黒夜行

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3・15卒業闘争(平山瑞穂)

内容に入ろうと思います。
僕は中学二年生で、もちろん学校に通っている。ただ僕には、中学一年から中学二年に進級したという記憶がないし、来年三年に進級できるという確信はまったくない。もう長いことずっと中学二年生をやり続けているような、そんな気がしてくる。
僕は、よく教師から怒られた。遅刻や忘れ物ばかりするからだ。しかしそれは、僕としては不可抗力だった。しかし大人は、大人の理屈でしか物事を判断しない。僕が何を言っても聞き入れる気はまったくないようだ。
授業中に性的な写真を持っていたとか、生徒の立ち入りが禁じられている場所で目撃されたとか、僕としては言い訳をしたい出来事について言及された僕は、いくつかのきっかけを経て、ベルゼブブ生命保険相互会社という会社を設立することを思いつく。何をする会社なのかは、後から決まった。アカと呼ばれている教師を殺害することだ。
学校での理解出来ないあれこれの中、僕は様々なことに巻き込まれていく。次第に明らかになっていく、学校というシステムにおけるいくつかの不穏な動き。一体この学校で、何が起ころうとしているのか…。
というような話です。
面白い作品でした。相変わらず、その圧倒的な世界観は凄いな、という感じがします。妄想をわざとバランス悪く積み重ねた不安定な構造物を思わせるような連想させる不穏な世界観は、読む者を次第に惹きこみ、いつの間にか彼方へと連れ去っていきます。
そもそも冒頭から、異常な設定の『学校』が描かれています。
そもそも、中学生だというのに年齢がバラバラ。主人公の僕は三十代だけど、もちろん十代もいれば、五十代もいる。年齢と学年の間には関係性はなく、年齢が下でも先輩だったり、その逆ももちろんある。
学校に定期的に殺人鬼がやってきて、必ず生徒を一人殺して去っていく。学校側は、特別な対策を取らない。なにせその殺人鬼は、ある階しか襲わないとされていて、その階以外の生徒は通常通り授業を受けるように言われているのだ。
などなど、まったく普通の学校ではない。こういう奇妙な環境を描かせたら、平山瑞穂は本当に巧いと思う。狂気的な設定の中で、特に細かな部分に力を入れて描くという印象があるので、余計にリアリティを増す感じがします。
主人公が振り回されるこの作品の世界観と学校という舞台そのものについては、何を伝えたいのか、どういう象徴的な意味があるのか、というようなことは、僕にはちょっとわからなかったです。元々僕には、物語を深く読み解く力がないんだけど、この作品には、読む人が読めば分かるような、深い背景が潜んでいるような気がします。卒業も進級も出来ない学校、あらゆる年齢の人間が中学生であるという設定、大人と子どもと不適格者という三者による世界、卒業準備委員会、ずっと姿を見ることが出来ない家族、謎めいた生物、理由の分からない戦争。そういう様々なモチーフが、本書ではなかなか魅力的な形でストーリーに溶け込んでいて、それぞれの表層的な部分は読んでて面白いんですね。でも、やっぱり僕には深いところまではわからない。
本書の中で恐らく最も強く繰り返し出てくるのが、『卒業』という話。どうやったら『卒業』出来るのだろうか、というのが、一つストーリーの大きな軸になるのだけど、この『卒業』というモチーフについても、その裏にどんなメッセージが込められているのか、僕にはちょっと難しかったです。そういうところがもっと自分の中で深く理解できれば、もっともっと面白く読めるんだろうなぁ、という感じがします。表面的な部分だけを読んでもそれなりに面白く読めるんだけど、読み進めていく中で、どうしても僕はこの作品の魅力をまだまだきちんと読み解けていないよなぁ、という感覚に囚われてしまうのでした。もう少し小説を読む力のある人間になれたらよかったのだけどなぁ。
全体的な流れについては僕には理解出来ない部分もあったけど、雑多な学園生活で描かれる個々のエピソードはやっぱり面白い。香坂先生とのやり取りはなかなか甘美だし、涼子との微妙な距離感は素敵です。介良や久住たちとの日常も面白いし、そういう個々のエピソードはやっぱり好きなんだなぁ。どれもこれも普通じゃない、なかなか奇妙奇天烈な設定・展開なんだけど、そういうものを調理させたら平山瑞穂はホント巧い作家だと思います。
特異な世界観を構築し、魅力的なエピソードを積み重ねて、妄想的な事柄を物語に昇華している物語、という感じがします。デビュー作の「ラス・マンチャス通信」の方が圧倒的に好きだけど、この作品も面白く読めました。読んでみてください。




平山瑞穂「3・15卒業闘争」
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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
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小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
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7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)