうけど、60歳を超えてなおあれだけのことができる、というのは凄まじいとしか言いようがないですよね。

全員が田岡のようになれるわけではありませんけど、でも田岡のような人間に憧れる気持ちは多くの人が持てるはずだろうと思います。でも実際今の世の中は、ちょっと残念過ぎますね、僕も、この私利私欲に走る世の中は嫌だなぁって思います。「みんなのため」というのは、実行に移そうとするとなかなか大変ですけど、みんなが少しずつそういう意識でいれば、全体的にみんなもっと幸せになれるはずなんですけどねぇ。

自分の周囲数メートルぐらい、あるいは数日先の未来、ぐらいしか見れなくなってしまった世の中にあって、自分が死んだ後の日本という国のことまで思いやれるというのはやっぱり素敵です。終戦直後、という異常な環境だったからこそ、ああいう大人物も現れることが出来たのかもしれない、なんていう逃げ(自分で何もしない言い訳 笑)を打ちたくもなりますけど、でも、一人ひとりが何かしていかないといけないですよね。

僕の感想の影響はほぼないと思いますけど(笑)、本当に、作品の素晴らしさと、本屋大賞受賞という影響力が、もっともっと本書の後押しになって行けばいいなと思います。下巻も一気読みのはずです!

[4394] 読み終えました!

昨夜、やっと読了です! と言いますのも、職場の歓送迎会があったり、年度が替わって新たにやらなければならないことが盛りだくさんという悲惨な状況だったからです(泣)。
しかし、この作品は(下)も重厚でしたね。敗戦下の日本が置かれた立場、またトラストのような石油会社の共謀に屈せず、タンカーを造り、製油施設を作りというバイタリティには驚きましたし、感動でした。鐵造氏への信奉者がどんどん増えてきて、国岡商店ももうこれまでか…という窮地を救ってくれたことが幾度もあり、彼の人間性の証明になっていると思いました。前妻の死を知らせる手紙は、悲しかったですね。2度目の奥様も素晴らしい方ですが、彼女も負けてはいませんでしたよね。子供ができないというだけで身を退いたのは、切なかったでしょうね。双方にとってです。
人間としての「義」を通すということを、この作品は教えてくれましたが、読者に大きな感動を与えるのは、今このことが求められているからかも知れません。本屋大賞は、啓蒙の意味もあるのでしょうね。ただ、こんなオバサンから苦言を言わせていただくと、ちょっと納得いかない作品が選ばれたことがありました。「告白」と「謎解きは~」です。前者は、道徳的(?)にいけませんよねぇ。先生が生徒に報復するのは絶対にNO!でしょう。また「謎解き~」は、面白いかも知れませんが、軽すぎでしょう。などと勝手な意見を書かせていただきましたが、悪しからず。オバサンとしては読者の心に訴える、そして希望の火を灯すような作品を選んで欲しいなぁ、と思いました。いかにもオバサン的発想ですが…(笑)。

最近読んだ本は「踊る猫」(折口真喜子さん)、「科学的とは どういう意味か」(森博嗣)です。折口さんは、この本でデビューだそうですが、なかなか感動的なホラー(しかも時代物)でした。今後が楽しみな作家です。森さんの本は幻冬舎新書です。科学や数学を分からないからと遠ざけてはいけないことや、「科学とは、誰がやっても同じ答えが出ること」と定義されていて、納得!と思いました。クイズ番組で国語や社会の出題は中学高校レベルなのに科学となると小学校レベルになるのは一体どうしたことか?と疑問を投げかけていました。確かに、そうですよね。

では、この辺で。晴耕雨読という言葉通り、今日は読書に専念します。

[4395] 追記です。

いつも手書きの読書メモを書いていますが、この作品は大学ノートに1ページだけ書き、「黒夜行」参照、と書いて終えました(笑)。

[4396]

こんにちはですー。なかなか読書の時間が取れないのは大変ですよねぇ…。

もう読んだのが大分昔なんて、内容そのものは忘れてしまったけど、この作品の「熱さ」はまだ自分の内側に残っています。「人間としての義を通すこと」が今の時代求められている、というのは、本当にそうでしょう。この作品には、今の日本人(の大半)が失ってしまったものが描かれていて、それに惹かれるからこそこれだけ支持されるのだろうなと思います。しかし本当に、自身の利益を追い求めているのではないからでしょうか、ここぞという時に素晴らしく手が差し伸べられます。人徳、というのはこういうことを言うのでしょうなぁ。

本屋大賞については、耳が痛いですなぁ(笑) いや、本屋大賞の仕組みとしては、よく出来ていると思うし、みんな頑張っているのですけどね。前に「理性の限界」っていう新書を読んだ時、アロウの不可能性定理の話が出て来ました。これは、公平な投票(選挙)は不可能である、ということを示した理論だそうで、メッチャ面白かったです。どんな手法を使っても、公正で平等な投票というのは実現できないようですよ。だから、まあ、時々は仕方ないっす(笑) でも僕は、「謎解き~」が微妙だったのには賛同ですけど、「告白」は良かったなぁと思います。確かに、題材的にはショッキングで、褒められたものではありませんけどね。

僕も、一投票者として、これからも、読者の心に訴える作品を選んでいけたらいいなと思います。

「科学的とはどういう意味か」はずっと読みたいと思ってて読めてないのですよね。やっぱり良いですよね、きっと。折口真喜子というのは初めて聞く作家さんです。そういう、まだ誰も着目していないかもしれない新人作家を見つけるのも、読書の楽しみですよね~

「黒夜行」参照、ってのは、面白いですね(笑)

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「海賊と呼ばれた男」百田尚樹

「歴史経済小説の最高傑作!」(西川善文・元三井住友銀行頭取」、「『宮本武蔵』、『竜馬がゆく』・・・・・・青春歴史小説の新たな”古典”」(末國善己・文芸評論家)--発売以来、激賞の声が止まない、百田尚樹氏の書き下ろし長編。物語は、敗戦の日から始まる。 「ならん、ひとりの馘首もならん!」--異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、戦争でなにもかもを失い残ったのは借金のみ。そのうえ大手石油...

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)