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仕事は99%気配り(川田修)

内容に入ろうと思います。
本書は、現在プルデンシャル生命保険の営業職のトップであるエグゼクティブ・ライフプランナーであり、全国2000人中第一位の営業成績を達成し、新卒で入社したリクルートでは、入社から退社までの96ヶ月のうち月間目標を95ヶ月達成したという著者による、営業のためだけではない、仕事のためだけではない「気配り」の大切さについて書かれている作品です。
本書は、著者自らが実践していることは、実はそれほど書かれていないんです。恐らくそういう話は、著者のデビュー著書である「かばんはハンカチの上に置きなさい」で書かれているんだろうと思います。
そういう意味で本書は、営業マンやサラリーマンに直接ノウハウを伝授するような、そういう作品ではない。だからこそ、営業マンでもサラリーマンでもない人にも読む価値のある作品になっているのだろうと僕は思います。
本書は、著者が営業に行く先々で経験したこと、プライベートで飲食した時の経験、出張でのホテルでの経験などと言った『著者自身が気配りを受けた経験』について語っている作品です。
そういう意味で、とてもビジネス書っぽくない。普通ビジネス書って、「自分はこんなことをやってきました」というようなことを語るものだと思うけど、本書はそういう話はむしろ少ない。「私は色んな場面でこんな経験をしました」という話を色々とするんですね。この本の構成そのものも、なんだか気配りに満ちているような、そんな感じがしました。
上記したような作品なので、内容紹介を非常にしにくいんですね。全部で5つの章がありますけど、うち初め4つの章は、こんな気配りを受けたことがあります(あるいはこういう場面で気配りがあるとよかったなぁ)というような具体的な経験が語られます。そして最後の5章だけは、著者自身が、自分は具体的にこういう風にしている、それはこういう理由からだ、ということを語る内容になります。前半の4つの章については、こういう話がありました、こんな話もありました、と書いていっちゃうとほとんどの事例を紹介しちゃいそうなんで、、一つだけ。
ある会社の社長は、年に一回社員の家族も読んで表彰式を行う。そこで、最優秀に選ばれた社員とその家族を壇上に上がってもらい、そしてその奥さんを「一年間ご主人を支えてくれてありがとうございます」と社長自らが表彰するのだそうです。
こういう、色んな会社が社員に対してや、あるいは自社にやってくる営業マンに対する気配りも書かれるのだけど、もっと身近な、居酒屋でこんなことが、ホテルでこんなことが、というようなものもある。一つ一つの話が凄く具体的で、凄く些細なんだけど、でも感覚として分かる。そのほんの僅かな違いが、受け手に届いた時はもの凄く増幅される、ということが凄く分かる。どの話も、やっている現象だけ取り上げれば、大したことではないものが多い。ただ、大したことではないことをずっと続けられること、そして大したことではないことを大したことではないからと言って止めてしまわないこと、その凄さが伝わってくる感じがします。
本書は、その背景をどれだけ掴むことが出来るか、というのが、読者にとって重要なんだと思います。本書で書かれていることを、とりあえず形だけ真似る。それも、決して悪いことではない。著者も本書の中で、そういうようなことを言っている。でも、なるほどそれをやれば営業がうまくいくのね、なんて考えでは、本書を読んだ意味がないだろう。本書は、一つ一つの事例から『共通項』をどれだけ見いだせるか。それが勝負だと思う。もちろん、著者がそれぞれについて解説してくれる。でも、その解説をただ読んでるだけではダメだ。本書で取り上げられていないような、まったく違った状況の中で、自分自身が気配りを発揮したいと思えば、本書で紹介されている事例それぞれから抽出できる『共通項』をどれだけその状況に当てはめられるか、ということだと思う。これは、形だけ真似しても、著者の説明を漫然と読んでてもダメだ。といいつつ、僕自身も別に出来てないんだけど、でもそれじゃ意味がないよな、という意識を持って読むことはした。形を真似るところから入ってもいいのだけど、それだけではいけない。何故それをするのか、それをするとどうなるのか、それを出来る限り意識しないで出来るか。そういうところまで自分の中で消化して読み進めていかなくてはいけないと思う。
本書を読んで、著者に具体的に共感できた場面が二つ(具体的でない形でならずっと共感してるんですけど)。一つは、レジでのお釣りの渡し方。もう一つは、「神様」について。
僕は著者と同じで、お金を受け取る時に、レシート(領収書)と一緒に小銭を渡されると、うまく財布にしまえません。なんであんな風になってるのか僕には全然わからないんだけど、あれはみんな嫌じゃないのかなぁ、といつも思っています。だから僕は、自分が会計をする時は、必ず小銭とレシートは分けて渡すようにしています。
もう一つの「神様」については、別に宗教についての話ではありません。著者は、「神様が見ているという意識が昔からある」と書いているんですけど、これはまさに僕にもあるんです。誰も見ていない場面でちょっとした悪いことをしようとすると、でも「神様」が見てるかもなぁ、と思って止めたりすることがあるんですね(もちろん、見てるかもなぁと思いつつその悪いことをすることもあるんですけど、そういう場合はなんとなく、気分がよろしくない)。これも、凄い分かるわー、って感じがしました。
第5章には、シンプルだけど、営業マンにとって(だけではなく、サービスを提供する人全般にとって)凄く大事なことが書かれているという感じがしました。
大雑把に書くと、『観察することが大事』『お客さんが求めているのは商品ではないかもしれない』『無理や不満は必要経費』『相手を好きになることが大事』『数字は大事』という感じでしょうか。これ以上具体的にはなるべく書かないけど、著者が「トップになるためにはどうしたらいいか?」と質問されて答えたこと、そしてそのために著者が実践したことなんかは、ちょっと凄いなと思います。僕は、そこまではいいかな、という感じがしちゃうのよね。
本書の中で、僕が一番好きなフレーズがこれ。

『視力が悪くな人にメガネを売るような仕事はしない』

『必要のない人には売らないこと。
必要な人に必要なものだけを販売すること。
そして、納得して満足してもらうこと』

これは、僕がずっと考えていることを凄くシンプルに表現してくれています。僕は本当にこういうことを考えていて、どうやってそれを実現・継続出来るだろうかという発想が常にある。本書には、著者自身の経験として、ある保険の契約がまとまり掛けた時に、著者がアドバイスをして、それよりもちょっと安い保険に変更した、という話がある。これなんかまさにそうだなと思います。お客さんがそれを望んでいるという時でも、敢えてそこで、これはあなたには合いません、と言う。そういう部分の信頼みたいなものがベースになっているのって凄くいいなといつも思っています。
分量も多くないし、サッと読めちゃう作品だと思いますけど、中身は濃いです。読めば、自分の中の意識は間違いなく変わるだろうと思います。そこからそれをどう行動に結び付けられるかは人それぞれでしょうけども。僕も、実践がどこまで出来るかはわからないんだけど、本書に書かれていることを時折思い出して、気配りというものを意識出来るように心がけたいと思いました。是非読んでみてください。

川田修「仕事は99%気配り」



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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)