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動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか(津田大介)

内容に入ろうと思います。
本書は、ネットジャーナリズム界で有名な津田大介が語る、現在のソーシャルネットワークやその周辺の事柄について、『動員』をキーワードに書いた作品です。
まず、本書の大雑把な構成を説明します。
まず、津田大介氏による文章の展開としては、まず現在ソーシャルメディアの周辺で一体何が起きているのかを、アラブなどの革命の背景などを説明することで紹介し、そこから『動員の革命』というキーワードを引き出します。その後、ソーシャルメディアを使ってどんなことが出来る可能性が今後あるのか、その際にどんな点に注意しなくてはいけないのか、というような、ソーシャルメディアを使う上での実際上のテクニックやアドバイスについて書かれる。さらに、東日本大震災を引き合いに出し、東日本大震災においてソーシャルメディアがどんな風に役立ったのか、今後どんな風に役立てることが出来そうなのか、という著者自身による展望が描かれます。そして最後に、クラウドファンディングという、現在ソーシャルネットワーク上で起こりつつある、『動員』の先にある新たな革命について紹介しつつ、その可能性について語る、という感じです。
そして本書では、津田大介氏による文章の合間に、三人の人物との対談+もう一つ別の対談が収録されています。
一人目は、モーリー・ロバートソン。日本語で受験した初のアメリカ人東大生で、現在ジャーナリスト・作家・ミュージシャン。既存のメディアに囚われない形でのジャーナリズムやアーティスト活動を展開している。
二人目は、宇川直宏。グラフィックデザイナー・映像作家・文筆家、現代美術家と様々な顔を持つ全方位的アーティスト。「DOMMUNE」という、ライブストリーミングスタジオ兼チャンネルを開設し、国内外で高い評価を得ているという。
三人目は、家入一真。「paperboy&co.」を創業し、個人向けレンタルサーバー「ロリポップ」などを提供し、2008年に当時史上最年少でナスダックに上場。現在は、クラウドファンディングの一つである「CAMPFIRE」を立ち上げ、個人間の支援を仲介する仕事に関心を持っている。
そして巻末に、中沢新一×いとうせいこう×津田大介という、三者の対談が収録されている。
というような構成です。
僕としては、ソーシャルネットワークに関係する本ということで、佐藤尚之「明日のコミュニケーション」と比較しないではいられないので、まずその比較をします。「明日のコミュニケーション」はもう大分昔に読んだので、結構印象論で話をすることになりますけど、ご容赦ください。
電通からフリーになった佐藤尚之氏による「明日のコミュニケーション」では、『共感』をテーマにソーシャルネットワークを切り取った。元電通ということで、今も広告全般に関心がある人で、ソーシャルネットワークを『共感』というキーワードで切り取り、それが広告の世界にどんな影響を与え、広告がどんな風に変わっていくのか、ということが描かれている作品です。
広告、というけれども、結局広告というのは『人をどう動かすか』です。そういう意味で、『動員』をキーワードにソーシャルネットワークを描く本書と近いものはある。「明日のコミュニケーション」では、『共感』をキーワードに、いかに『動員』されてしまうのかが描かれているのに対して、本書では、『動員』をキーワードに、その背景にある『共感』をいかにネット上だけのものにしないか、という観点からソーシャルネットワークが切り取られる、という違いでしょうか。
ただこの二作品には、もっと根本的な違いがある。それは、誰を対象にしているか、という点だ。
「明日のコミュニケーション」は、基本的には『ソーシャルネットワークにどっぷり使っていない人』向けに描かれている。ソーシャルネットワークがどんなもので、どんな空気感の中で存在するもので、どんな感覚で使われているものなのか、そういう肌感覚とでもいうべきものがない人に向けて、ソーシャルネットワークというのはこういうものなんですよ、と提示する、そういう構成になっていると僕は感じました。
一方で本書は、明らかに、『その肌感覚を持っている人』向けに描かれている、と感じました。ある程度、ソーシャルネットワークの本質を知っている(つまり、『動員』や『共感』を引き起こすものだという理解がある)人向けに書かれていて、だから本書の欠点を挙げるとすれば、これからソーシャルネットワークに関わっていこうという人、あるいは、既にソーシャルネットワークに関わってはいるのだけど、イマイチまだその威力を肌感覚では理解できていない人には、本書で描かれていることの理解が若干遠くなってしまうかもしれないな、という感覚が僕の中にはあります。別に作品として良い悪いではなく、想定している対象が違うというだけの話なので、作品の質の問題ではないんですけど、本書のその、『肌感覚を理解している人向けである』という部分をあまり考慮しないで読むと、なかなか本書の良さを掴むことは出来ないかもしれない、と思いました。
なので、ソーシャルネットワークの肌感覚をある程度分かっていると思える方は本書をそのまま読んでもらっていいんですけど、そうじゃない人はまず「明日のコミュニケーション」を読むのがいいかな、って気がします。
本書では、僕が知らなかった色んなこと(アラブ等の国で起こった革命でソーシャルメディアがどんな風に使われたのかという背景や、ソーシャルメディアが政治や表現等多くの世界でどんな影響を与えているのかなど)がかなり具体的な形で載っているので、純粋に『知る』という意味で凄く面白かったです。津田大介氏自身が、ソーシャルネットワーク周辺の様々な事柄に、自分から積極的に飛び込み、関わり、時には先導したりしていて、その経験を元に書いているので、非常に具体的だし、実際的だなと感じました。モーリー・ロバートソンとの対談では世界各国の革命を、宇川直宏との対談では表現の世界をそれぞれ知ることが出来、また『僕ならソーシャルメディアをこう使う』の項では、ソーシャルネットワークの使い方だけではなく、自身の経験からNPOの立ち上げなどについての具体的なアドバイスなども書かれていて、ソーシャルネットワークをどう使うのかという観点から実際的に読むことが出来るなという感じがしました。
本書で僕が特に面白いなと感じた点が三つあります。
一つ目は、『動員』というキーワード。
二つ目は、既存のメディアとソーシャルメディアの関係。
そして三つ目は、クラウドファンディングについてです。
特にクラウドファンディングについての話は、非常に興味深いです。
まず、『動員』というキーワードから。
本書では『動員』に関して、こんな風に描かれます。

『わたしたちを取り巻く情報環境は、ここ数年のソーシャルメディアの台頭によって大きく変わりました。その本質は、「誰でも情報を発信できるようになった」という、陳腐なメディア論で言われがちなことではなく、「ソーシャルメディアがリアル(現実の空間・場所)を『拡張』したことで、かつてない勢いで人を『動員』できるようになった」というところにあるのです』

『その意味では、ソーシャルメディアというのは、実は人が行動する際に、モチベーションを与えてくれるもの―言い換えると背中を推してくれるメディアとして機能しているのです。
(中略)
ソーシャルメディア革命とは、「動員」の革命なのです。』

こういう形で著者は、ソーシャルメディアと『動員』の関わりを説くのだけど、その中で特に興味深い話があって、これは凄く面白いと感じました。
それは、デレク・シヴァーズという人がとある講演で言ったという内容の引用です。
デレクは、群衆の中で一人の男が裸踊りを始め、次第に周囲の人間も裸踊りをし始め、最後にはその場にいる全員が裸踊りをする、という動画を見せ、こう言います。

『(この動画の)最大の教訓はリーダーシップが過大評価されているということです。たしかにあの裸の男が最初でした。彼には功績があります。でも一人のバカをリーダーに変えたのは、最初のフォロワーだったのです。全員がリーダーになるべきだとよく言いますが、それは効果的ではありません。本当に運動を起こそうと思うならついて行く勇気を持ち、ほかの人たちにもその方法を示すことです。すごいことをしている孤独なバカを見つけたら立ち上がって最初に参加する最初の人間になる勇気を持ってください』

これはなるほど、と感じました。確かに、一番初めにそれをした人間も素晴らしいけど、それに勇気を持ってついていった人間も素晴らしい。そして『動員』というキーワードをベースにして著者は、ソーシャルネットワークは『最初のフォロワー』を生み出しやすいツールだ、と主張します。これは、本当に感心しました。確かに、その通りだなと思います。

二つ目は、既存のメディアとソーシャルメディアとの関係。
本書には、ウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジの言葉として、こんな文章が載っています。

『不確かな情報の検証はプロの仕事。ソーシャルメディアはニュースへの多様な視点を提供するもの。そして拡声器であり、情報源である』

著者はこれを受けて、自身の言葉でこんな風に書きます。

『今後の情報は、速報はソーシャルメディアで、一次検証をプロが担当してマスメディアで報道を行う。そこから先はソーシャルメディアが再びいろんな視点を与え、埋もれるニュースを拾い上げ、重要度に応じてニュースを伝播させていく』

これも、なるほどなぁ、と思わされました。一次検証はプロにしか出来ないという点を認め、ソーシャルメディアと共存していく視点が素晴らしいなと思いました。

そして最後に、クラウドファンディングについて。本書を読んで、これは今後もっと広がっていくだろうな、と感じさせられました。
クラウドファンディングというのは、援助を受けたい人がウェブ上で企画を提示、賛同してくれる人がいればその企画にお金を払う、そしてそれが成功すれば何らかのリターンがある、というようなモデルです(あくまで一例で、クラウドファンディングのやり方には色んなタイプがありますが、本書で主に扱われているのがこのタイプ)。
僕がちょっと前に、中公新書の「マイクロファイナンス」という作品を読みました。マイクロファイナンスというのは、少額のお金を融資し貸し倒れ率を低く抑えるという、バングラデシュの銀行が始めノーベル平和賞を受賞し有名になったモデルですが、そのマイクロファイナンスに非常に近いモデルが、既に今の日本でもサービスとして存在しているということに驚かされました。
本書で津田大介氏の対談相手として登場する一人である家入一真氏は、クラウドファンディングを行う「CAMPFIRE」を運営している。CAMPFIRE内では、東日本大震災に関わる支援の企画もあれば、「中古で売られているファミコンソフトの裏に名前が書かれているものを本人へ返す」というようなお笑い企画もあって玉石混交ですが、それらに『共感』する人がお金を出し、金銭以外の何らかのリターンを得ることで双方が満足するというモデルを作り上げていて、これがもっと広まっていけばもっと面白いことになる、と思いました。これは、アイデア次第でどんなことでもできるし、そして、本書でも描かれているように、これまでウェブ上での『共感』は、そもそも数字として現れることもなかったし、ましてお金になることなんてありえなかったけど、それが実現出来るようになった。それは確かに、『動員』の先を行く、もっと可能性を秘めた革命になりうるな、という感じがしました。
というわけで、冒頭で書いたように、ある程度ソーシャルネットワークに関する肌感覚を理解している人向けという感じがするけども、内容的にはなかなか刺激的で面白いです。特にクラウドファンディングに関する話は、非常に面白く読みました。是非読んでみてください。

津田大介「動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか」



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