黒夜行

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県庁おもてなし課(有川浩)

内容に入ろうと思います。(一度書いた文章が消えたので失意の書きなおし)
高知県観光部に「おもてなし課」が設立された。観光立県を目指し、県外観光客を文字通り「おもてなしする」課として、斬新なネーミングと共に設立された。
しかし、ネーミングの斬新さとは裏腹に、悲しいまでに「お役所」的だった。
まず手始めに取り組んだのが、他県でも既に行われている『観光特使』(県内の施設の割引券付きの名刺を、県内出身の著名人に配ってもらう)という企画だし、その企画にしても、お役所独自のグダグダな仕事の進め方によって、様々な軋轢を生むことになった。
おもてなし課に所属する掛水は、観光特使を依頼していた作家・吉門喬介から連絡をもらう。そこで吉門から、お役所的な仕事へのダメだしや、観光特使の企画そのものの不備など、厳しい指摘をされ凹む掛水。しかしそれからしぶとく吉門と連絡を取り合い、相談をし、それを県庁へとフィードバックして行くことになった。
そんな吉門から、「パンダ誘致論」について調べてみろ、と掛水は言われる。それは十数年前、高知県庁の職員だったある男が掲げた壮大なプロジェクトで、その器を使いこなせなかった県庁は結局その男を県庁から追いやったという、県庁としても嫌な歴史なのだった。
これも吉門からのアドバイスで、民間感覚を持った女の子を雇えということでおもてなし課に採用された明神と共に、「パンダ誘致論」を掲げた清遠和政とアポイントを取ろうとするのだが…。
というような話です。
相変わらず素晴らしい作品でした!有川浩の作品でハズレだったことって一度もないんだけど、本書もホントメチャクチャ面白い作品でした。別に泣けるようなストーリー展開じゃないんだけど、ところどころウルウルさせるような展開とかあって、ホントいい話だったなぁ。
有川浩の作品の良さを挙げたらキリが無くなるだろうけど、本書で一番素晴らしいなと思ったのが『視点の切り替え』です。これは観光に限らず、どんな仕事の人にも、そして仕事じゃない場面でもホント大事なことじゃないかと感じました。
高知県の県民性に、『自分たちの持つ良いものに気づかない』『良いものを宣伝する力が弱い』というのがあるそうです。そういう県民性だからこそ、という描写も多くあるだろうけど、実際に県庁の人たちが、高知県にこれほどまでに観光資源があるのか、と気づく描写は本当に面白いと思います。
これは実際僕にも経験があります。僕は静岡出身で、特に富士山にかなり近いところに住んでたので、日々ドデカイ富士山が目の前に見える環境でした。だから静岡に住んでいる頃は、富士山について殊更何か考えたというようなことはなかったです。でも状況してみて富士山の話になると、結構富士山って、普段それが見えない人にとってはアピールする対象なんだなぁ、と初めて気づきました。
おもてなし課の面々も、高知の開発から取り残されたことによる、他の県では実現不可能なほどの豊かな自然や、ウミガメの産卵が毎夏ハズレなしで見れること、また他県ではほとんどなくなりつつある『日曜市』も未だに残っている、なんていう、自分たちにとって当たり前だった日常風景が、まさか観光資源になるなんて、と『視点が切り替わる』描写が多くて、本当に面白いなと思いました。
よくある話題で、『家庭毎の味噌汁の具』の話があるけど、あれと同じようなもので、自分にとって普通であることが、他から見れば実はそうではない、というような新鮮さって、意識的に視点を切り替えようとしないとなかなか見えてこないですよね。
僕は本屋で働いているけど、出版・書店業界にも、古い慣習ややり取りみたいなのが結構残ってて、不合理だなと思うことがあります。そういう、誰もがわかってるけど変わらない部分、というのももちろんたくさんあるんだけど、その一方で、他の業界の人からすれば異常なんだけど出版・書店業界の人はなかなか気づいていないこと、っていうのもまだまだたくさんあるんだろうと思います。そういうことへ意識を向けるきっかけになる一冊かもしれないなぁ、と思いました。
有川浩は、本当に人間を描くのが巧いと思うんですね。人の機微、といいますか。どういう場面でどういう人が、どう感じどう行動するのか、という部分への想像力が本当に凄いな、といつも思います。
本書には、いくつか対立関係や恋愛未満の関係なんてのが出てくるんだけど、それぞれが本当によく描かれている。しかもそれが、物語の展開から自然に湧きでてくるものなわけで、見事としか言いようがないですね。掛水と明神さんのやり取りにキュンキュンする人はたくさんいるだろうし、人によっては掛水と吉門のやり取りに萌え萌えするだろうし、吉門とその姉のやり取りは緊迫感があって素敵だし、清遠の器のデカさには感激する人がたくさんいるんじゃないかなと思います。
あと、公務員の論理、というか組織の論理みたいなものも描かれていて、そういうのに超絶的に拒絶反応を示してしまう僕には、やっぱり公務員とか向かないだろうなぁ、とか思いました。その辺りのことも有川さんは分析してたりして、なるほどなと思ったり。公務員というのはホント、新しいことをやるのに向かない組織なんだなぁ、としみじみと思いました。
あー、さっき書いた感想が消えてなければもっと色々と書けてたはずのことがあるんだけど、ちょっと時間切れもあってこれぐらいで。とにかくホント面白いです。観光とか県庁とかそういうことに特別興味がなくてももちろん楽しめるし、特に地方に住んでいる方なんかは、読むと色々と思う部分があるんじゃないかと思います。そして本書を読むことが、「おもてなしマインド」を伝達する一番の手段だとも思いますしね。もちろん、有川作品には欠かせない恋愛的な要素も結構あるんで、そういうの目当てで読んでも楽しいです。ホント、高知に行ってみたくなります。特にゆずで村起こしに成功した馬路村とか興味あrなぁ。是非是非読んでみてください。

有川浩「県庁おもてなし課」


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Comment

[4120]

こんばんは。ちょっとご無沙汰になりましたね(笑)。
梅雨明け十日と言う言葉があるそうで、梅雨明けの10日間は非常に暑くなるそうです。じゃ10日過ぎれば…と言いたいところですが、どうやら暑さは変わらないようですよ。暑さでますます痩せてはいませんか。食欲に関係なく、何かしら食べてくださいね。
私も先日この本を読みました。有川さんの発想はなかなか鋭く、お役所仕事の摩訶不思議さや理不尽さもさりげなく取り入れ、読ませる話に仕上がっていましたね。私も身分上は公務員ですが、ほとんどは肉体労働でたまに頭を使う程度ですので、こんな県庁のしきたりとは縁がありません。でも、高知県ってとても魅力的な所のようですね。私も俄然行ってみたくなりました。「おもてなし課」にもてなしてもらいたいものです(笑)。
ただ一点、ちょっと気になったのは、有川さんの作品の終点がラブコメになっている所です。吉門と佐知、掛水と明神という2つの恋が進行形になる気配ですよね(笑)。図書館シリーズでも、何とも勇ましい物語と思い感心しながら読んでいたら、最後は激甘のロマンスで終わってしまいました。
無理を言って申し訳ありませんが、次作はちょっと趣向を変えて欲しいな、と思います。
桂さんの「県庁の星」も公務員を皮肉った点は似ていますし、面白かったです。公務員も、もっと「普通」の感覚を身につけないといけませんね(笑)。
暑い日が続きますが、お元気でお過ごし下さいね。

[4121]

こんばんはです。読む本がなかなか重ならなかったりしますかねー。
僕は割と、そこまでこの暑さにはへばってなかったりします。部屋に扇風機だけなので、場合によっては外より部屋の方が暑い場合もあるんで、なんとなく慣れていく感じはありますよね。食べ物は…相変わらずな感じのものしか食べてませんけどね(笑)
この作品はよく出来てるなぁ、と思いました。有川浩の作品はどれも面白いんですけど、メッセージ性というか、色々と考えさせる部分なんかも盛り込んだりしてうまく物語を展開させてるなぁ、と。お役所と民間の考え方の違いは凄まじいですね(笑)。まあ公務員も色々なのでしょうけども(ドラさんはきっときちんと働いてらっしゃると思いますし)。高知に行きたくなりますよねー。
さすがに、読者からの期待が大きすぎるでしょうから、有川作品からラブコメを外すのは難しいんだろうと思います。有川さんはラブコメ要素なしでも素晴らしい作品を書けるでしょうけど、版元側がそれを許さないようなイメージがあります(あくまで勝手なイメージですよ)。ラブコメなしの作品は別名で書くしかないのかも(笑)
「県庁の星」も良かったですね。公的なところにしか出来ない仕事ももちろんあるけど、やっぱり民間から学ぶべきことはきっとまだまだたくさんありますよね。政治家とかが変わってくれるといいんだけどなー。
ドラさんも体調など崩されませんようにー。

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「県庁おもてなし課」 有川 浩

「県庁おもてなし課」は、高知県の観光事業の一環として発足した部署・おもてなし課の奮闘を描いた物語。ちくしょう、読んだら高知に行きたくなっちゃったよ。しかし、何をするにも「お役所意識」が抜けず、見切り発車で指導した観光特使に名刺を配ってもらう企画は難航する。そんな折、主人公・掛水は特使を引き受けた作家・吉門喬介から辛辣な言葉を浴びせられる。しかし、彼のアイデアと郷土愛をたよりにアドバイザーを依頼するが、吉門の条件は「民間感覚」をもつ女性スタッフの採用と20数年前、大胆な観光プラン「パンダ誘致論」の調査だった

【県庁おもてなし課】(有川浩)を読了!

地域活性化にかける若手職員の奮闘と恋の行方は  まずは来訪記念にどうかひとつ!  人気blogランキング【あらすじ】地方には、光がある―物語が元気にする、町、人、恋。とある県庁に突如生まれた新部署“おもてなし課”。観光立県を目指すべく、若手職員の掛水は、振興企画の一環として、地元出身の人気作家に観光特使就任を打診するが…。「バカか、あんたらは」。いきなり浴びせかけられる言葉に掛水は思い悩む―いったい何がダメなんだ!?掛水とおもてなし課の、地方活性化にかける苦しくも輝かしい日々が始まった・・・まず驚いたのは

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)