黒夜行

左脇のプロフィールにある「サイト全体の索引」から読みたい記事を探して下さい。

きょうの私は、どうかしている(越智月子)

内容に入ろうと思います。
本書は、11編の短編が収録された短篇集です。
主人公はみな違う作品ですが、ただ、主人公の特徴は共通しています。解説にそれがうまくまとまっているんで、それをそのまま抜き出してみます。

『各編のヒロインたちはみな、三十九歳か四十歳。田舎から出てきて東京でひとり暮らしをしている未婚女性で、フリーライターやイラストレーター、デザイン事務所の電話番など、雑誌関係の仕事に就いている。かなりの美人か、美人じゃなくても見た目は悪くなくて、実年齢よりずっと若く見られるようなタイプばかり。でも恋人と呼べるような相手はいない。「結婚しなくたって大丈夫」「まだまだキレイだから大丈夫」「いずれ産めばいいんだから大丈夫」と言われ、あるいは思い込み、人生の半ばまで来た。それなのに、自分は本当は何が欲しくて、何がしたくて、何を求めて年齢を重ねてきたのかわからなくなっている女たち。』

こういう主人公たちの物語が11編収録されています。

「取り扱い注意」
昔の男から、ライター志望だという女の子を紹介され、会いに行く。

「楽屋裏」
実家で母親から、ひたすら愚痴を聞かされすぎて、全然落ち着かない。

「真実」
嘘ばかりついて仕事を休み、妹に呆れられ、それでもまた嘘をついて男と肌を合わせる。

「カモと鍋」
かつて付き合いそうだった男を、大学時代のゼミ仲間にとられた。男だけじゃなく、色んなものをとられている。

「揺れ」
一週間前に会った男のことばかり頭に浮かぶ。連絡は、来ない。

「警告音」
婚約者を友人に紹介したが、翌朝その婚約者の姿は見えない。記憶がない。何をやらかしたんだろう…。

「手」
実家から母が東京にやってきた。50にもなって母親の脛をかじって生きている姉と共に。

「月」
友人の出産祝いを買って家へ向かう。その旦那とは、昔付き合っていた。赤ちゃんに会うと、子どもが欲しくなってきた。

「宵待草」
やっぱり私とのことは遊びだったのだろうか。待てども待てども、連絡はこない。

「物食う男」
同じことばかり繰り返しいい、甘いものばかり勧めてくる父。子供の頃好きだったあの父親は一体どこに…。

「見る」
年上の男とは体を重ねる気のない男。今隣に、年に数回しか会うことのない姪がいる。

というような感じです。
うーん、ちょっと苦手方面だったかも。
僕は自分では、女性向けの作品を相当読める人間だと認識してるんですけど、でも合うタイプの作品と合わないタイプの作品があるんですね。
合わないタイプの作品の代表格は、唯川恵とか林真理子とか、そういう感じだと思います(両者とも、ほぼ未読なんで、ただのイメージなんですけど)。うまく言葉には出来ないんですけど、オンナオンナしすぎているというか、オンナの部分を何かの装置を使って余計に増幅してみましたみたいな、そういうタイプの作品っていうのは、正直僕的にはあんまり得意じゃないんですね。一方で、例えば宮下奈都の作品とか、本屋大賞2位の「ふがいない僕は空を見た」のような作品は、女性向けだけど、オンナオンナしいわけではないと思うんです(やっぱり言葉にするのは難しいなぁ)。
この作品は、僕の感覚からするとオンナオンナしい感じの作品で、ちょっと合うタイプの作品ではなかったなぁ、という感じがしました。ただ、こういう作品が好きだっていう人は絶対いるだろうなぁ、ということは思います。
本書を読んで一番強く感じたのは、これほどタイトルが内容とピッタリ合ってる作品ってのも珍しいな、ということです。もちろん世の中には、タイトルがジャストフィットしている作品って色々あるんだろうけど、本書もその一つに挙げてもいいんじゃないかと思うんです。
僕が感じたのは、本書で描かれる女性たちの、『これまでの人生を否定したくない』という強い思いです。子供の頃はなるべく親の期待に応え、容姿も良いからそれなりにチヤホヤもされ、仕事にもやりがいを感じられている彼女たち(まあそれらはどれも、全員に当てはまるわけじゃないけども)は、しかし『未婚』というだけで特殊な立ち位置に追いやられている自分の存在を強く認識している。どうすれば良かったのか、何か間違っていたのか。でも、実際はそんな風には考えたくない。今までの人生のどこかで重大な間違いをしていたなんて思いたくない。
だから私は正しい。そう、そうだよ、これは、きょうの私がたまたまどうかしてるだけなんだよ。
そういう気持ちが、どの作品からも結構伝わってくるんですね。普段の私からは、こんな行動考えられない、こんな風に思うなんてありえない。それは実際、自分の人生や足跡みたいなものに対する不安、積み重ねてきたと思ってきたはずのものが実はちょっとした衝撃でドンと崩れ去ってしまうものだと気づいたというような、そういう感覚から来ているはずなんだけど、でも彼女たちはそれを認めたがらない。いや、そうじゃないよ、これは、たまたま、たまたま今日の私がちょっとどうかしてるだけなんだ。そんな風に言い訳をしながら、どこにも辿り着けない道を歩いている彼女たちの後ろ姿が凄くよく見えてくる作品だな、と思います。
やっぱり、本書の主人公たちの年代と近い人には、より共感なり反発なりを感じ取ることが出来る作品なんだろうと思います。
あと、この作家のデビューの経緯がなかなか凄いです。最近の新人にしては珍しく、新人賞を受賞してのデビューというわけではありません。作家・白石一文さんに、あなたは小説を書かなくてはいけない人、と明言されたことをきっかけに小説を書き始めた、という経緯があるそうです。なんだか不思議なデビューの仕方ですけど、まだまだ色んなところに才能が転がってるってことなんだろうなぁ、と思います。
あと残念なのが、誤植。普段誤植なんか見つけない僕でも分かったかなり大きな誤植です。P82から始まる「揺れ」って短編、実は左上に書かれている短編の名前が前ページ「カモと鍋」になってるんですね。まあ作品そのものとは関係ない部分での誤植なんで、どうでもいいんですけどね。
僕には残念ながらちょっと合わない作品だったんですが、こういう作品を好きだという人がいるというのは十分理解できます。タイトルが内容とドンピシャで合っている作品だと思いました。興味がある方は読んでみてください。

越智月子「きょうの私は、どうかしている」




関連記事

Comment

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

Trackback

http://blacknightgo.blog.fc2.com/tb.php/2012-d7ce7af0

 | ホーム | 

プロフィール

通りすがり

Author:通りすがり
災害エバノ(災害時に役立ちそうな情報をまとめたサイト)

サイト全体の索引
--------------------------
著者名で記事を分けています

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行~わ行

乃木坂46関係の記事をまとめました
(「Nogizaka Journal」様に記事を掲載させていただいています)

本の感想以外の文章の索引(映画の感想もここにあります)

この本は、こんな人に読んで欲しい!!part1
この本は、こんな人に読んで欲しい!!part2

BL作品の感想をまとめました

管理人自身が選ぶ良記事リスト

アクセス数ランキングトップ50

TOEICの勉強を一切せずに、7ヶ月で485点から710点に上げた勉強法

一年間の勉強で、宅建・簿記2級を含む8つの資格に合格する勉強法

国語の授業が嫌いで仕方なかった僕が考える、「本の読み方・本屋の使い方」

2014の短歌まとめ



------------------------

本をたくさん読みます。
映画もたまに見ます。
短歌をやってた時期もあります。
資格を取りまくったこともあります。
英語を勉強してます。













下のバナーをクリックしていただけると、ブログのランキングが上がるっぽいです。気が向いた方、ご協力お願いします。
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

アフィリエイトです

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
本・雑誌
16位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
和書
14位
アクセスランキングを見る>>

アフィリエイトです

最新記事

サイト内検索 作家名・作品名等を入れてみてくださいな

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

カウンター

2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
8位 笹原瑠似子「おもかげ復元師
9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
2位 朝井リョウ「星やどりの声
3位 高野和明「ジェノサイド
4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
10位 原田マハ「キネマの神様
11位 有川浩「県庁おもてなし課
12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
19位 松崎有理「あがり
20位 大沼紀子「てのひらの父

新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
2位 「武器としての決断思考
3位 「街場のメディア論
4位 「デフレの正体
5位 「明日のコミュニケーション
6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
9位 「メディア・バイアス
10位 「量子力学の哲学

小説以外
1位 「死のテレビ実験
2位 「ピンポンさん
3位 「数学ガール 乱択アルゴリズム
4位 「消された一家
5位 「マネーボール
6位 「バタス 刑務所の掟
7位 「ぐろぐろ
8位 「自閉症裁判
9位 「孤独と不安のレッスン
10位 「月3万円ビジネス
番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)