黒夜行

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カササギたちの四季(道尾秀介)

内容に入ろうと思います。
本書は、直木賞を受賞したの、受賞後第一作です。4編の短編が収録された、連作短編集です。
舞台は、さいたま市にあるとあるリサイクルショップ。口が達者(だと思っている)な華沙々木が店長、美術をかじったことのある日暮が副店長の二人だけの店で、買い取ってきたものを日暮が美術の腕を使って手を入れることで価値をつけて売りだそう、
という店なのだけど、開業以来二年、万年赤字の店である。
そんなリサイクルショップカササギには、南見菜美という、冗談みたいな中学生が出入りしている。とある件をきっかけに知り合ったのだけど、日暮はこの菜美を失望させないために色々苦労させられているのだ。
そう、『華沙々木は名探偵だ』という思い込みこそが、菜美の救いの一つなのだ。それを壊してはいけない。
華沙々木は、何か事件の匂いを嗅ぎつけると首を突っ込んでしまいたくなる厄介な性格なのだけど、残念ながら華沙々木の推理が当たることはまずない。しかしそれが『当たった』ように見えるのは、華沙々木の推理をなんとか推測し、先回りして『証拠』を捏造して用意し、なんとか現実の方を華沙々木の推理に合うように苦労している日暮の存在が大きいのだ…。

「鵲の橋」
鳥が翼を広げたデカいブロンズ像を買い取ってしばらくして、一人の少年が店にやってきた。ハンカチを落としたので探させて欲しい、というので許可するが、どう考えてもその少年は嘘をついている。二人は、これは『ブロンズ像放火未遂事件』に関係しているのでは、と推理する。買い取った、あの鳥のブロンズ像の台座に火をつけられる、という事件があったのだ。売約済だったその商品は、結局その人が買い取っていったのだけど。
ブロンズ製品を製造する会社に辿り着いた面々だったが…。

「蜩の川」
家財道具一式を売って欲しい、という大口のお客さんからの電話依頼。ちょっと遠いが、大口の注文なので、頼まれた品をトラックに積んで、何故かついてきた菜美と共に、秩父の山で、その筋では定評のある木工店へと向かった。
そこには、サチと呼ばれる女性が修行中で、やっと本弟子として認められ、そこで本格的に住むことになったんで、家財道具一式が必要だったようだ。
その木工店では、神木から切り出した丸太が保管されているのだけど、しかし何者かがその丸太に傷をつけたようだ。事件の匂いを嗅ぎ取ってしまった華沙々木は、意気揚々と推理を展開するが…

「南の絆」
僕たちは、菜美と知り合うきっかけになったとある出来事のことを思い返していた。
家財道具一式を買い取って欲しい、と連絡があり向かった二人は、そこが離婚したばかりの母子家庭だと知る。その一人娘が菜美だった。当時小学生だった菜美は、父親が家を出て行ってしまったことを大いに悲しんでいた。
その夜。彼女の家に泥棒が入ったらしい。盗まれたのは、飼猫一匹。当然事件の匂いを嗅ぎとってしまった華沙々木は、大胆な推理を展開するのだが…。

「橘の寺」
いつも無価値なものを脅すようにして高値で買い取らせる住職に、オーディオプレイヤーが欲しいからと頼まれた。ふっかけて値段を提示しても、そのまま払ってくれた。おかしい、とは思ったが、何がどうなっているのかわからない。
数日後、その住職から、みかん狩りに来ないか、と誘われる。寺に庭に生えているのだそうだ。何度確認しても無料だ、というので、実に怪しかったが、華沙々木がみかんが大好きらしく、菜美と三人で行くことにした。
大雪のため一晩寺に泊まることになったのだけど、その日寺に泥棒が…。

というような話です。
なかなか面白い作品でした。ジャンル分けしようとおもったら、ユーモアミステリ、とでも言えるかもしれません。僕は、道尾秀介が描く、重苦しい痛々しい世界観も大好きだけど、こういう軽いタッチの作品も好きです。道尾秀介にしてはかなり軽いタッチで、こういう作品も書くんだなぁ、と思いました。
どの話も、よく出来ている、と思いました。設定上、どうしても都合よく『泥棒』が出てくるのはまあ多少は仕方ないとして、なかなかうまく物語が展開していくと思いました。
巧いのは、まず華沙々木が勘違いした推理を展開するような下地が存在すること(そしてその推理は、読者もある程度想定することが出来るように描かれている)、そして日暮の『技術』によって『証拠の捏造』が可能な事件であること、そして真相を知っている日暮はその真相を誰にも話すことが出来ないような性質の事件が描かれている、という点です。これらを、ほぼすべての話でクリアするのは、なかなか難しいだろうなぁ、と思いました。よく出来ていると思います。
何故日暮が華沙々木のトンチンカンな推理を『裏付け』してあげなくてはならないのか、という点で、まさに菜美という存在が重要になってくるわけで、そういう人間関係の微妙なところを描いてくるのも、まあさすが道尾秀介という感じです。日暮の、『色んなものを壊しちゃいけない。そのために自分が少々苦労するのは仕方ない』という生き方は、何だか凄く共感できてしまう気がします。
僕が一番好きな話は、一番初めの「鵲の橋」ですね。日暮が陰で暗躍することで、物事が完璧にうまくいった、という感じがします。他の事件は、『華沙々木が間違った推理をするなんてこと、菜美には見せられない』という動機がほぼメインなのだけど、この「鵲の橋」についてはそれだけじゃなくて、日暮が動くことである人が恐らく救われるのだろう、というところがいいな、と思いました。
直木賞受賞作が相当に切なく重苦しく痛々しい話なんで、それを読んだ後でこの作品を読むと、その軽さとのギャップにちょっと戸惑うかもしれません。人によっては、「月と蟹」とはあまりに雰囲気が違って面白くない、なんていう感想になる人もいるかもしれません。でも、道尾秀介というのはとにかく守備範囲の広い作家で、野球で言えばピッチャーもキャッチャーも内野も外野も全部出来る選手、みたいなもんだと思います。人によって、ピッチャーをしている道尾秀介が素敵、サードを守っている道尾秀介が凛々しくて最高、とか色々あるでしょうけど、キャッチャーをやってない道尾秀介なんて道尾秀介じゃない!なんていう評価はまあナンセンスだよなぁ、と僕は思ったりするんで、まあ何を書いてるんだかよく分からなくなりましたけど、この作品も是非読んでみてください。

道尾秀介「カササギたちの四季」




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2013年の個人的ベストです。

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4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
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8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
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新書

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4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
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小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
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11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
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10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
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13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
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2011年ベスト

2011年の個人的ベストです
小説
1位 千早茜「からまる
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4位 三浦しをん「舟を編む
5位 百田尚樹「錨を上げよ
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8位 笹本稜平「天空への回廊
9位 地下沢中也「預言者ピッピ1巻預言者ピッピ2巻」(コミック)
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12位 西加奈子「円卓
13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
14位 辻村深月「水底フェスタ
15位 山田深夜「ロンツーは終わらない
16位 小川洋子「人質の朗読会
17位 長澤樹「消失グラデーション
18位 飛鳥井千砂「アシンメトリー
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新書
1位 「「科学的思考」のレッスン
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6位 「もうダマされないための「科学」講義
7位 「自分探しと楽しさについて
8位 「ゲーテの警告
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)