黒夜行

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本日は大安なり(辻村深月)

内容に入ろうと思います。
本書は、辻村深月の最新作で、結婚式場でのある一日を舞台にした作品です。
ホテルアールマティは、結婚情報誌で毎回トップを飾るほどの理想の結婚式場として有名です。歴史もあり、値段も他よりは高いのだけど、早くから予約が埋まる人気の式場です。
その日、四組のカップルが1時間ずつの差で結婚式の予定がありました。
加賀山妃美佳は双子の妹。一卵性双生児で、見た目はそっくりだ。姉の鞠香とは生まれてくるのがほんの少し違っただけなのに、私たちは小さな頃から「姉」と「妹」として区別されて育てられてきた。
「姉」として育った鞠香は、どこにいても物怖じせず、美しく、そして何よりも妹である妃美佳を常に守ってくれる存在だった。一方の妃美佳は、そんな姉の陰に隠れるような存在で、同じ顔をしているのに化粧などに気を使わないためか、周りから野暮ったく見られることも多かった。
妃美佳は、ウエディングドレスを着る鞠香と、その横に立つ映一さんを見て、今日すべてがうまく行くように心から願っている。
山井多香子は、ホテルアールマティに所属するウエディングプランナーだ。彼女が担当し準備を進めてきた大崎玲奈の結婚式が今日行われる。ウエディングプランナーは式に直接立ち会うことはほとんどなく、今日も山井は別のカップルの打ち合わせが入っている。しかし、大崎玲奈に関しては気を抜けない。
ここまで、トラブル続きだったのだ。
正直初めに、大崎玲奈の担当を辞めたい、と上司に申し出たことがあった。しかし、こういうお客さんをきちんとこなしてこそだ、と説得されて、今日まで頑張って来た。大崎玲奈の結婚式を最後まで完璧にやり遂げることが出来れば、山井はこれからもウエディングプランナーとしてやっていける。そういう予感があった。
しかし、やっぱり当日も、朝からトラブルばっかりだ…。
鈴木睦雄は、今日ここで結婚式をあげる予定だ。新郎、ということだ。
しかし、まさか結婚式をあげることになってしまうとは…。
学生時代からずっと続けてきたバンドのライブを見に来た貴和子と知り合ったことは、睦雄にとって運命だった。貴和子は、どうしようもなかった俺の人生を救ってくれた。貴和子は今でも俺のストッパーで、大切な存在だ。
しかし、まさかこんなことになってしまうなんて…。
白須真空は、母親の妹であるえりちゃんの結婚式に出席するためにホテルアールマティに来ていた。結婚式で、二人に指輪を渡しに行く重大な役割を任されることになった。
えりちゃんの結婚相手である東さんは、真空の家族には評判が悪かった。もっさりしている、という表現がぴったりで、中身は子供だ、と皆言っていた。えりちゃんはそれで家族と何度も喧嘩しているらしい。
白雪姫の格好をする予定で、それに合わせて特注したカチューシャが朝無くなっていることに気づいた。えりちゃんは大慌てで、でもカチューシャは全然出てこない…。
四組のカップルが、ホテルアールマティで引き起こすドタバタの悲喜劇です。
さすが辻村深月です。いやはや、面白かった。辻村深月は本当にどんどん進化していくという感じがします。
本書は、朝から時系列順に色んな人物の視点を転々としながら話が進んでいくんだけど、まずこの作品、ストーリーの展開がメチャクチャ面白い!あくまで僕の印象なんだけど、これまでの辻村作品って、ストーリー自体も確かに面白いんだけど、どっちかっていうと人間を描く部分により大きな比重がある感じがしました(ストーリー重視な印象が強いのは「冷たい校舎の時は止まる」ぐらいかなぁ、僕の中では)。でも本書は、ストーリーも相当巧く出来ているという感じがします(その分人間を描く方が若干落ち着いている感じはするけど、いやもちろんそっちも面白いです)。
四組のカップルの結婚式は、それぞれ単独でも色んな事件があるんだけど、でもその四組が同じ日に結婚式を挙げたことで起こること、というのもあって、それがよく出来てるんですね。特に全体の話でキーパーソンとなるのが、鈴木睦雄ですね。何だかんだで、この人物が色々かき回すことになります。
個別の話も凄く面白いです。ただホント、どれもミステリチックな展開になっているんで、それぞれのストーリーには詳しく触れられない、というのが残念ですね。ミステリチックな展開があんまりないのは、大崎玲奈の式を担当する山井多香子のパートぐらいかな。そしてさらにそれぞれの話を通じて、そうせざる追えなかった彼ら/彼女らの悲哀や苦しみなんかが描かれているのが本当に巧いと思いました。
加賀美妃美佳の話は、双子として生きてきた二人の、双子であるからこその悩みとか辛さみたいなものが描かれていきます。そういう、双子ならではの悩み、というのはありきたりと言えばありきたりなんだけど、結婚式というモチーフと絡めて凄くうまく話を展開させているという感じがしました。映一の器の大きさは素晴らしいと思います、個人的に。
山井多香子の話は、まさかこのパートがこんな風に展開するとは思ってもみなかったなぁ、と思うような感じでした。山井が何故大崎玲奈の担当を外れたいと思ったのかという話も凄いし、大崎玲奈という花嫁の存在もちょっとなんとも言えないんだけど、『まさかの展開』以降、いろんなことの印象が大分変わりました。山井の仕事に対する考え方は素敵だと思います。
鈴木睦雄の話は、まあ傍から見ている限りでは非常に面白いですね。鈴木睦雄に対してどういう感情を抱くことになるのか、を書くとある種ネタバレになりそうな気がするんでちょっとここでは書かないけど、鈴木睦雄が最後の最後で直面することになるとある出来事は爽快だな、という感じがしました。
白須真空はいいですね。恐らくこの日、ホテルアールマティにいたすべての人間の中で、鈴木睦雄に次いで緊張していたんじゃないかな、という感じがします。これも内容に詳しく触れられないんで書きようがないんですけど、子供なりに考えに考えた結果の行動は悪くないと思うし、その健気さが可愛くて仕方ありません。このパートには、辻村作品のどれかに出てくる登場人物がちょこっと関わってきます。僕は、あらかじめその情報を耳にしてなかったら分からなかったかもしれませんが。
個人的に僕は、辻村作品には『ある種の重さ』みたいなものがある、とずっと思ってきました。ダークな部分だったり醜い部分だったり、そういう部分をより増幅させるような形のストーリー展開だったり、そういう作品が多かったなぁ、という印象があります。僕はそういう辻村作品の特徴は大好きなんですけど、本書はそういう『ある種の重さ』を出来る限り封印して挑んだのかもしれないなぁ、という感じがしました。自分が得意とする『ある種の重さ』を封印して、新しい作品にチャレンジしたのではないか、という感じがしました。そして、その試みは大成功を収めている、と思います。群像劇、というなかなか書くのが難しいだろう手法を見事に使って(ただ巻末の記載を見ると、雑誌連載時は群像劇ではない形だったようですが)、人間をきっちりと描きつつ(しかも辻村深月の得意とする子供ではなく、きっちりとした大人を描いています)、ストーリー的に相当に読ませるエンターテインメントに仕上がっている、と思います。実際結婚式の裏側で、こんなトラブル・事件が同時並行で進行していたら嫌ですが(笑)、でもそんなこともあってもおかしくないなぁ、と思わせるリアリティを保ちつつ、実際にはなかなか起こりえないだろうストーリー展開を読ませてくれます。結婚式を舞台にした作品ということで、ある種の人々は敬遠したくなってしまう部分もあったりするのかもだけど、結婚についての価値観をむやみに押し付ける作品でもないので安心して読んで下さい(笑)。
もし辻村深月の作品に内包される『ある種の重さ』がちょっと自分とは合わない、と感じていた方がいたら、是非この作品を読んでみてください。辻村深月はこういう作品も書けるんだ、という新鮮な驚きを得られるんじゃないか、と思います。もちろん辻村ファンは必読です!是非是非読んでみてください。

辻村深月「本日は大安なり」




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[4070]

こんばんは。
強い風が吹く一日でしたね。雨の降り方も激しくて、春ってこんな天気だったかなぁ、と不思議な気がしています(笑)。
今日はこの本を読みました。なかなかコミカルな展開で、面白いですよね。真空くん、こんな幼い子どもとは最初は気づきませんでした。双子の話はかなり頻繁に小説にも登場しますが、映一くんはさすがですね。「真夜中の五分前」では、自分の妻が本物かどうかを考え憔悴する夫が出てきましたね。村上春樹の作品にも出てきたような…。
また陸雄は、ちょっと図々しいぞ!とも思いました(笑)。貴和子さんが可哀相でしょう、と。でも笑える話なので、まぁ許すことに…(笑)。
私はサービス業には縁がありませんので、このような仕事については何も分かりませんが、ウェディングプンナーって大変そう、というのが正直な感想です。お客様の要求(=わがまま?)につき合うって、結構しんどいですよね。私なら「それは無理です!」で却下しそうです(笑)。何時間かでウン百万円のお金が動く世界は庶民感覚からすると「もったいない」ですね。慶事も仏事も、経費の根拠が不透明ですよね。ややボッタクリに近いかも知れませんが、一生に一度ということで目をつぶらざるを得ないでしょう。
そういえば、この本には「限定 良縁祈願しおり」という物がついていました。東京大神宮で良縁祈願をしてもらったそうです。私にとっては「いまさら…」ですが、角川側の粋な計らいなのでしょうね。
通りすがりさんもお書きのように「月村深月、おもしろい!」という作品でした。

[4071]

こんにちわです。
なんだか、寒かったり暑かったり、雨だったり快晴だったりで、よくわからない天気が続くなぁ、という感じがしました。僕は違いますが、さらにその上で花粉症の人とかは大変だろうなぁ、と。
辻村深月の作品にしては、ダークさをかなり薄めているなという感じで、楽しく読める作品だなと思います。映一くんはちょっと凄すぎますね。僕にはちょっと自信はありません(笑)。睦雄のダメさは、なんかちょっと分かってしまう部分があって(笑)、人のことは言えないかもです。真空くんには、よく頑張った!って言ってやりたいですね。
ウエディングプランナーって、ホント大変そうですよね。絶対に、『こんだけお金出してるんだから』ってことで、色んな要望や苦情やらが殺到するんだろうなぁと思います。まあ、『こんだけお金だしてるんだから』って言いたくなる気持ちも分かりますけどね。僕も、結婚式も葬式もボッタクリに近いんだろうなぁ、とか思っています。まあ、そこに価値を見いだせるのならいいんですけどね。
ついてましたね、しおり。初版限定で、確か辻村さん自らが祈願しに行ったとのことですよね。そういうのに関心を持つ女性は多いでしょうから、面白い試みだと思いました。

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2013年ベスト

2013年の個人的ベストです。

小説

1位 宮部みゆき「ソロモンの偽証
2位 雛倉さりえ「ジェリー・フィッシュ
3位 山下卓「ノーサイドじゃ終わらない
4位 野崎まど「know
5位 笹本稜平「遺産
6位 島田荘司「写楽 閉じた国の幻
7位 須賀しのぶ「北の舞姫 永遠の曠野 <芙蓉千里>シリーズ」
8位 舞城王太郎「ディスコ探偵水曜日
9位 松家仁之「火山のふもとで
10位 辻村深月「島はぼくらと
11位 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない
12位 浅田次郎「一路
13位 森博嗣「喜嶋先生の静かな世界
14位 朝井リョウ「世界地図の下書き
15位 花村萬月「ウエストサイドソウル 西方之魂
16位 藤谷治「世界でいちばん美しい
17位 神林長平「言壺
18位 中脇初枝「わたしを見つけて
19位 奥泉光「黄色い水着の謎
20位 福澤徹三「東京難民


新書

1位 森博嗣「「やりがいのある仕事」という幻想
2位 青木薫「宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論」 3位 梅原大吾「勝ち続ける意志力
4位 平田オリザ「わかりあえないことから
5位 山田真哉+花輪陽子「手取り10万円台の俺でも安心するマネー話4つください
6位 小阪裕司「「心の時代」にモノを売る方法
7位 渡邉十絲子「今を生きるための現代詩
8位 更科功「化石の分子生物学
9位 坂口恭平「モバイルハウス 三万円で家をつくる
10位 山崎亮「コミュニティデザインの時代


小説・新書以外

1位 門田隆将「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日
2位 沢木耕太郎「キャパの十字架
3位 高野秀行「謎の独立国家ソマリランド
4位 綾瀬まる「暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出
5位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠 3巻 4巻 5巻
6位 二村ヒトシ「恋とセックスで幸せになる秘密
7位 芦田宏直「努力する人間になってはいけない 学校と仕事と社会の新人論
8位 チャールズ・C・マン「1491 先コロンブス期アメリカ大陸をめぐる新発見
9位 マーカス・ラトレル「アフガン、たった一人の生還
10位 エイドリアン・べジャン+J・ペタ―・ゼイン「流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則
11位 内田樹「下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち
12位 NHKクローズアップ現代取材班「助けてと言えない 孤立する三十代
13位 梅田望夫「羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる
14位 湯谷昇羊「「いらっしゃいませ」と言えない国 中国で最も成功した外資・イトーヨーカ堂
15位 国分拓「ヤノマミ
16位 百田尚樹「「黄金のバンタム」を破った男
17位 山田ズーニー「半年で職場の星になる!働くためのコミュニケーション力
18位 大崎善生「赦す人」 19位 橋爪大三郎+大澤真幸「ふしぎなキリスト教
20位 奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年


コミック

1位 古谷実「ヒミズ
2位 浅野いにお「世界の終わりと夜明け前
3位 浅野いにお「うみべの女の子
4位 久保ミツロウ「モテキ
5位 ニコ・ニコルソン「ナガサレール イエタテール

番外

感想は書いてないのですけど、実はこれがコミックのダントツ1位

水城せとな「チーズは窮鼠の夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」

2012年ベスト

2012年の個人的ベストです
小説

1位 横山秀夫「64
2位 百田尚樹「海賊とよばれた男
3位 朝井リョウ「少女は卒業しない
4位 千早茜「森の家
5位 窪美澄「晴天の迷いクジラ
6位 朝井リョウ「もういちど生まれる
7位 小田雅久仁「本にだって雄と雌があります
8位 池井戸潤「下町ロケット
9位 山本弘「詩羽のいる街
10位 須賀しのぶ「芙蓉千里
11位 中脇初枝「きみはいい子
12位 久坂部羊「神の手
13位 金原ひとみ「マザーズ
14位 森博嗣「実験的経験 EXPERIMENTAL EXPERIENCE
15位 宮下奈都「終わらない歌
16位 朝井リョウ「何者
17位 有川浩「空飛ぶ広報室
18位 池井戸潤「ルーズベルト・ゲーム
19位 原田マハ「楽園のカンヴァス
20位 相沢沙呼「ココロ・ファインダ

新書

1位 倉本圭造「21世紀の薩長同盟を結べ
2位 木暮太一「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?
3位 瀧本哲史「武器としての交渉思考
4位 坂口恭平「独立国家のつくりかた
5位 古賀史健「20歳の自分に受けさせたい文章講義
6位 新雅史「商店街はなぜ滅びるのか
7位 瀬名秀明「科学の栞 世界とつながる本棚
8位 イケダハヤト「年収150万円で僕らは自由に生きていく
9位 速水健朗「ラーメンと愛国
10位 倉山満「検証 財務省の近現代史

小説以外

1位 朝日新聞特別報道部「プロメテウスの罠」「プロメテウスの罠2
2位 森達也「A」「A3
3位 デヴィッド・フィッシャー「スエズ運河を消せ
4位 國分功一郎「暇と退屈の倫理学
5位 クリストファー・チャブリス+ダニエル・シモンズ「錯覚の科学
6位 卯月妙子「人間仮免中
7位 ジュディ・ダットン「理系の子
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9位 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち
10位 ヨリス・ライエンダイク「こうして世界は誤解する
11位 石井光太「遺体
12位 佐野眞一「あんぽん 孫正義伝
13位 結城浩「数学ガール ガロア理論
14位 雨宮まみ「女子をこじらせて
15位 ミチオ・カク「2100年の科学ライフ
16位 鹿島圭介「警察庁長官を撃った男
17位 白戸圭一「ルポ 資源大陸アフリカ
18位 高瀬毅「ナガサキ―消えたもう一つの「原爆ドーム」
19位 二村ヒトシ「すべてはモテるためである
20位 平川克美「株式会社という病

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1位 千早茜「からまる
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5位 百田尚樹「錨を上げよ
6位 今村夏子「こちらあみ子
7位 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ
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13位 宮下奈都「太陽のパスタ 豆のスープ
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番外 「困ってるひと」(諸事情あって実は感想を書いてないのでランキングからは外したけど、素晴らしい作品)