黒夜行

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キネマの神様(原田マハ)

内容に入ろうと思います。
大企業で、課長としてシネマコンプレックス建設計画の中心的な役割を担っていた丸山歩は、ほんの些細なきっかけから、39歳にして会社を辞めざるおえなくなってしまう。ちょうどまさにそのタイミングで父が入院、父の仕事であるマンションの管理人の仕事を、一週間有給を取ると嘘をついて肩代わりすることになった。
この父が、実に厄介な男なのだった。
宵越しの金は持たないという主義で、麻雀と競馬に大金を突っ込むギャンブル狂。もうあちこちから借金をしまくって首が回らなくなっているのに、一向に改める気配もない。80歳になろうというのに、生き方はまるで変わっていない。
一方で、かなりのマニアックな映画ファンでもある。日に何本も映画を見て、管理人日誌に自分が見た映画の感想を書き連ねる。近所にある「テアトル銀幕」という名画座にも足しげく通い、テラシンと呼んでいるテアトル銀幕のオーナーとも昵懇だ。
歩は父のギャンブル狂を立て直そうと、母と必死になる。一方、再就職をしようにも、40歳目前という年齢も足かせとなって、なかなかうまくいかない。
そんなある日、転機が訪れる。自分の借金は自分で返すようにと母に年金を差し押さえられた父は、ネットカフェのパソコンで映画を見るようになっていた。そしてそこから、歩が戯れに書いた映画評論のような文章を、とあるサイトに宛てて送ったのだった。
それがきっかけで歩は、「映友」という、映画雑誌の超老舗編集部から声が掛かり、ライターとして雇ってもらえるようになった。しかし話はそれだけでは終わらず、なんと紆余曲折を経て、父親が「キネマの神様」というサイトで映画評論を書くことになったのだった。
というような話です。
いやー、泣きました!ボロボロ、って感じじゃないけど、ジワジワ泣いてましたよ!小説読んでこんなに泣いたのは久しぶりかもしれないなぁ。
タイトルからは、まあ映画の話なんだろうな、っていうイメージだと思います。まあ確かに映画の話だし、映画にほとんど興味のない僕には、よくわからない話(具体的な映画名とその内容や感想についての文章が出てくるんで、その映画を知らない人にはよく分からない部分も多いです)も結構出てくるんですけど、まあそんなことはどうでもいいやって思えるくらい良い話だなと思います。正直、映画小説(なんてジャンルがあるんだかわかりませんが)としてどうなのか僕には判断できませんし、そういう方面からこの作品を評価することはまるで出来ませんけど、家族小説として、そして家族だけではない、友情小説、とでもいうのかな(ちょっとニュアンスをうまく伝えられないんだけど)、そういう作品としては本当に素晴らしいと思います。
本書では、本当に、歩の父親(後々ゴウちゃんと呼ばれることになるのだけど)が本当に良い味を出していると思います。とにかく真っ直ぐな人なんですね。自分の欲望にも真っ直ぐだし、人の気持ちにも真っ直ぐ。それでいて四角四面なんてことはまったくなくて、だらしないし適当だったりもする。母や歩に散々迷惑を掛け通しで、それでも80年間まるで変わらないまま生きてきた父が、サイトで映画評論を書くことでどうなっていくのか、という部分は本当に面白いです。とにかく厄介者でしかなかった父が、凄い波を呼び起こすことになる。父を中心として、とんでもない渦が巻き起こることになる。その中で父は、色んな面を見せていくことになる。それは、長い付き合いである母や歩にさえ見せたことのなかった面だ。だからこそ母も歩も、その父の変化に驚き感動し、そしてそれが読み手にも伝わってくる。
本書の良さは、歩の父に限らず、本書に出てくる誰もが『強い想い』を抱いているから、そしてそれが伝わってくるからだ、という感じがする。まずは、映画への想い。映画という娯楽はどういうもので、それに関わる人たちが映画のどう言った部分を残そうとしているのか。その想いが凄く伝わってくる。
僕は書店員で、本に関わる仕事をしています。映画と本はまた違う部分は多々あるのだろうけど、本書を読んで、残したいと思う部分は近いんじゃないかな、と思いました。
映画の良さにしても本の良さにしても、これは青臭い意見だろうけど、『商売』と密接に結びついてしまうことで、どんどん薄れていってしまうと思うんです。もちろん、商売にしなければ伝わるものも伝わらないわけで、要はバランスの問題ですけども、商売でありすぎると、それぞれの中の良さみたいなものがどんどん損なわれていってしまうのだろう、と。
映画も音楽も本もそうだと思いますけど、大量生産大量消費という世の中で、その世の中に合わせた舵取りが必要とされてきたのだと思います。その過程で、良くなった部分、悪くなった部分と色々とあるんだと思いますけど、そういう世の中では損なわれてしまいがちなものをなんとか守りたいと、本書の登場人物たちは色々と奮闘することになります。変わった人ばかりだけど、映画への想いは皆同じで、それが人を繋いで行く。そこが凄くいいなと思いました。
あとは、人への想いですね。これは主に、歩の父と、ここではちゃんとは書かないとある人物との関係がメインですね。歩の父、そしてそのある人物とが、非常にお互いを想い合っている。その心のこもったやり取りは、なるほど多くの人を惹きつけるのだろうなと思わされるものでした。この話を詳しく書けないのが残念。
また、「映友」編集長の高峰さんとその息子の関係とか、あるいは歩と父、父と母の関係など、本書ではそれぞれの立場に立って相手を思いやり関わっていくという描写がかなり多くあります。そういう一つ一つの積み重ねがいいなぁと思いました。
本書のような物語の場合、リアリティがないって評価を下す人もいるだろうと思います。確かに、本書で描かれるのは、「相当にラッキー」な状況でしょう。そこに非現実さを感じ取ってしまうというのであれば、まあそれはそれで仕方ないかもしれません。ただ、僕はこういうことが現実にあってもおかしくはないとお申し、強い想いやこだわりを持った人間が陽の目を見るという展開は素敵なんじゃないかなと僕は思います。
あと本書を読んで僕が強く感じたことは、何かを深く深く好きになるって羨ましいなぁ、ということです。本書では映画好きのことが描かれますが、別になんだっていいんです。アニメのオタクとかでも、割と僕は羨ましかったりする。僕は、本は山ほど読んでるけど、正直、本好きだと言えるほど本が好きなわけでもない。他に強く関心のあることがあるわけでもないし、本にしたってそこまで深入りは出来ない。何かを心の底から深く好きになるって、ある種才能だよなぁ、と思っているのでした。
正直、あんまり期待してなかったんですけど、メチャクチャ良い作品でした!映画に興味があるとかないとか関係なしに(僕は基本ありません)楽しめる作品だと思います。是非是非読んでみてください!

原田マハ「キネマの神様」




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[4110]

こんにちは。一寸ご無沙汰している内に暑くなりましたね。
我が家の居間にど~~んと鎮座している炬燵が邪魔になりました(笑)。
私は原田マハさんのファンになり、新作が出るたびに追っかけをしています。この作品を読んだのは一昨年、今古い読書メモを取り出しました。このメモ、最近読み返してみましたら、1200冊の作品の感想と粗筋が書いてありました。ちょっと感動です。しかも、全部手書き、大学ノート16冊分です。長い作品は2ページに渡って感想などが書いてあります。本来はボケ防止のために始めたモノですが、意外に気に入って現在に至っています。時々、夫が無断で読んでいるらしいですが、まぁ彼も読む本に迷ったときの参考にしているのでしょう(笑)。夫が買ってくる本は、私的にはエッ?という物が多いのですが(たとえば、「KAGEROU」「苦役列車」など)、私もちゃっかり読んでいますので、まぁ余り責められません(笑)。
話が逸れましたが、この作品は夢があって読後感が好いですよね。バルタンなど引きこもっている場合じゃないと堂々と前面に出て活躍するところが面白かった(感動)ですし、お父さん(ゴウ)の映画に対する想いがブログで前面開花し、意気揚々と書き込む辺りもすてきでしたね。有名人との対決もこの作品の見せ場です。原田作品は、現実とはちょっとだけ浮遊した世界に、温かい別の世界を築いてくれるところが好きです。
最初に読んだのは「普通じゃない」次が「一分間だけ」3番目「カフーを待ちわびて」4番目「キネマの神様」5番「ごめん」6番目「花々」7番目「翼をください」8番「本日はお日柄もよく」9番目「ごめん」10番目「風のマジム」ということになります。
「カフー~」や「風のマジム」を読むと、彼女は離島が好きなのかなと思います。最近、お兄さんの宗典さんの作品とは縁がなくなりましたが、女性作家では私のお気に入りのBEST5に入ります。

[4111]

こんばんわですー。
いや、ホント。暑いですね。まだ夜は若干涼しいのが救いですけども。
僕も扇風機を引っ張り出してきました。
1200冊分ですか!僕もブログで2000冊分ぐらい感想書いてますけど、しかし全部手書きってのは凄いですねー。さすがに手書きでは、そこまで続けられないだろうなぁ。良い習慣だと思います。旦那さんに読まれるのは、恥ずかしくないですか?(笑)。旦那さんは、売れてる本とか話題になってる本が好きなのでしょうね、きっと。
お書きのように、若干現実から浮遊した作品ですけど、あんまりそういう部分が気にならない展開や構成がうまいと思います。一人一人割と見せ場があったりして(まあやっぱり、お父さんの見せ場が一番多いですけど)、良かったです。バルタンの成長は、高峰さんとしてもホッとしたでしょうね。有名人とのやり取りは、その後の展開まで含めて素晴らしいと思います。
原田マハさんの作品では、「本日はお日柄もよく」が気になってはいます。「カフー~」が結構良かった記憶があるんですけど、「一分間だけ」がさほどでもない感じで、それで止まっちゃったんだろうなぁ。「キネマの神様」も、ある書店員からオススメされなければ読んでなかったと思いますー。僕もタイミングが合えば何か読んでみますね。

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
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3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
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9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)